戦闘力のないハズレ才能【翻訳】で古代魔導書を読み漁っていたら世界最強になってました

蒼乃白兎

文字の大きさ
上 下
28 / 31

現代の料理

しおりを挟む
 ユンの屋敷に到着。
 アレクシアはキョロキョロと周りを見ながら移動していた。
 屋敷内の廊下を歩き、部屋に入る。
 豪華な長机の前にある椅子に座ると、続々と料理が運び込まれてきた。

『……いいにおい』

 アレクシアはきょとん、と置物のように椅子に座っている。
 長机に並ぶ料理を凝視して、じゅるりと涎が垂れていた。
 ハッとしてアレクシアはすぐに涎を拭った。

「さぁさぁ! 温かいうちに食べちゃって!」

 ユンが俺の横の椅子に腰掛けて、笑顔でそう言った。

『食べていいみたいだよ。食べ方は分かる?』

 アレクシアはコクリと頷き、机に置かれていたフォークを握った。
 そしてステーキにグサリ。
 タレが飛び散るのを気にすることもなく、ステーキを豪快に口へ運んだ。
 ガブリ。
 むしゃむしゃ。

 アレクシアは目をくりくりとさせて、

『美味しい……!』

 そう呟いて、無心でステーキにかぶりついていく。
 なんとも食欲をそそる食べ方だ。

 アレクシアが幸せそうな表情を浮かべていて、俺は少しホッとした。

「ふふ、美味しそうに食べるわね! そして食べ方も原始的だわ!」
「ゆっくりと色々現代のことを知っていけばいいさ」
「そうね。さ、私達も食べましょ!」

 アレクシアには色々と現代の常識を教えてあげなきゃいけないだろう。
 アレクシアの様子を見るに世界はとても変わってそうだ。


『たまには肉も食わんとな』

 ファフニールはそう言って、美味そうに肉を食べていた。

『あれ? ファフニールって草食じゃなかった?』
『うむ。基本は草食であるが、たまには肉も食わんと栄養不足になってしまうのだ』

 がつがつむしゃむしゃ。

『それなら先に言えば肉も用意してあげたのに』
『いや、基本的に肉は求めておらん。気にしなくて良いぞ』
『まあたまに肉をあげるようにすればいいかな? それともファフニールなら自給自足してくるのかな?』
『ふむ。ならば一週間に一食ぐらいは肉が食えれば良いな』
『ははっ、分かったよ』

 そして俺もステーキを食べ始める。
 ナイフとフォークを使って、肉を一口サイズに切り分け、それをフォークで刺して口に運ぶ。
 うん、美味しいな。

 その様子をアレクシアはじーっと見ていた。

『そうやって食べるもの?』
『うん。だけど、食べ方はあんまり気にしなくていいと思うよ。ゆっくりと現代に馴染んでいけば良いだろうし』
『なるほど、ちょっとやってみる』

 アレクシアは既に半分以上なくなったステーキを皿の上に置いた。
 そしてナイフとフォークで見様見真似で使おうとするが、微妙に違う。

『こうやってやると良いよ』

 俺は手本として、もう一度ステーキを切る動作をした。

『分かった。ありがとう』

 チラチラとこちらを見ながらアレクシアはステーキを切り分けた。
 それをフォークで刺し、食べる。

『美味しい。この食べ方の方が味が分かる』
『それは良かった』


 そして食事をし終えると、アレクシアはとても満足そうだった。

『料理、とても美味しかった。私が住んでいた時代よりも遥かに進歩しているわ』
『そうなんだね。どんなものを食べていたの?』
『お肉を焼いたものは食べていたけど、あんなに豊かな味はしなかった。野菜もそう。色々な味が混ざっているような感じがして、とても美味しかった……』

 アレクシアは頬を緩めた。
 もしかすると、味を思い出しているのかもしれない。
 どうやら現代の料理を気に入ってくれたみたいだ。


 ◇


 ユンの屋敷には浴場がある。
 男女で分かれているわけではないが、広々としたお風呂に浸かることが出来る。
 食事後、しばらくしてアレクシアを浴場に案内した。

「私がアレクシアと一緒にお風呂に入ってくるから、何か困ったときようにノアは脱衣室で待機しててもらえる?」
「ああ。分かったよ」

 そういうわけで俺は今、浴場前の脱衣室にいた。
 後ろで布の擦れる音が聞こえる。
 アレクシアとユンが服を脱いでいるのが音で分かる。
 ファフニールは既に浴場に入って楽しんでいる様子だった。
 ぼーん、と水の音が聞こえてくる。
 自分だけしかいないのをいいことに好き勝手やっているようだった。
 まぁ迷惑にならないなら大丈夫か。

 トントン、と肩を叩かれた。
 振り向くとまではいかずも、首を少しだけ横に回す。
 隣には、生まれたままの姿になったアレクシアが立っていた。

──────────────────

【あとがき】

本作はカクヨムにも投稿しております!
カクヨムではかなりの話数、先行して投稿してあります。
続きが気になる方は是非、カクヨムでご覧になってください!
フォロー、★評価で応援して頂けると大変嬉しいです!

URL:https://kakuyomu.jp/works/16816452221072870067
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下
ファンタジー
 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。  そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。  しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。  これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...