美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

文字の大きさ
上 下
54 / 220

54

しおりを挟む

 マリアンヌを包んでいたはずの光が見えなくなった。マリアンヌはいなくなっていたが、そこにいたのは女神様である。

「め、女神様」

 女神様も消えているだろうと思っていた私はややびっくりした。

「お主には話しておかないとな」

 女神様がにっこり笑う。なぜ笑えるのだろうか。マリアンヌは全く知らない世界に行ってしまったのに。私ならこの世界でなんとかなる。私はマリアンヌと違って大人だ。でもマリアンヌは子どもなのだ。

「あの子なら大丈夫だ。お主の体で自分のやりたいことをやって行けるだろう」
「でも!」

 私は不安しかない。マリアンヌの住んでいた世界は私にとっては中世ヨーロッパのような感じだ。うまくやっていけるはずがない。加えて彼女は箱入りお嬢様だ。私のような粗暴な庶民の女になってどうするのだ。

「お主の体にはお主の生きた記憶がある。お主が生きていたようにマリアンヌも生きていけるのだ。あとはお主が選ばないであろう選択をマリアンヌがする。マリアンヌの選択によって、あの子はお主の世界で立派に生きていくのだ」

 女神様は笑顔でそう言った。あぁ、そうか。マリアンヌは自分の生きたいように生きていくのだ。それはもう決定していることで、私はもう何も言えないのだ。そして、私も私の生きたいようにマリアンヌの体で生きていくしかないのだ。

「私には加護をつけてくださっているのですよね」
「そうじゃ」

 それなら安心。鑑定を乗り越えればそれでいい。

「お主には妾の加護がついておる。そしてジュリアとやらは聖女になってもらう」
「え?」

 あの悪名高いジュリアがなぜ聖女?見る目ないのか?と思わず女神様を疑いの目で見てしまう。

「人間が聖女を特別視しているのは理解できているが。聖女はそもそもお主が考えているような存在ではないぞ?何より前世で悪さをした者を今世では聖女として人の役に立たせようとしているのじゃから」

 は?どう言うこと?頭の中がすぐに整理できないでいたが、女神様は私の状況はどうでも良いらしくペラペラと話し始めた。

「王女を自分の息子の嫁にするためにあれやこれやとやらかして、結局は思い通りにならずに死んだ女の生まれ変わりがジュリアなのじゃ。まさか自分の孫に生まれ変わるとは思わなかったであろう」

 は?スティラート公爵の母親のこと?

「ジュリアも幼いうちから色々やらかしておるからのう。ちょうどいいとは思ってはいたが、何やら生前に仕掛けていた悪魔の術が今頃発動したのじゃ」

 悪魔の術はスティラート公爵の母親、つまりはジュリアの祖母が生前仕掛けていた術ということなのか?

「それって女神様がどうにかできないのですか?」
「いやいや、無理じゃ」

 なんだか軽い言い方で女神様は顔の前で手を左右に振る。

「悪魔に女神が対抗して出てきたら、この世界は終わる」

 え?それってかなり大変なことでは?でもどうしたらいいのか?人間が悪魔に勝てるの?

「お主の料理でなんとかなるであろう」

 は?なんで私の料理?

「お主の料理で世界は活性化しておる。その気持ちがあれば悪魔に勝てるのじゃ」

 ・・・なんというか女神様、適当すぎない?私は冷ややかな目つきで女神様を見ていた。活性化はともかく、なんで悪魔に勝てるのさ。

 しかし女神様は自信満々で私を見下ろしている。大丈夫なの?私はかなり不安になっていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...