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15話 《豪火球》
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「そういえばソニアって《フォイルのダンジョン踏破者》の称号持ってなかったよな」
冒険者ギルドに向かう道中、俺はふと思い出したようにそんなことを言った。
「はい。でもロアさんは持ってましたよね」
「ソニアを助けたときに称号を取れたな。二つのフォイルのダンジョンのボスを倒せば貰えるみたいだ」
「ダンジョン系の称号は大体取得条件がそんな感じですね」
ソニアは称号のことを知ってたようだ。
俺は貰うまで存在を知らなかったのに……。
そう思ったことを、冒険者の先輩としての威厳を保つために俺は一切態度に出さない。
「取りに行くか? 称号を取るとHPが100増えるんだ。ソニアはタンクだから、持ってて損はしないと思うよ」
「そうですね……では、お願いしても良いですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます、ロアさん」
……というわけで、俺たちは『フォイルのダンジョン』にやってきた。
現在俺はレベル60なので【魔法創造】で《豪火球》を取得する。
『【魔法創造】の効果により《豪火球》を創造しました』
レベルを消費したため、これで今のレベルは10だ。
しかし、ボスの間に着く頃にはそれなりにレベルが上がっているだろう。
「ロアさん今、何かしたんですか?」
「ん? 【魔法創造】で新しい魔法を取得したんだ」
「ロアさんが一瞬魔力を放っていたので、気になったんです」
「魔力を放ってた? 感じ取れるのか?」
「一応、そういう訓練は少しだけしました」
「そんなことが出来るのか……。良ければ今度俺にも教えてくれないか?」
これから魔法を使っていくのに、魔力も感じ取れないってなると少し恥ずかしいからな。
「もちろん、良いですよ。それで新しい魔法を取得したってことは今、何レベルですか?」
「今は10レベルだな」
「えっ、大丈夫ですか……? 魔物の攻撃くらうと一撃で瀕死になっちゃいそうですけど……」
「今までずっとそうしてきたから大丈夫だよ」
「す、すごいですね……私はちょっと真似できそうにありません」
「俺も魔物を一撃で倒せるから、こそこそ歩き回ってたら結構安全だったな」
「普通、そんな状況だと焦ってしまうと思うんですけど、ロアさんは冷静そうですね……」
「若干怖かったけど、まぁそこまで……ほら、一撃で倒せるからさ、ね?」
「……ふふっ、なんだか気が抜けちゃいますね。……よし、私、頑張ります。ロアさんには絶対に触れさせません」
ソニアがやる気を出してくれた。
何故かよく分からんが、やる気になってくれるなら何よりである。
◇
前衛がいると、かなり快適にダンジョン内を進むことが出来た。
敵と遭遇したらソニアが引きつけてくれるので、俺は何も考えずに《火槍》を撃つだけだ。
経験値効率で言うと若干落ちたが、今後魔物のランクが高くなってくると、ソニアのような存在は必要不可欠だったように思える。
レベルは現在38だ。
パーティを組んでいると、やはり強敵を倒したボーナスは貰えなかった。
たぶんボーナスの判定は、パーティ内の最大レベルと倒した魔物の討伐推奨レベルの差で判断しているのだろう。
「魔物を一撃で倒せると戦闘が早く終わって良いですね」
「俺もそう思う。今まで何回も攻撃してやっと倒せてたからなぁ」
そう呟きながら、俺はたった今倒した『コボルトナイト』から魔石を取り出し、《アイテムボックス》の中に収納する。
今は[魔石(Eランク)]が24個入っている。
「……ロアさんの《アイテムボックス》って魔法もとてつもなく便利ですよね。荷物がかさばらなくて、取り出しも容易って、冒険者に欲しい能力を詰め込んだみたいです」
「ははは、俺もそう思う」
25レベルを消費するだけで取得できる魔法じゃないよな、本当に。
「……ここを降りれば最下層ですね」
魔物を倒し、前方にあるのは最下層への階段。
それを見たソニアはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
身体も震えている。
「怖いか? 別に無理しなくてもいいんだぞ」
「……恐怖はありますけど、ロアさんなら大丈夫です」
昨日、元パーティに囮にされたばかりだ。
心の傷が癒えてないのは当たり前だろう。
「安心してくれ。俺は絶対に逃げない」
「……はい。信じてます」
「よし、じゃあいこうか」
「はい!」
階段を降りていき、結界の中に入ると、そこには昨日同様にキングフロッグが待ち構えていた。
ふっ、見せてやるぜ。
俺の新しい魔法をな!
「《豪火球》」
詠唱を唱え、魔法陣が展開される。
詠唱時間は3秒。
1秒の差は体感だと、とても大きいように思えた。
そして、直径1mほどの巨大な火炎の球体が放たれた。
ドカーン!
爆発音が発せられ、炎がキングフロッグを包み込んだ。
『自身のパーティよりも強い敵を倒したため、経験値が加算されました』
『レベルが20上がりました』
「……は?」
なんと……あれだけ苦戦したキングフロッグを一撃で倒してしまったのだった。
冒険者ギルドに向かう道中、俺はふと思い出したようにそんなことを言った。
「はい。でもロアさんは持ってましたよね」
「ソニアを助けたときに称号を取れたな。二つのフォイルのダンジョンのボスを倒せば貰えるみたいだ」
「ダンジョン系の称号は大体取得条件がそんな感じですね」
ソニアは称号のことを知ってたようだ。
俺は貰うまで存在を知らなかったのに……。
そう思ったことを、冒険者の先輩としての威厳を保つために俺は一切態度に出さない。
「取りに行くか? 称号を取るとHPが100増えるんだ。ソニアはタンクだから、持ってて損はしないと思うよ」
「そうですね……では、お願いしても良いですか?」
「もちろんだ」
「ありがとうございます、ロアさん」
……というわけで、俺たちは『フォイルのダンジョン』にやってきた。
現在俺はレベル60なので【魔法創造】で《豪火球》を取得する。
『【魔法創造】の効果により《豪火球》を創造しました』
レベルを消費したため、これで今のレベルは10だ。
しかし、ボスの間に着く頃にはそれなりにレベルが上がっているだろう。
「ロアさん今、何かしたんですか?」
「ん? 【魔法創造】で新しい魔法を取得したんだ」
「ロアさんが一瞬魔力を放っていたので、気になったんです」
「魔力を放ってた? 感じ取れるのか?」
「一応、そういう訓練は少しだけしました」
「そんなことが出来るのか……。良ければ今度俺にも教えてくれないか?」
これから魔法を使っていくのに、魔力も感じ取れないってなると少し恥ずかしいからな。
「もちろん、良いですよ。それで新しい魔法を取得したってことは今、何レベルですか?」
「今は10レベルだな」
「えっ、大丈夫ですか……? 魔物の攻撃くらうと一撃で瀕死になっちゃいそうですけど……」
「今までずっとそうしてきたから大丈夫だよ」
「す、すごいですね……私はちょっと真似できそうにありません」
「俺も魔物を一撃で倒せるから、こそこそ歩き回ってたら結構安全だったな」
「普通、そんな状況だと焦ってしまうと思うんですけど、ロアさんは冷静そうですね……」
「若干怖かったけど、まぁそこまで……ほら、一撃で倒せるからさ、ね?」
「……ふふっ、なんだか気が抜けちゃいますね。……よし、私、頑張ります。ロアさんには絶対に触れさせません」
ソニアがやる気を出してくれた。
何故かよく分からんが、やる気になってくれるなら何よりである。
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前衛がいると、かなり快適にダンジョン内を進むことが出来た。
敵と遭遇したらソニアが引きつけてくれるので、俺は何も考えずに《火槍》を撃つだけだ。
経験値効率で言うと若干落ちたが、今後魔物のランクが高くなってくると、ソニアのような存在は必要不可欠だったように思える。
レベルは現在38だ。
パーティを組んでいると、やはり強敵を倒したボーナスは貰えなかった。
たぶんボーナスの判定は、パーティ内の最大レベルと倒した魔物の討伐推奨レベルの差で判断しているのだろう。
「魔物を一撃で倒せると戦闘が早く終わって良いですね」
「俺もそう思う。今まで何回も攻撃してやっと倒せてたからなぁ」
そう呟きながら、俺はたった今倒した『コボルトナイト』から魔石を取り出し、《アイテムボックス》の中に収納する。
今は[魔石(Eランク)]が24個入っている。
「……ロアさんの《アイテムボックス》って魔法もとてつもなく便利ですよね。荷物がかさばらなくて、取り出しも容易って、冒険者に欲しい能力を詰め込んだみたいです」
「ははは、俺もそう思う」
25レベルを消費するだけで取得できる魔法じゃないよな、本当に。
「……ここを降りれば最下層ですね」
魔物を倒し、前方にあるのは最下層への階段。
それを見たソニアはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
身体も震えている。
「怖いか? 別に無理しなくてもいいんだぞ」
「……恐怖はありますけど、ロアさんなら大丈夫です」
昨日、元パーティに囮にされたばかりだ。
心の傷が癒えてないのは当たり前だろう。
「安心してくれ。俺は絶対に逃げない」
「……はい。信じてます」
「よし、じゃあいこうか」
「はい!」
階段を降りていき、結界の中に入ると、そこには昨日同様にキングフロッグが待ち構えていた。
ふっ、見せてやるぜ。
俺の新しい魔法をな!
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詠唱を唱え、魔法陣が展開される。
詠唱時間は3秒。
1秒の差は体感だと、とても大きいように思えた。
そして、直径1mほどの巨大な火炎の球体が放たれた。
ドカーン!
爆発音が発せられ、炎がキングフロッグを包み込んだ。
『自身のパーティよりも強い敵を倒したため、経験値が加算されました』
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