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しおりを挟む「加護ならある!」
そこにはとても綺麗な女の人が立っていた。金色の髪が長く足の方にまで伸びている。胸はバイーンと出ていてウエストはキュッと細くお尻は引き締まっている。ものすごくスタイルがいい。思わず見惚れてしまう。
「妾はお主たちが言う女神じゃ」
女神様、と聞き私は思わずお辞儀をした。
「め、女神様。いらっしゃったのですね」
理由もないのに何だか恥ずかしくなる。女神様は真っ直ぐ私とマリアンヌを見ている。まつ毛がものすごく長い。唇はツヤツヤしている。とにかくものすごい美人なのだ。
「ご、ごめんなさい!」
すると突然マリアンヌが泣き出した。びっくりして彼女を見る。マリアンヌは顔を覆い何度も謝っている。
「どうしたの?」
「私、私、あの日キッチンに行ったの。鍵を開けて中に入ったの」
お父様から鍵を受け取ったマリアンヌはこっそりキッチンへ行き、中に入ったそうだ。
「部屋の中はすごい光で」
「妾が加護を与えたのじゃ」
女神様の説明で私は驚いた。つまりマリアンヌは女神の加護を受けていたのだ。
「でも、私は嫌だった。ここにいるのが嫌だったの」
マリアンヌは泣きながらそれでも説明を続ける。
「この世界にいるのが嫌だった。私は1人でも自由に生きていける真理子のような生活がしたかったの」
好きで1人だったわけではないし、自由に生きていたわけでもないのだけど。と、私は少しムッとした。美人に生まれてお金にも不自由しない生き方を選べたならそうしてた。でもそうじゃなかっただけだ。
「だから、違う世界に行きたいって。女神様にお願いしたの。加護をくれるならお願いを聞いてって。でも真理子が代わりにこの世界に来るなんて思わなかったの」
そういうとマリアンヌは一層大きな声で泣いた。
「でも、でも私、真理子の世界に行けて本当によかった。真理子がこの世界で料理をして楽しんでくれるならよかったって・・・」
「マリアンヌ、あなたはまだ12歳だわ。32歳の私になるなんてよくないことだわ。12歳から32歳まで楽しいことがたくさんあるのに。マリアンヌはそれを体験できないのよ」
「いいの、私は」
いくらなんでもそれはよくないだろう。今はよくてもいつか後悔する日が来るだろう。
「女神様、今からでも私たちを元の世界に戻してください」
「ならぬ!」
私の頼みを女神様は毅然と言い放つ。
「お主の意見を聞かずに誠申し訳ない。だが、これ以上妾の干渉はできぬのだ」
私を見る女神様の目は優しかった。
「真理子、ごめんね。ありがとう。お父様やお兄様をお願いね」
「みんな、マリアンヌのことが大好きなんだよ。本当にいいの?」
「うん、十分に愛されてるってわかってるから」
マリアンヌが光に包まれて見えなくなった。それでも声は聞こえる。
「真理子、真理子の世界は私が貰うけど。ごめんね。私も幸せになるから」
私の世界。そこで本当にマリアンヌは幸せに暮らせるのだろうか。でも仕方がない。もう戻ることはできないのだ。
「マリアンヌ。私も精一杯マリアンヌの世界を大切にする」
小さな声で私は呟いた。
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