美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 建国当時、1人の少女に女神が啓示を与えその少女を聖女とした。女神は国に結界を張り国を守る代わりに、聖女を女神として大切に扱うように言った。聖女は途切れることなく現れたはずだが、先代の聖女が亡くなったのは15年前。彼女は13歳の時に啓示を受け、以来50年近く聖女として君臨した。彼女以降聖女は現れていないのだ。

「先代の聖女が亡くなったのは15年前。ジュリア嬢は15歳。この点でもジュリア嬢が聖女であるという可能性は高いですね」

 ゲルリーはどこか嬉しそうに話している。聖女が誕生したということは国にとっては喜ばしいことである。しかし、納得できないのも事実である。だが、ゲルリーはお構いなしに話を続ける。

「聖女は国の保護を受けます。聖女がそれだけ重要な人物だからです。彼女が聖女であるかどうかは、魔法省にある水晶で分かります。もし聖女であると断定できたらすぐに保護を開始しましょう」

「そうか・・・」

 陛下が項垂れている。その様子を見て、ゲルリーはようやく何かがおかしいと気づいたようだ。

「国の保護とは何かご存知ですよね」

 はっとしたように陛下が顔を上げた。

「すまん、知らんのだ」

 実は聖女についての記録はあまり残っていない。それは聖女の動きや生活が分かると犯罪に巻き込まれる可能性があるとして、先王が公表しなかったのだ。15年前はまだ王太子であった陛下にも知らされていなかったようである。

「西の塔、はご存知ですか?」
「西の塔?」

 陛下がおうむ返しに言う。

「ご存知ないですね」

 ゲルリーはため息を小さくついた。不敬な行為であるが、誰も咎めない。

「王宮の西の端に小さな塔があるのです。そこが聖女の住まいになります」

 ゲルリーの説明によると、聖女は代々そこに住み外部との交渉は一切禁じられる。魔法省の聖女付きの女官のみが聖女との接触を許されるのだが、聖女の生活は質素というより極貧とまで言えるくらい過酷なもの。朝早く起きて水で穢れを落とし1日中祈りを捧げる。食事は僅かな穀物と野菜のみが許され、着るものも最低限の衣類。魔法省の聖女付きの女官も特別な魔法を使い、外部と接触できないようにされている。

 そのくらいの犠牲があるため国の絶対的な保護というより監視が必要なのだ。過酷すぎる対応のため、先王は「犯罪に巻き込まれないため」という理由で公表しなかったのだろう。

「ジュリア嬢が本当に聖女であるなら西の塔に住んでもらいます。幸いにも魔法省には聖女付きの女官希望がいまだに大勢いるのです。魔法を扱うものにとっては聖女は憧れですからね」

「で、ではもし聖女でないなら・・・」

 陛下の問いにゲルリーは言った。

「犯罪になりますから、牢に入れるしかないでしょう」

 ゲルリーは笑顔だ。どこか嬉しそうである。それはこの部屋全員が同じだった。

 
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