美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「マリアンヌ様のアイデアは他にもございますのよ」

 ステファニー様は興奮気味に私の花のリースのことを言う。ステファニー様のメイドのレイラがどこかに行ったかと思えば、そのリースを持ってきた。

「これをマリアンヌが!」
「そうですの。これを見るとマリアンヌ様のお心が染み渡って、何とも言えない幸福感でいっぱいになりますのよ。すでに我が家の家宝でございますの。保管魔法もかけてありますわ」

 そのうち枯れると思っていたが、この世界に魔法があることを忘れていた。興奮して大声で「すごい、すごい」と話すお母様とステファニー様。見ていたら何だか微笑ましかった。

「マリ」

 しばらくぼんやりと見ていたが、横にいたフランツ兄様に話しかけられた。

「リレットは花が有名なところなんだよね」

 リレットとはお母様の実家のある地名。いずれフランツ兄様はそこに移り住む。ここからだと第二の王都と呼ばれるスロベリートとのちょうど中間地点に位置する。風光明媚な場所だが、逆に言えばそれ以外は何もないというところでもある。お母様の実家があるから行ったことがあるが、そうじゃなければそこを目的に行くことはないようなところなのだ。

「リレットの花であのリングを作って王都で売ったらどうだろう」
「そうですね、それでしたら」

 私は花束を売ることを提案してみた。貴族や騎士などは仕事の関係で王都とスロベリートを定期的に往復する。中間地点であるリレットでほとんどの人が休憩するのだが、そこで花束をお土産で売るのだ。

「豪華な花束だけではなく、小さめでお値段控えめなものも用意するのです」
「え?豪華な花の方が見栄えもいいし、金額も高いから売るにはいいだろう?」

 私は首を左右に振る。

「たとえば、お父様がリレットに立ち寄ってお土産に買おうとしますよね。お母様と私に豪華なお花を買います。で、小さめでお値段控えめなお花があれば、マーサやメアリにも買ってあげようって思いませんか?」

 フランツお兄様は目を見開いた。その手があった、と気づいて驚いているようだ。

「なるほど、数買ってくれるってことか」
「そうです」
「それに安ければ収入の多くない騎士でも買いやすい」
「そうです、それに渡しやすいんじゃないですか?」

 貴金属のように値の張るものは簡単に買って渡せるものではないが、お花なら買いやすく渡しやすい。

「1週間程度の保管魔法を使えば家に戻ってからも楽しめます」
「そこはもっと持つ魔法でもいいんじゃないか?せっかくの土産なんだし」
「ダメですよ、そうしたら次に来た時に買ってもらえなくなるじゃないですか」

 フランツ兄様は商売に向いていないのではないか、と心配になる。またもや兄様は驚いた顔になった。

「色々な色のお花があればいいし、束ねるリボンの色とかも何種類か用意したら?」

 おそらくだが、貴族の男性などは選択肢が増えると面倒になって全部買ってしまうのではないかと思う。必ずしも奥様だけに買って差し上げるわけではないだろう。これはマリアンヌではなく真理子の考えだ。

「ふぅ。マリはすごいね」

 フランツ兄様はニコニコと笑いながら私の頭を撫でてくれる。たいしてすごいこと言っていないのだが、この世界では切り花を楽しむってことがなかったから斬新なのだろう。



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