鍵の勇者と錠の聖女

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3日目 タカヒコ side

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 俺は目を覚ますと見なれぬ天井の暖かい雰囲気のある木の家のソファにいた。
 鼻をくすぐったのは香ばしい香り。
 そしてお腹の虫がぐおぉとなり恥ずかしくてお腹を直ぐに抑えた。
 誰にも聞かれていないかと周りを見ると台所に髪の長い白く太陽の反射で桃色に輝く美しい髪を持つ女がいた。
 一瞬老婆か?と勘違いしてしまったが、その美しい一つ一つの所作や少しおっちょこちょいなのかなと思う行動に心が締め付けられるような感覚になった。
 トントントンと包丁とまな板とが当たる音が耳心地良くて自分が無意識に立ち上がって彼女の元に向かっていることに気づいたのは自分が声を上げた時だった。


 彼女はとても美しい。



「貴方は……?」
 


 彼女が振り返ると花のような桃のような香りがふわりと香った気がした。
 



「えっ?」



 彼女の声は鈴のような声でまた心が締め付けられるような気がした。
 彼女が振り返えった。
 彼女の瞳はオパールを深い海に沈めたような色合いで、とても美しく、鼻は小さく、唇は淡い薔薇色。
 とても美しい。
 彼女ははっとしにこにこしながら話しかけてくる。



「お目覚めになりましたか?」

「あっすみませんお世話になってます?」

「ふふふ、お世話させていただいております。シュリーです。」



 名前も美しいなんて、彼女は女神の生まれ変わりだろうか?それとも伝説の聖女様?とか?
 笑顔は優しくて、こんな血だらけの俺に話しかけてくれるのもきっと、女神が聖女様だからだ。



「タカヒコです。」

「変わったお名前ですね。」

「そうですよねこの辺では聞きませんよね、遠い東の島国から来たので……」

「……………………そぅ。」



 彼女との会話で間が空いてしまった。
 変なことは言っていないと思うが、俺の国は確かに今まで鎖国をしてきた国だったが俺がこの世に生まれてから何かと他の国と交流し始めたよう。
 変に思っただろうか?

 彼女は「パン」と手を叩くとまた笑顔になった。
 彼女の笑顔は、きっと、治癒の能力があるに違いない。



「お腹すいていませんか?朝ごはんにしましょ!遠いお国から来られた方のお口に合うかどうか不安ですが……頑張って作ったのでぜひ食べてみてください」

「ありがとうございます。いただきますね。」



 彼女の作った料理は俺の故郷のごはんよりは豪華では無いが、私が旅している中ではいちばん豪華な食事だと思った。
 それよりも何よりもこんなに美味しそうな匂いもしているのだから美味しくないわけが無い。
 


「とても美味しそうですね。こんな豪華な食事にありつけるとは思いませんでした。」

「そうですね。私は朝ごはんと夜ご飯しか基本食べないのでこのくらい食べますが、病み上がりだと思うので無理そうなら残してもらって大丈夫ですよ!」

「ありがとうございます。どんなに礼を言っても足りませんね……。」

「いただきます。」



 彼女がキョトンとした顔でこっちを見ている。
 納得いくと俺も彼女に話し始める。
 だいたい初めて食事する時「いただきます」の説明を始める。



「あ、ああ。いただきますですよね?いただきますは私たちの文化で、料理を作ってくれた人や食材、今日も食事をありがとう、今この時間をありがとうということで『いただきます』と食事の前につけるんですよ。」

「それはいい文化ですね。」



 彼女も真似して、フォークを置いて手を合わせて「いただきます」と言ってくれた。
 なんとも言えない高揚感に彼女を見つめてしまうと、彼女が微笑み俺はつい顔を背けた。



 彼女から目が離せない。
 ただフォークで刺して口に運んでいるだけなのにその行為から目を話すことが出来ない。
 しかも彼女の料理はとても美味しい。
 自分は好き嫌いが激しく、初めて食べるものばかりなのにパクパクと自然と口に運べた。
 野菜を本何食べたのも初めてた



 彼女が農業をすると言うので俺も一緒について行く。
 こんな美しい彼女の手を煩わせる事なんてさせては行けないと思ったが彼女の畑の世話はすべてが魔法で完結するもので俺の力なんてひとつも要らなかった。
 魔法で苗を作ってしまったり。
 魔法で畑を作ってしまったり。
 魔法で草を抜いてしまったり。
 できないことは無いのでは?と思ったが魔法でもできないことがあったので俺は抜いた草を集めて箱の中に入れたり、魚を捕まえた罠を引きあげたりした。

 


「貴方はすごい魔法使いですね」

「そうですか?私はただ魔法に長けてる使ですよ。」

「そうですか。そういうことにしておきましょう。」

 

 そうか、俺はあなたに恋してるのか。
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