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1話~19話
5:「浦島太郎」 浦島太郎の怨返し
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竜宮城での三日三晩の宴を終え村に戻った太郎は、乙姫から貰った玉手箱を脇に抱え亀に告げた。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
お互いに深々とお辞儀をすると、太郎は沖合に消えていく亀の姿を見送った。
「家に戻るか。三日も留守にしてしまったから、さぞ驚く事だろう。でも、土産を貰っているから大丈夫だ」
松林を抜けた先にある家に向かった。のだが・・・・、松の木肌が随分と赤い、黒松なのに。家がある筈の場所に辿り着いても、見渡す限り田んぼが広がっている。
! おかしい。
田んぼの横で休んでいる男に聞いてみる。
「ここは、浦島村ではありませんか?」
男は怪訝そうにこちらを向くと、
「確かに、浦嶋村だ」
「あの辺に、私の家があった筈ですが知りませんか?」
「何を言っている。この辺一帯庄屋様の田んぼだ。家なんぞ、ずーっと昔からあるはずがなかろ」
男は、あからさまに怪しい者を見る目つきになっている。
「私は、浦島村の太郎と言います。私を知りませんか」
「確かにここは浦嶋村だが、太助はいても太郎は知らん。仕事の邪魔だ、向こうに行け」
男は鋤を振り回すと太郎を追い払ってしまった。
「なんて事だ。私の知っている浦島村とは変わってしまった。家が無くなって田んぼになっているとは、そんなに年月が過ぎているのか? 海の中の竜宮城に行って来たのだから不思議な事が起きたのかも知れない」
太郎は今日の宿も、今日の飯の当てもない。如何したものか?いくら考えても埒が明かなかった。
!
「そうだ。困った事があったら開けなさいと言われた玉手箱」
横に置いたはずの玉手箱が無くなっている・・・・。何処を見ても何処を探しても無い。遠くで子供たちが遊んでいるだけだった。
「なんて事だ。乙姫さんから貰った玉手箱を盗まれてしまった」
頼みの綱が切れてしまった。
そして、太郎は村はずれの小屋に住み着き、魚を獲って細々と生活をする様になった。シケの日が続くと、食べ物が底をつき、大漁の時は子供が盗みに来た。
その割に、村で何かがあると最初に太郎が疑われた。行く当てのない太郎は耐え忍ぶしかなかった。魚を盗られても石を投げつけられても、小屋があるだけマシ。魚を獲れるだけマシだったからだ。
そんな生活が続いたある日。村のガキどもが、何かモノに石を投げたり棒で叩いたりしていた。よく見ると、かつて助けた亀が虐められているではないか。
全ては、この亀を助けた事が間違いだった。
「なにが、お礼の宴だ」
「なにが、家まで送ります。だ!」
太郎の全身に怒りが込み上げていた。ガキの一人から棒を取り上げると、ガキどもを払いのけた。
「これは、俺のだ。お前ら失せろ」
太郎の一括に、ガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「これは、どこのどなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございます。つきましては、お礼に竜宮城にお連れ致したいと思います」
やつれはてた太郎に気が付かずにいる亀だった。
「竜宮城なぞ興味はない。俺は亀鍋を食べたいだけだ」
裏返しにされている亀は足をバタつかせながら、でも冷静を装いつつ、
「私の肉には毒があります。食べたら死にますよ」
太郎は棒で亀を小突きながら、ニヤリとすると、
「そんな事、俺は知っている。だから村人に振る舞うのさ。この村には世話になったからな」
亀の首に縄をかけ、小屋まで引きずって行った。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
お互いに深々とお辞儀をすると、太郎は沖合に消えていく亀の姿を見送った。
「家に戻るか。三日も留守にしてしまったから、さぞ驚く事だろう。でも、土産を貰っているから大丈夫だ」
松林を抜けた先にある家に向かった。のだが・・・・、松の木肌が随分と赤い、黒松なのに。家がある筈の場所に辿り着いても、見渡す限り田んぼが広がっている。
! おかしい。
田んぼの横で休んでいる男に聞いてみる。
「ここは、浦島村ではありませんか?」
男は怪訝そうにこちらを向くと、
「確かに、浦嶋村だ」
「あの辺に、私の家があった筈ですが知りませんか?」
「何を言っている。この辺一帯庄屋様の田んぼだ。家なんぞ、ずーっと昔からあるはずがなかろ」
男は、あからさまに怪しい者を見る目つきになっている。
「私は、浦島村の太郎と言います。私を知りませんか」
「確かにここは浦嶋村だが、太助はいても太郎は知らん。仕事の邪魔だ、向こうに行け」
男は鋤を振り回すと太郎を追い払ってしまった。
「なんて事だ。私の知っている浦島村とは変わってしまった。家が無くなって田んぼになっているとは、そんなに年月が過ぎているのか? 海の中の竜宮城に行って来たのだから不思議な事が起きたのかも知れない」
太郎は今日の宿も、今日の飯の当てもない。如何したものか?いくら考えても埒が明かなかった。
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「そうだ。困った事があったら開けなさいと言われた玉手箱」
横に置いたはずの玉手箱が無くなっている・・・・。何処を見ても何処を探しても無い。遠くで子供たちが遊んでいるだけだった。
「なんて事だ。乙姫さんから貰った玉手箱を盗まれてしまった」
頼みの綱が切れてしまった。
そして、太郎は村はずれの小屋に住み着き、魚を獲って細々と生活をする様になった。シケの日が続くと、食べ物が底をつき、大漁の時は子供が盗みに来た。
その割に、村で何かがあると最初に太郎が疑われた。行く当てのない太郎は耐え忍ぶしかなかった。魚を盗られても石を投げつけられても、小屋があるだけマシ。魚を獲れるだけマシだったからだ。
そんな生活が続いたある日。村のガキどもが、何かモノに石を投げたり棒で叩いたりしていた。よく見ると、かつて助けた亀が虐められているではないか。
全ては、この亀を助けた事が間違いだった。
「なにが、お礼の宴だ」
「なにが、家まで送ります。だ!」
太郎の全身に怒りが込み上げていた。ガキの一人から棒を取り上げると、ガキどもを払いのけた。
「これは、俺のだ。お前ら失せろ」
太郎の一括に、ガキどもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「これは、どこのどなたか存じませんが、助けて頂きありがとうございます。つきましては、お礼に竜宮城にお連れ致したいと思います」
やつれはてた太郎に気が付かずにいる亀だった。
「竜宮城なぞ興味はない。俺は亀鍋を食べたいだけだ」
裏返しにされている亀は足をバタつかせながら、でも冷静を装いつつ、
「私の肉には毒があります。食べたら死にますよ」
太郎は棒で亀を小突きながら、ニヤリとすると、
「そんな事、俺は知っている。だから村人に振る舞うのさ。この村には世話になったからな」
亀の首に縄をかけ、小屋まで引きずって行った。
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