戦闘力のないハズレ才能【翻訳】で古代魔導書を読み漁っていたら世界最強になってました

蒼乃白兎

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ガーディアンゴーレム

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 《傀儡(くぐつ)の箱庭》は入った者を閉じ込めておくための空間魔法である。
 この空間の出口は一カ所しかない。
 此処では巨木の根元にあるようだ。

 《傀儡(くぐつ)の箱庭》と名付けられているのは、空間内の者を外部に出さないように術式が組み込まれた守護者──ガーディアンゴーレムの存在が関係している。

 ガーディアンゴーレムは命令された条件を遂行し、敵と見做した者は全て撃退するのだ──。


 妖精と別れ、森を駆け抜けると、平原が広がっていた。
 どうしても視界には入るのはこの空を覆うぐらいに大きな巨木だ。
 平原の先で巨木が堂々と佇んでいる。

 その根元をゴーレムが不規則に徘徊していた。
 ゴーレムは灰色の鉱石を積み上げた人型の巨人のような姿をしている。

「ゴーレムを構成する鉱石はミスリルか。厄介だな」

 ミスリルは魔法との親和性が極端に低い鉱石だ。
 魔法攻撃に耐性があり、魔法使いは苦戦を強いられることになる。
 ……やりづらい相手を用意しているもんだな。

 それに妖精を閉じ込めておくだけを考えると、オーバーパワーに思える。
 妖精を閉じ込めておくことがそれだけ重要なのか……?

『ファフニール、これ以上近付くとあのゴーレムの敵対反応検知範囲に入ってしまう。その時点で戦闘が始まると思う』
『ほう。それがどうしたのだ? すぐに捻りつぶしてやればよかろう』
『それがね、あいつ結構強いと思うんだ』
『油断できない相手というわけか』
『うん。でも倒し方はもう分かっている。ゴーレムを一旦動作停止させ、胸部に記された古代文字(ルーン)を消すんだ』

 ゴーレムについての知識は古代魔導書である程度理解済みだ。
 だから、倒し方も既に分かっている。
 ガーディアンゴーレムは自己修復機能が搭載されており、本当の意味で倒すには古代文字(ルーン)のある文字を消してやることが重要だ。
 

『では、我があのゴーレムを動作不能にしてきてやろう』
『魔法耐性があるから、俺とは少し相性が悪いね。お願いできるかな?』
『任せておけ。では行くぞ!』

 ファフニールはゴーレムに向かって高速で飛行し始めた。
 すると、甲高い機械音が発せられ、ゴーレムの頭部が赤く光った。
 敵対反応を検知した証拠だ。
 ゴーレムはファフニールに向かって力強く駆け出した。
 通り道の地面は抉られ、大きな足跡が出来ていた。

 そして、両者が衝突した。

『ふぐぅっ!』

 ファフニールが力負けして一瞬怯んだ。
 その隙をゴーレムは見逃さない。
 右腕を上げて、振り下ろした。

 ズドーン、と轟音が響いた。

「ファフニールッ!」

 地面には大きなクレーターが出来ていた。
 あの一撃をくらってはファフニールもタダでは済まない。
 くっ、俺の判断ミスだったか──。

 そう思った瞬間、視界が眩い光に包まれた。

『石ころが我に勝てると思うなよッ!』

 小さかったファフニールは元の姿に戻り、ゴーレムの振り下ろしていた腕を押し返した。
 良かった……! ファフニールは無事だったようだ。

『本当の"力"というものを見せてくれるわッ!』

 ファフニールは右前脚を勢いよく、ゴーレム目掛けて振り下ろした。
 ゴーレムの時よりも大きな轟音が響く。
 それに伴って、地面に出来たクレーターの大きさもゴーレムのものに比べると倍以上大きかった。

『ノアよ、これで問題はないか?』
『ああ、十分だ』

 俺はクレーターの中心に倒れているゴーレムの胸部に乗った。
 しゃがんで、ゴーレムの胸部に刻まれた古代文字(ルーン)を改変する作業に入る。

 ゴーレムの胸部に刻まれた古代文字(ルーン)は『真理』という意味を持つ文字だ。
 この古代文字(ルーン)を刻まれたゴーレムは生命を宿し、動くようになる。
 だが、一番左端の古代文字(ルーン)を消せば『真理』ではなく──『死』という意味になる。
 この作業により、完全にゴーレムは機能を停止することになる。

「《消印》」

 古代文字(ルーン)を消すには《消印》の古代魔法を使う。
 一番左端の古代文字をなぞり、消し去る。
 この作業には魔力操作が求められるので、かなり集中力を使う。

「……ふぅ、これでもう大丈夫だな」

 額からにじみ出ていた脂汗を拭って、腰を下ろして、ゴーレムの胸部に座った。

『ファフニール、怪我はない?』
『なんともないぞ』
『あ、また小さい姿に戻ったんだね』
『こっちの方が楽でいいからな』
『ん、頭の部分ちょっと怪我してるね』

 俺はファフニールの頭に右手をかざした。

「──《治癒》」

 暖かな白い光に包まれ、ファフニールの怪我はすぐに完治した。

『……ふむ……助かる』
『いえいえ、どういたしまして。それにしてもファフニール、めちゃくちゃ強いね。ガーディアンゴーレムを瞬殺してしまうとは驚いたよ。本当になんで俺に命乞いなんかしたの?』
『何を言っておるか。ノアは我よりも圧倒的に強いだろう』
『えー? そんなことないよ。ガーディアンゴーレム相手は俺が戦うと多分キツかったと思うよ?』
『……なるほど、戦闘経験が少なすぎて自身の実力を完全に把握しておらんのだな。分かった。当分、我は戦わん。ノアが自分の実力を自覚するまではな』
『か、買い被りすぎな気がするけどそれ……』
『さあ、どうであろうな』

 ファフニールは挑発的な笑みを浮かべた。
 俺は頬を指で軽くかきながら、ガーディアンゴーレムが守っていた巨木の根元に視線をズラした。
 そこには《次元の狭間》があった。
 あそこに入れば、この空間を抜け出せるだろう。
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