美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 休憩も終わり、3人は仕事に戻っていった。未練がましくケーキの乗っていた皿を見ていたが、おやつだけ食べて生活はできない。仕事をしてお腹を空かしてもらって、お昼ご飯を美味しく食べてもらおう。

 お米を研ぎ、食材を用意する。ここってびっくりするくらいに調味料が豊富なのだ。公爵家だからということもあるのだろうが、こんなに調味料が揃っているということは料理人の知識や能力は高かったということだ。どんな人が勤めていたのかわからないが、会ってみたかった。

 使用人のほとんどがスタンピードが起きたことによって行方不明になってしまった。そもそもスタンピードは何か。よくわかっていなかったがマリアンヌの記憶を思い返して真理子の想像や知識に置き換えてみたら、戦争とかであちこちで爆発が起きるなか大地震が起きた。そのくらいの出来事に思える。そんなことを想像してしまったら、恐怖を感じる。マリアンヌはセバスチャンやマーサ、メアリに守られた。それを思えば、せめて彼らには美味しいものを食べてもらいたい。

 サンタクロースもどきの袋に色々詰め込んでみる。袋の中で雑多になるのかと思えば、どうもきちんと分類されているように思える。適当に入れても、取り出すときは簡単に取り出せる。皿の上に大量のおにぎりを乗せ袋に入れてしばらくしてから取り出しても、おにぎりは入れた時と同じように皿の上に並んでいる。

 何度か色々試したのだが、結局仕組みを理解できないままだった。理解できないことを理解しようとしても無理だと悟り、考えるのを放棄した。私がやることは料理を作ることだ。

 こんなに大量の料理を作るのは初めてであるが、何故だか苦労なしにできている。不思議なことにまるでレシピを見ているように作業工程や分量がわかるのだ。これもよくわからないが、考えることを同じく放棄した。

 時計がないので時間がわからない。お腹の空き具合から、きっと昼くらいだろうと仮定して料理を用意する。親子丼、野菜たっぷりの味噌汁、大根の浅漬け。出来上がったものを見て満足だ。

 4人で昼ごはんを食べる。どう見てもこの世界は中世ヨーロッパ風に思える。が、彼らはお米を見ても抵抗感がないようだ。

「これは美味しそうですね」
「セガールもこんな感じのものを作っていたと思いますが」
「いや、あれはもっとベチャベチャした感じでしたわ」

 セガールとは前にいた料理人のことだ。マリアンヌの記憶では料理人がどんな人物かよくわかっていない。彼女は公爵令嬢だったので料理人と直接顔を合わせる機会がなかったのだ。

「ん、美味しいですぅ」

 メアリはうっとりと目を瞑り小さくつぶやいた。口に含んだお米の風味を何度も味わうかのように飲み込むまで時間をかけている。

「本当に・・・」

 マーサの目からは涙が浮かんでいる。それが静かに頬を流れていく。

「お嬢様・・・。わたくしはこちらで奉公できて幸せでございますぅ」

 まるで最後の食事かのような雰囲気に私はギョッとした。が、すぐにマーサは二口目を口に入れた。

「あぁ。この幸せはきっと明日への架け橋」
「休まず歩けば近づいてくるこの幸せ」
「もっと知りたいこの幸せの意味」

 一口食べるごとになんだか意味不明なことを言い出した。もう気にしないことにする。セバスチャンは流石に何も言わず、ただひたすら食べることに集中している。冷静沈着な執事に戻ってくれて何よりである。

「言葉にするなど軽々しいことはできませぬ。お嬢様のお料理は至福のひととき。神々の食事とはこのようなことを申すのでありましょう。声を出したらお嬢様のお作りになった料理が口から逃げ出すやもしれませんぬ。私めごときの口に入りとうないと拒否するかも」

 食べ終わったセバスチャンがそんなことを言い出した。マーサとメアリは、ハッとしたように顔を見合わせる。

「あぁ。確かにその通り」
「なんと私は浅はかなことを・・・」

 単純に、美味しいと言ってくれるだけでいいのだが、そんなわけにいかなくなったようだ。面倒くさいと思ってはいけない。夕飯も面倒になるが、気にしたら負けと思うことにした。

 
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