美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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「めっちゃうまい」
「この卵、サイコー!」
「俺、騎士になってほんっとうによかった」

 あちこちからお代わりの牛丼を食べながら聞こえてくる声。私は満足だった。やはり牛丼には半熟卵。しかも最初に出したものより少し煮詰めて味を濃いめにしている。家で作っていた時、私はこうやって必ず2杯牛丼を食べていた。

 「牛丼2杯かっこむなんて、女捨ててるよな」と元彼氏に言われたことがある。別れる直前くらいだったと思うが、その時すでに私への愛情はなかったんだろうな。思い出したら少し心が傷んだけど、騎士の人たちの様子を見てたらどうでも良くなった。

「今なら素手で戦える気がする」
「俺は西門から北門へノンストップで伝令に向かえるな」
「俺も」

騎士の人たちのやる気みなぎる反応に私は心の中で喜んでいた。彼らが街を守ってくれているのだ。

 騎士の人たちは仕事に戻り、私はキッチンで夕飯の準備をしようとしていた。

「リリン、今日もまたありがとう」

 お兄様に呼び止められた。心配そうな目をしている。

「大したことじゃ、ありませんから」

 お兄様の隣にはドミニク様とノートル様がいる。イケメン3人に見られ、直視できなくなって私は目を逸らした。マリアンヌ自身も美少女だしこの環境が当たり前だった。本来のマリアンヌなら恥ずかしがるなんてことはないだろうが、私自身はそうではない。こんなにイケメンに囲まれてはやはり平気ではいられない。

「でもあのエイアール家の人には驚いたでしょう」
「あれはやはり、魅了の類の魔術だろうな」
「魅了って・・・」

 3人は深刻そうに話している。魅了の魔術が何かわからないが、全員人形のように「ジュリアサマハオウツクシイ」と言い続けるなんてどういう魔術なのだろう。

 実際にジュリア様はお美しいのか。マリアンヌの記憶だと髪は金髪で目は青く色白。となると綺麗なのかと思うのだが、実際の髪はクセが強いのかボサボサして艶もなく、目は細くつり上がっていてよく見たら瞳は青とわかる感じ。色白ではあるけど少し古びたコピー用紙のような色。

 美人の基準は時代や文化などで変わるし、この世界ではどうかわからない。しかし本当に魔術の力で自分は美しいと思わせようとしたのだろうか。だとしたらものすごくコンプレックスが強いと思う。マリアンヌが美少女すぎるせいか?

 しかしおかしな魔術を人にかけて問題にはならないのか。そんなことがまかり通ったら、犯罪し放題になってしまう。

「それで、マリアンヌ」

 お兄様は笑顔を浮かべているが、どこか不安定な印象を受けた。張り付いたような笑顔?

「エイアール家の人がおかしな行動をしないように見張ることになったからね。お兄様とノートルは屋敷にとどまることになったよ」
「よろしくお願いします、マリアンヌ様」

 頭を下げるノートル様の横ではドミニク様が険しい顔をしていた。

「どうして、俺はダメなんだ!城に戻れって」
「王族の方が泊られると警備が大変だからですよ」

 何を当たり前なことを、とお兄様がため息混じりに答える。

「嫌だ、俺だってマリアンヌ嬢とお泊まりしたい。ご飯食べたい」

 ドミニク様が駄々をこねている。えーと、この人お兄様より年上で王弟で騎士団の団長さんでとにかく立派な大人だよね。なんでこんな駄々こねてるの?

「マリアンヌ様とお泊まりって・・・。お言葉には気をつけてください」
「そうですよ、城には専属の調理人が控えているでしょう」
「でもマリアンヌ嬢のご飯の方が数百倍うまいんだ。お前らだけ美味しいご飯を食べようとしてるだろう」
「ご飯目当てじゃありませんよ。職務です。任務なんですから」
「じゃあ、ご飯抜きだからな。マリアンヌ嬢、2人にはご飯は出さなくていいからね」
「そんな命令ありませんよ!」

 この3人のやりとりはなんだろう。まるで小学生みたいな言い合い。仲がいいと言えばそれまでだが、アホらしい。聞いているのも面倒になり、私はキッチンに戻ることにした。キッチンの中でも3人の言い合いが聞こえてきたけど、無視することにしよう。

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