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37章 新年に向けて
料理の役割
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オードブルに続いて用意された冷製のポタージュ。
オユキにしてみれば、過去に完全に合わせているのであれば、コンソメと呼ばれるものが出てくると考えていたものだが、この辺りはアルノーの組み立てが光るところ。
未だに、グラニテは二皿先。
成程、此処迄出されていたものが、どうしたところで火を使う事を前提としているから用意したのだろうと、オユキにしても理解が及ぶ物。
つまりは、この先のポワソンに関しては、どうしたところで火を使った物になるのだろうと、そんな予感をオユキに与えながら。
しかし、実際に出てきた物を改めて口に運んでみれば、オユキにしても以外を感じる物が。
「ブランダード、ですか」
「オユキは、知っているのね」
「生前に口にしたものは、オードブルや立食の時に見る物とばかり」
確かに、魚を使っているには違いない。
長く火を入れているというのに、使われている魚が鱈だからだろうか。
それとも、トモエが度々用意して、オユキにしても苦手意識の減っているジャガイモを使った上で火を入れた料理だからだろうか。
意外を感じるほどに、オユキにとっても非常に口にしやすい物になっている。
「手がかかっている料理であれば、オユキさんでも食べやすいだろうと言う事ですから」
「そう、でしたか」
「相変わらず、自覚が無いのね」
「それにしても、神国でよもや武国の食事を口にできるとは。いえ、あちらと比べても、こちらの料理人の腕は頭一つ以上抜けているのですが」
「ヴァレリア様から頂いたお言葉として、後ほど伝えておきますね」
鱈とジャガイモを、ペースト状に混ぜ合わせて。本来であれば、バゲットや他のパンなどと併せて口に運ぶ料理ではある。
だが、そこはアルノーによる工夫なのだろう。
ポワソンとして成立するほどに、滑らかなクリームとしている部分もあれば、きちんと魚の身だと感じる部分もあれば、ココット皿の底にはこちらも薄切りにしたジャガイモが敷かれている。
素材それぞれを、混ぜて、滑らかになった部分に加えてそちらもきちんと楽しめるように。
「どう、言えばいいのでしょうか」
そして、他の三人に比べて三分の一にも満たない量。
それほどに少なく盛り付けられているオユキの皿。それを口に運んでいるうちに、オユキとしてもやはり己の内に満ちる物があるのだと気が付く。
「分かる、物なのでしょうね」
つまりは、他の者たちはいざ知らず。他の皿についても、既に口にしたものとは明確に違いがあるのだと、それだけを理解して。
「トモエさんも、ここ暫くは忙しくされていると考えていたのですが」
今オユキが口に運んでいる料理、この料理に関してはトモエの手が入っているのだと、あまりにもはっきりと理解が及ぶ。
そして、口に出してみればトモエからもどこか嬉しそうに。
「やはり、気が付くものですか」
「かつての頃は分かりませんが、今となっては」
その様な事を、オユキとしては口にしてみるものだが。
「それこそ、生前であればオユキさんが口にする物は私か、それ以外でしたから」
「言われてみれば、そうですね。息子や娘にしても、作った時には誇らしげにしていたものでしたか」
「それにしても、私が見て、手を加えてはいましたから」
「おや」
己の娘が、学び舎で習った物を家でも作るのだとしたときに。
トモエは、基本として隣に並んで作っていたものだ。
勿論、娘や息子から見た上でトモエがそれなりに忙しくしていたと、それも事実ではあるのだろう。
だが、そうであったとしても。当時のトモエが、オユキが口にするものを自分以外が用意するのだという事実は、そこまで受け入れられるものではなかった。
勿論、トモエ自身、オユキの計らいに依る物ではあったのだが、常々手伝いを頼んでいる相手もいた。
その人物が、惣菜として数日分用意してくれている物もあった。
だが、それでも最低限の品は常にトモエが用意していたのだ。
要は、己の子供相手であっても、トモエが用意するのだと決めている物に関しては、絶対に譲る事は無かった。
「貴女達、一応私達がいるのだけれど」
「そういえば、そうでしたね」
「あの、アイリス様。オユキ様、トモエ様は楽しまれているようですから」
「この二人は放っておけば、二人だけだもの。こうして、他が無理にとするくらいがちょうどいいのよ」
アイリスから、なかなかに辛辣な評が下されるものではあるのだが。
「そも、今日は休日とまでは言いませんが」
「邪魔をしたのは、もう謝罪したわ。それに、オユキ、貴女、少しは肉をつけようというのでしょう」
「また、痛いところを」
「成長を願うというのなら、少なくとも食事はきちんととらなければ、私以外にも言われているでしょうに」
「セツナ様の事もありますから」
「あちらは、純粋な種よ。貴女とは、違うわよ」
オユキのつまらぬ言い訳など、取るに足らぬとばかりにアイリスから。
トモエにしても、己以外にオユキの食事に関してこうして注意をしてくれる相手がいるのは嬉しい事だと、止めるそぶりを見せない。
「オユキさんが好んでいる物と言えば、魚もある程度手に入るようになりましたし、揚げ物の油についても一応めどはついたのですが」
「あら、オユキは、苦手では無かったのかしら」
「魚にしても、種類を選べば今のように楽しんで頂けるようですから」
トモエが、オユキには理解が及ばぬ話をしているのだが、そちらは置いて。他の者たちは、すっかりと皿を空けているというのに、圧倒的に量の少ないオユキにしても、どうにかそれに追いつく様にと食事の手を進める。
此処までの間は、そこまで差が開く事は無かったのだ。
次に控えている皿、魚料理の後に出てくる肉料理、それがただただオユキの食事を勧める手をお遅くしてはいる。他の者たちを待たせているという自覚は、オユキにもある。だからこそ、こうして一先ずの話題などを、料理に関わるものとして提供しながら。
基本として、主題に入るのは、食事を一通り楽しんでからなのだから。
それまでの間は、あくまで簡単な情報交換などを行うのだと、公爵夫人にエステールにと、散々にオユキは習っているのだから。
「かつての世界を想えば、実際の武国では魚介は色々と種類も豊富かとは思いますが」
「そう、ですね。私の暮らしていた地というのは、離宮と神殿だけとなりますので市井のという意味ではやはりよく分かりません。それでも、こうしてご用意いただけている物はどこか懐かしさを覚えますし、こうして口にすれば、他にもと思いつくものも」
「そのあたりは、アルノーへとアベル様も色々と頼まれていたようですが」
「客人からのご要望とあればと、アルノーさんも楽しんで腕を振るっておいでですよ。ヴァレリー様についてこられた方、ユニエス公爵家から幾人か借り受けていることもありますが、そちらからの要望でもありますから」
そして、トモエの何気ない言葉に、オユキが止めようと考えてはいる物の、それが間に合わず。
「ユニエス公爵家からの方々も、私に対しては」
「アイリスさんを、どうしたところで優先するように今は動かれているでしょうから」
元より、アベルに統制が取れているとは思えない家なのだ。
オユキですら気が付く程度には、アベルという人間をオユキの側に。ファンタズマ子爵家という家督をオユキが得るまでの間は、何やらアベルの側にいる者たちの幾人かはトモエからアベルにとそうした動きを魅せる人間すらいた家だ。
さらには、今回に至ってはいよいよ既に家としてのつながりを明確に持つ武国の王家よりも、テトラポダの姫であり、神国に対して既に多大な功績を示した相手を上に置きたいと考えての事であるらしい。
「アベル様でしたら、どうなのでしょう。やはり、私よりも」
「正室については、間違いなくアイリスさんを選ばれるでしょうが、側室として入ったとしてもいよいよ由縁を辿れば主家の姫君です。政治的にも、軽んじられていると感じるのであればアベルさんに訴えるのが良いかと」
「トモエさん。現状、神国には、その、私たちの周囲に置かぬ様にとして頂いていることもありますから」
ようやく、ポワソンを全て口に運んだオユキが改めてトモエの勘違いを正す。
そも、現在の神国における主流の意見というのは武国に対してかなり厳しい見方をすることが是となっている物だ。
そして、それを作り出したのは、原因は武国に有れど魔国からの要望も携えた上で訴えているのは、オユキなのだから。
トモエにしても、己がかの国に対して明確に隔意を抱いていると言う事を忘れたわけではない。
しかし、個人を見るトモエと、背景までを見る物との違いがやはりそこにはある。
オユキにしても、個人としてみることまでを忘れるわけではないのだが、貴族どころか、王族あり巫女でもある相手に対してそれを忘れる事は、やはりない。
「オユキさん」
「難しい話ですから」
「私からの話、祖霊様から言われていることも、それなのよね」
「アイリスさんの、祖霊様からも、ですか」
つまりは、それほどに酷いと言う事なのか、もしくはとオユキは考えながらも。
「アイリスさんが、わざわざ当家にヴァレリー様を連れてというのは意外を感じましたが」
「仕方ないでしょう。気に入らないこともあれば、見せたくない姿もあって。私だけ、としたらこの子があの家でどのような扱いを受けるか分からなかったんだもの」
「それを、その時点で」
「それが出来るようであれば、そもそも私の陽炎に気が付いているわよ」
「蓼食う虫もなどとは言いますが」
トモエには全く効果が無く、オユキにしてもほとんど効果が無いアイリスによる惑わしの魔術。
理屈は未だに分からず、アイリスからも種族としての特性なのか、はたまた祖霊から直接与えられている奇跡なのかにしても言及の無い業。
「在り方も、見た目も、それにどういえばいいのかしら」
「いえ、アイリスさんがアベルさんの隣でのびのびとされているのは、理解しているのですが」
そして、アイリスにしてもどうやら気が付いているらしい。
というよりも、トモエはここで一つ理解が及んだことがある。
ならば、この後、流れとしてはトモエも流石にどうかと考えるのだが。
アイリスからアルノーに相談でもして、機会をうかがっていたのだとここで気が付いたこともある。
この後に出てくる、オユキの為にとトモエが日々狩猟に出るたびに市場を冷やかしては買い込む果物。それを使ってアルノーに習いながら用意しているグラニテが出てくるからと言う事でもあるのだろう。
要は、オユキの機嫌が良い間に、どうにかアベルに対しての手を打ってしまいたいと、そうい話がアイリスからもあるらしいのだと。
オユキにしてみれば、過去に完全に合わせているのであれば、コンソメと呼ばれるものが出てくると考えていたものだが、この辺りはアルノーの組み立てが光るところ。
未だに、グラニテは二皿先。
成程、此処迄出されていたものが、どうしたところで火を使う事を前提としているから用意したのだろうと、オユキにしても理解が及ぶ物。
つまりは、この先のポワソンに関しては、どうしたところで火を使った物になるのだろうと、そんな予感をオユキに与えながら。
しかし、実際に出てきた物を改めて口に運んでみれば、オユキにしても以外を感じる物が。
「ブランダード、ですか」
「オユキは、知っているのね」
「生前に口にしたものは、オードブルや立食の時に見る物とばかり」
確かに、魚を使っているには違いない。
長く火を入れているというのに、使われている魚が鱈だからだろうか。
それとも、トモエが度々用意して、オユキにしても苦手意識の減っているジャガイモを使った上で火を入れた料理だからだろうか。
意外を感じるほどに、オユキにとっても非常に口にしやすい物になっている。
「手がかかっている料理であれば、オユキさんでも食べやすいだろうと言う事ですから」
「そう、でしたか」
「相変わらず、自覚が無いのね」
「それにしても、神国でよもや武国の食事を口にできるとは。いえ、あちらと比べても、こちらの料理人の腕は頭一つ以上抜けているのですが」
「ヴァレリア様から頂いたお言葉として、後ほど伝えておきますね」
鱈とジャガイモを、ペースト状に混ぜ合わせて。本来であれば、バゲットや他のパンなどと併せて口に運ぶ料理ではある。
だが、そこはアルノーによる工夫なのだろう。
ポワソンとして成立するほどに、滑らかなクリームとしている部分もあれば、きちんと魚の身だと感じる部分もあれば、ココット皿の底にはこちらも薄切りにしたジャガイモが敷かれている。
素材それぞれを、混ぜて、滑らかになった部分に加えてそちらもきちんと楽しめるように。
「どう、言えばいいのでしょうか」
そして、他の三人に比べて三分の一にも満たない量。
それほどに少なく盛り付けられているオユキの皿。それを口に運んでいるうちに、オユキとしてもやはり己の内に満ちる物があるのだと気が付く。
「分かる、物なのでしょうね」
つまりは、他の者たちはいざ知らず。他の皿についても、既に口にしたものとは明確に違いがあるのだと、それだけを理解して。
「トモエさんも、ここ暫くは忙しくされていると考えていたのですが」
今オユキが口に運んでいる料理、この料理に関してはトモエの手が入っているのだと、あまりにもはっきりと理解が及ぶ。
そして、口に出してみればトモエからもどこか嬉しそうに。
「やはり、気が付くものですか」
「かつての頃は分かりませんが、今となっては」
その様な事を、オユキとしては口にしてみるものだが。
「それこそ、生前であればオユキさんが口にする物は私か、それ以外でしたから」
「言われてみれば、そうですね。息子や娘にしても、作った時には誇らしげにしていたものでしたか」
「それにしても、私が見て、手を加えてはいましたから」
「おや」
己の娘が、学び舎で習った物を家でも作るのだとしたときに。
トモエは、基本として隣に並んで作っていたものだ。
勿論、娘や息子から見た上でトモエがそれなりに忙しくしていたと、それも事実ではあるのだろう。
だが、そうであったとしても。当時のトモエが、オユキが口にするものを自分以外が用意するのだという事実は、そこまで受け入れられるものではなかった。
勿論、トモエ自身、オユキの計らいに依る物ではあったのだが、常々手伝いを頼んでいる相手もいた。
その人物が、惣菜として数日分用意してくれている物もあった。
だが、それでも最低限の品は常にトモエが用意していたのだ。
要は、己の子供相手であっても、トモエが用意するのだと決めている物に関しては、絶対に譲る事は無かった。
「貴女達、一応私達がいるのだけれど」
「そういえば、そうでしたね」
「あの、アイリス様。オユキ様、トモエ様は楽しまれているようですから」
「この二人は放っておけば、二人だけだもの。こうして、他が無理にとするくらいがちょうどいいのよ」
アイリスから、なかなかに辛辣な評が下されるものではあるのだが。
「そも、今日は休日とまでは言いませんが」
「邪魔をしたのは、もう謝罪したわ。それに、オユキ、貴女、少しは肉をつけようというのでしょう」
「また、痛いところを」
「成長を願うというのなら、少なくとも食事はきちんととらなければ、私以外にも言われているでしょうに」
「セツナ様の事もありますから」
「あちらは、純粋な種よ。貴女とは、違うわよ」
オユキのつまらぬ言い訳など、取るに足らぬとばかりにアイリスから。
トモエにしても、己以外にオユキの食事に関してこうして注意をしてくれる相手がいるのは嬉しい事だと、止めるそぶりを見せない。
「オユキさんが好んでいる物と言えば、魚もある程度手に入るようになりましたし、揚げ物の油についても一応めどはついたのですが」
「あら、オユキは、苦手では無かったのかしら」
「魚にしても、種類を選べば今のように楽しんで頂けるようですから」
トモエが、オユキには理解が及ばぬ話をしているのだが、そちらは置いて。他の者たちは、すっかりと皿を空けているというのに、圧倒的に量の少ないオユキにしても、どうにかそれに追いつく様にと食事の手を進める。
此処までの間は、そこまで差が開く事は無かったのだ。
次に控えている皿、魚料理の後に出てくる肉料理、それがただただオユキの食事を勧める手をお遅くしてはいる。他の者たちを待たせているという自覚は、オユキにもある。だからこそ、こうして一先ずの話題などを、料理に関わるものとして提供しながら。
基本として、主題に入るのは、食事を一通り楽しんでからなのだから。
それまでの間は、あくまで簡単な情報交換などを行うのだと、公爵夫人にエステールにと、散々にオユキは習っているのだから。
「かつての世界を想えば、実際の武国では魚介は色々と種類も豊富かとは思いますが」
「そう、ですね。私の暮らしていた地というのは、離宮と神殿だけとなりますので市井のという意味ではやはりよく分かりません。それでも、こうしてご用意いただけている物はどこか懐かしさを覚えますし、こうして口にすれば、他にもと思いつくものも」
「そのあたりは、アルノーへとアベル様も色々と頼まれていたようですが」
「客人からのご要望とあればと、アルノーさんも楽しんで腕を振るっておいでですよ。ヴァレリー様についてこられた方、ユニエス公爵家から幾人か借り受けていることもありますが、そちらからの要望でもありますから」
そして、トモエの何気ない言葉に、オユキが止めようと考えてはいる物の、それが間に合わず。
「ユニエス公爵家からの方々も、私に対しては」
「アイリスさんを、どうしたところで優先するように今は動かれているでしょうから」
元より、アベルに統制が取れているとは思えない家なのだ。
オユキですら気が付く程度には、アベルという人間をオユキの側に。ファンタズマ子爵家という家督をオユキが得るまでの間は、何やらアベルの側にいる者たちの幾人かはトモエからアベルにとそうした動きを魅せる人間すらいた家だ。
さらには、今回に至ってはいよいよ既に家としてのつながりを明確に持つ武国の王家よりも、テトラポダの姫であり、神国に対して既に多大な功績を示した相手を上に置きたいと考えての事であるらしい。
「アベル様でしたら、どうなのでしょう。やはり、私よりも」
「正室については、間違いなくアイリスさんを選ばれるでしょうが、側室として入ったとしてもいよいよ由縁を辿れば主家の姫君です。政治的にも、軽んじられていると感じるのであればアベルさんに訴えるのが良いかと」
「トモエさん。現状、神国には、その、私たちの周囲に置かぬ様にとして頂いていることもありますから」
ようやく、ポワソンを全て口に運んだオユキが改めてトモエの勘違いを正す。
そも、現在の神国における主流の意見というのは武国に対してかなり厳しい見方をすることが是となっている物だ。
そして、それを作り出したのは、原因は武国に有れど魔国からの要望も携えた上で訴えているのは、オユキなのだから。
トモエにしても、己がかの国に対して明確に隔意を抱いていると言う事を忘れたわけではない。
しかし、個人を見るトモエと、背景までを見る物との違いがやはりそこにはある。
オユキにしても、個人としてみることまでを忘れるわけではないのだが、貴族どころか、王族あり巫女でもある相手に対してそれを忘れる事は、やはりない。
「オユキさん」
「難しい話ですから」
「私からの話、祖霊様から言われていることも、それなのよね」
「アイリスさんの、祖霊様からも、ですか」
つまりは、それほどに酷いと言う事なのか、もしくはとオユキは考えながらも。
「アイリスさんが、わざわざ当家にヴァレリー様を連れてというのは意外を感じましたが」
「仕方ないでしょう。気に入らないこともあれば、見せたくない姿もあって。私だけ、としたらこの子があの家でどのような扱いを受けるか分からなかったんだもの」
「それを、その時点で」
「それが出来るようであれば、そもそも私の陽炎に気が付いているわよ」
「蓼食う虫もなどとは言いますが」
トモエには全く効果が無く、オユキにしてもほとんど効果が無いアイリスによる惑わしの魔術。
理屈は未だに分からず、アイリスからも種族としての特性なのか、はたまた祖霊から直接与えられている奇跡なのかにしても言及の無い業。
「在り方も、見た目も、それにどういえばいいのかしら」
「いえ、アイリスさんがアベルさんの隣でのびのびとされているのは、理解しているのですが」
そして、アイリスにしてもどうやら気が付いているらしい。
というよりも、トモエはここで一つ理解が及んだことがある。
ならば、この後、流れとしてはトモエも流石にどうかと考えるのだが。
アイリスからアルノーに相談でもして、機会をうかがっていたのだとここで気が付いたこともある。
この後に出てくる、オユキの為にとトモエが日々狩猟に出るたびに市場を冷やかしては買い込む果物。それを使ってアルノーに習いながら用意しているグラニテが出てくるからと言う事でもあるのだろう。
要は、オユキの機嫌が良い間に、どうにかアベルに対しての手を打ってしまいたいと、そうい話がアイリスからもあるらしいのだと。
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