鍵の勇者と錠の聖女

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1日目 私が中指を唯一立てたい人物。

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 そうだ。
 私は18歳の誕生日に絶対死ぬという呪いにかかってる。
 どんなに死なないように頑張っても必ず死んでしまう。
 私もう何回目の人生だか忘れた。
 
 なぜ私が思い出したかと言うと、目の前に忌まわしき輪廻の女神がいるからだ。
 私は頭をかいて女神を睨むが、女神はにっこりと微笑むだけで何も言葉を発さない。
 全て思い出した最悪の15歳の誕生日だ。
 私は1095日目で必ず死ぬ。
 そういう運命なのだ。



「シュリー運命に抗いなさい。」

「あんたなんか大っ嫌いよ!この悪魔め!!!」



 なんでこの女神が苦しそうな顔をしているのだ。
 私の方が苦しい。
 


「運命に抗えば必ず。道は開けるでしょう。」



 また始まった。
 こいつは私を見て嘲り、指をさして笑って過ごしているのだろう。

 悪夢から目覚めると、部屋の外は朝焼けの美しいブラットオレンジジュースのような目覚めの太陽を反射した黒い雲。
 そんな美しい景色から、不吉な世界の幕開けだと言っているようにも感じる。
 また辛く短い人生が始まるのではないかと不安になる。

 今回の人生はもうこの島から出ない。
 心に誓った。

 私が覚えている人生の最後は酷いものばかり。
 反逆者と首を跳ねられたり、魔物の群れに襲われて命を落としたり、狩人の矢が運悪く心臓に突き刺さったり、魔王に嬲られ殺させたり、山賊に捕まり病気で死んだり、変態に生きたまま心臓をくり抜かれたり、仲間に裏切られて殺させたり、恋人に奴隷にされ
 なので私は、!!!


 まずは食料の確保だ。
 有り余る魔力と魔法知識で効率の限界をいく畑を作ろう。
 まずは家の周りには果樹園を作り結界を貼ろう。
 魔力で親の魔法石と子の魔法石10個作る。
 湖を魔力を使って歩いて渡り、等間隔に子の魔法石を置いていく。
 島に戻れば親の魔法石に魔法陣を刻んでいく。



「えっと……、害虫、害鳥、害獣、呪い、病気を弾いて、結界自体の認識阻害。魔術が自由に操れるとなると魔王に攫われるし……子の魔法石の透明化と超頑丈にするために魔力補助。術者以外は結界の魔法陣はいじれないように……あとは……空間を祝福の空間にしよう。今は庭だけだしね……祝福があれば作物いっぱい取れるしね!必要なものがあれば都度たしていこう。」



 
 全ての魔法陣を繋げると、薄い膜のようなものが広がった。
 膜がピンと張ると透明になって見えなくなった。

 完璧だね!
 親の魔法石を置く台を作る。
 土魔法で台座を作り、台自体に魔法陣を書いていく。

 付与する魔法陣は、術者を除き絶対防壁、空気中の魔力の供給。
 魔法石より難しい魔法陣になってしまった。
 手作りだからしょうがないよね。


 次に果樹園を作るための種を探す。
 確か、昨日食べた林檎があったはず……ゴミ箱の中を探すと確かにあった。
 個数で行くと10個。
 種を洗い、湿らせた土に植えて魔力で、聖女の豊穣の祈りをおこなう。
 小さな芽が生えて、リンゴを植える場所を考える。
 きっと私の食事を賄うほどの食料をここに植えるのなら、効率的に考えないといけないだろう。
 庭に生えていた落葉樹を風魔法で切り倒し、地面に植わっていた根っこを土魔法で掘り返して、あたりの土もほぐしていく。
 ほぐれた地面にまだ小さな林檎の芽を植えて行き、地面に豊穣の祝福の魔法をかける。

 明日になったら大きくなっているだろう。
 
 切った落葉樹は乾燥するまで薪にして軒先に置いておこう。
 風魔法で丸太にして、その後薪の大きさに切る。
 切ったものを軒先に並べて行って積んでいく。
 あっ、そうだここにも風魔法の魔法陣を組んでおこう。
 水の侵入を防ぐ防壁に、空気が循環して除湿をする魔法陣を軒先の屋根に描いた。


 よし、とりあえず今日の分の仕事は終わったかな。
 朝ごはんも昼ごはんも食べてないからお腹がペコペコだ、豆とトマトの煮込みでも作ろう。


 残り1095日。

 

 
 
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