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同窓会
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首都圏にある中核都市。駅前には百貨店があり周辺にお洒落な店が広がっている。そこに街を一望できるホテルがあった。最上階にあるイベントルームは講演会から披露宴まで対応できる広さがあり、仕切りを動かせば同窓会に丁度良いアットホームな雰囲気を作り出せた。
そして、中学のクラスメイトが集まった。
「すげー、ここでクラス会するの?」
申し合わせた様に、かつての男子たちが入ってきた。
入り口にはパーテーションで仕切られたクロークがあり、慣れた手つきでコートを預ける人、整理券の配布だと思う人・・・・、色々いた。流れた月日は長く過ごした人生も違っていた。
「ウエルカムドリンクを用意してあります。アルコールとノンアルコール、どちらに致しますか?」
ウエイトレスはリクエストを聞くとにこやかに手渡していった。
「え、これマジ美味い。ちょっと変わった味がするけど、何杯でもいけちゃうよ」
「おまえに味なんか分かるのかよ?」
「営業だからよ、接待で結構いいもん食ってるんだよ」
俺の外食なんてファミレスぐらいと言いたくなるのを飲み込んだ。
「そうだよな。取引先の営業なんて自分の食べたい店ばかりでどっちが客だと言いたくなるよ」
・・・・ボロが出る前に話題を変えた方がいい。口には出さなかったが二人とも同じ事を考えていた。
「ここのウエイトレスは、おばちゃんなの?」
「女子の策略じゃないの? 入り口でおばちゃん見た後なら若く見えるとか?」
「ありそうだね。主催者の名前なかったし」
余興を楽しんで貰うために名前は伏せると書いてあった。みんなが集まっているからオーケーだったが。
「あ・・・※※くん? ホントに※※くん」
かつての女子は、あの時と同じように彼を見つめた。
「二十年ぶり? ▲▲も目じりのしわ以外全然変わらないね。見た瞬間すぐに分かったよ」
お互いに家族があっても、あの時の自分たちより大きい子供がいても、お互いの目に映るものは変わらなかった。
「相変わらず、口悪いね!」
彼女はそれを分かった上で、当時と変わらない言葉を投げつけた。
「あっちに先生がいるわ。私たちも行きましょう」
あの時は出来なかったもう一歩。彼の手を取ると引っ張っていった。
あちらこちらで、談笑が始まっていた。
「皆様お揃いになりましたので、料理を食べながらビデオをご鑑賞ください」
会場の照明が少し暗くなるとスクリーンが降りてきた。カウントダウンの映像が映った後に机に置かれた卒業アルバムを膝の上に載せると制服を着た女の子がページをめくった。一ページ目の校舎に合わせて校歌が流れ始めた。クラスの集合写真、体育祭、校外学習、修学旅行の写真が映し出された。
写真が変わる度に、歓声や悲鳴、笑い声が巻き起こった。
そして、授業風景の映像に変わった。
「撮影していたっけ?」
お互いに確認しながら、視線は先生に集まった。
「どうだろう? 再現じゃないの?」
相変わらず適当に流す先生だった。
「すげー 凝ってるよ。ひょっとしてあれ俺? マジそっくり」
■▼は、カクテルを片手に言うと、次のカクテルに手を伸ばしていた。
「学級会かな? あ! 先生が映った」
今の自分たちより若い姿に、歓声が上がった。
「先生、年取りましたね・・・」
十分に酔いが回っている連中が先生を取り囲んでいた。
スクリーンには、空の花瓶が置いてある机が映し出された。
会場の雰囲気が変わった。
「あー、思い出したよ。そう言えばトロイ奴がいたな」
ひとりの男子が吐き捨てるように言った。
「あんなの要らない。気分が悪くなる」
ひとりの女子が、あからさまに不機嫌になった。
「どこにでもいるよ。中学で先生やっているけど、虐められているってチクリに来た奴がいたんだ。運悪く教頭の耳に入ったからクラスで話し合いさせたけど、どうなったと思う?」
となりの女子に話を振った。
「みんなで、指導したの?」
自然にでるのは実体験からだった。
「そいつがいなければ虐めはなくなるって言った子がいたけど、正論過ぎてびっくりしたよ」
笑い声が響いた。
スクリーンに、カクテルグラスを前に座っている中年のおばさんが映し出された。スクリーンの右上に『広告』とかなり大きめに表示された。
「あ、同じカクテルじゃね? 凝ってるね」
誰かが指さしながら言った。
「弊社の新商品モニターに参加頂きありがとうございます。各種カクテルを試飲してアンケートに答えて頂きます。素直な感想をお願いします」
カクテルを一口飲むと、真剣な表情で味などを答えている。
「あ、同じクラスの★◆じゃね? 来てないの?」
何人かが周りを見渡している。
スクリーンの真ん中に『試飲後 一時間』と出た。
「ひょっとして、お肌つるつるになるサプリだったりして」
▼▼の疲れた肌を指さしながら、ニヤリと笑った。
「ん、もう■※くんのばか」
次の瞬間、全員が凍り付いた。にこやかにカクテルの蘊蓄を語っていたが、顔を歪め必死に何かに耐えている。カメラが背後に回ると服の所々から血のシミが広がっていった。カメラが前面に戻ると彼女の目から血が溢れていた。
誰もが立ち尽くしていた。
スクリーンには会場が映し出され真ん中に『ウエルカムドリンク後 一時間』と表示された。
それが何を意味するのか理解するより先に女子たちが、背中を丸めると硬直して動かなくなった。服が血に染まりストッキングの下から脈に合わせて血の滲みが広がっていった。
男子たちは目の前の状況を理解できずにいたが、全身の皮膚を毟り取られるような痛みに襲われた。息も出来ずに耐えるしかない。助けを求める余裕はなかった。全身を襲う痛みに耐える事しか出来なかった。今はただ痛みに耐えるしかなかった。
うめき声も聞こえなくなった会場に、ウエイトレス姿の女性と男性が立っていた。
「卒業おめでとう。やっと解放されるね」
女性は男性を見つめると、
「ありがとう」と、呟いた。
そして、中学のクラスメイトが集まった。
「すげー、ここでクラス会するの?」
申し合わせた様に、かつての男子たちが入ってきた。
入り口にはパーテーションで仕切られたクロークがあり、慣れた手つきでコートを預ける人、整理券の配布だと思う人・・・・、色々いた。流れた月日は長く過ごした人生も違っていた。
「ウエルカムドリンクを用意してあります。アルコールとノンアルコール、どちらに致しますか?」
ウエイトレスはリクエストを聞くとにこやかに手渡していった。
「え、これマジ美味い。ちょっと変わった味がするけど、何杯でもいけちゃうよ」
「おまえに味なんか分かるのかよ?」
「営業だからよ、接待で結構いいもん食ってるんだよ」
俺の外食なんてファミレスぐらいと言いたくなるのを飲み込んだ。
「そうだよな。取引先の営業なんて自分の食べたい店ばかりでどっちが客だと言いたくなるよ」
・・・・ボロが出る前に話題を変えた方がいい。口には出さなかったが二人とも同じ事を考えていた。
「ここのウエイトレスは、おばちゃんなの?」
「女子の策略じゃないの? 入り口でおばちゃん見た後なら若く見えるとか?」
「ありそうだね。主催者の名前なかったし」
余興を楽しんで貰うために名前は伏せると書いてあった。みんなが集まっているからオーケーだったが。
「あ・・・※※くん? ホントに※※くん」
かつての女子は、あの時と同じように彼を見つめた。
「二十年ぶり? ▲▲も目じりのしわ以外全然変わらないね。見た瞬間すぐに分かったよ」
お互いに家族があっても、あの時の自分たちより大きい子供がいても、お互いの目に映るものは変わらなかった。
「相変わらず、口悪いね!」
彼女はそれを分かった上で、当時と変わらない言葉を投げつけた。
「あっちに先生がいるわ。私たちも行きましょう」
あの時は出来なかったもう一歩。彼の手を取ると引っ張っていった。
あちらこちらで、談笑が始まっていた。
「皆様お揃いになりましたので、料理を食べながらビデオをご鑑賞ください」
会場の照明が少し暗くなるとスクリーンが降りてきた。カウントダウンの映像が映った後に机に置かれた卒業アルバムを膝の上に載せると制服を着た女の子がページをめくった。一ページ目の校舎に合わせて校歌が流れ始めた。クラスの集合写真、体育祭、校外学習、修学旅行の写真が映し出された。
写真が変わる度に、歓声や悲鳴、笑い声が巻き起こった。
そして、授業風景の映像に変わった。
「撮影していたっけ?」
お互いに確認しながら、視線は先生に集まった。
「どうだろう? 再現じゃないの?」
相変わらず適当に流す先生だった。
「すげー 凝ってるよ。ひょっとしてあれ俺? マジそっくり」
■▼は、カクテルを片手に言うと、次のカクテルに手を伸ばしていた。
「学級会かな? あ! 先生が映った」
今の自分たちより若い姿に、歓声が上がった。
「先生、年取りましたね・・・」
十分に酔いが回っている連中が先生を取り囲んでいた。
スクリーンには、空の花瓶が置いてある机が映し出された。
会場の雰囲気が変わった。
「あー、思い出したよ。そう言えばトロイ奴がいたな」
ひとりの男子が吐き捨てるように言った。
「あんなの要らない。気分が悪くなる」
ひとりの女子が、あからさまに不機嫌になった。
「どこにでもいるよ。中学で先生やっているけど、虐められているってチクリに来た奴がいたんだ。運悪く教頭の耳に入ったからクラスで話し合いさせたけど、どうなったと思う?」
となりの女子に話を振った。
「みんなで、指導したの?」
自然にでるのは実体験からだった。
「そいつがいなければ虐めはなくなるって言った子がいたけど、正論過ぎてびっくりしたよ」
笑い声が響いた。
スクリーンに、カクテルグラスを前に座っている中年のおばさんが映し出された。スクリーンの右上に『広告』とかなり大きめに表示された。
「あ、同じカクテルじゃね? 凝ってるね」
誰かが指さしながら言った。
「弊社の新商品モニターに参加頂きありがとうございます。各種カクテルを試飲してアンケートに答えて頂きます。素直な感想をお願いします」
カクテルを一口飲むと、真剣な表情で味などを答えている。
「あ、同じクラスの★◆じゃね? 来てないの?」
何人かが周りを見渡している。
スクリーンの真ん中に『試飲後 一時間』と出た。
「ひょっとして、お肌つるつるになるサプリだったりして」
▼▼の疲れた肌を指さしながら、ニヤリと笑った。
「ん、もう■※くんのばか」
次の瞬間、全員が凍り付いた。にこやかにカクテルの蘊蓄を語っていたが、顔を歪め必死に何かに耐えている。カメラが背後に回ると服の所々から血のシミが広がっていった。カメラが前面に戻ると彼女の目から血が溢れていた。
誰もが立ち尽くしていた。
スクリーンには会場が映し出され真ん中に『ウエルカムドリンク後 一時間』と表示された。
それが何を意味するのか理解するより先に女子たちが、背中を丸めると硬直して動かなくなった。服が血に染まりストッキングの下から脈に合わせて血の滲みが広がっていった。
男子たちは目の前の状況を理解できずにいたが、全身の皮膚を毟り取られるような痛みに襲われた。息も出来ずに耐えるしかない。助けを求める余裕はなかった。全身を襲う痛みに耐える事しか出来なかった。今はただ痛みに耐えるしかなかった。
うめき声も聞こえなくなった会場に、ウエイトレス姿の女性と男性が立っていた。
「卒業おめでとう。やっと解放されるね」
女性は男性を見つめると、
「ありがとう」と、呟いた。
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