美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 あれから1週間がたった。私は毎日料理を作り、あちこちに送っている。魔法省の人たちは私の料理を食べると魔力が増えるそうだ。それでようやく剥がれた結界を張ることができた。魔獣はいなくなり、少しずつだが以前の生活に戻ろうとしている。

 今日のおやつはドーナツである。コピー機があるので大量に作っておく。小腹が空いた時にちょうどいい、とお兄様が絶賛したので常にストックを用意することにした。

 ドーナツとなればコーヒーである。マーサの紅茶も美味しくて大好きなのだが、時々コーヒーが飲みたくなる。実はキッチンの中を漁るとコーヒーが見つかった。女神様は私の記憶を探り、色々準備してくれる。中にはこの世界にないものもあるようだが、出どころはどうせ誰も探りはしない。全ては女神様の加護なのである。

 私は濃いめのコーヒーを淹れた。ゆっくりと香りを楽しむ。これこれ。

 そういえば、真理子として働いていた時は毎朝会社で飲むコーヒーが楽しみだった。高級でも何でもないコーヒーだったけど、仕事モードに入るスイッチみたいなもの。コーヒーを飲んで「今日も頑張るか」と心の中でつぶやいて働く。働きたくないなと思う日もとりあえず飲む。そんな瞬間が好きだった。

 そんなことを考えていたら・・・。

「お嬢様、よろしいですか」 

 キッチンの外から突然セバスチャンの声がした。まだお茶の時間には早いはずなので、おかしいなと思う。セバスチャンは時間に正確なのだ。何となく声が緊迫しているようにも聞こえる。まさかまた何か事件が?

 キッチンから出ると、セバスチャンがいた。いつも通り真顔なのだが、それでもどこか焦っているように見える。気のせいか?と思えば、屋敷の中がどこか落ち着かない雰囲気になっている、ように感じる。

 どうしたのだろう、と思っていたら。

「マリ!」

 セバスチャンの後ろから現れたのは、とてつもなくカッコイイ男性。この世界は、何故こうイケメンばかりが登場するのだろうか。よくわからないが、とにかくその男性はスラリとした長身。髪は金髪で青い瞳。

「あぁ、僕のスイートリトルエンジェル」

 そう言って私をきつく抱きしめる。

「フ、フランツ兄様」

 そうだ、マリアンヌの二番目のお兄様。お母様の実家を継ぐことになり、お母様と2人で王都を出たタイミングで王都の結界が剥がれスタンピードが起きたため王都に戻れなくなった。ようやく結界を張ることができたため、戻ってきたのだ。

「怖かっただろう、スタンピードなんて。兄様がいるから、もう大丈夫」

 フランツよ、お前もか。この家ではマリアンヌは抱き枕並に抱きしめられている。お父様とレオポール兄様だけではなく、フランツ兄様にも抱きしめられるのだ。

「大丈夫でしたわ。レオポール兄様が魔獣をやっつけてくださったのですよ」

 発情した猫の疑惑もあるが、とりあえずはレオポール兄様と彼の腹ペコ部隊が活躍したのは事実である。

「ふぅん・・・」

 少しお兄様の目つきが変わった気がしたが、私は気にしなかった。

「それより、マリは料理の加護を得たんだって?」
「そうなんです。フランツ兄様もいかがですか?」
「もちろん、いただくよ」

 フランツ兄様はようやく私を離してくれる。少しお茶の時間には早いかもしれないが、準備はできている。ドーナツを皿に盛り付けようかと思い、キッチンに戻ろうとした。すると。

「マリアンヌ!」

 女性の声が聞こえ、振り返った。華やかな貴婦人、という感じの人が立っている。

「お母様!」

 私は自然に彼女に向かって走り寄って抱きついた。あぁ、マリアンヌは本当に母親が大好きだったようだ。離れてしまって後悔していないだろうか。私の母はこんなに綺麗な人ではない。お母様というより、お母ちゃんという感じの人だ。走り寄って抱きつくなんて無理だと思う。

 申し訳ないという気持ちになったが、マリアンヌが選んだのだから気にしないことにする。
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