美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

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　魔法省の人たちはフードファイターなのか？気にしてもキリがないので適当に諦めて休憩にする。今日のおやつはレアチーズケーキである。お皿にのせ生クリームといちごジャムを添える。

　すでにお母様とステファニー様、フランツ兄様がダイニングで待っていた。お茶を飲んでいたので、きっとおやつが出てくるのを待ち侘びていたのだろう。

　よく見たらその横にはノートル様がいた。少しお疲れなのだろうか。私の顔を見ると微笑んでくださるのだが、心なしか頬に力が入っていない。その儚い感じがまたいいのよ。・・・なんて心の中でつぶやいてしまった。

「天使ちゃん、それは何？」
「美味しそうですわ」
「マリが作るものは美味しいと分かったけど、その白いのは何かな？」

　ワクワクした様子の3人。ノートル様も少しテンションが上がったようでケーキの皿をガン見している。

「レアチーズケーキです」
「れあ？」
「ちーず？」
「つまり、美味しいものですねっ」

　ノートル様はフォークを手にして、ケーキの端を少しだけ掬った。そして口の中に入れると、目を見開いたまま私のことをじっと見た。瞬きもしないで。

　フランツ兄様は生クリームを少し掬い、じっと眺めた後に舌でぺろりと舐めた。「ウマ・・・」と小さくつぶやくと、目を閉じてしばらく動かなくなった。ほんの少ししか舐めていないと思うのだが、味がわかったようである。

　お母様とステファニー様は嬉しそうに「可愛らしい食べ物ですわぁ」とか「食べちゃうのがもったいないわね」など語っていたけど、食べ出したら無言になった。

　人の味わい方って色々あるのだなぁ、と感心した。私が作ったお手軽ケーキでこんなに味わってもらえるって幸せだよね。私はお茶を飲みながらその感覚を味わっていた。

「ノートル様は今日はお休みですか？」

　しばらくケーキに感動していた4人だが少し落ち着いてきたので、話しかけてみた。

「いえ、午後から出勤します。今日は夜番ですから」
「そうですか、警護して頂いてありがとうございます。夜食のリクエストはありますか？」

　今まで私が好きに作っていた。私が食べたいもの、作れるもの、材料があるもので色々作って来たのだが、人の意見も聞いてみるべきだろう。何をリクエストされるか興味深い。

「えっ、よ、よろしいのですか？」

　冷静な印象のあったノートル様だが、嬉しそうな様子。そのギャップにも萌えそうになる。しかし、横にはフランツ兄様がいる。叱られないように落ち着かなくては。

「ギュウドンが・・・」

　言いにくそうにノートル様が口にした。横でフランツ兄様が睨みを効かせているので言いづらかったのだろう。

「あ、牛丼？いいですよ」

　牛丼なら簡単だ。やはり半熟卵も必要だろう。

「何、それ」

　フランツ兄様が拗ねたような言い方をする。フランツ兄様は昨日こちらに来たばかりなので食べていないものばかりだ。そのため、知らない食べ物を聞いて疎外感を味わっているのだろうか。しかし牛丼くらいで拗ねないでほしい。

「ドミニク様と騎士団が忠誠を捧げた食べ物です」

　ノートル様は真面目な顔で言われた。

「忠誠？ドミニク様と騎士団が？」
「すごいわ、さすが私の天使ちゃんね」

　食べ物に忠誠を捧げるっておかしなことだと思うのだが、誰もそれについて疑問に思わない。私はそれが不思議だ。だって、牛丼だよ？美味しいけど。

「ギュウドンのためなら命も惜しくない、騎士の間で最近言われている言葉です。ギュウドンが食べられるとなれば、きっと騎士の希望者が殺到するでしょう」
「なるほど・・・」

　フランツ兄様が深くうなづいている。午後から牛丼を大量に作ろう。みんなのことはほっておいて、私は午後からの手順を頭の中で反復するのであった。