57 / 220
57
しおりを挟む私は今魂が抜けた状態になっている。キュウキュウに体を締め上げられてドレスを着た。ドレスの色は白。正直似合っているのかわからない。だが、お屋敷にいる全てのメイドは口々に「マリアンヌ様、お綺麗です!」と言ってくれた。
お世辞であろうと思うのでダニエル様に聞いてみたところ、真っ赤な顔になって小さな声で「か、可愛いです・・・」と呟いた。それを聞いたステファニー様は「可愛いではなく、お綺麗ですというのですよ」と言う。つまりはお世辞か?
正直ドレスを着た女性に対して褒めない人はいないだろうと思う。真相はともかく、私はドレスを着せられ馬車に乗せられた。今はお城の近くの魔法省に向かっているのだ。
馬車に乗ったのは私的には初めてだ。マリアンヌは慣れていただろうが、これがまた変な揺れがある。お尻は痛い。公爵家のものだから、おそらく良いものであるはず。しかしお尻が痛くて変な揺れのため、気持ち悪い。
昼食を食べたばかりでコルセットで締め付けられて、その上馬車の揺れに慣れずお尻も痛い。ドレスはたっぷりした布地のはずだからこんなにお尻が痛くなると思わなかったが、よく考えたらマリアンヌのお尻は薄いのだ。真理子のお尻の感覚でいた。お尻用のクッションをアンに作ってもらおう、と私は密かに考える。
「マリアンヌ、どうしたんだい?」
涼しい顔をしてお父様が聞く。
「心配しなくても大丈夫だよ。痛くも怖くもないからね」
男の人はコルセットでキュウキュウに締め付けられないからいいですね、とは言えない。まさかコルセットが苦しいとも言えず、私は無理矢理に微笑んだ。とりあえず笑っておく。
「魔法省に行くのは初めてだろう。変わった人たちではあるが、問題はないからね」
魔法省はいわば、魔法使いたちが働いているところだ。元の世界では電化製品みたいなものは、この世界では魔法でできている。それらの道具を作ったり開発する人たちもいるし、魔獣を効率よく倒すために生態を調べている人や医者のように病気や怪我を治す人もいる。そして結界を張り直そうと研究している人たちもいる。
この世界では誰でも魔法を使えるらしい。しかし魔法省に入るとなると生半可な能力では難しく、そのため極めた人が多く集まる。どうしても変わった人、という印象の人が増えてしまうらしいのだ。
「大丈夫ですわ」
私はなんとか令嬢らしさを取り戻そうと背筋を伸ばし、気品あふれる話し方を意識した。
「魔法省の方々にもお料理をご提供したいですけど、賄賂と受け取られますわね」
お父様は目を見開いたが、すぐに笑顔になる。
「終わったら渡せばいい。みんな喜ぶだろう」
みんな、というが何人だろうか。料理は大量コピーしてサンタクロースの袋に入れたままだが、外から取り出すことはできないだろう。セバスチャンに頼んでお父様のバスケットに入れておけばよかった。と、後悔したが始まらない。
「ついたよ、マリアンヌ」
気がつけば馬車は止まっていて、馬がヒヒーンと鳴いていた。いよいよ、鑑定である。少しドキドキするが、それよりもお城とかどんなだろうかとワクワクする気持ちでもあった。
237
お気に入りに追加
1,074
あなたにおすすめの小説
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~
明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる