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休憩が終わり晩ごはんはどうしようか考えていたら、ようやくエイアール家の人たちが到着した。お父様もお兄様もいないので、ここは令嬢である私がお出迎えすべき。そう考えたので玄関に向かう。
そこにいたのは、おそらくエイアール家の使用人の方々であった。全員顔色も悪く目はうつろ。きちんと立てない人もいて、フラフラしている。ゾンビ・・・。申し訳ないけどそんな感じの人たちが玄関に佇んでいる。
その後から入ってきたのはベルナルト様。一緒にいる子どもがダニエル様だろう。クリクリした金髪の巻毛は宗教画で見たことがある天使のよう。そう、天使だ、私の心の中でリンゴーンという鐘の音が響いた。
ダニエル様は可愛らしい大きなおめめでこちらを見たが、すぐに兄のベルナルト様の後ろに隠れてしまった。その仕草も愛らしい。可愛いにも程がある。
そしてその後ろから男性に抱えられるように来られた女性。おそらくステファニー様であろう。ステファニー様は立っているのもやっとという様子。しかし品のある佇まい。さすがは侯爵家の奥方。青の婦人と呼ばれるだけはある、と感心する。でも顔色は青白いし、目には生気がない。本当に大変な思いをされたのだろう。
ステファニー様もこちらを見てくださったと思うのだが、突然立ち止まりそのまま微動だにしなくなった。こちらを見ていると思うのだが目は力がなく、こちらを向いているというのが正解のようだ。
「マリアンヌ様」
ステファニー様を支えていた男性が私に挨拶をした。マリアンヌの記憶で分かったが、この人はエイアール家の当主様である。ステファニー様の旦那様で、ベルナルト様とダニエル様のお父様である。確かお父様と歳は近かったはず。しかし今目の前にいるこの人はセバスチャンより年上に見える。つまり実年齢よりも20歳以上上に見えるのだ。
大臣という責務のせいかとも思ったが、お父様は宰相だから苦労は似たようなもの。おそらくはスタンピードで屋敷がなくなったことやスティラート家の攻撃が彼の苦労を倍増させたのではないかと思う。
「こちらの準備が遅れ申し訳ございませんでした。大変なご苦労をされたと聞いております。どうか私どもの屋敷でごゆっくりとおくつろぎください」
とりあえずはそんなことを言ってみた。ベルナルト様と次兄のフランツお兄様は友人であり、両家の関係もよかった。本来ならもっと早くに来てもらうべきであった。しかし我が家でも使用人が大量にいなくなってしまい、お母様とフランツお兄様は遠方に出かけ、お父様とレオポールお兄様は職務で不在になる、という状況で他家を招くということはできなかったのだ。
「そのお言葉・・・、ありがたく頂戴いたします」
エイアール様は涙ぐんでいる。
「セバスチャン、皆様をご案内して」
私がセバスチャンに言うと、控えていたセバスチャンが動き出した。とりあえず、今日はゆっくり部屋でくつろいでもらおう。今の様子を見るだけでも全員の様子は疲労困憊。復活できるのか心配である。
一同が歩き出したその時。
突然、ステファニー様が立ちどまった。するとダニエル様も使用人の方々も同じように立ち止まる。機械仕掛けの人形のようにステファニー様の首がぎこちなく動いた。全員の首も同じように動き、こちらを見ている。いや、全員の目はガラス玉のように何も映してはいない。
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
ステファニー様の何の感情もない言葉に他の人たちが追従する。
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
それは異様な光景だった。エイアール様もベルナルト様も言葉を失い、その光景を呆然と見ている。私も一緒に呆然とそれを見ていた。なんだこれ。ジュリア様って魔女?っていうか、これ、相当やばいでしょ。
私は急いでキッチンに行くとシルバーのお盆を手に戻った。まだ全員動かないまま「ジュリアサマハオウツクシイ」と言っている。私は思いっきりお盆を床に叩きつけた。
ガラガッシャーン!!!
ものすごい音がした。その勢いのおかげか、全員の声が止まった。まだ呆然としてはいるが、うつろだった目つきに変化が見られた。
「わ、わたくし、どうしたのでしょう?」
「兄様、こちらは・・・」
「旦那様?」
全員、なんとかまともになったようだ。良かった・・・。私は安堵したが、たった今見たものの薄気味悪さに背筋が凍る思いをしていた。
そこにいたのは、おそらくエイアール家の使用人の方々であった。全員顔色も悪く目はうつろ。きちんと立てない人もいて、フラフラしている。ゾンビ・・・。申し訳ないけどそんな感じの人たちが玄関に佇んでいる。
その後から入ってきたのはベルナルト様。一緒にいる子どもがダニエル様だろう。クリクリした金髪の巻毛は宗教画で見たことがある天使のよう。そう、天使だ、私の心の中でリンゴーンという鐘の音が響いた。
ダニエル様は可愛らしい大きなおめめでこちらを見たが、すぐに兄のベルナルト様の後ろに隠れてしまった。その仕草も愛らしい。可愛いにも程がある。
そしてその後ろから男性に抱えられるように来られた女性。おそらくステファニー様であろう。ステファニー様は立っているのもやっとという様子。しかし品のある佇まい。さすがは侯爵家の奥方。青の婦人と呼ばれるだけはある、と感心する。でも顔色は青白いし、目には生気がない。本当に大変な思いをされたのだろう。
ステファニー様もこちらを見てくださったと思うのだが、突然立ち止まりそのまま微動だにしなくなった。こちらを見ていると思うのだが目は力がなく、こちらを向いているというのが正解のようだ。
「マリアンヌ様」
ステファニー様を支えていた男性が私に挨拶をした。マリアンヌの記憶で分かったが、この人はエイアール家の当主様である。ステファニー様の旦那様で、ベルナルト様とダニエル様のお父様である。確かお父様と歳は近かったはず。しかし今目の前にいるこの人はセバスチャンより年上に見える。つまり実年齢よりも20歳以上上に見えるのだ。
大臣という責務のせいかとも思ったが、お父様は宰相だから苦労は似たようなもの。おそらくはスタンピードで屋敷がなくなったことやスティラート家の攻撃が彼の苦労を倍増させたのではないかと思う。
「こちらの準備が遅れ申し訳ございませんでした。大変なご苦労をされたと聞いております。どうか私どもの屋敷でごゆっくりとおくつろぎください」
とりあえずはそんなことを言ってみた。ベルナルト様と次兄のフランツお兄様は友人であり、両家の関係もよかった。本来ならもっと早くに来てもらうべきであった。しかし我が家でも使用人が大量にいなくなってしまい、お母様とフランツお兄様は遠方に出かけ、お父様とレオポールお兄様は職務で不在になる、という状況で他家を招くということはできなかったのだ。
「そのお言葉・・・、ありがたく頂戴いたします」
エイアール様は涙ぐんでいる。
「セバスチャン、皆様をご案内して」
私がセバスチャンに言うと、控えていたセバスチャンが動き出した。とりあえず、今日はゆっくり部屋でくつろいでもらおう。今の様子を見るだけでも全員の様子は疲労困憊。復活できるのか心配である。
一同が歩き出したその時。
突然、ステファニー様が立ちどまった。するとダニエル様も使用人の方々も同じように立ち止まる。機械仕掛けの人形のようにステファニー様の首がぎこちなく動いた。全員の首も同じように動き、こちらを見ている。いや、全員の目はガラス玉のように何も映してはいない。
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
ステファニー様の何の感情もない言葉に他の人たちが追従する。
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
「ジュリアサマハ、オウツクシイ」
それは異様な光景だった。エイアール様もベルナルト様も言葉を失い、その光景を呆然と見ている。私も一緒に呆然とそれを見ていた。なんだこれ。ジュリア様って魔女?っていうか、これ、相当やばいでしょ。
私は急いでキッチンに行くとシルバーのお盆を手に戻った。まだ全員動かないまま「ジュリアサマハオウツクシイ」と言っている。私は思いっきりお盆を床に叩きつけた。
ガラガッシャーン!!!
ものすごい音がした。その勢いのおかげか、全員の声が止まった。まだ呆然としてはいるが、うつろだった目つきに変化が見られた。
「わ、わたくし、どうしたのでしょう?」
「兄様、こちらは・・・」
「旦那様?」
全員、なんとかまともになったようだ。良かった・・・。私は安堵したが、たった今見たものの薄気味悪さに背筋が凍る思いをしていた。
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