鍵の勇者と錠の聖女

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7日目 透き通りプロポーズ

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「石橋を作るのに木を切るんですか?」

「その通りですよ?私は石橋作るのでタカヒコさんは、木を伐採してください。湖の周りの森を2周程ひろくしてほしいんです。切った木はその辺に置いておけば大丈夫です」

「わかりました!任せてください!」

「この斧使ってください。」

「俺はこの剣で大丈夫です。」

「そ、そうですか?」



 剣だと木を切るのはあまり向かないだろうに……難しくなったら帰ってきて斧に持ち替えるだろう。
 湖の水を抜いて、石の壁で水が入ってこないようにおさえると、湖の水面はほんの少しだけ揺れる。
 私はそんな様子を見ながら石橋を魔法で作って行く。
 魔力の石で作った土台の石を沈め、その上に石柱を6本伸ばす。
 作った石柱の上に石板を乗せて石柱から手すりを伸ばして作っていく。
 隙間を埋めるために魔法で隙間がある部分の石を増やしていく。
 
 ふと彼の様子が気になり森の方を見ると、バキバキ!とものすごい音がなりその方向を見ると、彼の周りの木がなぎ倒されていた。
 「えっ?」と小さく言うと、彼は移動して剣を振るうため剣を構える。
 この距離でも彼の息遣いがはっきりわかる。
 彼は戦い慣れていてその技を、私のために使ってくれているんだな。
 彼が剣を構えて軽くくるりと一回転すると、周りの木は時間差でバキバキ!っと音を立てて倒れる。

 その技を見て私の知らない剣技なんかないだろうと首を傾げると思い出した。
 何回目の人生か忘れたが、とある勇者パーティに誘われた時があった。
 その時の勇者は彼と同じ技を使っていた。
 魔王から逃げる時においていかれた時最後に使っていた技にそっくりだ。

 思い出すとぞわりと背中が冷たくなる感覚を覚えた。
 また繰り返しの人生になるのではないか?
 足の力が抜けて、ぺたりと座り込んでしまう。
 彼には敵意がない、それは分かっている。
 これは恐怖なのか?手を見ると手が小刻みに震えている。



「シュリーさん!!!!……大丈夫ですか?」



 彼が遠くから走ってくるのがわかるが私はたつことはもちろん顔を上げることもできなかった。
 彼と関わることが、やっぱり怖いんだ。
 


「どうしたのですか?顔が真っ青です。」



 彼に声をかけられるとさらに俯く。
 正直に話してしまおうか…?そうすれば彼は身を引いてくれるだろうか…?
 彼は私の肩に触れようとしたので、私は無意識のうちに払い除けてしまった。
 その時に不意に見えてしまった、見た彼の顔は一生忘れることは無いだろう。




「すみませっ?!きゃっ!!!」



 彼は唇を固く閉ざして、私をお姫様抱っこした。
 家まで行くと、彼の寝ていたソファに私を座らせた。
 そして彼は、床に膝を着いて私の両手を握って座る。
 
 ちゃんと話そう。
 私はこの繰り返しの人生を辞めたい。
 死にたくないと。



「「あっ……。」」

「俺から話していいですか?」



 間が悪く同時に話はじめてしまうと、彼はすぐに話し始めた。
 私の話始める時間に猶予ができた。



「嘘だって笑ってくれてもいいです。ただ、俺は誰にも言えない秘密があるんです。俺は別の世界からやってきました。輪廻の女神は前世で悲惨な死に方をした俺に、この世界でやり直しの機会をくれたんです。魔王を倒してこの世界を、この世界の人々を救って欲しいと言われました。」



 私は驚いて言葉も発せずに相槌を打てなくいた。



「俺は彼女の言いかけた言葉をふと思い出しました。この世界の人々の前に『シュ…』といいかけたんです。とても辛そうな顔でお願いしてきました。これが俺の秘密です。」

「それは…そういう話はとても珍しいですね、私は1回だけそういう境遇の人に会った時があります……。私が話したかったことは、私は何度も何度も何度も同じ人生を繰り返しています。1回2回ではありません。何度も死にました。何度も死ぬ痛みを経験しています。処刑されたり、生きたまま体を食われたり、必ず18歳の誕生日に死にます。なので私の命は残り1000と90日です。」

「なるほどそれは辛かったですね。人並みの言葉しかかけられませんが、俺はあなたを幸せにしたいと思っています。輪廻の神は貴方になんというのですか?もし繰り返しの人生がおわれるなら終わりにしましょう。」

「毎回言う言葉があります。『運命に抗えば必ず。道は開けるでしょう。』って、」

「本当にそういったのですか?」

「はい。」

「じゃあ……してくれませんか?」

「えっ?」

「1091日後俺と結婚してくれませんか?あなたはここで毎日1090日間。笑顔で過ごしてください。俺は貴方を死なせないから。あなたの呪いを俺が払うから。」



 彼の優しい言葉で心の中がすぅっと透き通り、風通りが良くなった気がした。
 私は死ぬというのに彼は結婚して欲しいといった。

 そして溢れ出てきたのは涙だった。
 彼は私のことを優しく抱きしめてくれた。
 今回の人生は彼にたくそう。



「はい。」



残り1090日



 



 
 

 

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