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ようやく全員が出て行った。入れ替わりに庭師の人たちが来た。大人が3人に手伝いで子どもが2人いる。人手不足で子どもにも仕事をさせるしかないようだ。子どもたちはいずれも10歳以下。健気に働いてくれている。
こうなれば美味しい牛丼を作るしかない。牛丼の具を大量に作っておけば何かと便利である。私個人も牛丼は大好きなのだ。牛丼を作りながら、パウンドケーキとクッキーも大量に焼く。今日から午後にも休憩時間がある。他にもつまめるお菓子を用意しておこう。
夢中になって色々作っていた。そろそろ休憩時間だろうか。キッチンの外に出たらマーサがお茶の準備をしている。
「庭師の人たちも休憩してもらってね」
そう言ってケーキとクッキーを渡す。
「え?まだたいして働いていません」
「給金は頂いていますよ」
そんな声が聞こえてくる。だがそれとこれとは別だ。セバスチャンがこの家では休憩は当たり前のことだ、と説明している。何分か押し問答をした結果、庭師の人たちは休憩を受け入れてくれた。室内ではなく外の芝生の上に座っている。ピクニックみたいで楽しそうだ。
もしまた魔獣が来たら危ないから、という理由でマリアンヌは外に出してもらえない。それは敷地内の庭でもである。庭には花壇もあって綺麗なので本当は外に出たいと思っている。しかしお父様もお兄様も絶対に許してはくれない。過保護とは思うが、彼らの気持ちもわかるのでマリアンヌも言いつけを守っている。
「公爵家様で働けるだけでもありがたいのに」
「このお茶、うまいな」
「お菓子付きって、どうなってんだ?」
「おいしー」
この世界では使用人にお茶やお菓子は贅沢と言われるかもしれない。しかし、彼らも同じ人間だ。魔獣に襲われ怖い目にあったはずである。彼らの声を聞き、少しでも心が穏やかになれればいいなと思う。
「本当にお嬢様はお優しいですわ」
「ええ、アンも地獄から天国へ来られて幸せだと思います」
マーサとメアリの会話にセバスチャンが口を開く。
「我々のことまで気にかけてくださって」
3人は大きくうなづいた。
「エイアール家の使用人には、執事のトーマスがいます。トーマスは執事協会の理事ですし、セバスチャンほどではありませんが期待できる人材です」
執事協会なんて物があるのか。私は感心した。セバスチャンの代わりになれる人材ならお互い安心である。
「イトコのアンは裁縫が得意なんです。メイドオブザイヤーの裁縫部門に輝いたこともあります」
「私は給茶部門で殿堂入りを果たしましたけどね」
マーサが胸を張った。メイドオブザイヤーなんてあるのか。裁縫部門に給茶部門、他には何があるのだろう。とにかくうちの使用人はすごいことがわかった。
「裁縫が得意なら色々と作ってもらおうかな」
ワンピースとか作ってもらえないかな。飾りのあまりないシンプルなもの。袖が捲れるようならとても助かる。でも生地がないかも。
「大丈夫ですよ。洋服の生地でしたらストックしております。アンも喜びますよ。エイアール家では御令嬢がいらっしゃらないのでダニエル様のお洋服で我慢しておりましたから」
何を我慢していたかわからないが、あまり凝った服は困るのだ。しかしマーサとメアリは盛り上がり出した。
「あのピンクの生地で作ったらマリアンヌ様の愛らしさが引き立つわ」
「でもあの薄いブルーの生地、あれの方が理知的なイメージでぴったりと思うの」
「それで言ったら、紫の生地があったでしょう?高貴なところを前面で押し出したらどうかしら?」
うーん。こうなったら誰にも止められないのでは。何気なくセバスチャンを見ると、心なしか震えている。どうした?セバスチャン。
「静かに。2人とも」
厳しい言い方にマーサとメアリはすぐに黙った。
「お嬢様は白。白が一番お似合いです。地上に降りた天使のお嬢様は白が一番お似合いですよ」
白は汚れが目立つから料理には不向きなんだけど。言いたかったが言えなかった。3人が「マリアンヌお嬢様に一番似合う色は何か」という議論を始めたからである。公爵家の美少女令嬢ってみんなこんな苦労をしているのだろうか。
こうなれば美味しい牛丼を作るしかない。牛丼の具を大量に作っておけば何かと便利である。私個人も牛丼は大好きなのだ。牛丼を作りながら、パウンドケーキとクッキーも大量に焼く。今日から午後にも休憩時間がある。他にもつまめるお菓子を用意しておこう。
夢中になって色々作っていた。そろそろ休憩時間だろうか。キッチンの外に出たらマーサがお茶の準備をしている。
「庭師の人たちも休憩してもらってね」
そう言ってケーキとクッキーを渡す。
「え?まだたいして働いていません」
「給金は頂いていますよ」
そんな声が聞こえてくる。だがそれとこれとは別だ。セバスチャンがこの家では休憩は当たり前のことだ、と説明している。何分か押し問答をした結果、庭師の人たちは休憩を受け入れてくれた。室内ではなく外の芝生の上に座っている。ピクニックみたいで楽しそうだ。
もしまた魔獣が来たら危ないから、という理由でマリアンヌは外に出してもらえない。それは敷地内の庭でもである。庭には花壇もあって綺麗なので本当は外に出たいと思っている。しかしお父様もお兄様も絶対に許してはくれない。過保護とは思うが、彼らの気持ちもわかるのでマリアンヌも言いつけを守っている。
「公爵家様で働けるだけでもありがたいのに」
「このお茶、うまいな」
「お菓子付きって、どうなってんだ?」
「おいしー」
この世界では使用人にお茶やお菓子は贅沢と言われるかもしれない。しかし、彼らも同じ人間だ。魔獣に襲われ怖い目にあったはずである。彼らの声を聞き、少しでも心が穏やかになれればいいなと思う。
「本当にお嬢様はお優しいですわ」
「ええ、アンも地獄から天国へ来られて幸せだと思います」
マーサとメアリの会話にセバスチャンが口を開く。
「我々のことまで気にかけてくださって」
3人は大きくうなづいた。
「エイアール家の使用人には、執事のトーマスがいます。トーマスは執事協会の理事ですし、セバスチャンほどではありませんが期待できる人材です」
執事協会なんて物があるのか。私は感心した。セバスチャンの代わりになれる人材ならお互い安心である。
「イトコのアンは裁縫が得意なんです。メイドオブザイヤーの裁縫部門に輝いたこともあります」
「私は給茶部門で殿堂入りを果たしましたけどね」
マーサが胸を張った。メイドオブザイヤーなんてあるのか。裁縫部門に給茶部門、他には何があるのだろう。とにかくうちの使用人はすごいことがわかった。
「裁縫が得意なら色々と作ってもらおうかな」
ワンピースとか作ってもらえないかな。飾りのあまりないシンプルなもの。袖が捲れるようならとても助かる。でも生地がないかも。
「大丈夫ですよ。洋服の生地でしたらストックしております。アンも喜びますよ。エイアール家では御令嬢がいらっしゃらないのでダニエル様のお洋服で我慢しておりましたから」
何を我慢していたかわからないが、あまり凝った服は困るのだ。しかしマーサとメアリは盛り上がり出した。
「あのピンクの生地で作ったらマリアンヌ様の愛らしさが引き立つわ」
「でもあの薄いブルーの生地、あれの方が理知的なイメージでぴったりと思うの」
「それで言ったら、紫の生地があったでしょう?高貴なところを前面で押し出したらどうかしら?」
うーん。こうなったら誰にも止められないのでは。何気なくセバスチャンを見ると、心なしか震えている。どうした?セバスチャン。
「静かに。2人とも」
厳しい言い方にマーサとメアリはすぐに黙った。
「お嬢様は白。白が一番お似合いです。地上に降りた天使のお嬢様は白が一番お似合いですよ」
白は汚れが目立つから料理には不向きなんだけど。言いたかったが言えなかった。3人が「マリアンヌお嬢様に一番似合う色は何か」という議論を始めたからである。公爵家の美少女令嬢ってみんなこんな苦労をしているのだろうか。
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