鍵の勇者と錠の聖女

文字の大きさ
上 下
6 / 19

5日目 忘れかけた埃のマイルーム

しおりを挟む
「あの!」

「ちょっと待ってくださいね!」



 私が高いところに置いてあったツボを取り出そうと椅子を経由しても届かないので背伸びをしていたらヒョイっと椅子から下ろされた。
 怖い顔をしている、何かしただろうか?



「危ないのでこういうのは俺に頼んでください。」

「大丈夫ですよ慣れてますから。」

「ダメです。俺がいる時は俺を頼ってください。」

「むぅ。」



 彼は最近、外に行って魔物を倒して食料をもって来てくれている。
 それ以上の仕事をさせる訳には行かないとゆっくりしておいてと頼んだのに……。

 今日は、フォレストクラブという魔物を手づかみで持ってきていた。
 挟まれると腕が飛ぶと言われるほど力が強いカニだけどとっても美味しい。
 今晩が楽しみだ。
 ケジャンとカニニョッキグラタンにする予定だ。



「鼻歌吹いてどうしました?」

「あっ、すみません嬉しくてつい!」

「カニですか?」

「は、はい……バレてしましました。」

「可愛いですね。すみません上機嫌のところ……私無償で寝床を借りてて悪いなぁと思いまして、これからは月に銀貨40枚払いますから、」

「そんなこと気にしないでいいのに。」

「いえ、一応貰ってください。街の平均的な宿の料金ですから。」

「じゃあ遠慮なく貰いますね。ありがとうございます!」
 


 街の宿より少しだけ高いのではないか?なんて思ったのだが料理の付いている宿ならこんなものかなと納得してしまう事にした。
 けどお金を貰って泊めるのに、ソファにねかせるのもなと思い、タンスの中の上の隠し棚から鍵を取りだして、2階に上がる途中の部屋を鍵を開ける。
 私が小さい頃使っていた部屋で少し埃っぽいのでクリーンの魔法をかけると多少はマシになった。
 普段使うことがない部屋だ。
 ベットらしいベットはなくて木箱に板を並べただけの簡単なものが置いてある。
 マットレスは洗わないと使えないだろうが、洗えば使えそうだ。
 マットレスを持って降りようとしたら階段から落ちそうになったが背中を支えら何とか耐えた。
 振り向くときっと怒っている顔があるのだろうと思うと振り向かず過ごした方がいいななんて思い逃げるようにマットレスを持って階段を駆け下りた。
 因みに我が家の階段は杭が壁に刺さったかのようなもので寝ぼけると落ちそうになるので注意して欲しい。



「洗うんですか?」

「ちょっと埃っぽいと思うので、高いマットレスでは無いので、突貫工事になりますけど。」

「ありがとうございます」



 外に出て物干し竿にマットレスを引っ掛ける。
 水魔法と風魔法でマットレスを丸洗いして、その後クリーンをかけて風魔法と火魔法で乾かしまたクリーンをかける。
 埃っぽい黒のマットレスが真っ白になった。
 気持ちいいものだ。
 天気もいいし少しだけ干しておこう。


 部屋に戻り窓を開けて拭き掃除を始めると、タカヒコも一緒に掃除してくれた。
 何度も何度もバケツの水を変えると綺麗になったかな?と思いまた部屋中にクリーンをかけて行くと黒ずんでいた床は気の模様がはっきり出てきた。
 壁も石のの隙間のホコリが取れて先程とは違う印象になった。
 石と木で作られた私の家は築100年以上建つのにまだ崩れてないのは聖女の家系だからというのがとても大きい。
 100年もたってるなんて信じられないだろう。



「だいぶ綺麗になりましたね。」

「ええ。この部屋自由に使っていいわよ?ただ、掃除とかは自分でやってね?たまに保存食を置いてもらうかもしれないけど。」

「わざわざありがとうございます。こんな立派な部屋私が使ってもいいんですか?」

「元々客間として使おうと思ってた部屋なんですよ。お陰様で重い腰を上げて掃除をすることが出来ました。冬の間は寒いかもしれませんが、ドアを開けて置けば暖かいですよ」

「シュリーさんは本当にお綺麗ですね。」

「なんでそうなるんですか?!」



 不意に言われた言葉に驚いて階段を踏み外してしまうとぐいっと抱きしめられた。
 ドクドクと普段なら絶対出てこないの心臓の音が聞こえた。
 私の音だろうか?恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまう。
 彼が来てから心臓がおかしい。
 

残り1092日

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...