5 / 32
05話 カーターの陰謀をぶち壊した
しおりを挟む
翌日、魔法が使えることを証明するために俺はギルドにやってきた。
このギルドには訓練スペースというものが用意されていて、初心者冒険者に戦い方を指南するための設備がある程度揃えられている。
藁を巻いたものに試し切りをしたり、木剣で模擬戦を行ったりも出来る。
俺も冒険者になりたての頃は利用した。
そして俺は今、訓練スペースに立たされている。
前には巻藁が置かれており、これに魔法を撃たなければならない。
「おいおい、ロアがついに盗みを働いたんだって?」
「いやー、いつかはやるだろうと思っていたが、とうとうやったか」
「生活する金も尽きちまったんだろうな」
「「「ハッハッハ」」」
ギャラリーに俺のことを知る冒険者が何人かいた。
俺が無様に魔法を使えずに捕まえられるところを見にきたのだろう。
まぁ魔法は使えるんだけど。
「てめえか! ウチの魔導具屋から魔石を盗んでいった奴は!」
顎髭を生やした強面のおっさんが現れて、俺に怒鳴り散らしてきた。
魔導具屋?
一体何のことだろう。
「へっへっへ……ロア~? お前ついに僕ん家の店に嫌がらせをしにきたんだなぁ」
強面のおっさんの後ろから現れたのは魔法使いのカーターだ。
「僕ん家……って、お前魔導具屋の息子だったのか」
めちゃくちゃどうでも良い情報を知ってしまった。
「そうだよ! 丁度無くなってたんだよなぁ。ウチの店からEランクの魔石が10個……お前が盗んだんだろ!」
「盗んでねーよ」
「とぼけるんじゃねえ! 昨日、ウチの店からEランクの魔石が10個消えてたんだよ! てめえが取ったんやろがい!」
「はい、間違いありません。この男は冒険者の中でも無能と有名な奴です。無能すぎてパーティも組めないのにEランクの魔石を10個も持ってくるはずがありませんからなぁ。犯人はコイツに違いありません!」
強面のおっさんの横に並んで、俺に色々言ってくるのは昔からギルドで働いている眼鏡を掛けた痩せ型の男だ。
この人、よく嫌味を言ってくるんだよなー。
昨日、カーターに便乗したのもこの人だし。
「だから言ってるだろう? 魔法を使えるようになったんだって」
「魔法? スキルポイントを貰えないお前がどうやって魔法を覚えるって言うんだ? 面白い冗談だなぁ! ハッハッハッハ!」
カーターは高らかに笑った後に、
「魔法っていうのはなぁ、こういうのを言うんだよ! ──《風弾》」
と、魔法を詠唱した。
カーターの足元に魔法陣が展開される。
そして、巻藁に風の塊が放たれた。
ポンッ!
風の塊が巻藁に当たると、衝撃で藁が周囲に飛び散った。
「ハッハッハ! 見せつけてやんなよ! カーター!」
「ロアがかわいそうじゃねーかよ……ぷっ、はははは!」
「へっ、コイツはウチの店から窃盗を働いた奴だからな。惨めな目に合ってもらわねーと俺の気が済まねえよ」
「「「ハッハッハッハ!!!」」」
楽しそうに笑ってるのは、まぁ慣れてるので何とも思わんが……一つ気になったことがあった。
──《風弾》って消費レベル5の魔法だよな?
え、それを俺の前に見せつけて威張ってるの?
マジで?
「ぷっ」
つい笑ってしまった。
「おい何笑ってんだよ」
そう言って、カーターは俺に近付いてくる。
「ーー」
俺はカーターに聞こえないように小声である言葉を口にした。
「どうせあの魔石は【アイテム作成】で作成したんだろう? 残念だったな。見栄を張ったのかもしれないが、逆に利用させてもらったぞ。魔石は僕がこっそり10個、隠しておいたのさ。お前を捕まえて得た金はあのギルド職員と俺とで山分けにさせてもらうぜ~」
と、カーターは耳打ちをしてきた。
……あー、なるほど。
コイツらグルだったわけか。
本当は魔石なんて盗まれていないんだろうな。
盗まれたことにして、俺から金を騙し取ろうって訳か。
うわぁ、性格悪いな~。
しかし、コイツは俺が魔石を【アイテム作成】で作成したと思って、こんなことをしたのか。
バカだなぁー。
今更、魔法を覚えたとか言って見栄を張るかよ。
しかもすぐにバレる嘘だしな。
「俺がちゃんと魔法を覚えてる時のこととか考えてないのか?」
カーターに俺は問う。
「なーに言ってんだよ。お前が魔法を使える訳ねーだろがよぉ!」
「なるほど、分かったよ」
そしてしばらくして、ギルドマスターと一人の衛兵がやってきた。
「ロアの窃盗容疑を晴らすためにこれから魔法の詠唱を行ってもらう。フォイルの冒険者ギルドのギルドマスターである俺が責任を持って証人となろう。ロア、これから詠唱する魔法はなんだ?」
「《火槍》だ」
「ほう《火槍》はDランク冒険者相当の魔法だな。Fランクのお前が本当に使えるのか? 撤回するなら今のうちだ。自白すれば罪は軽くなるぞ」
「なに、今から見せるさ」
「じゃあ見せてもらおう」
俺の堂々とした態度にカーターは動揺しているようだ。
「なぁ、カーター。謝るなら今のうちだぜ。自白すれば罪は軽くなるらしいからな」
「ハッハッハ! そういう手には乗らんさ……。早く見せてごらんよォ!」
「分かった」
今ここで謝ってくれれば俺は許したのにな。
「《火槍》」
詠唱し、魔法陣が展開されると、冒険者たちは「おお……」と声をもらした。
詠唱時間の4秒が過ぎ、《火槍》が巻藁に向かって発射された。
巻藁は《火槍》に貫かれ、炎上し、黒焦げになった。
「な、な……っ! そんな馬鹿な……! お前……本当に魔法を使えるのか! ……し、しかも、ぼ、僕より強力な魔法だと……!?」
カーターは急にガクガクと震え出した。
その額からは冷や汗が垂れていた。
「ああ、何度も言っただろうに」
「……本当に使えるようだな。ではこの窃盗も証拠不十分になるな」
ギルドマスターは言った。
「いや、窃盗じゃないと完璧に証明できる。なぜならこれは、そのギルド職員とカーターによって仕組まれてたからだ」
「な、なにを言い出す! でたらめだ!」
「わ、私は何もやっていません!」
冒険者たちの間でも、ざわざわ、と波紋が広がっていく。
「俺は言ったからな。自白すれば罪は軽くなるってな──《再生》」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《再生》
消費MP:1×秒数
効果:《録音》の音声を流すことが出来る。
属性:無
詠唱時間:0秒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生活魔法の《再生》を使うと、
『どうせあの魔石は【アイテム作成】で作成したんだろう? 残念だったな。見栄を張ったのかもしれないが、逆に利用させてもらったぞ。魔石は僕がこっそり10個、隠しておいたのさ。お前を捕まえて得た金はあのギルド職員と俺とで山分けにさせてもらうぜ~』
カーターが耳打ちした声が聞こえてきた。
そう、俺はカーターが近づいてきたときに小声で生活魔法の《録音》を詠唱していたのだ。
わざわざ近付いてくるってことは、何か重大なことを言うんじゃないかと思ったんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《録音》
消費MP:1×秒数
効果:聞いた音を記録することが出来る
属性:無
詠唱時間:0秒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《生活魔法》を取得しておいて良かったな、本当に。
おかげで痒い所に手が届いてくれた。
「ば、ばかな! こ、これは何かの間違いだ!」
「おいおい、さっきお前が俺に耳打ちしてきた言葉だぜ。その様子をお前らも見てたよな?」
見学していた冒険者たちに振ると、みんなウンウンと、首を縦に振った。
「おいテメェふざけんじゃねえ! どうしてくれんだ! そんなこと言わなかったらバレなかったじゃねーかよ!」
眼鏡のギルド職員はカーターを怒鳴りつけた。
「お、俺に文句を言うな!」
「カーター……お前なにやってくれてんだ!」
「と、父さん!? ち、違う! 俺はやっていない!」
「うるせぇ!」
強面のおっさん(カーター父)は、カーターの顔面をぶん殴った。
「ぶへっ!」
カーターは殴られて、地面に倒れた。
「なるほど、確かにこれは完璧な証明だな。つまりロアは潔白だった訳だ。……そして、問題があったのはウチの職員と冒険者だったみたいだな」
ギルドマスターが眼鏡のギルド職員とカーターを睨みつけた。
「ひ、ひぃっ! ギ、ギルドマスター! ゆ、許してくださいぃ!」
「黙れ。こっちに来い」
ギルドマスターは眼鏡のギルド職員の肩を掴んで、どこかへ連れて行く。
「お前もだ」
「お、俺は何もしてねえ!」
「窃盗の罪を被せようとしただろうが!」
「ち、違う! なにかの間違いだ! ロアが仕組んだ罠だああァァ!」
「往生際が悪いぞ、黙れ!」
「ごふっ」
衛兵はカーターの腹を殴った。
そしてギルドマスターを追うようにカーターを連れて行った。
「あ、あんた……ウチのせがれがすまねぇ……俺もつい怒鳴っちまったな……」
強面のおっさん(カーター父)が申し訳なさそうに謝ってきた。
「そうやって謝ってくれれば許したんだけどな」
「本当にすまねぇな……」
「あんたは気にしなくて良いぜ。カーターは今頃すげえ反省してるだろうからな」
「わりいな……恩に着る」
そう言って、強面のおっさん(カーター父)は訓練スペースから去って行った。
「ま、色々あったけど、これで疑いはすっかり晴れたみたいだな」
……ん?
見学していた冒険者達が驚いた表情でこちらを見ている。
……めんどくさいから放っておこう。
このギルドには訓練スペースというものが用意されていて、初心者冒険者に戦い方を指南するための設備がある程度揃えられている。
藁を巻いたものに試し切りをしたり、木剣で模擬戦を行ったりも出来る。
俺も冒険者になりたての頃は利用した。
そして俺は今、訓練スペースに立たされている。
前には巻藁が置かれており、これに魔法を撃たなければならない。
「おいおい、ロアがついに盗みを働いたんだって?」
「いやー、いつかはやるだろうと思っていたが、とうとうやったか」
「生活する金も尽きちまったんだろうな」
「「「ハッハッハ」」」
ギャラリーに俺のことを知る冒険者が何人かいた。
俺が無様に魔法を使えずに捕まえられるところを見にきたのだろう。
まぁ魔法は使えるんだけど。
「てめえか! ウチの魔導具屋から魔石を盗んでいった奴は!」
顎髭を生やした強面のおっさんが現れて、俺に怒鳴り散らしてきた。
魔導具屋?
一体何のことだろう。
「へっへっへ……ロア~? お前ついに僕ん家の店に嫌がらせをしにきたんだなぁ」
強面のおっさんの後ろから現れたのは魔法使いのカーターだ。
「僕ん家……って、お前魔導具屋の息子だったのか」
めちゃくちゃどうでも良い情報を知ってしまった。
「そうだよ! 丁度無くなってたんだよなぁ。ウチの店からEランクの魔石が10個……お前が盗んだんだろ!」
「盗んでねーよ」
「とぼけるんじゃねえ! 昨日、ウチの店からEランクの魔石が10個消えてたんだよ! てめえが取ったんやろがい!」
「はい、間違いありません。この男は冒険者の中でも無能と有名な奴です。無能すぎてパーティも組めないのにEランクの魔石を10個も持ってくるはずがありませんからなぁ。犯人はコイツに違いありません!」
強面のおっさんの横に並んで、俺に色々言ってくるのは昔からギルドで働いている眼鏡を掛けた痩せ型の男だ。
この人、よく嫌味を言ってくるんだよなー。
昨日、カーターに便乗したのもこの人だし。
「だから言ってるだろう? 魔法を使えるようになったんだって」
「魔法? スキルポイントを貰えないお前がどうやって魔法を覚えるって言うんだ? 面白い冗談だなぁ! ハッハッハッハ!」
カーターは高らかに笑った後に、
「魔法っていうのはなぁ、こういうのを言うんだよ! ──《風弾》」
と、魔法を詠唱した。
カーターの足元に魔法陣が展開される。
そして、巻藁に風の塊が放たれた。
ポンッ!
風の塊が巻藁に当たると、衝撃で藁が周囲に飛び散った。
「ハッハッハ! 見せつけてやんなよ! カーター!」
「ロアがかわいそうじゃねーかよ……ぷっ、はははは!」
「へっ、コイツはウチの店から窃盗を働いた奴だからな。惨めな目に合ってもらわねーと俺の気が済まねえよ」
「「「ハッハッハッハ!!!」」」
楽しそうに笑ってるのは、まぁ慣れてるので何とも思わんが……一つ気になったことがあった。
──《風弾》って消費レベル5の魔法だよな?
え、それを俺の前に見せつけて威張ってるの?
マジで?
「ぷっ」
つい笑ってしまった。
「おい何笑ってんだよ」
そう言って、カーターは俺に近付いてくる。
「ーー」
俺はカーターに聞こえないように小声である言葉を口にした。
「どうせあの魔石は【アイテム作成】で作成したんだろう? 残念だったな。見栄を張ったのかもしれないが、逆に利用させてもらったぞ。魔石は僕がこっそり10個、隠しておいたのさ。お前を捕まえて得た金はあのギルド職員と俺とで山分けにさせてもらうぜ~」
と、カーターは耳打ちをしてきた。
……あー、なるほど。
コイツらグルだったわけか。
本当は魔石なんて盗まれていないんだろうな。
盗まれたことにして、俺から金を騙し取ろうって訳か。
うわぁ、性格悪いな~。
しかし、コイツは俺が魔石を【アイテム作成】で作成したと思って、こんなことをしたのか。
バカだなぁー。
今更、魔法を覚えたとか言って見栄を張るかよ。
しかもすぐにバレる嘘だしな。
「俺がちゃんと魔法を覚えてる時のこととか考えてないのか?」
カーターに俺は問う。
「なーに言ってんだよ。お前が魔法を使える訳ねーだろがよぉ!」
「なるほど、分かったよ」
そしてしばらくして、ギルドマスターと一人の衛兵がやってきた。
「ロアの窃盗容疑を晴らすためにこれから魔法の詠唱を行ってもらう。フォイルの冒険者ギルドのギルドマスターである俺が責任を持って証人となろう。ロア、これから詠唱する魔法はなんだ?」
「《火槍》だ」
「ほう《火槍》はDランク冒険者相当の魔法だな。Fランクのお前が本当に使えるのか? 撤回するなら今のうちだ。自白すれば罪は軽くなるぞ」
「なに、今から見せるさ」
「じゃあ見せてもらおう」
俺の堂々とした態度にカーターは動揺しているようだ。
「なぁ、カーター。謝るなら今のうちだぜ。自白すれば罪は軽くなるらしいからな」
「ハッハッハ! そういう手には乗らんさ……。早く見せてごらんよォ!」
「分かった」
今ここで謝ってくれれば俺は許したのにな。
「《火槍》」
詠唱し、魔法陣が展開されると、冒険者たちは「おお……」と声をもらした。
詠唱時間の4秒が過ぎ、《火槍》が巻藁に向かって発射された。
巻藁は《火槍》に貫かれ、炎上し、黒焦げになった。
「な、な……っ! そんな馬鹿な……! お前……本当に魔法を使えるのか! ……し、しかも、ぼ、僕より強力な魔法だと……!?」
カーターは急にガクガクと震え出した。
その額からは冷や汗が垂れていた。
「ああ、何度も言っただろうに」
「……本当に使えるようだな。ではこの窃盗も証拠不十分になるな」
ギルドマスターは言った。
「いや、窃盗じゃないと完璧に証明できる。なぜならこれは、そのギルド職員とカーターによって仕組まれてたからだ」
「な、なにを言い出す! でたらめだ!」
「わ、私は何もやっていません!」
冒険者たちの間でも、ざわざわ、と波紋が広がっていく。
「俺は言ったからな。自白すれば罪は軽くなるってな──《再生》」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《再生》
消費MP:1×秒数
効果:《録音》の音声を流すことが出来る。
属性:無
詠唱時間:0秒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生活魔法の《再生》を使うと、
『どうせあの魔石は【アイテム作成】で作成したんだろう? 残念だったな。見栄を張ったのかもしれないが、逆に利用させてもらったぞ。魔石は僕がこっそり10個、隠しておいたのさ。お前を捕まえて得た金はあのギルド職員と俺とで山分けにさせてもらうぜ~』
カーターが耳打ちした声が聞こえてきた。
そう、俺はカーターが近づいてきたときに小声で生活魔法の《録音》を詠唱していたのだ。
わざわざ近付いてくるってことは、何か重大なことを言うんじゃないかと思ったんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《録音》
消費MP:1×秒数
効果:聞いた音を記録することが出来る
属性:無
詠唱時間:0秒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《生活魔法》を取得しておいて良かったな、本当に。
おかげで痒い所に手が届いてくれた。
「ば、ばかな! こ、これは何かの間違いだ!」
「おいおい、さっきお前が俺に耳打ちしてきた言葉だぜ。その様子をお前らも見てたよな?」
見学していた冒険者たちに振ると、みんなウンウンと、首を縦に振った。
「おいテメェふざけんじゃねえ! どうしてくれんだ! そんなこと言わなかったらバレなかったじゃねーかよ!」
眼鏡のギルド職員はカーターを怒鳴りつけた。
「お、俺に文句を言うな!」
「カーター……お前なにやってくれてんだ!」
「と、父さん!? ち、違う! 俺はやっていない!」
「うるせぇ!」
強面のおっさん(カーター父)は、カーターの顔面をぶん殴った。
「ぶへっ!」
カーターは殴られて、地面に倒れた。
「なるほど、確かにこれは完璧な証明だな。つまりロアは潔白だった訳だ。……そして、問題があったのはウチの職員と冒険者だったみたいだな」
ギルドマスターが眼鏡のギルド職員とカーターを睨みつけた。
「ひ、ひぃっ! ギ、ギルドマスター! ゆ、許してくださいぃ!」
「黙れ。こっちに来い」
ギルドマスターは眼鏡のギルド職員の肩を掴んで、どこかへ連れて行く。
「お前もだ」
「お、俺は何もしてねえ!」
「窃盗の罪を被せようとしただろうが!」
「ち、違う! なにかの間違いだ! ロアが仕組んだ罠だああァァ!」
「往生際が悪いぞ、黙れ!」
「ごふっ」
衛兵はカーターの腹を殴った。
そしてギルドマスターを追うようにカーターを連れて行った。
「あ、あんた……ウチのせがれがすまねぇ……俺もつい怒鳴っちまったな……」
強面のおっさん(カーター父)が申し訳なさそうに謝ってきた。
「そうやって謝ってくれれば許したんだけどな」
「本当にすまねぇな……」
「あんたは気にしなくて良いぜ。カーターは今頃すげえ反省してるだろうからな」
「わりいな……恩に着る」
そう言って、強面のおっさん(カーター父)は訓練スペースから去って行った。
「ま、色々あったけど、これで疑いはすっかり晴れたみたいだな」
……ん?
見学していた冒険者達が驚いた表情でこちらを見ている。
……めんどくさいから放っておこう。
1
お気に入りに追加
1,392
あなたにおすすめの小説

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした
青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。
この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。
私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。
そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが……
勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。
ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる