戦闘力のないハズレ才能【翻訳】で古代魔導書を読み漁っていたら世界最強になってました

蒼乃白兎

文字の大きさ
上 下
6 / 31

巨竜ファフニール

しおりを挟む
 ひとまず、ファフニールの攻撃に対処しなければいけない。
 《魔力障壁》で展開した結界を動かして、ファフニールの前足を弾き飛ばす。
 ファフニールの巨躯(きょく)が動いたが、倒れることはない。
 でも、この隙に古代魔法が詠唱できるはずだ。

「《終極の猛火》」

 ウィンドタイガーを一撃で倒した《終極の猛火》をファフニールに向けて放った。

「グワアオォッ!」

 ファフニールの大きな口から青の火炎が放たれた。
 青の火炎と紫の火炎がぶつかり、相殺され、大きな衝撃が発生した。

 凄まじい風に俺は吹き飛ばされた。
 この向かい風の中では詠唱が出来ない……!

 宙に投げ出された俺は《軌道反転》を無詠唱で発動。
 これで吹き飛ばされた際の勢いは消すことが出来た。

「《空歩》」

 《空歩》を詠唱し、俺は宙に浮かぶ。

「よし、お返しだ──《魔力衝撃》」

 ファフニールに魔力で衝撃を与える。
 ドンッ、とファフニールの巨躯(きょく)が揺れて、地面に倒れた。
 ただこれはバランスを崩しただけ。
 まだ勝負の決め手にはなってない。

『なんだこの人間……! 化物か!?』

 なにか聞き慣れない声がした。
 下を向き、セレナさんを見てみる。
 唖然とした表情で俺を見上げていた。

 うーん、仮にセレナさんが言うならわざわざ人間って表現をするか?
 妙に引っかかる言い回しだった。

『なぜ封印から目覚めたばかりでこんな化物と戦わなければならんのだ!』

 化物と戦う……?
 もしかして、この声の主ってファフニールだったりするんじゃないか?

 俺は試しに話しかけてみる。

『今喋っているのは、もしかしてファフニールですか?』
『ぬ!? まさか化物が喋っているのか!?』

 この様子だと、どうやら声の主はファフニールのようだ。

『ば、化物って……。地味に傷つきますね……』
『お、おお、それはすまん……。なんと呼べばいいのだ?』
『ノアって呼んでもらえると嬉しいです』
『うむ。分かったぞ、ノア。ところで一つ頼みがあるんだが……どうか殺さないでくれぇ!!!』
『良いですよ』
『……い、いいのか!?』
『意思疎通出来るようですし。でもそのかわり、これから人間を殺さないって誓ってくれますか?』
『ふっ、それぐらい容易い。なにせ我は草食なのだからな!』

 めっちゃ意外な事実が明らかになった。
 他のファフニールはどうなんだろう。
 ちょっと気になった。

『他のファフニールも草食だったりするんですか?』
『いや、我だけだろうな。我は昔、ヤンチャしていたんだが、そのせいでこの火山に封印されることになってしまったのだ。最近目覚めたが、こうやって人間が我を倒しにやってくるので困っておる。自分がファフニールのイメージを下げてしまったのが原因だろうな』
『ふむふむ、分かりました。とりあえず、今ここにいるもう一人の人間と話してみますね』
『おお、助かる! 説得してやってくれ!』

 うーむ、なんとも気のいいファフニールだ。

 ……あれ? 
 平然とファフニールと話していたが、これってなんかおかしくないか?
 普通は魔物と話せないんじゃないか?

 ……まあいいか。
 とりあえず、セレナさんを説得してみよう。

 地面に降り、セレナさんに近寄る。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど、それよりファフニールをなんとかしないと……! 私もあなたのサポートぐらいなら出来るはずよ!」

 セレナさんは傷ついた身体を無理に動かして、立ち上がろうとした。

「ちょ、ちょっと一旦ストップ!」
「私なら大丈夫だから! それにこの機会を逃すとファフニールを倒せない……!」
「違うんです! このファフニールは温厚な奴なんです!」
「温厚? どこがよ! あなたのことを先に攻撃してきたのはアイツでしょ!」
「確かに……」

 俺はファフニールに尋ねる。

『ダメだ、ファフニールから攻撃してきたせいでこの子が信用してくれない』
『ひぇ~っ! そんなぁ~! この戦いはその子から仕掛けてきただけなのだ! 我がノアに攻撃を仕掛けたのも仲間だと思ってやったのだ!』
『なるほどね、分かったよ。伝えてみるね』
『よろしく頼む……!』

 セレナさんはジーっと俺を見ていた。
 まるで不可解なものを見るかのように。

「ね、ねぇ……あなたさっきから何を話しているの?」

 あぁ、そうか。
 セレナさんは俺が口にしている言語が分からないわけか。
 古代文字を理解しているものにしか詠唱は理解出来ないし、ファフニールと話しているのも訳が分からないことだろう。
 話しているときは気付かなかった。
 しかし、ファフニールと会話するときの言語はラスデア王国の共通語であるラスデア語とは大きく異なる。

「実はね、このファフニールと会話をしていたんだ」
「ファフニールと会話!? そんなこと出来るわけないじゃ……」

 セレナさんはそう言いかけて、黙った。

「……確かにファフニールの動きが止まってる」
「うん。もうこのファフニールに戦う意思はないんだ」
「……そ。分かったわ。あなたのことを信用してみる。私のこと助けてくれたわけだしね」
「おお! それは嬉しいよ! ありがとう!」
「べ、別にそこまで喜ばなくても……」
「いやいや、こんな平和的な解決が出来るなんて思っていなかったからさ。本当にありがとう!」
「……感謝するのはこっちの方なのに」

 セレナは小さな声で何か呟いた。
 よく聞こえなかった。

「ん? 何か言った?」
「な、なんでもない! ……ふぅ、とりあえず私の考えを伝えておくけど、これで平和的な解決だと思わない方がいいわ」
「……そうか。ファフニールを倒さなかった場合、ラスデア王国は間違いなく討伐しにくるのか……」
「ええ。それは間違いないと思うわ。仮にあなたの言う通りこのファフニールが温厚な魔物だとしても国はそれを信じることは出来ない」
「ファフニールがどこかに移動すればいいんじゃないか?」
「ダメよ。そんなことをすれば、間違いなくファフニールは討伐の対象になる。……今ファフニールを倒さなくてもどこかで倒されることになるわ」

 ……何か策はないかな。
 俺は腕を組んで、考えた。

 すると、ある古代魔法を思い出した。

 これならファフニールを救うことが出来る。

『話し合いの結果、ファフニールは今倒されなくてもこのままだと、どこかで倒されることになるみたいだ』
『エーーーーーッ! そんなぁ……! ノア、なんとかならんのか……?』
『一応、助かる方法はあるけど、これはファフニール次第だね』
『なにっ! 助かる方法があるのか! ならば我、なんでもやるぞ!』
『うん。でも断ってくれてもいいからね? ファフニールの意思を尊重したいからさ』
『うむ! 勿体ぶらずに早く教えてくれ!』

『──俺と従魔契約を結ぼう』

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下
ファンタジー
 鍛冶師ハルクは幼い時から、道具作りが好きな青年。だが独裁的な国王によって、不本意な戦争武器ばかり作らされてきた。  そんなある日、ハルクは国王によって国外追放されてしまう。自分の力不足をなげきつつ、生きていくために隣の小国で冒険者になる。だが多くの冒険者が「生産職のクセに冒険者とか、馬鹿か!」と嘲笑してきた。  しかし人々は知らなかった。実はハルクが地上でただ一人《鍛冶女神の加護》を有することを。彼が真心込めて作り出す道具と武具は地味だが、全て《超伝説級》に仕上がる秘密を。それを知らずに追放した独裁王国は衰退していく。  これはモノ作りが好きな純粋な青年が、色んな人たちを助けて認められ、《超伝説級》武具道具で活躍していく物語である。「えっ…聖剣? いえ、これは普通の短剣ですが、どうかしましたか?」

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...