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1話~19話
15:「育児」 二分の一 成人式
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「とうちゃん、作文の宿題があるんだ」
夕飯の片づけが終わって、とうちゃんが風呂に入る前に捕まえる。一日に一回のチャンスだ。
「おまえの宿題だろ?」
逃げの態勢のとうちゃんに低姿勢かつ逃げ場を与えない様に言わなくてはいけない。
「生まれた時の事を両親に訊いて書かく様に先生に言われたんだ」
「産んでないよ」
面倒くさい全開のオーラが出ている。
「とうちゃん、お願いだから真面目に答えてくれよ」
低姿勢を崩したら負けだ。
「だってとうちゃん、男だもん。産めないよ」
ドヤ顔で言われても・・・・。
「産んでなくていいんだよ。産まれた時はどうだったの?」
生まれた時の事を思い出せたら聞かないよ・・・・。
「産婦人科のババアが『産婦人科に男は入っちゃいけない』とか言ってよ。知らないんだ。産婦人科のババアに聞くか?」
退院後の話で十分だけど、正論はとうちゃんを怒らせるだけだ・・・
「ババアなら、十年経って死んでるから訊けないよ」
「お! うまい事言うね。親の躾が良いからだね。で、何を知りたいの?」
今のうちだ!
「生まれた頃の事を教えてくれよ」
「おれも父親になるんだ。って思ったよ。ガッポリ稼がないとなぁ」
いつの間にか、発泡酒のカンを開け飲んでる・・・・。
「パチンコでも競馬でも分かるんだよ。『これだ!』ってね。一日で月給以上を稼いだ時もあったよ。それで分かったよ。天職は勝負師だってね」
脱線の予感がする・・・・
「生まれた時はいいよ。もう少し後の事教えてくれよ。作文書けないと居残りになるんだよ。夕飯作れなくなっちゃうよ」
とうちゃんの目が真剣になった。
「夕飯は大事だ。ちゃんとに作文書きなさい。もう少し後なら、おまえも覚えているだろ」
「うん」
「おれは風呂に入るから出るまでに終わらせるように」
結局、何も聞けなかった。
「とうちゃん書けたよ」
一読すると、ニヤリとする、とうちゃん。
「そんな事、書いちゃダメだろ。これもダメ。こっちもダメ。先生ドン引きしちゃうよ」
「そうなの?」
「おまえが入学する時に家族構成出してるの。かあちゃんと妹が出てこないとまずいだろ」
「かあちゃんって? 妹って?」
物心ついた時からとうちゃんと二人だと思っていた。
「そもそも、作文を分かっていないな。文を作るのが作文だ。本当の事を書いちゃいけないんだ。フィクションだ」
とうちゃんが、何か考えてる・・・・
「原稿用紙一枚分だな。おれが言うから書き写せ」
「分かった」
やっぱり、とうちゃんだよ。
「言うぞ」
「うん」
鉛筆を握りしめて待ち構える。
「僕の家は、三人で夕飯を食べてます。父は帰りが遅く出張も多いため一緒に食べる事が出来ないからです。夕飯は母の手作りで一汁三菜と言って僕と妹の健康を考えて毎日違ったご飯を作ってくれます。ハンバーグや餃子の時は僕も妹も手伝って作るので『我が家の手作り』だよと母は嬉しそうに言ってくれます。父も夕飯を一緒に食べたいと言っていますが社会人としての責任があるからと言って我慢しています。
父が家にいる時には、サッカーを教えてくれます。プロ選手になりたいと言ったら、喜んで『おまえなら出来る。頑張れ』って言ってくれました。
父とサッカーをした時にズボンに穴を開けてしまったら母さんが直してくれました。父が新しく買ったらと言いましたが、物を大切にする子に育てたいからと母が言いました。母さんの言う通りだと父が言っていました。
いつも僕と妹の事を考えてくれる母さん、家族の為に遅くまで頑張ってくれる父さんありがとう」
とうちゃんは満足そうに頷きながら、いつの間にか発泡酒を飲んでいる。
「これが普通なの?」
「そうだ」
ドヤ顔でとうちゃんがせまってくる。
「いいな・・・・」
夕飯の片づけが終わって、とうちゃんが風呂に入る前に捕まえる。一日に一回のチャンスだ。
「おまえの宿題だろ?」
逃げの態勢のとうちゃんに低姿勢かつ逃げ場を与えない様に言わなくてはいけない。
「生まれた時の事を両親に訊いて書かく様に先生に言われたんだ」
「産んでないよ」
面倒くさい全開のオーラが出ている。
「とうちゃん、お願いだから真面目に答えてくれよ」
低姿勢を崩したら負けだ。
「だってとうちゃん、男だもん。産めないよ」
ドヤ顔で言われても・・・・。
「産んでなくていいんだよ。産まれた時はどうだったの?」
生まれた時の事を思い出せたら聞かないよ・・・・。
「産婦人科のババアが『産婦人科に男は入っちゃいけない』とか言ってよ。知らないんだ。産婦人科のババアに聞くか?」
退院後の話で十分だけど、正論はとうちゃんを怒らせるだけだ・・・
「ババアなら、十年経って死んでるから訊けないよ」
「お! うまい事言うね。親の躾が良いからだね。で、何を知りたいの?」
今のうちだ!
「生まれた頃の事を教えてくれよ」
「おれも父親になるんだ。って思ったよ。ガッポリ稼がないとなぁ」
いつの間にか、発泡酒のカンを開け飲んでる・・・・。
「パチンコでも競馬でも分かるんだよ。『これだ!』ってね。一日で月給以上を稼いだ時もあったよ。それで分かったよ。天職は勝負師だってね」
脱線の予感がする・・・・
「生まれた時はいいよ。もう少し後の事教えてくれよ。作文書けないと居残りになるんだよ。夕飯作れなくなっちゃうよ」
とうちゃんの目が真剣になった。
「夕飯は大事だ。ちゃんとに作文書きなさい。もう少し後なら、おまえも覚えているだろ」
「うん」
「おれは風呂に入るから出るまでに終わらせるように」
結局、何も聞けなかった。
「とうちゃん書けたよ」
一読すると、ニヤリとする、とうちゃん。
「そんな事、書いちゃダメだろ。これもダメ。こっちもダメ。先生ドン引きしちゃうよ」
「そうなの?」
「おまえが入学する時に家族構成出してるの。かあちゃんと妹が出てこないとまずいだろ」
「かあちゃんって? 妹って?」
物心ついた時からとうちゃんと二人だと思っていた。
「そもそも、作文を分かっていないな。文を作るのが作文だ。本当の事を書いちゃいけないんだ。フィクションだ」
とうちゃんが、何か考えてる・・・・
「原稿用紙一枚分だな。おれが言うから書き写せ」
「分かった」
やっぱり、とうちゃんだよ。
「言うぞ」
「うん」
鉛筆を握りしめて待ち構える。
「僕の家は、三人で夕飯を食べてます。父は帰りが遅く出張も多いため一緒に食べる事が出来ないからです。夕飯は母の手作りで一汁三菜と言って僕と妹の健康を考えて毎日違ったご飯を作ってくれます。ハンバーグや餃子の時は僕も妹も手伝って作るので『我が家の手作り』だよと母は嬉しそうに言ってくれます。父も夕飯を一緒に食べたいと言っていますが社会人としての責任があるからと言って我慢しています。
父が家にいる時には、サッカーを教えてくれます。プロ選手になりたいと言ったら、喜んで『おまえなら出来る。頑張れ』って言ってくれました。
父とサッカーをした時にズボンに穴を開けてしまったら母さんが直してくれました。父が新しく買ったらと言いましたが、物を大切にする子に育てたいからと母が言いました。母さんの言う通りだと父が言っていました。
いつも僕と妹の事を考えてくれる母さん、家族の為に遅くまで頑張ってくれる父さんありがとう」
とうちゃんは満足そうに頷きながら、いつの間にか発泡酒を飲んでいる。
「これが普通なの?」
「そうだ」
ドヤ顔でとうちゃんがせまってくる。
「いいな・・・・」
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