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しおりを挟むユエンはため息をつきながら、白ワインをグラスに注いだ。今部屋にいるのは彼1人である。秘書のライアンとベルナルトはエイアール家の人たちを見張るためにサーキス家にいる。
今頃はマリアンヌの料理を食べているだろうか。
想像したら自然と彼の口元が緩んだ。マリアンヌが送ってくれた料理を食べることにする。
バスケットの中は見たことがない料理で溢れていた。料理名が書かれたメモがあったが、大半が聞いたことがなかった。だがどれも美味しいに違いない。
軽くノックの音がした。ドアを開けるとそこにいたのは2人の男性。
「陛下、どうして来られたのですか」
「どうしてとは・・・?」
「そりゃ、マリアンヌ嬢の話をしたいからですよね」
国王陛下とユエンは同い年である。ユエンは国王陛下の友人という職務を生まれた瞬間に賜った。最初は公爵家の義務のようなものであったが、長じて2人は親友となった。学生時代は散々馬鹿なこともした。そして国王の右腕として今も職務を全うしている。
「マリアンヌ嬢が加護を受けたと聞いて、久しぶりにお会いしましたけど。ものすごい美人に成長しましたね。騎士団は彼女に忠誠を誓いましたよ」
陛下の弟のドミニク様は相変わらず軽薄な感じでペラペラと話している。彼の言動に大臣たちは眉を顰めるが、それはわざとだということをユエンは知っている。
ドミニク様と陛下のお母上は違う。先代の国王陛下までは王妃の他に複数の側妃を持つことが義務付けられていた。ドミニク様は側妃から生まれたが、王位継承権は今現在第一位である。道化を演じることで第一王子のアルバート様が問題なく王太子になれるように謀っているのだ。
異母兄弟であるが、2人の仲は良い。こうして陛下を連れてここに来たのは、非公式で色々と話したいということであろう。
「仕事中ではなかったのか」
机の上のワインを見ながら、陛下がつぶやく。ユエンはグラスをもう2つ用意した。仕方なくだがマリアンヌの料理を人数分取り出す。
陛下の目が大きく見開いている。
「こ、これは何だ?」
「オムレツというものらしいです。卵を焼いたもののようです」
「これは?」
「エビフライです。エビをパンを砕いたもので包んで油で調理するもののようです」
「これは?」
「野菜ソテー、もしくはマカロニサラダというもののどちらかと思われます」
マリアンヌは料理名とどのようなものかを書き記している。しかしユエンは食材の名前もよくわからない。そのため、どの料理がどれなのかわからないのだ。陛下は好奇心旺盛で色々質問してくるのだが、ユエンとしてはどうでもよかった。とにかくすぐに食事をしたかった。だから本当は見当がついたものでさえ、よくわからないと適当に答えていた。
「いいから、とにかく食べましょう」
ドミニク様は今にも涎を垂らしそうなくらいにだらしない顔をしていた。確か騎士団はマリアンヌに忠誠を誓ったと言った。どういうことだろうか。ユエンはそのことを問い質したかった。
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