美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

25

　なんとか議論を終わらせて、休憩時間は終わった。庭師の人たちも働き出す。それとなく彼らを見ていると、動きが休憩前と違いキビキビしているように思う。糖分を取ったせいかもしれない、と勝手に解釈する。

「それにしてもスティラート様のところとは違うよな」

　キッチンにいたらすぐそばで働いているのか、庭師の話が聞こえてきた。ここでもスティラート家か。一体どれだけ浸透しているのだろう。

「スティラートといえば。聞いたか、あの話」
「ああ、スティラートの使用人が大量に行方不明になったってやつだろ？」

　行方不明？彼らはみんなお城に避難したはず。何しろ100人近い人数だ。そんなに使用人がいたとしたらお給料は大変だったろうな。作業しながらだったので真剣には聞いていなかったが、それでも彼らの話は聞こえてくる。

「スタンピードが起きる前に使用人募集が盛大にあっただろう。俺の幼馴染が応募したんだ」
「は？公爵家の使用人になれるような幼馴染がお前にいたのか？」
「それが条件は無しで誰でもよかったらしい。幼馴染が屋敷に行ってすぐにスタンピードが起きちまって。幼馴染の嫁さんが必死に行方を探したんだけどわからずじまい。聞いたら同じようなやつがたくさんいるんだってさ」
「お城に避難したんだろう？」
「いや、お城が解放されて身内を探しに行けるようになっただろう？だから探しに行ったんだがいなかったんだ」

　なんだ、その話。100人近くいたら探すのが大変だろうし、幼馴染の方も探されていることに気づいていないだけじゃないか。もしくはこれを機に家族から離れたかったとか。冷たいようだけどそういうこともあるんじゃないか。そのうちに彼らの話も別の話題になっていったので、私も気にせず料理を続ける。

　お昼ご飯の時間になり、私は牛丼と共にキッチンから出てきた。マーサとメアリも待ってましたと出迎えてくれる。庭師の人たちの作業もずいぶん捗っているとセバスチャンから報告があった。休憩したせいか思った以上に捗ったらしい。話しながらだったけど、確かに見てみると庭は見違えるくらいに綺麗になっていた。

　用意してあるので牛丼を食べてもらう。これにも恐縮している。だが、これもきちんと働いてもらうため。彼らは喜んで牛丼を食べてくれた。子どもたちも嬉しそうに頬張っている。

　お昼が終わって少したったら、彼らの仕事は終わってしまったらしい。彼らは恐縮しつつ、それでもまた何かあれば声をかけてほしいと言っていた。

「お嬢様のおかげで助かりました」

　彼らは庭師専門ではなくいわば何でも屋で、力仕事など頼みたい時に便利なのだそうだ。スタンピードが起きてすぐに貴族以外の人たちは王都から逃げ出してしまった。王都はすぐに人の出入りは禁止になってしまったので、彼らのように働いてくれる人を探すのは相当困難だったらしい。

「私は何もしていないわ」
「いいえ、彼らにも料理を振る舞ってくださいました。彼らも気持ちよく働いてくれたし、また何かあれば二つ返事で来てくれるでしょう。ありがたいことですよ」

　そういうこともあるか。褒めてもらえて私は思わずニコニコしてしまう。そろそろエイアール様方が来られるかな。くつろいでもらえればいいけど。