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36章 忙しなく過行く
古くから
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オユキにとって、やはり現状の位に拘泥するわけではないのだが。それでも、トモエのためを思えば、色々と今後の事を考えれば巫女という職分は、実に都合が良い物でもある。どうしたところで、こうしてあまりに明確な不都合を感じている時間と言うものが相応に長くはあるのだが、やはりそれ以上の対価は得られているのだと、オユキとしてはそのように考えている。
「聞いていますか、オユキさん」
「その、はい」
半分ほどは、実のところオユキは聞き流してはいる。ただし、トモエにしても当然それは理解しているのだ。滾々と説教を、トモエにしてもそうした振る舞いは得意ではないのだが、そも、オユキのこうした態度が言っても聞かぬのならとトモエに拍車をかけているのだが。
「相も変わらず。再三繰り返しお伝えしているというのに」
「それは理解していますが、必要な事であれば」
「本当に必要だったのか、私はそれを疑っているのだと話しているのです」
トモエの言葉に、それが当然とばかりに頷いて見せるシェリアとカナリア。
オユキが今寝かされているのは、夫婦の寝室だというのに、今となってはその部屋には随分と他の顔が並んでいる。さきの二人をはじめ、ローレンツにタルヤ。さらには、セツナとクレドまでもが顔を連ねてオユキに対してきちんと色々と自重しろと話すために。
「言い分は分かるのですが、そうですね、オユキさん」
「確かに、約束は私たちの間だけではありますが」
「ですから、こうして色々な方を頼んだわけです」
「それは、ええと」
「確かに、私としても私たちの間での事に無粋な事とは思いますが、いいですか、オユキさん。私は、間違いなく初めて口にする事かとは思いますが」
「トモエさん、それは」
トモエの言葉。前置きの重たさ、あまりにもまっすぐにとオユキを見る瞳。それらを見て、オユキとしては余人に聞かせるべきではないと考えてしまう。ただ、トモエの言葉を止めようにも、今のオユキはやはり動作が緩慢で。言葉を作るにも、トモエが紡ぐ言葉よりも先にオユキが何かを形にすることが出来ない。
「オユキさんが失われてしまえば、私は、私にそこから先はありません」
かつては、全くもって逆の立場であった。
己の余命をいやでも悟ったトモエが、病室で、己の顔を覗き込み涙を流すオユキに対してかつてトモエはそこで使ったのだ。約束を。
同じことを行うというのならば、オユキはこの時点で約束という切り札を、二人の間でほとんどそう扱ってもいい事柄を使わなければならない。そして、トモエがその選択を迫っているのだとオユキは理解するからこそ、決断の時に互いの選択、捻じ曲げるべき事柄それがあるのだとオユキも理解しているからこそ、ここでそれを軽々に口に出せない。出したくないのだと、そんな思考が働いてしまう。
もう少し、体調が良ければ。
それこそ、此処でトモエの言葉を途切れさせることが出来る程度の体調であれば。
そう考えながらも、トモエにしてもオユキのそうした後悔を使って、慙愧の念までを使って。それほどまでに、今後ここまでオユキという存在を、トモエは何やら少しづつ感覚として理解し始めているらしい、オユキというモノ。それがこれ以上すり減らぬ様にと、随分と気を使ってくれているのだとそれを喜ぶオユキがいるのも事実。
どうにも、オユキは殊更ではあるのだが、トモエがオユキの為に。そうして意識を向けている時間が増える事、その想いが強ければ強いほど、己のどこか、自覚の及ばぬところが喜んでいるのが理解できてしまう。困ったことだ、今後を考えれば、間違いなくこうした場というのは喜ばしくないというのは理解できている。だが、その場でのオユキは、そうした感情をトモエから向けられている今のオユキは、どうしたところで。
「その、有難うございますと、私からは」
「生前は、私は約束をもって捻じ曲げましたが」
「はい。生前の私は、約束が無ければ間違いなく今のトモエさんと同じ決断をしていたでしょう」
例え、そこに他の係累がいるのだとして。
オユキにとっては、この世界というのはトモエがいるかどうか。かつての世界においても、それしか判断基準が存在しなかった。そうしたオユキの歪を、トモエが慮って色々と後に遺そうとしたのだろうと、そんな少々穿った見方すら今となっては出来てしまう。事実として、トモエをこちらに、オユキが失われた後も繋ぎ止める物を考えて、オユキは身の回りに人を置いていると言う所もある。
そして、オユキが信頼をしているのだとそうした振りをして見せれば、トモエとて、ああ、オユキが信頼している、それほどの者なのだと少しづつ理解が進んでいくのだから。互いに互いを想って。そして、何処までも互いに依存して。そうした姿を評して、片翼しかない鳥が、互いを翼の代わりに。絡まる枝が木目も交じり一つに見える様に。その功績を与えられるだけの物となっている。
もはや、互いに互いの存在が無ければ色々と困難を抱えるのだと、その理解が互いにあるのだから。
「ですから、オユキさん」
「その、それは」
「約束は約束です。私から、止める事は今後も無いでしょう。ですが、くれぐれも」
だからこそ、己を平然と投げだすような真似だけはしてくれるなよと、トモエは言葉を作る。実際に、それを形にしているわけではないのだが、握るオユキの手に力を込めて。互いに合わせる瞳に、思いを乗せて。トモエは、その様な事に約束を消費させたくないのだと、只それだけを込めて。
「幼子故か、よくよく懲りぬ者じゃな。此処までの事を繰り返せば、いよいよ己の事とは言え不満もたまるじゃろうに」
「私にしても、何度も苦言を呈してはいるのですが。本当に、トモエさんにまでここまで心配をさせて。それこそ、トモエさんだけではなく、アナさんにも」
「だ、そうですよ、オユキさん」
「そちらに関しては、私としても」
オユキとしても忸怩たるものがあるのだと。
「そも、今回に関しては予定外の事もありましたし」
「そちらは、祭りの後に回しても」
「どうなのでしょうか、その場合結果がまた異なった様にも思えますから」
戦と武技の神からの警告、何故オユキはそれを無視したのか。これまでは、神々の願いを兼ねようと動いていたはずだというのに、何故今回は。ここ暫く、繰り返して尋ねている事柄。
「祭りに参加をしてしまえば、やはり今回のように、いえ、今回以上に私に対しても相応の負荷がかかったでしょう。今回は、そもそも私から供出が出来る物が無いからと、アイリスさんとヴァレリーさんへと向かいましたが」
「オユキさん、そういう事ですか」
言ってしまえば、オユキの考えというのはあくまで己はこちらの世界に来るにあたって、こちらで暮らすにあたってトモエの為にとしか考えていないのだと、それを改めて口にする。今この場にいるのは、確かにトモエとオユキに対して好意的な者達ばかりだからと。
やはり、オユキとしても不満があるのだ。巫女としての職務、その位に助けられている部分が多いのは事実ではある。だが、助けられていると感じる以上の負荷がオユキにかかっている、少なくともオユキがそのように考えているのも事実である。
だからこそ、今回のようにオユキが、オユキから徴収できるものがほとんど存在しない、そのような場を整えてみればどうなるのか。他にも二人巫女がいるという状況で、同じ場に使徒を親に持つオユキが存在しているという状況を作った時にどうなるのか。果たして、常々オユキから、オユキが理解できなかったとしても徴収されていたものがどうなるのか。それを今回の祈願祭で確認しようと考えてふるまったのだ。
「結果としては、最低限で済んだと考えても」
ただし、オユキが忘れていることが、一つある。
「オユキさん、以前カナリアさんに言われたことがありますよね」
「カナリアさんに、ですか」
何やらトモエは覚えているらしいのだが、オユキにはとんと心当たりがない。
確かに、カナリアからは実に色々とオユキは、トモエも言われているのが現状ではある。どうにもはっきりとしない意識の中で、夢見心地といった状態で。繋ぐトモエの手の感触を、込められた力の強さを嬉しく思いながらも記憶をさかのぼってみるのだが、どうにもすぐに思い出せるものが無い。
「不足があれば、本質から容赦なく補填がなされると、そう言われていたでしょう」
そう言いながらも、トモエは空いた手をオユキの喉元に。
かつて、確かにトモエはオユキの喉を刃をもって貫きその半ばから断ち切った。カナリアの言葉では、かつての一刀は確かにオユキの本質にまで傷を残したのだと語られたものだ。そして、今もトモエが触れてみれば明らかに熱を持っている。視覚としても、オユキの肌の白さがあるためか、何もなかったはずだというのに明確に赤く色が浮いている。痣があるのだと、此処を怪我をすることがあったのだと、そう示すかのように。
「そういえば、その様な事を言われましたね」
トモエの不安とは裏腹に、オユキは体調が悪いからというのが一番大きいのだろうが実にのんびりと。寧ろ、トモエが己の喉に、急所に触れる手がくすぐったいのだとでも言わんばかりに目を細めて。
こうしていれば、後一時間もしないうちに、それこそ数十分の内にはまた眠りに落ちるだろうと実に分かり易い洋装で。
「トモエさんは覚えていてくださったみたいですが、本質に傷の入ったオユキさんが覚えていないというのは」
「そこな炎熱の鳥よ、本質への傷というのは器ではなく」
「はい。器だけでなく種族の根幹、器を満たすための魂や付随する物に」
「幼子の伴侶が、そこまでをかなえたと」
「ええと、仕組みに関しては私も理解が及んではいませんが」
何やら、これまでは聞こえなかった言葉にしても、少々聞こえ始めている様子ではあるのだが、そちらは一先ず置いて起き。
「ですが、オユキさん。今回の祭祀で得られる予定だったものは」
「得られなくとも問題が無い、そうとまでは言いませんがすぐに他の機会もあります。ただ、正直な所」
「そこまでを含めて、ですか。ですが、風翼の門に関しては」
「どうにも、私達が主体となるしかない、その結果に関しては得たくはなかったのですが」
「聞いていますか、オユキさん」
「その、はい」
半分ほどは、実のところオユキは聞き流してはいる。ただし、トモエにしても当然それは理解しているのだ。滾々と説教を、トモエにしてもそうした振る舞いは得意ではないのだが、そも、オユキのこうした態度が言っても聞かぬのならとトモエに拍車をかけているのだが。
「相も変わらず。再三繰り返しお伝えしているというのに」
「それは理解していますが、必要な事であれば」
「本当に必要だったのか、私はそれを疑っているのだと話しているのです」
トモエの言葉に、それが当然とばかりに頷いて見せるシェリアとカナリア。
オユキが今寝かされているのは、夫婦の寝室だというのに、今となってはその部屋には随分と他の顔が並んでいる。さきの二人をはじめ、ローレンツにタルヤ。さらには、セツナとクレドまでもが顔を連ねてオユキに対してきちんと色々と自重しろと話すために。
「言い分は分かるのですが、そうですね、オユキさん」
「確かに、約束は私たちの間だけではありますが」
「ですから、こうして色々な方を頼んだわけです」
「それは、ええと」
「確かに、私としても私たちの間での事に無粋な事とは思いますが、いいですか、オユキさん。私は、間違いなく初めて口にする事かとは思いますが」
「トモエさん、それは」
トモエの言葉。前置きの重たさ、あまりにもまっすぐにとオユキを見る瞳。それらを見て、オユキとしては余人に聞かせるべきではないと考えてしまう。ただ、トモエの言葉を止めようにも、今のオユキはやはり動作が緩慢で。言葉を作るにも、トモエが紡ぐ言葉よりも先にオユキが何かを形にすることが出来ない。
「オユキさんが失われてしまえば、私は、私にそこから先はありません」
かつては、全くもって逆の立場であった。
己の余命をいやでも悟ったトモエが、病室で、己の顔を覗き込み涙を流すオユキに対してかつてトモエはそこで使ったのだ。約束を。
同じことを行うというのならば、オユキはこの時点で約束という切り札を、二人の間でほとんどそう扱ってもいい事柄を使わなければならない。そして、トモエがその選択を迫っているのだとオユキは理解するからこそ、決断の時に互いの選択、捻じ曲げるべき事柄それがあるのだとオユキも理解しているからこそ、ここでそれを軽々に口に出せない。出したくないのだと、そんな思考が働いてしまう。
もう少し、体調が良ければ。
それこそ、此処でトモエの言葉を途切れさせることが出来る程度の体調であれば。
そう考えながらも、トモエにしてもオユキのそうした後悔を使って、慙愧の念までを使って。それほどまでに、今後ここまでオユキという存在を、トモエは何やら少しづつ感覚として理解し始めているらしい、オユキというモノ。それがこれ以上すり減らぬ様にと、随分と気を使ってくれているのだとそれを喜ぶオユキがいるのも事実。
どうにも、オユキは殊更ではあるのだが、トモエがオユキの為に。そうして意識を向けている時間が増える事、その想いが強ければ強いほど、己のどこか、自覚の及ばぬところが喜んでいるのが理解できてしまう。困ったことだ、今後を考えれば、間違いなくこうした場というのは喜ばしくないというのは理解できている。だが、その場でのオユキは、そうした感情をトモエから向けられている今のオユキは、どうしたところで。
「その、有難うございますと、私からは」
「生前は、私は約束をもって捻じ曲げましたが」
「はい。生前の私は、約束が無ければ間違いなく今のトモエさんと同じ決断をしていたでしょう」
例え、そこに他の係累がいるのだとして。
オユキにとっては、この世界というのはトモエがいるかどうか。かつての世界においても、それしか判断基準が存在しなかった。そうしたオユキの歪を、トモエが慮って色々と後に遺そうとしたのだろうと、そんな少々穿った見方すら今となっては出来てしまう。事実として、トモエをこちらに、オユキが失われた後も繋ぎ止める物を考えて、オユキは身の回りに人を置いていると言う所もある。
そして、オユキが信頼をしているのだとそうした振りをして見せれば、トモエとて、ああ、オユキが信頼している、それほどの者なのだと少しづつ理解が進んでいくのだから。互いに互いを想って。そして、何処までも互いに依存して。そうした姿を評して、片翼しかない鳥が、互いを翼の代わりに。絡まる枝が木目も交じり一つに見える様に。その功績を与えられるだけの物となっている。
もはや、互いに互いの存在が無ければ色々と困難を抱えるのだと、その理解が互いにあるのだから。
「ですから、オユキさん」
「その、それは」
「約束は約束です。私から、止める事は今後も無いでしょう。ですが、くれぐれも」
だからこそ、己を平然と投げだすような真似だけはしてくれるなよと、トモエは言葉を作る。実際に、それを形にしているわけではないのだが、握るオユキの手に力を込めて。互いに合わせる瞳に、思いを乗せて。トモエは、その様な事に約束を消費させたくないのだと、只それだけを込めて。
「幼子故か、よくよく懲りぬ者じゃな。此処までの事を繰り返せば、いよいよ己の事とは言え不満もたまるじゃろうに」
「私にしても、何度も苦言を呈してはいるのですが。本当に、トモエさんにまでここまで心配をさせて。それこそ、トモエさんだけではなく、アナさんにも」
「だ、そうですよ、オユキさん」
「そちらに関しては、私としても」
オユキとしても忸怩たるものがあるのだと。
「そも、今回に関しては予定外の事もありましたし」
「そちらは、祭りの後に回しても」
「どうなのでしょうか、その場合結果がまた異なった様にも思えますから」
戦と武技の神からの警告、何故オユキはそれを無視したのか。これまでは、神々の願いを兼ねようと動いていたはずだというのに、何故今回は。ここ暫く、繰り返して尋ねている事柄。
「祭りに参加をしてしまえば、やはり今回のように、いえ、今回以上に私に対しても相応の負荷がかかったでしょう。今回は、そもそも私から供出が出来る物が無いからと、アイリスさんとヴァレリーさんへと向かいましたが」
「オユキさん、そういう事ですか」
言ってしまえば、オユキの考えというのはあくまで己はこちらの世界に来るにあたって、こちらで暮らすにあたってトモエの為にとしか考えていないのだと、それを改めて口にする。今この場にいるのは、確かにトモエとオユキに対して好意的な者達ばかりだからと。
やはり、オユキとしても不満があるのだ。巫女としての職務、その位に助けられている部分が多いのは事実ではある。だが、助けられていると感じる以上の負荷がオユキにかかっている、少なくともオユキがそのように考えているのも事実である。
だからこそ、今回のようにオユキが、オユキから徴収できるものがほとんど存在しない、そのような場を整えてみればどうなるのか。他にも二人巫女がいるという状況で、同じ場に使徒を親に持つオユキが存在しているという状況を作った時にどうなるのか。果たして、常々オユキから、オユキが理解できなかったとしても徴収されていたものがどうなるのか。それを今回の祈願祭で確認しようと考えてふるまったのだ。
「結果としては、最低限で済んだと考えても」
ただし、オユキが忘れていることが、一つある。
「オユキさん、以前カナリアさんに言われたことがありますよね」
「カナリアさんに、ですか」
何やらトモエは覚えているらしいのだが、オユキにはとんと心当たりがない。
確かに、カナリアからは実に色々とオユキは、トモエも言われているのが現状ではある。どうにもはっきりとしない意識の中で、夢見心地といった状態で。繋ぐトモエの手の感触を、込められた力の強さを嬉しく思いながらも記憶をさかのぼってみるのだが、どうにもすぐに思い出せるものが無い。
「不足があれば、本質から容赦なく補填がなされると、そう言われていたでしょう」
そう言いながらも、トモエは空いた手をオユキの喉元に。
かつて、確かにトモエはオユキの喉を刃をもって貫きその半ばから断ち切った。カナリアの言葉では、かつての一刀は確かにオユキの本質にまで傷を残したのだと語られたものだ。そして、今もトモエが触れてみれば明らかに熱を持っている。視覚としても、オユキの肌の白さがあるためか、何もなかったはずだというのに明確に赤く色が浮いている。痣があるのだと、此処を怪我をすることがあったのだと、そう示すかのように。
「そういえば、その様な事を言われましたね」
トモエの不安とは裏腹に、オユキは体調が悪いからというのが一番大きいのだろうが実にのんびりと。寧ろ、トモエが己の喉に、急所に触れる手がくすぐったいのだとでも言わんばかりに目を細めて。
こうしていれば、後一時間もしないうちに、それこそ数十分の内にはまた眠りに落ちるだろうと実に分かり易い洋装で。
「トモエさんは覚えていてくださったみたいですが、本質に傷の入ったオユキさんが覚えていないというのは」
「そこな炎熱の鳥よ、本質への傷というのは器ではなく」
「はい。器だけでなく種族の根幹、器を満たすための魂や付随する物に」
「幼子の伴侶が、そこまでをかなえたと」
「ええと、仕組みに関しては私も理解が及んではいませんが」
何やら、これまでは聞こえなかった言葉にしても、少々聞こえ始めている様子ではあるのだが、そちらは一先ず置いて起き。
「ですが、オユキさん。今回の祭祀で得られる予定だったものは」
「得られなくとも問題が無い、そうとまでは言いませんがすぐに他の機会もあります。ただ、正直な所」
「そこまでを含めて、ですか。ですが、風翼の門に関しては」
「どうにも、私達が主体となるしかない、その結果に関しては得たくはなかったのですが」
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