鍵の勇者と錠の聖女

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6日目 涙色の優しさ

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 今日はまた村から夫婦が来るようで男がいて心配だから来るようだ。
 桟橋に行くと湖の向こうで色々と準備しているように見えるので手を振った。
 タカヒコは今日狩りに行ってついでに街まで降りて馬を買うそうだ。
 外の仕事もあるからと言っていたが、冒険者で馬を持つ人はかなり少ない。
 維持費がかかったり宿に馬が預けられることが少ないから、預けられる宿があったとしても割高になったりするので冒険者は馬車を活用することが多い。
 街からここまでは歩いて1日かかるだろう。
 


「あの男はどこなんですか?!図々しいわ!まだいるなんて!」

「私がいていいよって言ったのよ。」

「あの男シュリーの優しさに漬け込んで!本当嫌よまたシュリーちゃんが傷付くのは見たくないのよ。私……」

「ティアラさん……」



 ティアラは私のことが心配で泣き始めてしまった。
 私はティアラを抱きしめて頭を撫でる。

 数年前。
 聖女の血は不老不死の薬を作るのに必須だと、私の母が賊に殺されてしまった。
 私はそれから2年近く部屋にこもってしまって、その時に助けてくれたのがティアラのバーナのふたりだった。
 毎日どちらかが家まで様子を見に来て、暖かいお茶を出してくれた。
 その時の私は相当酷かったよう。
 そして、ティアラは私の事を愛してくれている。   

 なので、あの男がその賊と同じ人種で、私のことを殺そうとしているんではなかろうか?と心配でないてしまっているのだろう。
 優しい人だな。
 それに今は結界も貼ってあるので、私に害なそうとしているものには認識阻害が掛けられているので、見つけることはできないだろう。
 


「大丈夫です。もし私に害を及ぼそうとする人ならここが目えないようになっていますから。」

「え?どういうことですか??」

「これは3人だけの秘密ですからね?ここには特別な結界を貼ったんです。私の最近開発した秘術なので、そう何回も貼ることは出来ないので村に貼って欲しいと頼まれてもできません。おふたりは信用してますので教えるんですよ?」

「それなら安心だね!よかった……」



 秘術というのは嘘だ。
 この世には結界魔法という魔法も存在しないが、便宜上そう呼んでいるフシがある。
 そもそも、この世界には火水土風空と、聖の6の属性の魔法をいかに上手く組み合わせ混ぜるかでまた、どの魔素をどのくらい持っているかで、魔法使いの価値が決まる。
 例えば魔法て雷を起こすとしたら、水と風と空の魔素を使いたい分同じ量を持っていないと、魔法を発現させることが出来ない。
 雨を降らすとしたら空と水の魔法をある程度使えないと天気は操れない。
 


「補充分のお野菜だよ。」
 
「いつもありがとう。しかもこんなに沢山……2人の負担になってない?」

「何言ってるのよ。家族みたいなものなんだから。それに私たちはシュリーちゃんに助けられてるんだから……。」

「そうですか……」



 彼女達は大きく手を振って村に帰って行った。
 彼が帰ってくるのも早くても明日だろうとタカをくくっていた。
 まさかの今晩帰ってくるなんて。

 ナマズを捌いて皮をはいで塩をまぶしある程度抜き水分を抜いて燻しながら干す保存食を作る。
 できたものを屋根裏部屋に干していると、湖の向こうに馬ともう見なれた青年が立っていた。
 干し終わったので、急いで下に降りるとびちゃびちゃになりながら馬と泳いで渡っていた。
 それがおかしくて、急いで男の服を脱がして乾かしてあげる。
 この辺りは冷える。
 
 あたりはもう真っ暗になっていて、彼が荷物の中から酒を取り出す。
 葡萄酒だと聞いたので、キノコと捌いたナマズのアヒージョとナマズの腹の部分はムニエルに、ナマズの皮を唐揚げにして、あとはきゅうりとニンジンとポリポリサラダを作って合間にオーブンに入れたフランスパンを取り出したら完成!


「ナマズのフルコースですね!」

「こんなに早く帰ってくるなんて思いませんでしたよ。転移魔法でも使いましたか?」

「いえ。気合いで走りました。」

「……ぷっ。根性論は久しぶりに聞きました。お馬さんも増えたということで、明日向こう岸に橋をかけようと思います。手伝ってくれますか?」

「もちろんです!大船にのったつもりで頼ってください!」



 馬はよく食べるので湖の外のをもう少し広げ馬用の草を植えないとなと思った。
 明日は忙しくなりそうだ。



残り1091日
 


 
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