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23話 鑑定士
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『ルンベルクのダンジョン』の1日目の戦果はなかなかのものだったんじゃないだろうか。
魔物の素材は『フォイルのダンジョン』のときと変わらず、剥ぎ取ることはしなかった。
これはもちろん、レベル上げを優先しているからだ。
だが、魔石(Dランク)だけでも十分な換金額になることだろう。
1個4000ムルだからな。
20個でなんと8万ムルだ。
ダンジョンから帰ってきた俺たちは冒険者ギルドで換金をしてもらう。
「……すみません、ギルドカードを見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん、ギルドカード? はい、これでいいか?」
俺は青銅のギルドカードを受付嬢に見せた。
「ブ、ブロンズ……。あ、し、失礼いたしました。今、換金させてもらいますね」
……もしかしてこれ、フォイルのときみたいに窃盗の疑いをかけられたりするんじゃないだろうな?
「これ盗んできた物とかじゃないからな?」
「……えっ!?」
「あの、ロアさん。そんなこと言うの変な疑いをかけられると思うんですけど」
「俺も言ってからちょっと思ったよね」
咄嗟の判断で言ってみたけど、どうやら失敗だったらしい。
「ちょっと待っててください。今、鑑定士に来てもらいますので」
そう言うと、受付嬢は席から離れて行った。
「ロアさん……」
「俺のせい?」
「さっきの発言で怪しさは増したかもしれません。私達、ルンベルクに来たばかりのEランク冒険者がこんな戦果なのは、きっとおかしいんですよ」
「なるほど、二人なのも結構怪しまれる原因になってそうだ。まぁでも怪しまれないためにパーティの人数を増やすのも違うよな。今の状態で安定して魔物を倒せているんだからさ。ソニアはどう思う?」
「そうですね……今のところロアさんだけで十分すぎるほどのダメージソースがあると思いますが、今後、魔法攻撃の効かない魔物と対峙した場合、かなり苦しい戦いを強いられるのは間違いないかと」
「魔法攻撃の効かない魔物か……。ダンジョン内なら[転移石]で逃げられるかもしれないけど、それ以外で出会ったら厳しいな」
[転移石]はダンジョン内でしか使うことは出来ない。
なんでもダンジョンの仕組みを利用した人工物だから、だそうだ。
詳しいことは知らん。
「……当分は『ルンベルクのダンジョン』の攻略を目指している訳ですので、2人のままでも問題ない気がします」
「それもそうだな。2人の方が都合のいいことは多いよな」
「はい」
人数が多ければ、それだけ経験値が分散されるからレベル上げの効率を良くするのならば、ソニアと二人パーティが理想的かもしれない。
一人はこの先、結構苦戦しそうだ。
今日、『ルンベルクのダンジョン』で戦ってみてそれが分かった。
所詮、魔法使いは後衛なのだ。
一人で戦うには隙が多い。
「お待たせいたしました」
「ういっす。それじゃあとっとと鑑定させてもらおうか──《鑑定》」
鑑定士の男は魔石を手に取って、じーっと見つめる。
「……ふむ、魔物の体内から取り出された魔石は時間が経つごとに劣化が始まるのだが、この魔石はまだ劣化が始まっていないな」
「……え? ということはつまり……」
「ああ、ちゃんと今日ダンジョンで取ってきた魔石だ」
「も、申し訳ございません!」
鑑定士の言葉を聞いた受付嬢は、呆然とした表情を見せた後にすぐさま俺たちに向かって頭を下げた。
これは逆に利用できそうだな。
「ああ、別にいいですよ。前いた村では問答無用で窃盗犯扱いされたので。まぁでもちょっと換金額に少し色つけてもらえたら嬉しいんだけどなぁ~」
「は、はい! そうさせて頂きます」
「ははは、こりゃギルドマスターから叱られそうだな」
「鑑定士さん、ちゃんと鑑定してくれて本当助かったぜ」
「ん? そりゃそれが俺の仕事だからな。当然のことをしたまでよ。おっと、一応自己紹介でもしておくか。俺はイヴァン。今日はちょっと野暮用でギルドにいたけど、普段は鑑定局を営んでいるんだ。価値の高そうなアイテムを手に入れたときは是非ウチに来てくれ」
そう言って鑑定士は名刺を渡してきた。
名刺には『イヴァン鑑定局』と書かれてある。
簡易的な地図に店の場所が描かれていた。
「商魂たくましい鑑定士だな」
「まあな。こうやって冒険者ギルドに出向いてるのもビジネスの一環さ」
「それじゃあ機会があれば俺も行かせてもらおう」
「お待ちしてますよ、お客さん」
ウインクをして、イヴァンは去って行った。
換金額は色をつけてもらえた結果、魔石(Dランク)を20個売って、10万ムルになった。
やっぱりDランクの魔石は金になるな。
討伐ペースはフォイルのときと大して変わりはないので、経験値、金、どちらも以前より効率よく稼ぐことが出来るようになったわけだ。
その晩、俺は宿屋の部屋で一人、更にレベル上げの効率を上げられないか、と【魔法創造】で取得するべき魔法を探していた。
とりあえず、当分は雷属性の魔法を使うだろうから他は除外して……。
──お、これなんかいいんじゃないか?
俺が見つけた魔法は範囲攻撃の雷属性の魔法で、消費レベルは150だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《稲妻雷轟》
消費MP:400
基本ダメージ:7000
属性:雷
詠唱時間:7秒
クールタイム:5秒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔物の素材は『フォイルのダンジョン』のときと変わらず、剥ぎ取ることはしなかった。
これはもちろん、レベル上げを優先しているからだ。
だが、魔石(Dランク)だけでも十分な換金額になることだろう。
1個4000ムルだからな。
20個でなんと8万ムルだ。
ダンジョンから帰ってきた俺たちは冒険者ギルドで換金をしてもらう。
「……すみません、ギルドカードを見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん、ギルドカード? はい、これでいいか?」
俺は青銅のギルドカードを受付嬢に見せた。
「ブ、ブロンズ……。あ、し、失礼いたしました。今、換金させてもらいますね」
……もしかしてこれ、フォイルのときみたいに窃盗の疑いをかけられたりするんじゃないだろうな?
「これ盗んできた物とかじゃないからな?」
「……えっ!?」
「あの、ロアさん。そんなこと言うの変な疑いをかけられると思うんですけど」
「俺も言ってからちょっと思ったよね」
咄嗟の判断で言ってみたけど、どうやら失敗だったらしい。
「ちょっと待っててください。今、鑑定士に来てもらいますので」
そう言うと、受付嬢は席から離れて行った。
「ロアさん……」
「俺のせい?」
「さっきの発言で怪しさは増したかもしれません。私達、ルンベルクに来たばかりのEランク冒険者がこんな戦果なのは、きっとおかしいんですよ」
「なるほど、二人なのも結構怪しまれる原因になってそうだ。まぁでも怪しまれないためにパーティの人数を増やすのも違うよな。今の状態で安定して魔物を倒せているんだからさ。ソニアはどう思う?」
「そうですね……今のところロアさんだけで十分すぎるほどのダメージソースがあると思いますが、今後、魔法攻撃の効かない魔物と対峙した場合、かなり苦しい戦いを強いられるのは間違いないかと」
「魔法攻撃の効かない魔物か……。ダンジョン内なら[転移石]で逃げられるかもしれないけど、それ以外で出会ったら厳しいな」
[転移石]はダンジョン内でしか使うことは出来ない。
なんでもダンジョンの仕組みを利用した人工物だから、だそうだ。
詳しいことは知らん。
「……当分は『ルンベルクのダンジョン』の攻略を目指している訳ですので、2人のままでも問題ない気がします」
「それもそうだな。2人の方が都合のいいことは多いよな」
「はい」
人数が多ければ、それだけ経験値が分散されるからレベル上げの効率を良くするのならば、ソニアと二人パーティが理想的かもしれない。
一人はこの先、結構苦戦しそうだ。
今日、『ルンベルクのダンジョン』で戦ってみてそれが分かった。
所詮、魔法使いは後衛なのだ。
一人で戦うには隙が多い。
「お待たせいたしました」
「ういっす。それじゃあとっとと鑑定させてもらおうか──《鑑定》」
鑑定士の男は魔石を手に取って、じーっと見つめる。
「……ふむ、魔物の体内から取り出された魔石は時間が経つごとに劣化が始まるのだが、この魔石はまだ劣化が始まっていないな」
「……え? ということはつまり……」
「ああ、ちゃんと今日ダンジョンで取ってきた魔石だ」
「も、申し訳ございません!」
鑑定士の言葉を聞いた受付嬢は、呆然とした表情を見せた後にすぐさま俺たちに向かって頭を下げた。
これは逆に利用できそうだな。
「ああ、別にいいですよ。前いた村では問答無用で窃盗犯扱いされたので。まぁでもちょっと換金額に少し色つけてもらえたら嬉しいんだけどなぁ~」
「は、はい! そうさせて頂きます」
「ははは、こりゃギルドマスターから叱られそうだな」
「鑑定士さん、ちゃんと鑑定してくれて本当助かったぜ」
「ん? そりゃそれが俺の仕事だからな。当然のことをしたまでよ。おっと、一応自己紹介でもしておくか。俺はイヴァン。今日はちょっと野暮用でギルドにいたけど、普段は鑑定局を営んでいるんだ。価値の高そうなアイテムを手に入れたときは是非ウチに来てくれ」
そう言って鑑定士は名刺を渡してきた。
名刺には『イヴァン鑑定局』と書かれてある。
簡易的な地図に店の場所が描かれていた。
「商魂たくましい鑑定士だな」
「まあな。こうやって冒険者ギルドに出向いてるのもビジネスの一環さ」
「それじゃあ機会があれば俺も行かせてもらおう」
「お待ちしてますよ、お客さん」
ウインクをして、イヴァンは去って行った。
換金額は色をつけてもらえた結果、魔石(Dランク)を20個売って、10万ムルになった。
やっぱりDランクの魔石は金になるな。
討伐ペースはフォイルのときと大して変わりはないので、経験値、金、どちらも以前より効率よく稼ぐことが出来るようになったわけだ。
その晩、俺は宿屋の部屋で一人、更にレベル上げの効率を上げられないか、と【魔法創造】で取得するべき魔法を探していた。
とりあえず、当分は雷属性の魔法を使うだろうから他は除外して……。
──お、これなんかいいんじゃないか?
俺が見つけた魔法は範囲攻撃の雷属性の魔法で、消費レベルは150だ。
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《稲妻雷轟》
消費MP:400
基本ダメージ:7000
属性:雷
詠唱時間:7秒
クールタイム:5秒
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