12 / 220
12
しおりを挟む
昼食も終わり、次は夕飯である。食材を見ていたら、鮭があった。一匹丸々の鮭である。夕飯は鮭のムニエルにして、鮭のおにぎりも作っておこう。鮭のフライでみんなの大好きなサンドイッチ(シャンドゥイッチもしくはチャンドルリッチ)を作ってもいい。
さっそく鮭をおろす。包丁もよく切れるし気分がいい。サクサクと仕事は進む。ムニエルにフライ、おにぎり用に塩を振って焼く。鮭はあっという間に色々な料理へと変貌した。
夢中になって料理をした。たくさん作って食べてもらおう。何だか楽しくて仕方がない。そのときふと閃いた。
地方から食材が自動的に届くようになっているなら、お城にいるお父様やお兄様へもできた料理を届けられないだろうか。二人は仕事が忙しくて家に戻れない。食事も満足にできないだろうから自分の作った料理を食べてもらえればいいなと思った。後でセバスチャンに聞いてみよう。
夕飯の時間になった。鮭のムニエルに野菜のソテー、キノコのポタージュ、そして朝焼いたパンがメニューである。
もう慣れてしまったが、3人は大きく目を見開いて料理の前に立っていた。朝からずっと料理を見るたびにこんな状態になっている。
「あぁ、神様」
マーサが跪いた。手を組んで口元に当て何か呟いている。
「お嬢様の加護のおこぼれを頂いてありがとうございます。願わくば、未来永劫いただきたいと思います」
聞こえた言葉に驚きもしたが、気にしないように心がける。この世界の人じゃなければ、絶対料理上手なキャラなのだが。
メアリは静かに椅子に座った。口元は微笑んでいる。こうやって見るとメアリは結構美人さんである。やはり公爵家に勤めるメイドである。上品な様子に私は安心した。
「早く食べさせてよ、マーサ。料理は逃げるかもしれないのよ」
しかし、小さな声でメアリが呟いているのを私は聞いてしまった。
「お腹空いてるのよ。さっさと食べましょうよ。年寄りはこれだから困るわ。人の気持ちに気が付かないんだから」
私に聞こえているのに気づいていないようで、メアリは呟き続けている。上品に微笑みながら。
目眩がしそうなのを堪え、セバスチャンを見る。彼は昼食の時に言っていた通り声に出したりはしなかった。しかし気味が悪いくらいに目をギラギラとさせていた。血を吸う寸前に見せるドラキュラの表情を何故だか思い出した。
食事は静かに進んだ。美味しいとか言ってほしかったのだが、彼らの表情を見たら十分だった。本当に幸せそうに食べてくれているのだ。
「美味しいですわぁ」
「こんなに美味しいお食事をいただけるなんて。幸せですぅ」
「これで明日も仕事に精を出せますね」
食後、3人は嬉しそうに語り合っている。なんにせよ、食事は大事だ。その姿を見ていたら、明日も頑張って作ろうと決意した。
さっそく鮭をおろす。包丁もよく切れるし気分がいい。サクサクと仕事は進む。ムニエルにフライ、おにぎり用に塩を振って焼く。鮭はあっという間に色々な料理へと変貌した。
夢中になって料理をした。たくさん作って食べてもらおう。何だか楽しくて仕方がない。そのときふと閃いた。
地方から食材が自動的に届くようになっているなら、お城にいるお父様やお兄様へもできた料理を届けられないだろうか。二人は仕事が忙しくて家に戻れない。食事も満足にできないだろうから自分の作った料理を食べてもらえればいいなと思った。後でセバスチャンに聞いてみよう。
夕飯の時間になった。鮭のムニエルに野菜のソテー、キノコのポタージュ、そして朝焼いたパンがメニューである。
もう慣れてしまったが、3人は大きく目を見開いて料理の前に立っていた。朝からずっと料理を見るたびにこんな状態になっている。
「あぁ、神様」
マーサが跪いた。手を組んで口元に当て何か呟いている。
「お嬢様の加護のおこぼれを頂いてありがとうございます。願わくば、未来永劫いただきたいと思います」
聞こえた言葉に驚きもしたが、気にしないように心がける。この世界の人じゃなければ、絶対料理上手なキャラなのだが。
メアリは静かに椅子に座った。口元は微笑んでいる。こうやって見るとメアリは結構美人さんである。やはり公爵家に勤めるメイドである。上品な様子に私は安心した。
「早く食べさせてよ、マーサ。料理は逃げるかもしれないのよ」
しかし、小さな声でメアリが呟いているのを私は聞いてしまった。
「お腹空いてるのよ。さっさと食べましょうよ。年寄りはこれだから困るわ。人の気持ちに気が付かないんだから」
私に聞こえているのに気づいていないようで、メアリは呟き続けている。上品に微笑みながら。
目眩がしそうなのを堪え、セバスチャンを見る。彼は昼食の時に言っていた通り声に出したりはしなかった。しかし気味が悪いくらいに目をギラギラとさせていた。血を吸う寸前に見せるドラキュラの表情を何故だか思い出した。
食事は静かに進んだ。美味しいとか言ってほしかったのだが、彼らの表情を見たら十分だった。本当に幸せそうに食べてくれているのだ。
「美味しいですわぁ」
「こんなに美味しいお食事をいただけるなんて。幸せですぅ」
「これで明日も仕事に精を出せますね」
食後、3人は嬉しそうに語り合っている。なんにせよ、食事は大事だ。その姿を見ていたら、明日も頑張って作ろうと決意した。
273
お気に入りに追加
1,074
あなたにおすすめの小説

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~
明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる