時空モノガタリ

風宮 秤

文字の大きさ
上 下
7 / 62
1話~19話

7:「正義」 主文、死刑。

しおりを挟む
 待合席の並ぶ廊下の先に、最高裁判所の第十五小法廷がある。法廷内には五人の裁判官席と検察官席、弁護人席、被告人席、法廷警備員席、あとはネットでライブ配信する為の据え付けのカメラだけである。
 最高裁判所は、十五人の裁判官が起訴内容により五人若しくは十五人による合議によって判決を下す裁判所であり、ここでの判決により刑が確定する。上告される事はない。

 今日も類似裁判を七件も処理している。あと、二件。あと、二件で今日の処理が終わる。あと、二件。


裁判官 ガベルを一打、「開廷」
裁判官「被告、人畜無害は起訴状の氏名、住所などで間違いない事を認めますね」
 被告人は、極度の緊張状態のまま言葉が出なかった。
検察官「被告人は、四月六日にテロ等準備罪の要件を満たす事が判明した」
裁判官「被告人には、黙秘権があります。起訴事項に間違いないですね」
被告人「全面的に否定します」
検察官「ふっ・・」
検察官「被告、人畜無害は、収集症候群を発病。執着心症候群を発病しております。また、遺伝子情報により、付きまとい症候群を発病する可能性八十パーセント。婦女子及び幼女に発情する可能性九十パーセント。過去の犯罪者の遺伝子情報を基に算出すると、百パーセントの確率でレイプ事件に発展します。これは、テロ等準備罪に該当する犯罪にあたります。よって死刑に処すのが相当です」
裁判官「弁護人、意見はありますか」
弁護人「被告と同じ遺伝特性を持っていても犯罪をしていない者は沢山います。また、行動に兆候が表れていない者を裁く事は許されません」
裁判官「検察官、意見はありますか」
検察官「被告のパソコンには、幼女を含むキャラの二次創作画像が保存されており作品中では見せる事のない卑猥なポーズが多数含まれていました。これは著作権法違反になります。幼女に卑猥なポーズを取らせるのは児童福祉法違反及び児童ポルノ法違反になります。これら全てテロ等準備罪に該当する犯罪行為です」
裁判官「弁護人、意見はありますか」
弁護人「それらの行為がテロ活動に繋がる証拠が示されていません」
検察官「被告人は数々の卑猥なポーズを画像投稿サイトなどに投稿して『いいね』を通じて賛同者を集めております。また、賛同者が投稿した画像に対して『嫁にしたい』などのコメントを付け組織の強化を図っております。それと同時に、『嫁にしたい』のコメントには性行為を内包した発言に当たり性行為を抑えきれない衝動の表れに当たります。また、被告人はキャリア官僚を多く輩出する初等部中等部の近くに必然性なく住居を移しております。この学校にはキャリア官僚の子息も通う所であります。卑猥な画像に精神汚染された輩が現実の行為に及んだ時、国家の中枢を担う人材への破壊活動になり、国家運営に支障をきたし国民生活の重大な脅威になります。これはテロ行為そのものになります」
弁護人「被告人には、特異な趣味があるものの現在に至るまで、実際に行為には及んでおりません。今後もないと推察可能です」
検察官「被告人はテロ等準備罪の要件を十分に満たしております」
裁判官「被告人、最後に述べる事があったら手短に言う様に」
被告人「そんな犯罪行為考えた事もない。だいたい小法廷の裁判官は五人だろ。周りのペッパーはなんだよ」
検察官「被告人が犯罪行為を考えていた物証は既に述べた通りです。虚偽罪を追加求刑します」
裁判官「検察官、私の発言を遮らない様に。次にあったら退廷を命じます」
裁判官「周りの裁判官はペッパーではありません、テレワーキングです。我々の人権は、憲法により守られています」
被告人「裁判所に来ないで、何やってんだ」
裁判官「答える必要はありません。個人情報保護法で守られている権利です」
裁判官 ガベルを一打。
裁判官「判決、被告人は死刑。事実及び理由は検察官の主張の通り、以下略」
 暴れ狂う被告人を両側から抑え込んだ法廷警備員は、いつもの通り出口から連れ出して行った。
裁判官 ガベルを一打、「閉廷」
裁判官「次の被告、速やかに入廷する様に」


注意:これはフィクションであり、一般人が当該法律の対象になる事はありません。しかし、一般人、組織の適用要件は警察庁の判断に依るところです。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

TANPEN 博物館

モア神
恋愛
本日はご来場頂き誠にありがとうございます。ここでは、いろいろなジャンルの短編小説を紹介しております。 [フロア紹介] 1階 気持ち悪い短編小説 2階 恋愛短編小説 3階 変な短編小説 4階 ホラー短編小説 5階 論説文・エッセイ短編小説(ただいま準備中です) 6階 サスペンス短編小説(ただいま準備中です) 7階 下品短編小説(ただいま準備中です) [当館の注意点] ①本当に気持ち悪い短編小説も混じっているので、ご覧になるさいには十分に気をつける事。(本当に気持ち悪いやつは気持ち悪いです) ②気持ち悪い事は伝えているのでコンテンツ報告をしない事。(したくなるかもしれませんが、見るのは自己責任でお願いします!) ③短編小説の構成などはあまり考えずに行っているので優しい目で見ること。(あまり考えていなくてごめんなさい) ④変な物語では本当に理解の出来ない、意味不明な物語も出てくる事もありますので気を付ける事。 [館長のおすすめ作品] ※作者がおすすめを紹介するコーナーです。面白いと思うので、ぜひご覧になってください。 1.私のストーカー →最後に注目!!意外な結末になると思います。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

狗神巡礼ものがたり

唄うたい
ライト文芸
「早苗さん、これだけは信じていて。 俺達は“何があっても貴女を護る”。」 ーーー 「犬居家」は先祖代々続く風習として 守り神である「狗神様」に 十年に一度、生贄を献げてきました。 犬居家の血を引きながら 女中として冷遇されていた娘・早苗は、 本家の娘の身代わりとして 狗神様への生贄に選ばれます。 早苗の前に現れた山犬の神使・仁雷と義嵐は、 生贄の試練として、 三つの聖地を巡礼するよう命じます。 早苗は神使達に導かれるまま、 狗神様の守る広い山々を巡る 旅に出ることとなりました。 ●他サイトでも公開しています。

サドガシマ作戦、2025年初冬、ロシア共和国は突如として佐渡ヶ島に侵攻した。

セキトネリ
ライト文芸
2025年初冬、ウクライナ戦役が膠着状態の中、ロシア連邦東部軍管区(旧極東軍管区)は突如北海道北部と佐渡ヶ島に侵攻。総責任者は東部軍管区ジトコ大将だった。北海道はダミーで狙いは佐渡ヶ島のガメラレーダーであった。これは中国の南西諸島侵攻と台湾侵攻を援助するための密約のためだった。同時に北朝鮮は38度線を越え、ソウルを占拠した。在韓米軍に対しては戦術核の電磁パルス攻撃で米軍を朝鮮半島から駆逐、日本に退避させた。 その中、欧州ロシアに対して、東部軍管区ジトコ大将はロシア連邦からの離脱を決断、中央軍管区と図ってオビ川以東の領土を東ロシア共和国として独立を宣言、日本との相互安保条約を結んだ。 佐渡ヶ島侵攻(通称サドガシマ作戦、Operation Sadogashima)の副指揮官はジトコ大将の娘エレーナ少佐だ。エレーナ少佐率いる東ロシア共和国軍女性部隊二千人は、北朝鮮のホバークラフトによる上陸作戦を陸自水陸機動団と阻止する。 ※このシリーズはカクヨム版「サドガシマ作戦(https://kakuyomu.jp/works/16818093092605918428)」と重複しています。ただし、カクヨムではできない説明用の軍事地図、武器詳細はこちらで掲載しております。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

処理中です...