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28 ぼく、ここにいて、いいんだ

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 相変わらず眠そうな瞳がぼくを見つめる。
 彼がまばたきをする度に、まぶたのほくろが見え隠れした。
 サツキくんは、にんまりと口角を上げて、
「あったりまえじゃん!」
 と、ぼくの両手を取った。

 ――ぼく、ここにいて、いいんだ。

 何もできなくて、周りからも比べられて、いじめられて。
 ダメダメだったぼくにも、才能があるんだ。
 ぼくはにっこりと笑う。
「ぼく、占い研究部、戻ってくるよ!」
「おかえり、如月くん!」
 生まれて初めて、自分を認めてあげられた気がした。
「なぁなぁ。感動の再会のところ、悪いんだけどさ」
 ずっと静かにぼくらを見ていたみのるくんが声をあげた。
「いっそさ、こんな秘密でウワサだけのコソコソした活動じゃなくて、占いする部活をちゃんと作らないか?」
 みのるくん、ボランティア部のこと忘れてないか……?
 そもそも誰が占い師か分からない、ウワサの存在でしかない秘密の活動だから、相談者がくるんじゃないのか……?
 そのための変装として、女装しているわけだし。
 まぁ、変装は建前で、きっと女装はただのサツキくんの趣味だけど。
 でも、とぼくは考える。
 正式に部になったら部活を隠す必要もないし、大っぴらに宣伝したりできる。
 例えば、文化祭なんかで、もっと色々な人の悩みを解決してあげられるかもしれない。
 うーん、サツキくん次第だな、これは。
 みのるくんの提案に、サツキくんは考える素振りをしてから、
「占い師の正体がわからないし、実態がよくわからない活動だから、みんなが相談しやすい環境だと思ってたんだけど……。まぁ、部として活動するのも、それはそれでメリットがあって、いいかもね」
 部費も貰えるかもだし、と付け足して、意外にもあっさりとみのるくんの案を採用した。
「でもねぇ、部活を作るのにも、条件があるんだよ」
「条件?」
 みのるくんとぼくの声がそろう。
 サツキくんは腕を組んで、悩ましげにうなずいた。
「三年生をのぞいて、部員が三人以上いること」
 ぼくとみのるくんが一年生、サツキくんが三年生だから……。
「一人足りないのかぁ」
 がっくりと肩を落とすぼくたち。
 そのとき、ノックもなしにガチャリと部室のドアが開いた。
「おい、如月、いるか」
 弥生くんだった。
 彼が部屋に入った途端、制汗剤の香りがただよってくる。
 サッカー部の活動が終わって、そのまま、このボランティア部の部室まで来たのだろうか。
「……なんか女装してるやつ、増えてねぇか?」
 弥生くんが、怪しい人を見るような目を、みのるくんに向ける。
 一目でみのるくんが男子だと見抜いているようだった。
 みのるくんの女装もなかなか似合ってると思ったのに。
 みのるくんは弥生くんの視線に気づくと、にかっと友好的な笑みを浮かべた。
「会うのは二度目ですね。如月ちゃんのクラスメイトの、夏木みのるです」
 そうだった、とぼくは思い出す。
 二人は音無先輩が占いに来たときに、対面していたんだった。
「如月、『ちゃん』……?」
 にこやかにアイサツをするみのるくんとは反対に、弥生くんは眉間のしわを深くした。
 みのるくんは、弥生くんの良くない雰囲気を察知したのか、弥生くんからはなれてぼくの方に近寄ってくる。
「如月ちゃん、このイケメンは……?」
 ぼくの服のすそを引っ張って、紹介を求めてきた。
 音無先輩のときは、対面していたものの、緊急事態が発生して、みのるくんと弥生くんは自己紹介を済ませてないんだった。
 ぼくは弥生くんのとなりに立ち、彼を手で示す。
「神崎弥生くん。ぼくの従兄弟で、二年生。たまに顔出しに来てくれるんだよね」
「俺が顔出してるんじゃなくて、お前が変な目にあってないか、心配で見に来てるんだよ」
 もう十分変な目にあってるけど、とでも言いたげに、彼はぼくの格好を、足の爪先から頭のてっぺんまでジロジロと見た。
 そろそろ女装にも慣れてほしいなぁ。
 みのるくんはあごをつまんで、何やら思案してから、
「二年生?」
 と、確認してきた。
「そう、二年生」
 ぼくはうなずく。
「じゃあ、その弥生先輩に入部してもらえば、部活成立するんじゃね?」
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