美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー

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 お父様とお兄様が出かけたので、家の中は静かになった。広すぎるお屋敷はなんだか必要以上に静まりかえっている。仕事でしばらくここには戻れないかもしれないと言っていた。帰ってきたら大量の料理でもてなして差し上げよう。

 セバスチャンやメアリ、マーサは仕事を始めた。これだけ広いお屋敷だから維持をするのは大変だ。私は一人、キッチンの中で色々見直している。取扱説明書なる本を見つけたのだ。

 そこにはコンロや冷蔵庫の使い方などが記されていたが、それはわかるので軽く読んで飛ばす。だが目を引いたのは、魔法によってそれらは動いているということだ。電気やガスではないということだが、やはり異世界というかびっくりである。

 食材は地方の契約した農家や商店から毎日届けられる。人が運ぶわけではなく、魔法によって時間が来たら冷蔵庫や貯蔵庫に収められるのだ。これが結構大量。公爵家の家族と使用人たちの分なので大量なのはわかるが、人がいなくなってもキャンセルされないというのもすごい話である。ついでに言えば今まで消費されてこなかった肉類などは大量に残っている。

 キッチンの隅にはサンタクロースが担いでいる袋みたいなものがあった。説明書によるとそこに入れたものは入れた時のまま永遠に保存されるそうである。つまり料理を作ってそこに入れたら永遠に出来立てほやほやのままだということだ。しかも無限に入れられるという。これは肉類は作り置きをして大量に詰めておくべきかもしれない。

 他にも何の変哲もない鍋つかみだが、これをつけるとどれだけ重いものも軽々と持てるらしい。寸胴で大量にスープを作っても軽々と持ち運べる。何だか魔法というより、未来のロボットが取り出す道具のような気がしてきた。

 そんなわけで、材料が見つかったのでクッキーとパウンドケーキを作る。昼ごはんはお米があるので親子丼にでもしようかと思う。食べるのは私とセバスチャン、メアリ、マーサである。

 セバスチャンとマーサは60代だろうか。お父様より年上の風貌。セバスチャンは白髪混じりのナイスイケオジという感じ。マーサもクッキーを焼きそうな感じに見える。実際には焼けないのだが。メアリは30代くらい?正直言えばマリアンヌの母と言ってもおかしくないと思える。

 この大人3人と私だけだから、親子丼にお味噌汁、大根を浅漬けにして出せばいいかな。和食は好きだし気持ちが燃える献立だ。おやつにクッキーとパウンドケーキを出せば優雅な公爵令嬢の出来上がり。楽しくって仕方ない。

 私はウキウキと鼻歌を歌いながら、準備を始めた。お米を多めに炊いておにぎりにしてサンタクロースの袋に入れておけばいいだろう。お味噌汁も寸胴で大量に作ればいざというときに役に立つ。非常時の炊き出しみたいだけど。

 つい昨日までやけ酒飲んでたのにな、と思うとよくわからないものだ。あのままあの世界で生きていたらどうなっていただろう。仕事は見つかっただろうか。行くあてがなくなって両親の住む実家に帰る羽目になったかな。少ししんみりしてしまったけど、ちょうどいいタイミングでクッキーとパウンドケーキが焼き上がった。おやつまで冷ましておこう。

 準備しながら思う。神の祝福なんかじゃなくて、やれば誰でもできるのにな。メアリは器用そうだから教えたらできると思うけど。でもキッチンには頑なに入らなかったし、入れなかったみたいなので無理じいはできない。とりあえず、料理をさせてもらってこの世界で暮らしていけたらいいなと思う。元の世界に戻っても32歳の独身の失業した地味な顔の女だし。
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