憧れの世界でもう一度

五味

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37章 新年に向けて

人の心は

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「極論となりますが、結局のところはアベルさんとイマノルさんが選んだという事実が最も重要になりますが」

オユキが、トモエに一つの事柄を隠すことを止めた。
最早公然の秘密となっていたのだが、寧ろそうであるからこそトモエは知らないふりをせねばならず。他の使用人たち、この機会にと考えて改めて宣誓を行おうという物たちにしてもトモエには話題として振ることが出来なかった事柄。
生前のトモエを知る者から、改めて今はそれぞれの伴侶に贈る品を相談されている処。
鞘を飾ることについては、降臨祭に向けて着々と進んでおりもはや職人たちからの完成を待つばかり。寧ろ、当初の予定では降臨祭の前にと話していたはずではあるのだが、気が付けばどころではなく、明確に神国の擁する神殿、多くの教会から随分と多くの者が名を連ねる形での書状が王家とマリーア公爵に届けられたこともあり、降臨祭の中でとなっている。

「それにしても、指輪ばかりと考えていましたが、それぞれに差はあるのでしょうか」

そして、アベルにしてもイマノルにしても、何やら指輪ではなく腕輪や首飾りまでを対象としている。

「こっちだと、指輪は約束の時と伝来の物をとすることが多いな。寧ろ、こうした場面で贈るのは、式に身に付ける衣装に合わせた装飾が基本だ」
「お二方は、既にそれぞれのお相手の、いえ、アイリスさんはともかくクララさんはオユキさんと公爵夫人に呼ばれている以上は」
「そのあたりは、こうして呼び出した相手に、勿論ある程度口の堅い相手を選ぶ必要はありますが」
「大筋だけを決めて、後の細かい部分を任せられるというのならば、正直な所そこまで悩む必要はないのでは」

トモエからは、やはりそのようにしか答えられはしない。
今この場で完成品を買う訳では無い。それこそ、それぞれの伴侶が今もまだあれやこれやと起案が得ているだろう装い。それに、確かにかつての世界に比べて時間がかかる作業になる以上はと、その様な事も確かに考えるのだが。

「私としては、生前にも勧められていましたが衣装を決めて、改めてお約束のある方と一緒にというのが良いかと思いますが」
「それが出来れば、苦労はないんだがな」
「ええ」

だが、何やらそれが出来ぬ理由があるのだと、どうにもこうして連れ出された先で特にトモエにとっては興味を、購買欲をそそる品が何一つ用意されぬ場で応答を行う以上の事柄が出てきそうな気配を感じ取って。

「何か、由来のある事ですか」
「由来といえば、由来となるのか。トモエは、建国王の事はどこまで」
「何処までと言われましても、凡そ一般的とされている事柄もどうにも」
「一般的ではない事柄を聞くこともできる立場かとは思いますが」
「それは、確かに思い当たるところもありましたし、試してみてとしたこと、その結果から考えることもありますが」

そもそも、アベルが口に出したその人物にしても始まりの町で門番などを行っていたのだ。そこで、彼の部下、騎士が門を守る職務を与えられたのでもなく。初めからそうした役職として雇用された者たちを示すのではなく。門番という、最早種族と考えても問題がなさそうな人物に関して。口に出すのは、流石に商人たちも存在する場だからこそ、トモエも避けてはいるのだが。

「そっちに関連する事でもあるんだが、華と恋の試練とでも言えばいいのか」

アベルが何やら言いにくそうに、随分と言葉を濁してとしているのだが。

「そちらに関しては、イマノルさんはもはや考える必要はないのでは」
「あれは、正直認められたのはクララのほうといいますか、私のほうでは、明確な功績というのは頂けていませんので」
「こちらの事を考えれば」
「お前とオユキを基準に考えられても、俺らとしても流石に困るんだがな」

言われて、アベルの視線が示す先。こちらに来た時に、かつての世界の創造神だろう相手からも力が加えられている功績。オユキは、何やら別の事を考えている様子があり、こちらの創造神からだろうとすっかりと考えている様子ではあるのだが、トモエにとってはそう考えている品。

「確かに、私たちとしては生前があるわけではありますが、だからこそ、ですね」
「そうだな。それを期待して誘っておきながら、そっちに言及するのは流石に違うわな」
「その、団長、いえ、アベル様の言に加えるのだとすれば、こちらでは式を正式に上げる時に、式そのものが華と恋からの試練となると言いますか。魔物が木々と狩猟、戦と武技、知識と魔から与えられる誰にでも受けられる試練だとすれば、今度の物は限られた物とはなりますが」
「私としては、是非とも一度だけとしてほしくはありますが、ええ、そちらに関しては異邦の価値観を基にと飲み込みましょう」
「物分かりが良くて助かる。こっちに関しては、神殿を使う上で広くとなったろ。で、お前らのというよりも、オユキが一切気にしてないから、お前に話は廻っていないかもしれないが」

そこで、トモエにも改めて簡単に説明がなされる。
間違いなく、オユキは興味を持たないだろうからと省略されている部分までを含めて。
オユキは、実に気軽にという程でも無いのだが、オユキ自身のデビュタント。今回は、こちらに関しても少々特別な物となる、既にファルコに声をかけられて早々に学び舎から籍を抜いたものだけでなく、王都で学籍になくとも今年新たに成人となる者たちに関して、相応の後見があるのならば王城で開かれるものに参加をしても良いとされているデビュタントが存在している。それにパートナーを連れて参加をできる者たちもいれば、そうでは無い者たちもいる。要は、そこで後見を得られぬ者たち、さらには新成人ばかりではない婚姻を挙げるものたちに広くとされる今回。王家の者たちは、既に己の式は終えているからと、今回に関しては場の提供に回る事となったため、いくつかの形を広くと行う事にしたらしい。要は、アベルが、王家の血脈をそれもかなり近い血脈を持ち、公爵家の当主でもあるというのにアベルがテトラポダに配慮をする形。要は、そちらにアベルが併せて祭祀を司るアイリス、獣の祖霊を持つからこそ、獣の特徴を持つ者たちに対してとするものであるらしい。そして、トモエとオユキに関しては異邦の形として、こちらの国とは異なる形でと。そして、この国の物に関してはレジス侯爵子息と、ラスト子爵家子女に対してとなっていると言う事であるらしい。

「だとすれば、ファルコ君、いえ、マリーア公爵の令孫のほうがとは思いますが」
「あいつが第一ならそうなったんだろうがな。クララの事もあってな」
「クララさんは、正直な所そうした所作に関してはリュディさんに劣るのだと、ご本人も」
「公爵令孫に子爵の第三子女だからな。侯爵の第二子息と子爵の第二子女のほうが流石に上だ。年齢も、適齢というのは難しいから、そっちに関しては婚約になるしな」
「極論とはなりますが、そちらはそちらで求められていることもあるでしょうに」
「そのためには、マリーア伯の第一が、な」
「そういえば、リヒャルト君のお相手はついぞ聞いた覚えがありませんね」
「そっちも、色々と変わる状況で用意が難航しているらしくてな」
「本当に、ままなりませんね」

要は、変わる状況に対応をさせるのかと、あまりにも変わりすぎる情勢の皺寄せをいよいよこの時期に次世代にしても良いのかと、そうした矜持は持ち合わせている者たちがほとんどであるらしい。

「事情は分かりましたが、そうですね、イマノルさんはクララさんにとするよりもオユキさんが経由してではありますが、既に切っ掛けは頂いたわけですから、そちらを考慮するのが第一となるでしょう。間違いなくクララさんも、クララさんだからこそそれを大事にするでしょう。お二方の大事、そちらに関しては事前に確かめておくだけが良いと思いますよ」

トモエにとっても、クララにとっても。何処か、似通ったところがある相手だからこそ、クララもそのように考えてくれるだろうとして。

「アベルさんのほうは、その、アイリスさんの物は、正直、難しいですよ。私の意見をとなるのであれば、いよいよもってカリンさんではなく私たちの知っている物となりますから」
「それは、確か前に聞いた」
「ええ。そちらの流れとなりますので、少々私たちの物に近くなるかと」

その場合は、あのあまりにも名前も、逸話も多い存在。だからこそ、化かすとでもいえば良いのだろうか。

「オユキさんがいない場でとなると、少々負荷は大きくなりそうですが」
「そこまで行うのは、流石に」
「アベルさんは、その、正直どのみち当日とはならないでしょうが、それまでの間に」

そもそも、当日までにアベルがアイリスの祖霊から許可を、納得を得られなかった場合どうなるかなど、トモエにしても考えたくないのだ。

「それも、あるんだよなぁ」
「団長でも、流石に」
「加減は、正直加護を得るよりもして欲しくはあるんだが」
「望めはしないでしょうね。形だけの物と、その納得が頂けるかも、正直な所」

アベルが、文化として近しいはずの、テトラポダの文化に近しい物を持っているカリンに声をかけずに。舞台衣装として、かつての世界での舞姫としての経験を確実に積んでいたカリンに頼まずにこうしてトモエに頼んでいるというのが、何とも情けなさを感じる物ではある。そして、間違いなくあの祖霊とも何か関りを与えられているらしいトモエとオユキのこうした評価は間違いなく伝わっていることだろう。
その結果として、難易度が際限なく上がっていくことにはなるだろう。

「その、万が一といいますか」
「頼めるのか」
「一応、最善は尽くしますが」

さて、一応はかりそめの物として、祖霊が認めぬ様にと、あの気難しい祖霊にとっては認める必要の無いものとしつつも、どうにかアイリスが納得できる形。次に連なる、確かな形としての約束を。そうした場とするために必要な物とは何だろうかと、その様な事をトモエは考えつつ。しかし、聞いた話で、またオユキの扱いに公爵夫人が苦慮しているだろうなと、その様な事もやはり想像がつく。

「オユキさんは、どちらかといえば形にこだわりを持っていますので、今頃かなりの難題をまた言い出しているでしょうね」
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