5 / 62
1話~19話
5:「浦島太郎」 浦島太郎の怨返し
しおりを挟む
竜宮城での三日三晩の宴を終え村に戻った太郎は、乙姫から貰った玉手箱を脇に抱え亀に告げた。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
お互いに深々とお辞儀をすると、太郎は沖合に消えていく亀の姿を見送った。
「家に戻るか。三日も留守にしてしまったから、さぞ驚く事だろう。でも、土産を貰っているから大丈夫だ」
松林を抜けた先にある家に向かった。のだが・・・・、松の木肌が随分と赤い、黒松なのに。家がある筈の場所に辿り着いても、見渡す限り田んぼが広がっている。
! おかしい。
田んぼの横で休んでいる男に聞いてみる。
「ここは、浦島村ではありませんか?」
男は怪訝そうにこちらを向くと、
「確かに、浦嶋村だ」
「あの辺に、私の家があった筈ですが知りませんか?」
「何を言っている。この辺一帯庄屋様の田んぼだ。家なんぞ、ずーっと昔からあるはずがなかろ」
男は、あからさまに怪しい者を見る目つきになっている。
「私は、浦島村の太郎と言います。私を知りませんか」
「確かにここは浦嶋村だが、太助はいても太郎は知らん。仕事の邪魔だ、向こうに行け」
男は鋤を振り回すと太郎を追い払ってしまった。
「なんて事だ。私の知っている浦島村とは変わってしまった。家が無くなって田んぼになっているとは、そんなに年月が過ぎているのか? 海の中の竜宮城に行って来たのだから不思議な事が起きたのかも知れない」
太郎は今日の宿も、今日の飯の当てもない。如何したものか?いくら考えても埒が明かなかった。
!
「そうだ。困った事があったら開けなさいと言われた玉手箱」
横に置いたはずの玉手箱が無くなっている・・・・。何処を見ても何処を探しても無い。遠くで子供たちが遊んでいるだけだった。
「なんて事だ。乙姫さんから貰った玉手箱を盗まれてしまった」
頼みの綱が切れてしまった。
そして、太郎は村はずれの小屋に住み着き、魚を獲って細々と生活をする様になった。シケの日が続くと、食べ物が底をつき、大漁の時は子供が盗みに来た。
その割に、村で何かがあると最初に太郎が疑われた。行く当てのない太郎は耐え忍ぶしかなかった。魚を盗られても石を投げつけられても、小屋があるだけマシ。魚を獲れるだけマシだったからだ。
そんな生活が続いたある日。村のガキどもが、何かモノに石を投げたり棒で叩いたりしていた。よく見ると、かつて助けた亀が虐められているではないか。
全ては、この亀を助けた事が間違いだった。
「なにが、お礼の宴だ」
「なにが、家まで送ります。だ!」
太郎の全身に怒りが込み上げていた。ガキの一人から棒を取り上げると、ガキどもを払いのけた。
「これは、俺のだ。お前ら失せろ」
太郎の一括に、ガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「これは、どこのどなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございます。つきましては、お礼に竜宮城にお連れ致したいと思います」
やつれはてた太郎に気が付かずにいる亀だった。
「竜宮城なぞ興味はない。俺は亀鍋を食べたいだけだ」
裏返しにされている亀は足をバタつかせながら、でも冷静を装いつつ、
「私の肉には毒があります。食べたら死にますよ」
太郎は棒で亀を小突きながら、ニヤリとすると、
「そんな事、俺は知っている。だから村人に振る舞うのさ。この村には世話になったからな」
亀の首に縄をかけ、小屋まで引きずって行った。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
お互いに深々とお辞儀をすると、太郎は沖合に消えていく亀の姿を見送った。
「家に戻るか。三日も留守にしてしまったから、さぞ驚く事だろう。でも、土産を貰っているから大丈夫だ」
松林を抜けた先にある家に向かった。のだが・・・・、松の木肌が随分と赤い、黒松なのに。家がある筈の場所に辿り着いても、見渡す限り田んぼが広がっている。
! おかしい。
田んぼの横で休んでいる男に聞いてみる。
「ここは、浦島村ではありませんか?」
男は怪訝そうにこちらを向くと、
「確かに、浦嶋村だ」
「あの辺に、私の家があった筈ですが知りませんか?」
「何を言っている。この辺一帯庄屋様の田んぼだ。家なんぞ、ずーっと昔からあるはずがなかろ」
男は、あからさまに怪しい者を見る目つきになっている。
「私は、浦島村の太郎と言います。私を知りませんか」
「確かにここは浦嶋村だが、太助はいても太郎は知らん。仕事の邪魔だ、向こうに行け」
男は鋤を振り回すと太郎を追い払ってしまった。
「なんて事だ。私の知っている浦島村とは変わってしまった。家が無くなって田んぼになっているとは、そんなに年月が過ぎているのか? 海の中の竜宮城に行って来たのだから不思議な事が起きたのかも知れない」
太郎は今日の宿も、今日の飯の当てもない。如何したものか?いくら考えても埒が明かなかった。
!
「そうだ。困った事があったら開けなさいと言われた玉手箱」
横に置いたはずの玉手箱が無くなっている・・・・。何処を見ても何処を探しても無い。遠くで子供たちが遊んでいるだけだった。
「なんて事だ。乙姫さんから貰った玉手箱を盗まれてしまった」
頼みの綱が切れてしまった。
そして、太郎は村はずれの小屋に住み着き、魚を獲って細々と生活をする様になった。シケの日が続くと、食べ物が底をつき、大漁の時は子供が盗みに来た。
その割に、村で何かがあると最初に太郎が疑われた。行く当てのない太郎は耐え忍ぶしかなかった。魚を盗られても石を投げつけられても、小屋があるだけマシ。魚を獲れるだけマシだったからだ。
そんな生活が続いたある日。村のガキどもが、何かモノに石を投げたり棒で叩いたりしていた。よく見ると、かつて助けた亀が虐められているではないか。
全ては、この亀を助けた事が間違いだった。
「なにが、お礼の宴だ」
「なにが、家まで送ります。だ!」
太郎の全身に怒りが込み上げていた。ガキの一人から棒を取り上げると、ガキどもを払いのけた。
「これは、俺のだ。お前ら失せろ」
太郎の一括に、ガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「これは、どこのどなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございます。つきましては、お礼に竜宮城にお連れ致したいと思います」
やつれはてた太郎に気が付かずにいる亀だった。
「竜宮城なぞ興味はない。俺は亀鍋を食べたいだけだ」
裏返しにされている亀は足をバタつかせながら、でも冷静を装いつつ、
「私の肉には毒があります。食べたら死にますよ」
太郎は棒で亀を小突きながら、ニヤリとすると、
「そんな事、俺は知っている。だから村人に振る舞うのさ。この村には世話になったからな」
亀の首に縄をかけ、小屋まで引きずって行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
TANPEN 博物館
モア神
恋愛
本日はご来場頂き誠にありがとうございます。ここでは、いろいろなジャンルの短編小説を紹介しております。
[フロア紹介]
1階 気持ち悪い短編小説
2階 恋愛短編小説
3階 変な短編小説
4階 ホラー短編小説
5階 論説文・エッセイ短編小説(ただいま準備中です)
6階 サスペンス短編小説(ただいま準備中です)
7階 下品短編小説(ただいま準備中です)
[当館の注意点]
①本当に気持ち悪い短編小説も混じっているので、ご覧になるさいには十分に気をつける事。(本当に気持ち悪いやつは気持ち悪いです)
②気持ち悪い事は伝えているのでコンテンツ報告をしない事。(したくなるかもしれませんが、見るのは自己責任でお願いします!)
③短編小説の構成などはあまり考えずに行っているので優しい目で見ること。(あまり考えていなくてごめんなさい)
④変な物語では本当に理解の出来ない、意味不明な物語も出てくる事もありますので気を付ける事。
[館長のおすすめ作品]
※作者がおすすめを紹介するコーナーです。面白いと思うので、ぜひご覧になってください。
1.私のストーカー
→最後に注目!!意外な結末になると思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日はパンティー日和♡
ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨
おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
拡張現実におおわれた世界で
プラ
ライト文芸
生涯、拡張現実(AR)世界で生きていくことが当たり前になった世界。
人々は現実拡張デバイスCAREを1日中装着しており、物心ついた頃から現実世界を見たことがない。
そんな世界をCAREによって作られた嘘で覆われていると嫌っている主人公の修一。
もちろん、学校生活も上手くなじめるわけもなく、悶々とした日々を過ごしていた。
しかし、ある日、拡張現実に覆われた世界では、決して書けるはずのない内容のメッセージがノートに書かれていて、人生は大きく変わっていく。
完結済
月の女神と夜の女王
海獺屋ぼの
ライト文芸
北関東のとある地方都市に住む双子の姉妹の物語。
妹の月姫(ルナ)は父親が経営するコンビニでアルバイトしながら高校に通っていた。彼女は双子の姉に対する強いコンプレックスがあり、それを払拭することがどうしてもできなかった。あるとき、月姫(ルナ)はある兄妹と出会うのだが……。
姉の裏月(ヘカテー)は実家を飛び出してバンド活動に明け暮れていた。クセの強いバンドメンバー、クリスチャンの友人、退学した高校の悪友。そんな個性が強すぎる面々と絡んでいく。ある日彼女のバンド活動にも転機が訪れた……。
月姫(ルナ)と裏月(ヘカテー)の姉妹の物語が各章ごとに交錯し、ある結末へと向かう。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる