美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「部屋の中に水晶があります。それを左手で触ってください」

 部屋の外でゲルリーに言われた。これから入る部屋は鑑定の間。そこに入ったら声を出してはいけないのだ。私とジュリアは部屋に入る前に何度も注意をされる。お父様とスティラート公爵は先に部屋の中に入った。私とジュリアは後から入る。

 1人ずつ部屋に入る。静かに物音を立てないように、と注意を受ける。私はともかくジュリアは大丈夫なのか。あのドレスでは、物音を立てないなんて無理に決まっている。神聖な部屋なので、とゲルリーに注意を受けるが、ジュリアは聞いているのかどうかよくわからない。

 先に私から入ることになった。ドアが開き、中を見ると薄暗く狭い部屋の奥に3人の男性がいる。3人の男性の前に大きな水晶が見える。スイカくらいの大きさだろうか。

 中央の椅子に座っているのがおそらく陛下であろう。お父様と同じくらいの年齢で体格もよく、威厳のある雰囲気の男性である。私と目が合うと優しく微笑んでくれた。

 陛下の左側にはドミニク様、そして右側に若い男性がいる。おそらくこの男性がアルバート王子であろう。本来なら挨拶をしなくては行けないはずだが、この部屋では挨拶をしてはいけない。水晶だけを見るようにとゲルリーに言われた。

 私はゆっくり水晶に向かう。その大きな水晶の前に立つと軽く目を閉じる。そして左手を水晶に当てる。

 水晶は温かった。気持ちの良い温度を感じる。目を開けると水晶がピンク色に光っている。

 陛下たちはニコニコしていた。ゲルリーが私のそばに来てくれた。何も言われなかったが、そのままお父様の方に誘導された。鑑定は終わったらしい。

 お父様は私の手を握ってくれる。目が合うと小さくうなづいてくれた。無事に女神の加護を受けたと認定されたのだと思う。私とお父様は用意された椅子に座る。スティラート公爵も近くの椅子に座っている。ただ座っているだけなのに偉そうで嫌な感じがした。次はジュリアの番である。

 ジュリアが部屋に入ってきた。陛下もドミニク様もアルバート王子も顔が引き攣っている。流石に声には出さなかったが、あれを見たら表情に出るだろう。しかしスティラート公爵だけは穏やかに見守っていた。

 彼女をあんな表情で見られるなんて、やっぱり父親。娘はどう出会っても可愛いのだなと感心する。ジュリアはドレスを引きずりながらもゆっくり水晶に近づく。

 ジュリアの目がぎらついているのに気づいた。アルバート王子を見ている。それもなんか目つきがおかしい。アルバート王子が好きなのは知っていたが、あんな目で見たらアルバート王子も引くだろう。

 アルバート王子も表情に出さないようにしているが、でも本気で嫌がっているのがわかる。王子も大変だなぁと思うが、私が何かできるわけでもない。

 ジュリアがついに水晶の前に立ち、左手をバシッと水晶に叩きつけるように当てた。水晶が少し揺れた。すると、水晶が眩しいくらいの光に包まれた。
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