美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 私は今魂が抜けた状態になっている。キュウキュウに体を締め上げられてドレスを着た。ドレスの色は白。正直似合っているのかわからない。だが、お屋敷にいる全てのメイドは口々に「マリアンヌ様、お綺麗です!」と言ってくれた。

 お世辞であろうと思うのでダニエル様に聞いてみたところ、真っ赤な顔になって小さな声で「か、可愛いです・・・」と呟いた。それを聞いたステファニー様は「可愛いではなく、お綺麗ですというのですよ」と言う。つまりはお世辞か?

 正直ドレスを着た女性に対して褒めない人はいないだろうと思う。真相はともかく、私はドレスを着せられ馬車に乗せられた。今はお城の近くの魔法省に向かっているのだ。

 馬車に乗ったのは私的には初めてだ。マリアンヌは慣れていただろうが、これがまた変な揺れがある。お尻は痛い。公爵家のものだから、おそらく良いものであるはず。しかしお尻が痛くて変な揺れのため、気持ち悪い。

 昼食を食べたばかりでコルセットで締め付けられて、その上馬車の揺れに慣れずお尻も痛い。ドレスはたっぷりした布地のはずだからこんなにお尻が痛くなると思わなかったが、よく考えたらマリアンヌのお尻は薄いのだ。真理子のお尻の感覚でいた。お尻用のクッションをアンに作ってもらおう、と私は密かに考える。

「マリアンヌ、どうしたんだい?」

 涼しい顔をしてお父様が聞く。

「心配しなくても大丈夫だよ。痛くも怖くもないからね」

 男の人はコルセットでキュウキュウに締め付けられないからいいですね、とは言えない。まさかコルセットが苦しいとも言えず、私は無理矢理に微笑んだ。とりあえず笑っておく。

「魔法省に行くのは初めてだろう。変わった人たちではあるが、問題はないからね」

 魔法省はいわば、魔法使いたちが働いているところだ。元の世界では電化製品みたいなものは、この世界では魔法でできている。それらの道具を作ったり開発する人たちもいるし、魔獣を効率よく倒すために生態を調べている人や医者のように病気や怪我を治す人もいる。そして結界を張り直そうと研究している人たちもいる。

 この世界では誰でも魔法を使えるらしい。しかし魔法省に入るとなると生半可な能力では難しく、そのため極めた人が多く集まる。どうしても変わった人、という印象の人が増えてしまうらしいのだ。

「大丈夫ですわ」

 私はなんとか令嬢らしさを取り戻そうと背筋を伸ばし、気品あふれる話し方を意識した。

「魔法省の方々にもお料理をご提供したいですけど、賄賂と受け取られますわね」

 お父様は目を見開いたが、すぐに笑顔になる。

「終わったら渡せばいい。みんな喜ぶだろう」

 みんな、というが何人だろうか。料理は大量コピーしてサンタクロースの袋に入れたままだが、外から取り出すことはできないだろう。セバスチャンに頼んでお父様のバスケットに入れておけばよかった。と、後悔したが始まらない。

「ついたよ、マリアンヌ」

 気がつけば馬車は止まっていて、馬がヒヒーンと鳴いていた。いよいよ、鑑定である。少しドキドキするが、それよりもお城とかどんなだろうかとワクワクする気持ちでもあった。


 
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