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1:脱線編
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テーブルの上には、ショートケーキと紅茶が二個ずつ置いてある。普通に考えればショートケーキ、紅茶、ショートケーキ、紅茶の順で頂くものである。しかし、嫁が家にいる事実を加味しなくてはいけない。
ショートケーキと紅茶の間で分割をするのか? でも、口直しに紅茶は外せないとなるとショートケーキ、紅茶一口、ショートケーキ、紅茶とすれば、嫁の紅茶を残してあげる事が出来る。しかも、ダイエット中の嫁にショートケーキの匂いを堪能して貰える。なんと素晴らしいアイデアだろうか!
「違います!!」
いきなり怒られた。何故だ? 口に出していないぞ。
「顔に書いてあります。悪い事を考えていると」
おかしい・・・・次から次へとなぜ分かるんだ? だいたい何を考えたって自由のはずだ。
「『内心の自由』は憲法でも保障されているんだ!」
決まったぜ。最近ネットで話題になっていたやつだ。これで今日は勝ったな、グーの音も出ずに悔しがっている嫁を横目にショートケーキを二つ美味しく頂けるぜ。なんせこの国で一番偉い法律だからな。
? 嫁が全然動じていない・・・・。
嫁は人差し指を鼻先に上げると横に振った。
「憲法第十九条で保障されているのは『良心の自由』なの、つまり『良い心』なの、分かる? 悪巧みの自由は保障されていないの」
そうなのか? すかさず検索を掛けると『良心の自由』となっている。
「確かに・・・・、迂闊だった。一番偉い法律に違反してしまった。逮捕されちゃうのか?」
嫁の視線が優しい。
「危なかったわね。次から気をつけなさい」
嫁の口元がモグモグ動いている。
「うん、ありがとう」
逮捕はされないみたいだ。安心しなかったと言えばウソだけど、何かを見落としている。なんだろう・・・
「あ、小説はどうなんだ? 犯罪シーンなんて悪巧みそのものだよ」
嫁はソーサーを持ち上げ紅茶の香りを楽しむと静かに一口飲んだ。そして、窓の外に視線を留めるともう一口飲んだ。嫁の周りだけリゾート地になっているのではと思うほどリラックスしている。それが逆に緊張感を高めている。
「安心していいわよ。憲法第二十一条で表現の自由は保障されているわ」
どう言う事なんだろう? 考えるのはいけないけど、表現するのは許されるのか?
「分かったよ! 狐狗狸さんで小説を書けば良いんだ。勝手に動いた十円玉の文字を記録すれば悪巧みする事なく犯罪シーンを書けるよね」
自分の書いている小説が見向きもされないのは凡人すぎるからだったとは。
「シャーロックホームズは・・・、英国だとコップでやっていた。なるほど、確かに素晴らしい推理小説のある国は狐狗狸さんと同じのがあった。そうだよね?」
嫁はモグモグしながら頷いている。
今日の嫁は優しい。高圧的な上から目線もない、平和が一番だよ。たまにおバカな事を言ってもそれは溢れる教養が生み出すユーモアだと、やっと理解してくれたのかな? 静かに頷いている姿もなかなか可愛い。
僕の視線に気がついた様だ。
「あ・・・・」
? 明らかに動揺しているのは何故だ。
「今、『あ』って言ったでしょ。何が『あ』なの?」
嫁はケーキを刺すと近づいてきた。
「あーーん」
パクリと食べた。普段スーパーで買っているショートケーキとは全然違う美味しさ。
「美味しい。凄く、美味しい」
嫁は満面の笑みを浮かべるとテーブルの上を片付けてくれた。
「あああ!」
気がついた時には、後の祭りだった。
ショートケーキと紅茶の間で分割をするのか? でも、口直しに紅茶は外せないとなるとショートケーキ、紅茶一口、ショートケーキ、紅茶とすれば、嫁の紅茶を残してあげる事が出来る。しかも、ダイエット中の嫁にショートケーキの匂いを堪能して貰える。なんと素晴らしいアイデアだろうか!
「違います!!」
いきなり怒られた。何故だ? 口に出していないぞ。
「顔に書いてあります。悪い事を考えていると」
おかしい・・・・次から次へとなぜ分かるんだ? だいたい何を考えたって自由のはずだ。
「『内心の自由』は憲法でも保障されているんだ!」
決まったぜ。最近ネットで話題になっていたやつだ。これで今日は勝ったな、グーの音も出ずに悔しがっている嫁を横目にショートケーキを二つ美味しく頂けるぜ。なんせこの国で一番偉い法律だからな。
? 嫁が全然動じていない・・・・。
嫁は人差し指を鼻先に上げると横に振った。
「憲法第十九条で保障されているのは『良心の自由』なの、つまり『良い心』なの、分かる? 悪巧みの自由は保障されていないの」
そうなのか? すかさず検索を掛けると『良心の自由』となっている。
「確かに・・・・、迂闊だった。一番偉い法律に違反してしまった。逮捕されちゃうのか?」
嫁の視線が優しい。
「危なかったわね。次から気をつけなさい」
嫁の口元がモグモグ動いている。
「うん、ありがとう」
逮捕はされないみたいだ。安心しなかったと言えばウソだけど、何かを見落としている。なんだろう・・・
「あ、小説はどうなんだ? 犯罪シーンなんて悪巧みそのものだよ」
嫁はソーサーを持ち上げ紅茶の香りを楽しむと静かに一口飲んだ。そして、窓の外に視線を留めるともう一口飲んだ。嫁の周りだけリゾート地になっているのではと思うほどリラックスしている。それが逆に緊張感を高めている。
「安心していいわよ。憲法第二十一条で表現の自由は保障されているわ」
どう言う事なんだろう? 考えるのはいけないけど、表現するのは許されるのか?
「分かったよ! 狐狗狸さんで小説を書けば良いんだ。勝手に動いた十円玉の文字を記録すれば悪巧みする事なく犯罪シーンを書けるよね」
自分の書いている小説が見向きもされないのは凡人すぎるからだったとは。
「シャーロックホームズは・・・、英国だとコップでやっていた。なるほど、確かに素晴らしい推理小説のある国は狐狗狸さんと同じのがあった。そうだよね?」
嫁はモグモグしながら頷いている。
今日の嫁は優しい。高圧的な上から目線もない、平和が一番だよ。たまにおバカな事を言ってもそれは溢れる教養が生み出すユーモアだと、やっと理解してくれたのかな? 静かに頷いている姿もなかなか可愛い。
僕の視線に気がついた様だ。
「あ・・・・」
? 明らかに動揺しているのは何故だ。
「今、『あ』って言ったでしょ。何が『あ』なの?」
嫁はケーキを刺すと近づいてきた。
「あーーん」
パクリと食べた。普段スーパーで買っているショートケーキとは全然違う美味しさ。
「美味しい。凄く、美味しい」
嫁は満面の笑みを浮かべるとテーブルの上を片付けてくれた。
「あああ!」
気がついた時には、後の祭りだった。
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