美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 陛下は頭を抱えたまま、眉間に皺を寄せて動かないでいる。もう何十分もその姿勢のままだ。室内にいる誰もが似たような状態だった。

     ある者は机に突っ伏したまま動かず、別の者は現実逃避するかのごとく窓の外をぼんやりと眺めていた。また別の者は小刻みに足を震わせ「どうすんだ、どうすんだ」と呟いており、またまた別の者は青ざめた顔で視線を漂わせている。

    つい先程まで、我々はアルバート王子とマリアンヌの婚約について会議をしていた。会議は和やかに進んでいた。時折笑みが浮かび、誰もがこの決定を喜んでいたのである。

「やはり挙式は春が望ましいですな」
「そういたしますと、婚約式は年末」
「マリアンヌ嬢の宝石はぜひとも我が領のダイヤモンドを」
「それならば、ドレスは我が領で取れた絹を使ってくだされ」

    大臣たちはマリアンヌを小さい頃から見知っていた。まるで自分の娘や孫のように思う者もいる。彼らの誰もがマリアンヌが将来の王妃となることを喜んでいたのだ。

    ジュリアじゃなくて良かった。

    誰もがそう思っていた。スティラート家が魅了の術を使い人心を掌握しようとした。

    それはとんでもない犯罪である。証拠もなく本人たちも認めてはいない。だが、そんな疑いのある人物を将来の王妃とするわけにはいかない。

    そのため、マリアンヌが王子の婚約者として内定した。墓穴を掘ってくれてありがとう。むしろそんな気持ちになったくらいであった。

    しかし、そんな浮かれた気持ちはたった一言で終わりを告げる。

 1人の側近が慌てたように部屋に入ってきた。彼は弾んだ息を整えることもなく一息で言ったのだった。

「ジュリア・スティラート公爵令嬢が聖女として覚醒されたと発表されました!」

 全員の動きが止まった。その場にいる誰もがあり得ないと思った。あのジュリアが?聖女とはほど遠い人物ではないか?

「まことでございますか?」

 ようやく1人の大臣が口を開いた。

「偽りであれば罪が重い」

   そうだ、魅了の術だけでも罪なのにこれ以上罪となるような言動はするはずがない。そうなると、本当に彼女は聖女なのか。

「すぐに確認をしなければ」
「聖女であれば、どうなるのだ?」

 聖女は国で保護することが決められている。あのジュリアを国で保護。想像するだけで頭が痛くなる。あれやこれやとワガママを言うのは分かりきっている。

    誰もが想像し、そして想像だけでゲンナリとした。今までは関わらなければ済んでいたのに、国が保護するのだから要職についている者は何らかの形で関わるのである。

    誰かが大きなため息をついた。それを合図にあちこちからため息が聞こえた。誰もが絶望を味わっていた。

 

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