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1話~19話
2:「都市伝説」 真っ白な羽根
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「お嬢ちゃん、学校はどうした。ここの住人じゃないだろ? 勝手に入って来ちゃだめだ。直ぐに帰りなさい」
うちのマンションはエントランスがオートロックになっている。それなのに、見覚えのないのが入り込む時がある。
自殺者が出ると資産価値が落ちるとクレームが来るから、
『知らない人を一緒に入れない。管理組合より』
と貼り紙している。その上パトロールまでしろとは、役員を外れた奴は言いたい放題だ。
「お嬢ちゃん、そこは危ないから降りなさい」
近くの中学校の制服。八階の廊下の柵に座って、足をぶらぶらしている。飛び降りそうには見えないけど、『危ない』奴には間違いない。パトロール中にこんなの見つけてしまうとは。
「夕日を 見ているの」
?
「三時にもなっていない。分からんこと言ってないで降りなさい」
それに、北側の廊下で陽射しが入る筈がない。
!
真っ赤な夕日に照らされて、真砂子の横顔・・・・、お嬢ちゃんは?
「あなた、どうしたの? そんなにマジマジと見られると恥ずかしいわ」
「あ、ごめん」
堤防に腰かけて、私の隣には真砂子。一緒に夕日を眺めている。
「あなたと、一緒に夕日を見るなんて何年ぶりかしら 覚えている?」
「覚えているよ。あの頃は若かったよ」
真砂子の柔らかくて暖かい手の感触が伝わってくる。そして、優しく握ると、少し俯いて赤める横顔が、愛おしい。
真っ白なビキニに、赤く染まる肌。真砂子は立ち上がると、僕の手を引きながら、
「ほら、一緒に泳ぎましょう」
子供の様に急かす真砂子が、愛らしい。
「この柵、越えられないよ」
「やだ、お爺ちゃんみたいな事を言って。ほら、引っ張ってあげる」
身体が軽い、空を飛んでいるみたいだ。
~・~
「おい、見ろよ。あのマンションの上の方」
ダチが、立ち止まった。
「どこ?」
「あそこだよ。八階でボーっと立っている、オヤジ」
指さす先には、十二階建てマンションの廊下の柵に手をかけ、呆けているオヤジがいた。
「悪趣味だな。あれが好いか?」
「お前、死ね。オヤジ、飛び降りるんじゃね?」
「マジか?」
「あれ、マジヤバイ。あのマンション今年で五人、逝ってるらしい」
俺は急いでポケットからスマホを取り出すと、ビデオを回した。
「お前、カスだな。そんなビデオ誰も買わないぞ」
「あとで、タカリに来ても分けてやらんからな」
オヤジが、宙を見ながらときおり微笑んだり、顔を赤めたり・・・・、妄想リア充か? 見ている方が恥ずかしくなる。
「あのオヤジ幸せそうに、ニヤニヤしているぞ。」
あと、もうちょっとでスクープだ。
「おー空に、手を伸ばしてるぞ。マジヤバイ」
飽きていたダチも、マンションの八階のオヤジを凝視している。
「死神に手招きされてるんじゃね。どうするよ?」
ふわりと、廊下の柵に上がると、一瞬空に引っ張られる様に浮き上がり、鈍い音が聞こえてきた。
「ゲッ、やっちまった」
ダチが眉間にしわを寄せながら、気持ち悪そうに言った。
「ヤバ、天使が映ってる」
俺は・・・、
「天使が、どうした?」
「天使が映ってる。まだ、見えるぞ」
「どこにも、いないぞ」
「何言ってる。真っ白な翼の天使がこっちに近づいて来る」
「ヤバイぞ。天使を見た奴は死ぬって聞いたことがあるぞ」
「お前は馬鹿か。天使は死神じゃないぞ」
「へへ・・・、近づいてアップで撮ったら金になるぜ」
あと、一歩。もう一歩前に出たら・・・・、
「クルマ !!」
ダチの声で、車道の真ん中にいる事に気が付いた。
運転手の歪んだ顔が、逆さに見えた。
うちのマンションはエントランスがオートロックになっている。それなのに、見覚えのないのが入り込む時がある。
自殺者が出ると資産価値が落ちるとクレームが来るから、
『知らない人を一緒に入れない。管理組合より』
と貼り紙している。その上パトロールまでしろとは、役員を外れた奴は言いたい放題だ。
「お嬢ちゃん、そこは危ないから降りなさい」
近くの中学校の制服。八階の廊下の柵に座って、足をぶらぶらしている。飛び降りそうには見えないけど、『危ない』奴には間違いない。パトロール中にこんなの見つけてしまうとは。
「夕日を 見ているの」
?
「三時にもなっていない。分からんこと言ってないで降りなさい」
それに、北側の廊下で陽射しが入る筈がない。
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真っ赤な夕日に照らされて、真砂子の横顔・・・・、お嬢ちゃんは?
「あなた、どうしたの? そんなにマジマジと見られると恥ずかしいわ」
「あ、ごめん」
堤防に腰かけて、私の隣には真砂子。一緒に夕日を眺めている。
「あなたと、一緒に夕日を見るなんて何年ぶりかしら 覚えている?」
「覚えているよ。あの頃は若かったよ」
真砂子の柔らかくて暖かい手の感触が伝わってくる。そして、優しく握ると、少し俯いて赤める横顔が、愛おしい。
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「ほら、一緒に泳ぎましょう」
子供の様に急かす真砂子が、愛らしい。
「この柵、越えられないよ」
「やだ、お爺ちゃんみたいな事を言って。ほら、引っ張ってあげる」
身体が軽い、空を飛んでいるみたいだ。
~・~
「おい、見ろよ。あのマンションの上の方」
ダチが、立ち止まった。
「どこ?」
「あそこだよ。八階でボーっと立っている、オヤジ」
指さす先には、十二階建てマンションの廊下の柵に手をかけ、呆けているオヤジがいた。
「悪趣味だな。あれが好いか?」
「お前、死ね。オヤジ、飛び降りるんじゃね?」
「マジか?」
「あれ、マジヤバイ。あのマンション今年で五人、逝ってるらしい」
俺は急いでポケットからスマホを取り出すと、ビデオを回した。
「お前、カスだな。そんなビデオ誰も買わないぞ」
「あとで、タカリに来ても分けてやらんからな」
オヤジが、宙を見ながらときおり微笑んだり、顔を赤めたり・・・・、妄想リア充か? 見ている方が恥ずかしくなる。
「あのオヤジ幸せそうに、ニヤニヤしているぞ。」
あと、もうちょっとでスクープだ。
「おー空に、手を伸ばしてるぞ。マジヤバイ」
飽きていたダチも、マンションの八階のオヤジを凝視している。
「死神に手招きされてるんじゃね。どうするよ?」
ふわりと、廊下の柵に上がると、一瞬空に引っ張られる様に浮き上がり、鈍い音が聞こえてきた。
「ゲッ、やっちまった」
ダチが眉間にしわを寄せながら、気持ち悪そうに言った。
「ヤバ、天使が映ってる」
俺は・・・、
「天使が、どうした?」
「天使が映ってる。まだ、見えるぞ」
「どこにも、いないぞ」
「何言ってる。真っ白な翼の天使がこっちに近づいて来る」
「ヤバイぞ。天使を見た奴は死ぬって聞いたことがあるぞ」
「お前は馬鹿か。天使は死神じゃないぞ」
「へへ・・・、近づいてアップで撮ったら金になるぜ」
あと、一歩。もう一歩前に出たら・・・・、
「クルマ !!」
ダチの声で、車道の真ん中にいる事に気が付いた。
運転手の歪んだ顔が、逆さに見えた。
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