美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 ようやく朝食が終わった。家族用のダイニングから出ると、ベルナルト様がいる。少し顔色も良くなったようだが、目が赤い。泣いたようである。見ると近くにいたライアンもマーサやメアリも目が赤い。

「マリアンヌ様!」

 ベルナルト様が私の前に来ると跪いた。

「今朝のお食事、大変美味しく頂戴いたしました。昨日も宰相様より加護をお分け頂いております。身に余る光栄。わたくしは未来永劫忠誠を誓う所存でございます」

 またか。と、私は申し訳ないが思ってしまった。彼らにとって私が作った料理を食べることは大変なことであると理解はした。だが、私からしたら単なる素人が趣味で作った料理である。ここまでありがたがってもらうことでもない。

「いえ、父の側で仕えてくださっているのですから。父の手助けをしてくださればそれで構いません」

 私は手を差し伸べた。さっさと立ち上がってほしかった。いくらマリアンヌが美少女で公爵家の令嬢だとしても、目の前で男性を跪かせてはおけなかった。住んでいた世界が違うのだから、こう言った事には慣れていない。

「なんと、寛大な!」
「やはり、お嬢様は女神ですから」

 あちこちから声が聞こえてきたが、もう気にしない。ベルナルト様が立ち上がり、お父様やお兄様が出かける支度をしていた。彼らが帰ったら庭師の人たちも来るだろうから、牛丼の準備をしなくては。

「エイアール家の方々は今大変な苦労をされておいでなのです」

 メアリがこっそり私に耳打ちをした。スタンピードでエイアール家の屋敷も破壊されて、今はお城に避難している。他の貴族の方々も避難をしているので、今お城内は避難した貴族たちでごった返しているらしい。

 幸い幾つも宮殿があるので、貴族の人たちは分散して生活している。エイアール家は迎賓城と呼ばれるところに住む事になった。エイアール家の侯爵は大臣なので職務でいないことが多い。奥様であるステファニー様とベルナルト様の弟で8歳のダニエル様、それに使用人の10人が避難した。

 迎賓城には他にスティラート家も避難している。スティラート家はスタンピードが発生したときに魔獣の通り道にされた。一番被害のあった屋敷である。使用人を含め100人近い大所帯が全員無傷で避難した。通常そんなに屋敷に人がいたと思えないし誰も怪我がないのは信じ難いことなのだが、被害者であるのは事実である。

 そして100人近い人々は全員遠慮することなく我が物顔に生活をしている。夜通し騒ぐこともあれば、朝早くから走り回ったり大声で話したりする。

 その上スティラート家のご令嬢のジュリア様がノックもしないでエイアール家の居住スペースに立ち入ってくるのだそうだ。その都度意見すると「うっかりしていただけ」「一緒に生活しているのだから家族同然」などと言い訳をする。

 さらにジュリア様はベルナルト様に「怖くて眠れないので添い寝をしてほしい」とか「ハグをしてほしい」など、とても15歳の令嬢とは思えないようなセクハラ発言をしてくる。それを断ると腹いせ目的なのかダニエル様に「お姫様抱っこして」と迫った。

 まだ子どものダニエル様では断れることもできず、しかし当然8歳の子にそんなことができるわけもないのにジュリア様は強引にやらせようとし、「貴族の男のくせに軟弱」「公爵家の令嬢に恥をかかせた」などと言い出したそうだ。

 その後もわざわざステファニー様とダニエル様を自室に呼び出して、食事をするところを立ったまま見せつけたりする。今はどこも満足に食事のできない状況をわかっているはずなのだが、スティラート家では100人も使用人がいるので調理人も何人かいるそうである。

 エイアール家は怯えて暮らしているそうで、ダニエル様は1人で寝ることができなくなった。

そんな話をベルナルト様は食事中ついつい話しだした。聞いてしまったマーサもメアリもライアンももらい泣きしてしまったそうなのだ。

「エイアール家のメイドには私のイトコのアンがいます。アンも怯えて暮らしていると思うと、私はマリアンヌ様の元で働けて本当に幸せで・・・」

 その後の言葉はメアリから出なかった。大きく泣き出してしまったからである。いつの間にか、近くにはお父様とお兄様がいた。2人とも沈痛な面持ちでメアリの様子を見守っている。

 昨夜、お兄様の部隊の人がスティラート家とは違う、と言った。このことを言っていたのか。

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