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エイアール家の人が来た日の翌日。私はキッチンで朝食の準備をしていた。昨日はエイアール家の人たちは部屋に着いた瞬間全員死んだように眠ってしまったため、夕飯は出さずに終わってしまった。多めに作った夕飯のエビフライは、レオポールお兄様の部隊に『飛んでいった』ので無駄にはなっていない。
エイアール家の方々は元気になるだろうか。願いも込めて多めに朝食の準備をする。今日はコーンポタージュ、スクランブルエッグ、ベーコン、ウィンナー、サラダ、パンである。卵の黄色がとても鮮やかで綺麗にできたなあ、と自画自賛していたらドアの外で物音がした。
「セバスチャン?」
ドアを開けるとそこにいたのはダニエル様であった。ゆるくウェーブした金髪があちこちの方向を向いていて、すごい寝癖なんだけどそれが子どもらしくて可愛かった。クリクリの大きな青い瞳はキラキラと輝いているように見える。白いワンピースのような服は寝巻きだろうか。フカフカのスリッパを履いていて、足首が白くて細かった。
「ダニエル様、おはようございます」
私はにっこり微笑み少し屈んで目線を合わせた。
「マ、マリアンヌ様」
ダニエル様は急に姿勢を正すとぴょこんとお辞儀をした。
「こ、このような格好で朝のご挨拶をすることをお許しください。昨日は大変申し訳なく、心苦しく感じております。どうかお見捨てになりませぬようお願い申し上げます」
子どもにしてはずいぶんな挨拶だ。おそらくは一生懸命に大人の真似をして話しているのだろう。こんな可愛い子を見捨てるわけがないのに。
「何も気にせず、ゆっくりとお過ごしくださいね」
ダニエル様がはにかんで目を逸らした。その時お腹がグゥゥ~と盛大になってしまい、ダニエル様は余計に恥ずかしがって下を向いた。その仕草の可愛らしさに私まで目を逸らしそうになってしまう。
「2人だけでこっそり先にいただいてしまいましょうか」
大人の余裕を見せるように私はわざと目を逸らさずに堂々とした気持ちで話した。実際は32歳である。自分の子どもと言ってもいいくらいの年のダニエル様に照れている場合ではない。
形よく色合いよくお皿に盛り付け準備をする。ふと思いついて片隅に置いてあったカフェテーブルを窓辺に移動させた。重いはずだが、そこは台所にいつもある鍋つかみを使用する。これをつけると重いものも軽々と持てるのだ。窓からは綺麗に咲いた花がばっちり見える。
ホットミルクに蜂蜜を少し垂らしたものも出し、2人で先にいただくことにする。料理を見たダニエル様の目が大きく見開かれている。
「すごい!朝からこんなに食べてもいいの?」
興奮したようにダニエル様が言う。今にもヨダレを垂らしそうに見える。先程のご挨拶はやはり無理矢理言ったのだろうな。まだ8歳だ。いくら貴族とはいえ、子どもらしく振舞っていいのに。
「足りなければお代わりもありますよ。たくさん召し上がってくださいね」
そうだ、子どもはたくさん食べないと。私たちはお互いにっこりと笑いあうとフォークを手にした。
「美味しい」
「こんなの初めてだ」
「今までで一番だ」
ダニエル様は一口ごとに感想を言う。その様子を見ていると私も嬉しくなってしまう。ご招待できてよかったな、と思う。それに2人だけのモーニング。ちょっとした罪悪感もあるが、このくらいなら許されるよね。そう思いながら、これってジュリア様と同罪?とも思ってしまうのだった。
エイアール家の方々は元気になるだろうか。願いも込めて多めに朝食の準備をする。今日はコーンポタージュ、スクランブルエッグ、ベーコン、ウィンナー、サラダ、パンである。卵の黄色がとても鮮やかで綺麗にできたなあ、と自画自賛していたらドアの外で物音がした。
「セバスチャン?」
ドアを開けるとそこにいたのはダニエル様であった。ゆるくウェーブした金髪があちこちの方向を向いていて、すごい寝癖なんだけどそれが子どもらしくて可愛かった。クリクリの大きな青い瞳はキラキラと輝いているように見える。白いワンピースのような服は寝巻きだろうか。フカフカのスリッパを履いていて、足首が白くて細かった。
「ダニエル様、おはようございます」
私はにっこり微笑み少し屈んで目線を合わせた。
「マ、マリアンヌ様」
ダニエル様は急に姿勢を正すとぴょこんとお辞儀をした。
「こ、このような格好で朝のご挨拶をすることをお許しください。昨日は大変申し訳なく、心苦しく感じております。どうかお見捨てになりませぬようお願い申し上げます」
子どもにしてはずいぶんな挨拶だ。おそらくは一生懸命に大人の真似をして話しているのだろう。こんな可愛い子を見捨てるわけがないのに。
「何も気にせず、ゆっくりとお過ごしくださいね」
ダニエル様がはにかんで目を逸らした。その時お腹がグゥゥ~と盛大になってしまい、ダニエル様は余計に恥ずかしがって下を向いた。その仕草の可愛らしさに私まで目を逸らしそうになってしまう。
「2人だけでこっそり先にいただいてしまいましょうか」
大人の余裕を見せるように私はわざと目を逸らさずに堂々とした気持ちで話した。実際は32歳である。自分の子どもと言ってもいいくらいの年のダニエル様に照れている場合ではない。
形よく色合いよくお皿に盛り付け準備をする。ふと思いついて片隅に置いてあったカフェテーブルを窓辺に移動させた。重いはずだが、そこは台所にいつもある鍋つかみを使用する。これをつけると重いものも軽々と持てるのだ。窓からは綺麗に咲いた花がばっちり見える。
ホットミルクに蜂蜜を少し垂らしたものも出し、2人で先にいただくことにする。料理を見たダニエル様の目が大きく見開かれている。
「すごい!朝からこんなに食べてもいいの?」
興奮したようにダニエル様が言う。今にもヨダレを垂らしそうに見える。先程のご挨拶はやはり無理矢理言ったのだろうな。まだ8歳だ。いくら貴族とはいえ、子どもらしく振舞っていいのに。
「足りなければお代わりもありますよ。たくさん召し上がってくださいね」
そうだ、子どもはたくさん食べないと。私たちはお互いにっこりと笑いあうとフォークを手にした。
「美味しい」
「こんなの初めてだ」
「今までで一番だ」
ダニエル様は一口ごとに感想を言う。その様子を見ていると私も嬉しくなってしまう。ご招待できてよかったな、と思う。それに2人だけのモーニング。ちょっとした罪悪感もあるが、このくらいなら許されるよね。そう思いながら、これってジュリア様と同罪?とも思ってしまうのだった。
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