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36章 忙しなく過行く
日々を過ごして
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「せっかく、トモエさんが乗り気でしたのに」
「それには違いないのでしょうが、流石に侯爵家との仲裁を公爵家の分家となった伯爵にというのは、難しいでしょう」
「オユキ、貴女はそのあたりの理解が有りそうなものでしたが」
「建前上はと言う事はありますが、実態としてはトモエさんがレジス侯爵家の家督をお持ちですのに」
「それを広く知らせていない、その事実も考えるのが良いでしょう」
事の顛末に関しては、カツナガとレジス侯爵との話し合いに関しては間にマリーア伯爵を入れる形で進める。オユキがまずはそう決めて、マリーア公爵に報告すれば格の問題もあるからそうはいかないとなかなかに身も蓋も無い返答が返ってきた。
そして、今はマリーア公爵に後始末を任せた上で、オユキはオユキで衣装の確認もあるからと今は戦と武技の教会、その一室を借りて女性陣で話し合いの場などを設けている。いよいよもって、オユキの疲労は根深く、祈願祭の後にせよと言われていたというのに順序を守らなかったこともある。トモエには、仕方のない事だと、戦と武技からの警告を隠していたはずではあるのだが、マリーア公爵からそちらに関してもトモエに話が言ったために、なかなか夫婦の時間の間で少々オユキとしてものらりくらりと、自覚がはっきりとある程度には、逃げの手を打つばかりの時間を過ごす事となったものだ。
「広く示してしまうと、レジス候の不名誉になってしまいますし」
「そのあたりは、どうなのでしょうか」
オユキとしての不安というのは、ほとんどだまし討ちのような形で行われた事。その結果だけを広く知らしめてしまうというのは、あまりにも不義理が過ぎるのではないかと考えて。しかし、この場にいる公爵夫人、王妃にしてみれば、それに関しては他の観点もあるのではないかと。
「そちらは、後ほど確認するのが良いでしょうが、それにしても」
「今回の衣装に関しては、冬と眠りの柱からも手が入ると伺っていますので」
「これまでの物とは、随分と趣が違いますが」
「神授の品ですので、問題はないかと。戦と武技の神の紋章も使用されており、彼の柱を示す色にしても十分以上に入っております。加えて、私どものほうで何を言うでもなく、この王都であればもはや巫女様の姿を知らぬ者も非常に少なく」
「それは、そうなのでしょうが」
そして、オユキはといえば。全く力の入らぬ体、最早己の意志で動かそうとしても、せいぜい首が少々動く程度。そんな有様であるため、タルヤに抱えられたうえでいつの間にやらこちらも着ていたナザレアと教会に勤めている者たちとの共同作業で新しい神授の衣装に着替えさせられている最中。
今度の物は、よくあるとでも言えばいいのだろうか。
少なくとも、オユキが神職にあるものとして、西洋の物として簡単想像がつくローブ姿。それこそ、始まりの町の教会に勤めている者たちが身に付けている物と変わらない、造りだけは。
しかし、オユキ以上にこうした物に知見を持つ者たちが揃って難色を示している通り、衣装に使われている生地、その基本の色が灰色であるというのが頂けないと言う事なのだろう。今回の物に関しては、確かに冬と眠りの神からも手が入っていると言われた。そして、その柱を示す色が灰色であるからにはこれは当然の帰結ではとオユキは考えている。そして、灰色、何処かくすんだように見えるその色に難色を示しているのだろうと。
実際には、戦と武技の巫女であるというのに、差し色程度にしか戦と武技の色を使っていない衣装、その在り方に揃って疑問をもって首を傾げられているのだが。
「司祭がそう言われるのでしたら」
「そう、ですね。祭祀の取り扱いに関して、問題が無いと言われるのでしたら」
「そちらは恙無く。ただ、オユキ様の当日の体調によっては」
「当日まで、正直日がありませんし己の意志で動けるようになるかと言われれば、かなり短い時間になるだろうとしか」
それにしても、色々と与えられているオユキのこうしたマナの枯渇に始まる体調不良、それを助けるための装飾をあれこれと身に付けた上で。だが、祭祀となるとオユキとしても少々の後ろめたさもあるため、そこからの助けも取り上げられそうなものだとついつい考えてしまう。
どうにも、セツナにしてもトモエにしても今回の結果について、そうした物をオユキが頼ることを良しとする気が無い様子。よもや、オユキの知らぬ間にそうした話がセツナの祖霊を経由して、等とついつい勘ぐってしまうものだが。
「そこで妾を見るのは、お門違いじゃというのに」
「ですが」
「繰り返し言の葉に乗せておるはずじゃが、あれらは幼子にとってはよくないものじゃからの。こうして、幼子がきちんと休める場を整えた以上は、大人しくそちらできちんと回復を行うのが良かろう。あれらは、どうしたところで神々の力は今は幼子には、この世界で生きる者たちにとっては過剰じゃからな」
言われた言葉に、この場でまさにその神に使える、文字通り祭りを司る相手にただ人の視線が流れるものだが。
「往々にして、神々は常々よく生きる人々の手助けを望まれているのですが何分私共とは隔絶された能力を持つ方ばかり。広く薄くと、それを願われたもの、常にお力をとするものにしても法と裁きの柱と知識と魔の柱による制限が無ければと言うものですから」
そして、マルタ司祭からは、問答としてよくあるものなのだと言わんばかりに。
「この世界では、私たちが神々の助けなく、やはりそれは叶いません。人、この神国で、年で暮らす多くの者たちとは全く異なる方々にしても。それこそ、近頃この王都を騒がせている翼人種の方々にしても、異空と流離、過去の世界の創造神様に深く連なるが故の、多くの加護を得ているからこそ、ですから」
「それは、確かにそうした考え方もできますか」
「ええ。翼人種の方々にしても、尋ねればそのように仰せでしょうとも」
個人の持つ力が、果たして本当にその個人に帰属しているのか。そのあたりの問答だろうかと、オユキとしては少々興味深くはあるものの。相も変わらず、どころではない。どうにも、教示の奇跡、それを僅かにでも受けた弊害とでも言えばいいのだろうか。新しい事、それをこうして聞かされてしまえば、やはりただでさえオユキの内に僅かばかり回復したはずの物が、また何やら削られていく。
少し離れたところで控えているカナリアが、何やら不思議そうにするあたり隠しきれるのは此処までだろうか等と考えながら。
「とすると」
「妾たちにしても、種族としての話をするのならば祖霊様による物じゃぞ。勿論、その中でも長じればこそと言うものも多い。この辺りは、幼子に言うても実感はなかろうが」
「オユキは、セツナさんが言うには混ざっているとのことでしたが」
「混ざるの意味次第ではあるのじゃが、そのあたりはなかなかに難しい。発現形質、見目に依る物であれば分かり易く混ざることもあろう。しかし、本質が、己の起源に連なる物が混ざる事は稀ではある」
そして、オユキに関しては、トモエもではあるのだが混ざり方としてそれぞれが分かれる形だと、そう告げられて。言われた者たち、この国の歴史を守らなければならない者たちにしても初めて聞くのだと言わんばかりに、何やらそれぞれに考え込んでいる様子ではあるのだが。
「あの、少しきつくないですか。ローブというのは、もう少し、こう」
「外から見る物に関しては、今は締めていません。内に着けている物を」
そして、話している間にもオユキは実にあれこれと侍女二人に加えて持祭たちによって。今は、ローブの下に身に付ける予定の肌着、そちらを使ってローブの形を作るのだと言わんばかりにあちらを縛り、こちらを縛り。さらには、 トモエに今日衣装を確認するのだと話したこともあり、髪は、では結わない方がいいでしょうと言われたこともありそちらも今となっては実にあれこれと手を入れられている。
こちらに来たばかりの頃に、髪はくくるのだとしてもひとつだけ。そう言われたのは、確かに水と癒しの教会での事。教会が変われば、祀る神が変わり、役割が違うというのならばそこもよりけりだと言う事らしい。オユキの非常に長い髪を、これまた緋色の紐に始まり、それは流石にとトモエがいれば話したのだろうが華奢な鎖などを使って編みこんで。まずは頭の上に少しづつ乗せてみてはいたのだが何やらそれも既に諦めて。鏡が無いため判然としないのだが、初めの頃に少し目を向けては何やら苦い顔をしていた者たちが、今となってはすっかりと衣装に関してだけ苦言を呈するようになっているのだから、少しはまともになっているのだろう。
「確かに、肌着は身に付けていますが、その、少々締め付けすぎるのも」
「確かに、現状のオユキ様であれば衣類は楽な物のほうが良いですか」
この辺りも踏まえて、間違いなく祭りの後にしろとそうした話になっていたのだろう。そんな事を、オユキは今更ながらに考えるものだし、司祭が、間違いなく神の声を聞くことが出来る者たちがいる以上は、そのあたりの内情にしても知っていることだろう。いや、寧ろそれ以外の者たちにしても、間違いなく公爵からの話もされているだろうから、そちらも止める気は無い様子ではある。
オユキとしては、神々の意見を、言われたことを守らないと言う事がどの程度この世界で許容されるのか、それを確かめるついでにと言う事でもあったのだが、やはり人の自由な歩みとでも言えばいいのだろうか。それを尊重する、守るといった意味合いにおいては、誰かを害するという方向でなければ、こうして認められるものではあるらしい。こうして、過剰に締め付ける衣服を着せこまれて、見えない部分、ローブを纏えば隠れる部分だろうにそちらをきっちりと締め上げているあたり可愛らしい罰の与え方だなどとそんなことも考えつつ。
「トモエさんは、今頃大丈夫でしょうか」
「あちらには、シェリアとローレンツをつけているのでしょう」
「それに、マリーア公爵もそこまで悪いようにはしないでしょうから」
「いえ、それは、そうかもしれませんが、それでも武国の狼藉者達にしても」
「その者たちのほとんどを、こちらで引き取るために、そういう事なのでしょう、今回の事は」
「それには違いないのでしょうが、流石に侯爵家との仲裁を公爵家の分家となった伯爵にというのは、難しいでしょう」
「オユキ、貴女はそのあたりの理解が有りそうなものでしたが」
「建前上はと言う事はありますが、実態としてはトモエさんがレジス侯爵家の家督をお持ちですのに」
「それを広く知らせていない、その事実も考えるのが良いでしょう」
事の顛末に関しては、カツナガとレジス侯爵との話し合いに関しては間にマリーア伯爵を入れる形で進める。オユキがまずはそう決めて、マリーア公爵に報告すれば格の問題もあるからそうはいかないとなかなかに身も蓋も無い返答が返ってきた。
そして、今はマリーア公爵に後始末を任せた上で、オユキはオユキで衣装の確認もあるからと今は戦と武技の教会、その一室を借りて女性陣で話し合いの場などを設けている。いよいよもって、オユキの疲労は根深く、祈願祭の後にせよと言われていたというのに順序を守らなかったこともある。トモエには、仕方のない事だと、戦と武技からの警告を隠していたはずではあるのだが、マリーア公爵からそちらに関してもトモエに話が言ったために、なかなか夫婦の時間の間で少々オユキとしてものらりくらりと、自覚がはっきりとある程度には、逃げの手を打つばかりの時間を過ごす事となったものだ。
「広く示してしまうと、レジス候の不名誉になってしまいますし」
「そのあたりは、どうなのでしょうか」
オユキとしての不安というのは、ほとんどだまし討ちのような形で行われた事。その結果だけを広く知らしめてしまうというのは、あまりにも不義理が過ぎるのではないかと考えて。しかし、この場にいる公爵夫人、王妃にしてみれば、それに関しては他の観点もあるのではないかと。
「そちらは、後ほど確認するのが良いでしょうが、それにしても」
「今回の衣装に関しては、冬と眠りの柱からも手が入ると伺っていますので」
「これまでの物とは、随分と趣が違いますが」
「神授の品ですので、問題はないかと。戦と武技の神の紋章も使用されており、彼の柱を示す色にしても十分以上に入っております。加えて、私どものほうで何を言うでもなく、この王都であればもはや巫女様の姿を知らぬ者も非常に少なく」
「それは、そうなのでしょうが」
そして、オユキはといえば。全く力の入らぬ体、最早己の意志で動かそうとしても、せいぜい首が少々動く程度。そんな有様であるため、タルヤに抱えられたうえでいつの間にやらこちらも着ていたナザレアと教会に勤めている者たちとの共同作業で新しい神授の衣装に着替えさせられている最中。
今度の物は、よくあるとでも言えばいいのだろうか。
少なくとも、オユキが神職にあるものとして、西洋の物として簡単想像がつくローブ姿。それこそ、始まりの町の教会に勤めている者たちが身に付けている物と変わらない、造りだけは。
しかし、オユキ以上にこうした物に知見を持つ者たちが揃って難色を示している通り、衣装に使われている生地、その基本の色が灰色であるというのが頂けないと言う事なのだろう。今回の物に関しては、確かに冬と眠りの神からも手が入っていると言われた。そして、その柱を示す色が灰色であるからにはこれは当然の帰結ではとオユキは考えている。そして、灰色、何処かくすんだように見えるその色に難色を示しているのだろうと。
実際には、戦と武技の巫女であるというのに、差し色程度にしか戦と武技の色を使っていない衣装、その在り方に揃って疑問をもって首を傾げられているのだが。
「司祭がそう言われるのでしたら」
「そう、ですね。祭祀の取り扱いに関して、問題が無いと言われるのでしたら」
「そちらは恙無く。ただ、オユキ様の当日の体調によっては」
「当日まで、正直日がありませんし己の意志で動けるようになるかと言われれば、かなり短い時間になるだろうとしか」
それにしても、色々と与えられているオユキのこうしたマナの枯渇に始まる体調不良、それを助けるための装飾をあれこれと身に付けた上で。だが、祭祀となるとオユキとしても少々の後ろめたさもあるため、そこからの助けも取り上げられそうなものだとついつい考えてしまう。
どうにも、セツナにしてもトモエにしても今回の結果について、そうした物をオユキが頼ることを良しとする気が無い様子。よもや、オユキの知らぬ間にそうした話がセツナの祖霊を経由して、等とついつい勘ぐってしまうものだが。
「そこで妾を見るのは、お門違いじゃというのに」
「ですが」
「繰り返し言の葉に乗せておるはずじゃが、あれらは幼子にとってはよくないものじゃからの。こうして、幼子がきちんと休める場を整えた以上は、大人しくそちらできちんと回復を行うのが良かろう。あれらは、どうしたところで神々の力は今は幼子には、この世界で生きる者たちにとっては過剰じゃからな」
言われた言葉に、この場でまさにその神に使える、文字通り祭りを司る相手にただ人の視線が流れるものだが。
「往々にして、神々は常々よく生きる人々の手助けを望まれているのですが何分私共とは隔絶された能力を持つ方ばかり。広く薄くと、それを願われたもの、常にお力をとするものにしても法と裁きの柱と知識と魔の柱による制限が無ければと言うものですから」
そして、マルタ司祭からは、問答としてよくあるものなのだと言わんばかりに。
「この世界では、私たちが神々の助けなく、やはりそれは叶いません。人、この神国で、年で暮らす多くの者たちとは全く異なる方々にしても。それこそ、近頃この王都を騒がせている翼人種の方々にしても、異空と流離、過去の世界の創造神様に深く連なるが故の、多くの加護を得ているからこそ、ですから」
「それは、確かにそうした考え方もできますか」
「ええ。翼人種の方々にしても、尋ねればそのように仰せでしょうとも」
個人の持つ力が、果たして本当にその個人に帰属しているのか。そのあたりの問答だろうかと、オユキとしては少々興味深くはあるものの。相も変わらず、どころではない。どうにも、教示の奇跡、それを僅かにでも受けた弊害とでも言えばいいのだろうか。新しい事、それをこうして聞かされてしまえば、やはりただでさえオユキの内に僅かばかり回復したはずの物が、また何やら削られていく。
少し離れたところで控えているカナリアが、何やら不思議そうにするあたり隠しきれるのは此処までだろうか等と考えながら。
「とすると」
「妾たちにしても、種族としての話をするのならば祖霊様による物じゃぞ。勿論、その中でも長じればこそと言うものも多い。この辺りは、幼子に言うても実感はなかろうが」
「オユキは、セツナさんが言うには混ざっているとのことでしたが」
「混ざるの意味次第ではあるのじゃが、そのあたりはなかなかに難しい。発現形質、見目に依る物であれば分かり易く混ざることもあろう。しかし、本質が、己の起源に連なる物が混ざる事は稀ではある」
そして、オユキに関しては、トモエもではあるのだが混ざり方としてそれぞれが分かれる形だと、そう告げられて。言われた者たち、この国の歴史を守らなければならない者たちにしても初めて聞くのだと言わんばかりに、何やらそれぞれに考え込んでいる様子ではあるのだが。
「あの、少しきつくないですか。ローブというのは、もう少し、こう」
「外から見る物に関しては、今は締めていません。内に着けている物を」
そして、話している間にもオユキは実にあれこれと侍女二人に加えて持祭たちによって。今は、ローブの下に身に付ける予定の肌着、そちらを使ってローブの形を作るのだと言わんばかりにあちらを縛り、こちらを縛り。さらには、 トモエに今日衣装を確認するのだと話したこともあり、髪は、では結わない方がいいでしょうと言われたこともありそちらも今となっては実にあれこれと手を入れられている。
こちらに来たばかりの頃に、髪はくくるのだとしてもひとつだけ。そう言われたのは、確かに水と癒しの教会での事。教会が変われば、祀る神が変わり、役割が違うというのならばそこもよりけりだと言う事らしい。オユキの非常に長い髪を、これまた緋色の紐に始まり、それは流石にとトモエがいれば話したのだろうが華奢な鎖などを使って編みこんで。まずは頭の上に少しづつ乗せてみてはいたのだが何やらそれも既に諦めて。鏡が無いため判然としないのだが、初めの頃に少し目を向けては何やら苦い顔をしていた者たちが、今となってはすっかりと衣装に関してだけ苦言を呈するようになっているのだから、少しはまともになっているのだろう。
「確かに、肌着は身に付けていますが、その、少々締め付けすぎるのも」
「確かに、現状のオユキ様であれば衣類は楽な物のほうが良いですか」
この辺りも踏まえて、間違いなく祭りの後にしろとそうした話になっていたのだろう。そんな事を、オユキは今更ながらに考えるものだし、司祭が、間違いなく神の声を聞くことが出来る者たちがいる以上は、そのあたりの内情にしても知っていることだろう。いや、寧ろそれ以外の者たちにしても、間違いなく公爵からの話もされているだろうから、そちらも止める気は無い様子ではある。
オユキとしては、神々の意見を、言われたことを守らないと言う事がどの程度この世界で許容されるのか、それを確かめるついでにと言う事でもあったのだが、やはり人の自由な歩みとでも言えばいいのだろうか。それを尊重する、守るといった意味合いにおいては、誰かを害するという方向でなければ、こうして認められるものではあるらしい。こうして、過剰に締め付ける衣服を着せこまれて、見えない部分、ローブを纏えば隠れる部分だろうにそちらをきっちりと締め上げているあたり可愛らしい罰の与え方だなどとそんなことも考えつつ。
「トモエさんは、今頃大丈夫でしょうか」
「あちらには、シェリアとローレンツをつけているのでしょう」
「それに、マリーア公爵もそこまで悪いようにはしないでしょうから」
「いえ、それは、そうかもしれませんが、それでも武国の狼藉者達にしても」
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