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お父様とお兄様への料理を作りセバスチャンに送ってもらおうとキッチンから出ると、ちょうどお父様が帰られたところだった。ご帰宅されるのは嬉しいことだが、毎日きちんと帰ってくるのは大変ではないか。お城で泊まり込みが増えるだろうからキッチンの鍵を譲ったのだろう、と思いもするが笑顔で出迎える。
「マリアンヌ。昨夜の料理もおいしかったよ」
お父様はニコニコと笑っている。ご機嫌である。
「朝食の準備をしますね」
いつも通り2人の前に皿が置かれる。私はすでに食べてしまったから紅茶だけ飲んでいようとカップを手にする。
「マリアンヌ、どうしたのだ?」
途端にお父様が声を上げる。
「お茶だけなんて。まさか、だいえっと?」
お兄様のぎこちない『だいえっと』発言。この世界にもその言葉はあるのか。
「だいえっと?何だね、それは」
お父様の質問にお兄様は得意げに話し出した。
「若い女の子が自分の体を気にして、食べないようにするのですよ」
「えぇっ?」
普段冷静なはずのお父様が驚いて立ち上がった。弾みで椅子が大きな音を立てて倒れる。
「旦那様!」
セバスチャンが駆け寄り、椅子を元に戻す。だが、お父様は驚きの表情のまま立ち尽くしている。
「マリアンヌが何を気にするというのだ?美の女神だってマリアンヌを見たら自信をなくすというのに」
いや、そんなことはない。
「若い女の子は自信がないものです。マリアンヌ、君は完璧なんだから気にすることはないんだよ」
気にしていないし。単に先に食べたからお腹いっぱいなだけです。
「だいえっとなんて、する必要ない」
「そうそう」
2人は力強くこちらを見ている。
「旦那様、マリアンヌ様はすでに朝食を召し上がったのです」
セバスチャンの言葉に2人は驚いたように顔を見合わせた。
「マリアンヌをたった1人で食事させたっていうのか?」
「かわいそうに。さぞや寂しい思いをしたに違いない」
「セバスっ。お前がいながら何故っ」
お兄様が腰に手をやった。その仕草は刀を抜こうとしていた。刀は家に入った時点で外している。そのことも忘れ抜刀しようと体を動かしたのか。
「いえ、お嬢様はお一人でお食事はされませんでした」
セバスチャンは頭を下げ淡々と話す。
「私がついていながら申し訳ございません」
「誰と一緒に食事を?」
「ダニエル様とです」
私が答えると、2人はまたもや驚いたように私を見た。2人の目はこれ以上開かないというくらいに開かれ、口はポカーンと開いていた。こんなにだらしない顔をするとは思わなかった。
「ダニエル様?」
「エイアールの・・・」
「はい。お目覚めになってすぐ降りてこられたのです。お腹をすかされていたので一緒に頂きました」
あの時のダニエル様を思い出し、私はニコニコと笑った。あの寝癖、可愛かったな。
「そ、うか・・・」
「ダニエル・・・ね」
「弟ができたみたいで楽しいです」
「そうか、それは良かった」
私が生き生きとダニエル様の可愛らしさについて熱弁している横で、2人は明らかに気のない相槌を打っているだけになった。だが朝食はモグモグと食べていたので大丈夫だろう。でもこんなに意気消沈されるのなら、ダニエル様と食事をするのは考えたほうがいいかもしれない。私は少しだけ反省したのだった。
「マリアンヌ。昨夜の料理もおいしかったよ」
お父様はニコニコと笑っている。ご機嫌である。
「朝食の準備をしますね」
いつも通り2人の前に皿が置かれる。私はすでに食べてしまったから紅茶だけ飲んでいようとカップを手にする。
「マリアンヌ、どうしたのだ?」
途端にお父様が声を上げる。
「お茶だけなんて。まさか、だいえっと?」
お兄様のぎこちない『だいえっと』発言。この世界にもその言葉はあるのか。
「だいえっと?何だね、それは」
お父様の質問にお兄様は得意げに話し出した。
「若い女の子が自分の体を気にして、食べないようにするのですよ」
「えぇっ?」
普段冷静なはずのお父様が驚いて立ち上がった。弾みで椅子が大きな音を立てて倒れる。
「旦那様!」
セバスチャンが駆け寄り、椅子を元に戻す。だが、お父様は驚きの表情のまま立ち尽くしている。
「マリアンヌが何を気にするというのだ?美の女神だってマリアンヌを見たら自信をなくすというのに」
いや、そんなことはない。
「若い女の子は自信がないものです。マリアンヌ、君は完璧なんだから気にすることはないんだよ」
気にしていないし。単に先に食べたからお腹いっぱいなだけです。
「だいえっとなんて、する必要ない」
「そうそう」
2人は力強くこちらを見ている。
「旦那様、マリアンヌ様はすでに朝食を召し上がったのです」
セバスチャンの言葉に2人は驚いたように顔を見合わせた。
「マリアンヌをたった1人で食事させたっていうのか?」
「かわいそうに。さぞや寂しい思いをしたに違いない」
「セバスっ。お前がいながら何故っ」
お兄様が腰に手をやった。その仕草は刀を抜こうとしていた。刀は家に入った時点で外している。そのことも忘れ抜刀しようと体を動かしたのか。
「いえ、お嬢様はお一人でお食事はされませんでした」
セバスチャンは頭を下げ淡々と話す。
「私がついていながら申し訳ございません」
「誰と一緒に食事を?」
「ダニエル様とです」
私が答えると、2人はまたもや驚いたように私を見た。2人の目はこれ以上開かないというくらいに開かれ、口はポカーンと開いていた。こんなにだらしない顔をするとは思わなかった。
「ダニエル様?」
「エイアールの・・・」
「はい。お目覚めになってすぐ降りてこられたのです。お腹をすかされていたので一緒に頂きました」
あの時のダニエル様を思い出し、私はニコニコと笑った。あの寝癖、可愛かったな。
「そ、うか・・・」
「ダニエル・・・ね」
「弟ができたみたいで楽しいです」
「そうか、それは良かった」
私が生き生きとダニエル様の可愛らしさについて熱弁している横で、2人は明らかに気のない相槌を打っているだけになった。だが朝食はモグモグと食べていたので大丈夫だろう。でもこんなに意気消沈されるのなら、ダニエル様と食事をするのは考えたほうがいいかもしれない。私は少しだけ反省したのだった。
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