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結局土鍋がなかったので、晩御飯はハンバーグにした。お父様とレオポール兄様も帰って来られたので、家族5人でディナーである。
「まぁ、これは・・・」
「いい香りだ、これをマリが?」
お母様とフランツ兄様は驚いて皿をただ見つめている。お父様とレオポール兄様は馴れてしまったのか、それとも余裕を見せているだけなのかはわからないがドヤ顔で2人の様子を見ている。
「リリンが女神の加護を受けたと聞いただろう。これがリリンの力なんだ」
レオポール兄様は自慢げに語る。
「この国でマリアンヌ以上の加護を受けた者はいないだろうな」
ワインを傾けながら、お父様が仰る。お母様もフランツ兄様は何度もうなづいている。
「私の天使ちゃんが・・・」
お母様は涙ぐみナフキンで目を拭った。
「冷めないうちにどうぞ・・・」
いたたまれなくて私は言う。何度も経験したが、私の初めての料理を見た人の感想は大袈裟だ。
「や、柔らかい」
「何、これ。最高」
「この料理は初めてだな」
「ワインに合うぞ。セバス、もう1本用意してくれ」
「はい、旦那様」
食事は和やかに進む。お父様とお母様はワインを楽しみながら、仲睦まじく話している。
「これ、このお野菜。甘くて美味しいわ」
ニンジンのグラッセを食べながら、お母様は微笑む。
「おやおや、口の端にソースがついているよ」
お父様はそう言ってお母様の口元に指を這わすと、その指を舐めた。
「あら、嫌だわ。オホホ」
両親の甘い雰囲気にかなりいたたまれない。私、ここにいていいの?って気分だ。だが、レオポール兄様もフランツ兄様も動じていない。これって日常生活なのか。
でも2人の仲睦まじい様子は私にとっては憧れだった。元彼とはこんな甘い雰囲気になったことはない。バカっぽいと思っていたが、恋愛をしている2人ならこういうひとときがあって当然なのだ。
「マリアンヌがいいものを思いついたのです」
突然、フランツ兄様が流れを変えるかの如く話し出した。
「そうなのよ」
お母様はそう言ってシュシュの話をする。現物を見せると、お父様はそれをいじりながら真剣にお母様の話に耳を傾けている。私も話を聞いていたのだが、なんと私が発案者なので私の取り分がかなりの割合になることが判明した。
「いずれ王族になるけど、個人の財産は確保しておかないと」
お母様はそう言って私にウインクした。へそくりは必要ってことか。お父様もお兄様たちも特に何も言わない。しかし私が発明したものではないし、自分は何もしていないのにお金だけ受け取るのは嫌だ。
「あの、お母様。お願いがあります」
「なあに?天使ちゃん」
天使はあなたです、その笑顔。お母様の笑顔に私はドキドキしてしまった。ワインのせいかお母様の頬は赤くなっていた。目はトロンとしている。
真理子はお酒は強くないが、飲んでも顔が赤くならなかった。お酒を飲んで頬を赤くしている女性は可愛い、と元彼に言われ、だからお前は可愛くないと喧嘩した時に言われた。今なぜかその時のことを思い出した。
「作成する人はできればスタンピードで被害を受けた人を多く雇ってほしいんです」
お母様が息を呑んだ。お父様もお兄様たちも何も言わないが、動揺している様子が見てとれた。が、私は続きを話した。
「それから、私の取り分はスタンピードで被害を受けた子どもに使ってもらいたいんです。基金みたいにして」
「え?」
「き、き、ん?」
みんなが驚いたように私を見た。やばい、そんなことはこの世界ではしないのか。しかし言った以上は言い切らなくてはいけない。
「被害を受けた子どもにも満遍なく教育や職業訓練などを受けさせてあげてほしいんです。そうすれば将来の国力となります」
私はどのようにしてほしいか説明をした。お父様は驚いていたが、やがて深くうなづいた。
「マリアンヌ、なんて素晴らしい」
「天使ちゃん、あなた・・・、本当に天使よ」
「なるほど、お金の心配なく長期に渡って子どもたちを教育できれば、優秀な人間が増える」
「すごいね、マリは」
この制度も私が考えたことじゃないけど。それにシュシュの代金程度でここまでのことができるか疑問である。が、やれることはやってみたいよね。
「まぁ、これは・・・」
「いい香りだ、これをマリが?」
お母様とフランツ兄様は驚いて皿をただ見つめている。お父様とレオポール兄様は馴れてしまったのか、それとも余裕を見せているだけなのかはわからないがドヤ顔で2人の様子を見ている。
「リリンが女神の加護を受けたと聞いただろう。これがリリンの力なんだ」
レオポール兄様は自慢げに語る。
「この国でマリアンヌ以上の加護を受けた者はいないだろうな」
ワインを傾けながら、お父様が仰る。お母様もフランツ兄様は何度もうなづいている。
「私の天使ちゃんが・・・」
お母様は涙ぐみナフキンで目を拭った。
「冷めないうちにどうぞ・・・」
いたたまれなくて私は言う。何度も経験したが、私の初めての料理を見た人の感想は大袈裟だ。
「や、柔らかい」
「何、これ。最高」
「この料理は初めてだな」
「ワインに合うぞ。セバス、もう1本用意してくれ」
「はい、旦那様」
食事は和やかに進む。お父様とお母様はワインを楽しみながら、仲睦まじく話している。
「これ、このお野菜。甘くて美味しいわ」
ニンジンのグラッセを食べながら、お母様は微笑む。
「おやおや、口の端にソースがついているよ」
お父様はそう言ってお母様の口元に指を這わすと、その指を舐めた。
「あら、嫌だわ。オホホ」
両親の甘い雰囲気にかなりいたたまれない。私、ここにいていいの?って気分だ。だが、レオポール兄様もフランツ兄様も動じていない。これって日常生活なのか。
でも2人の仲睦まじい様子は私にとっては憧れだった。元彼とはこんな甘い雰囲気になったことはない。バカっぽいと思っていたが、恋愛をしている2人ならこういうひとときがあって当然なのだ。
「マリアンヌがいいものを思いついたのです」
突然、フランツ兄様が流れを変えるかの如く話し出した。
「そうなのよ」
お母様はそう言ってシュシュの話をする。現物を見せると、お父様はそれをいじりながら真剣にお母様の話に耳を傾けている。私も話を聞いていたのだが、なんと私が発案者なので私の取り分がかなりの割合になることが判明した。
「いずれ王族になるけど、個人の財産は確保しておかないと」
お母様はそう言って私にウインクした。へそくりは必要ってことか。お父様もお兄様たちも特に何も言わない。しかし私が発明したものではないし、自分は何もしていないのにお金だけ受け取るのは嫌だ。
「あの、お母様。お願いがあります」
「なあに?天使ちゃん」
天使はあなたです、その笑顔。お母様の笑顔に私はドキドキしてしまった。ワインのせいかお母様の頬は赤くなっていた。目はトロンとしている。
真理子はお酒は強くないが、飲んでも顔が赤くならなかった。お酒を飲んで頬を赤くしている女性は可愛い、と元彼に言われ、だからお前は可愛くないと喧嘩した時に言われた。今なぜかその時のことを思い出した。
「作成する人はできればスタンピードで被害を受けた人を多く雇ってほしいんです」
お母様が息を呑んだ。お父様もお兄様たちも何も言わないが、動揺している様子が見てとれた。が、私は続きを話した。
「それから、私の取り分はスタンピードで被害を受けた子どもに使ってもらいたいんです。基金みたいにして」
「え?」
「き、き、ん?」
みんなが驚いたように私を見た。やばい、そんなことはこの世界ではしないのか。しかし言った以上は言い切らなくてはいけない。
「被害を受けた子どもにも満遍なく教育や職業訓練などを受けさせてあげてほしいんです。そうすれば将来の国力となります」
私はどのようにしてほしいか説明をした。お父様は驚いていたが、やがて深くうなづいた。
「マリアンヌ、なんて素晴らしい」
「天使ちゃん、あなた・・・、本当に天使よ」
「なるほど、お金の心配なく長期に渡って子どもたちを教育できれば、優秀な人間が増える」
「すごいね、マリは」
この制度も私が考えたことじゃないけど。それにシュシュの代金程度でここまでのことができるか疑問である。が、やれることはやってみたいよね。
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