美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「うまいっ」

 陛下が一口頬張るとすぐに叫んだ。国王陛下としてその言動は品がないと思うが、ユエンは正直でよろしいと思った。素の彼が実は品がないことは、ユエンは長い付き合いで知っていた。王族として生まれた彼は人目がある時は取り繕った言動であるが、いざ素になった時は思い切り下品になるのだ。日頃の反動と思われる。

「こんなうまい料理、今まで食べたことがないぞ」
「ですよねぇ。だから騎士団は忠誠を誓いましたよ」

 料理人に忠誠を誓う騎士って何だ?とユエンは冷静に考えたが、マリアンヌの料理だと思えばそれは致し方なかった。自分も宰相として忠誠を誓おうかと思ったくらいである。

「やはり、マリアンヌ嬢はアルバートに」

 その話が来たか、とユエンは思った。どう考えても国内ではマリアンヌ以上の令嬢はいない。父親としては複雑な思いだが、宰相として客観的に考えたら王子の婚約者としてマリアンヌは最適である。

「結界についてはもうそろそろ何とかなるでしょう。魔道士たちが力を溜めてきてますからね」
「結界が張られたら、アルバートとのことも前向きに動いてもらいたい」

 王族の一員となれば、色々と大変であろう。幸いなことに陛下も皇后陛下もいい人間であるし、マリアンヌも幼い頃からお会いしている。極端な嫌がらせなどもされないだろう。その点では安心している。

「しかし、マリアンヌ嬢。幼い頃から見ていましたが、あの子が来てくれるのなら俺も頑張らないとですね」

 ドミニクがニコニコしながらエビフライを頬張っている。ナイフで一口大に切らずにフォークで刺して丸ごとかぶりついていた。マナー違反だが、それが正しい食べ方のような気がしてくる。

「頑張る?」
「そうですよ。継承権を放棄するつもりですが、アルバートが立派になるまで放棄しないほうがいいのでは?」
「え?」
「アルバートが国王に即位して本当に大丈夫ですか?頼りないことこの上ない。あれではマリアンヌ嬢を守ることなどできないではないですか。マリアンヌ嬢を守れないような国王が国を守れますか?」
「ふむ、確かにそうだな」
「でしょう?アルバートは甘いですからね。敷かれたレールをただ乗っかれば済むと思っている。それじゃあダメです。簡単に国王になれると思ってるようじゃ。試練を与えないといけません」
「なるほど」
「俺が王位を狙っていると思えばアルバートもやる気を出してくるでしょう。切磋琢磨して国王の座をもぎ取るのです。それくらいの根性見せないと、マリアンヌは俺が貰いますよ」
「何?」
「そうです。よく考えたら俺とマリアンヌは12歳違いです。そんな歳の差、大したことありません。腑抜けなアルバートより、俺の方がふさわしいです。ね、お義父さん」
「お義父さんじゃありません、お二人とも落ち着いてください」
「いや、ドミニク。なかなか名案と思う」
「そうでしょう?陛下」

 2人は笑顔でエビフライを頬張っていた。その笑顔は異母兄弟ではあるが、よく似ていた。

「落ち着いていますよ」
「ああ、これ以上ないくらい落ち着いている」

 2人がユエンに笑顔を向けた。

「いいえ、お二人が食べているのは私のエビフライです」

 ユエンは顔中が痛くなるくらいに力を込めて睨みつけた。人のエビフライを食べるとは万死に値する。不敬罪と言われてもいい。そのくらいの勢いでユエンは2人を睨みつけていた。


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