美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「これは今まで食べたことがない味ですな」
「こんなに美味しいものは初めてですよ」
「やはりマリアンヌ様は違いますな」

 集まった大臣たちやゲルリーへマリアンヌの作ったアップルパイを出すことになり、ユエンは少々不機嫌である。マリアンヌの料理は自分だけが味わっておきたかった。こんな奴らに何故振る舞わなければならないのか、ユエンは納得していなかった。

「そうそう、他にも美味しいものはあるのだよ」
「他にもでございますか?」
「そうなのだ、エビフライなどは史上最高の出来であるかも知れぬ」
「え、エビフライ?」

 陛下の説明を大臣たちは目を見張って恭しく聞いている。どういうわけだか陛下は自慢げに説明をしているのだ。

「さすが、将来の我が娘であろう」

 ガハハ、と調子良く笑い声を上げ陛下は大変機嫌が良い。先ほどまでジュリア嬢について思い悩んでいたのが嘘のようである。

「確かにこの料理であれば、加護を受けたと分かります」

 手にしたアップルパイを何度か噛み締め、香りを嗅ぎ、深くうなづきながらゲルリーは言った。

「しかし、やはり魔法省の鑑定を受けていただけないと」
「鑑定?」
「必要ないだろう。正式に私は加護を受けたと認定するぞ」

 陛下はそう宣言するが、ゲルリーは首を左右に振り制止した。

「陛下、それをしてしまいましたらジュリア嬢が騒ぎ出しますでしょう」

 確かに、ジュリア嬢とスティラート公爵は文句を言うに違いない。いまだにユティシア様とのことを持ち出すくらいなのだ。国王の決定したことに不満を言える神経の持ち主だから、本人たちに納得させないとマリアンヌと王子の婚約も聞きつけたら何をするかわからない。怒りの矛先をマリアンヌに向けられたらたまらない。

「ふむ、それもそうだな」

 陛下は素直にうなづいた。

「ジュリア嬢が聖女であれば、悪魔の術に対抗できるかもしれません。ですが、聖女でなければ悪魔の術には対抗できないでしょう」

「で、ではどうなるのだ?」

 ごくり、と生唾を飲みゲルリーの言葉を待つ。ゲルリーは明るく朗らかに答えた。

「わかりません!」

 このやろう。とユエンは思った。呑気にしている場合ではない。結界は貼り直せないのか。魔法省には何人も実力を持った者がいる。彼らのために今までどれだけの資金を投入したと思っているのか。とにかく、ここで呑気にアップルパイを食べていないで、今すぐにできることに取りかかれ。

 ユエンの思いを知らず、ゲルリーはニコニコ笑いながら

「アップルパイ、もう一ついただきますね」

 と、言ったのだった。

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