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35章 流れに揺蕩う
色づくは
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王都での日々というのは、何処か優雅に過ぎゆくには違いない。
トモエは、午前中を魔物の狩猟に費やして。オユキは、その時間をトモエの晴れ着に刺繍をはじめ手を加える事を基本として。
トモエが戻ってからは、トモエの鍛錬に合わせてオユキも鍛錬を行いつつ。そうしてみれば一日も徐々に終わりに近づき、そこからはまた自室に戻ってトモエと並んで。オユキは方々への書状であったり招待状の用意を。トモエは、オユキ用の刺繍を用意して。時間が迫ればオユキの食事を用意しに、アルノーの城へと。
そんな風に過ごせたのは、いよいよもって数日の間。
オユキからの方々への報告、それが伝わってみればやはり反応は非常に早く。城から戻ったユーフォリアが、武国への者達、不心得者達への対処が迎賓館への軟禁に決まり、それが間違いなく行われるのだと報告を受けるとともにオユキの相談事に対する返事を持ち帰ってきた。
そうしてみれば、オユキのほうは早々に優先順位を付けた上でその対応に奔走され。
トモエはトモエで、少年たちの持ち帰った狩猟者ギルドとしての考え、今後に関しての腹案なども把握したうえでクレドと共に、必要な対応に追われることに。
「ユーフォリア、用意は」
「万端、整えております」
「ありがとうございます。カレン、客人の迎えは頼みました」
「畏まりました。それと、アルノーから茶菓の確認をお願いしたいと」
「アルノーが問題ないと考えるのであれば、と思いますが。ユーフォリア」
「承りました。そちらについても、間違いなく」
ここ数日の、オユキの仕事の結果とでもいえばいいのだろうか。方々に送った相談事も兼ねた手紙の結果として、今日はオユキが主催する形でお茶会を開く手はずとなっている。会場は、公爵家の本邸の庭園を借りようかなどという話も出ていたのだが、別邸にも本邸に比べて広さでいえばそれ以上の場があるためそちらを使う事と相成った。
公爵夫人も、招待客に名を連ねている以上はそれが当然の帰結と言うものでもあるのだが、オユキが気にしなかったためにこちらに関してはユーフォリアとトモエが誘導をすることになったが。
そして、オユキがそうした催しを行うとなれば、そこには招待客として顔を連ねる面々も個性豊かになるというもの。そして、トモエのほうでも、己の伴侶に恥をかかせるわけにはとばかりに魔物の狩猟にまた熱が入ることに。今日の食材、茶菓として用いる食材を落とす魔物は流石に王都の周囲にほとんどいる訳では無く。森に少し入って、ハニービーを狙いつつ、何故か挽かれた小麦や刈り取られた後の小麦を落とす平原の魔物であるブルウに加え森の魔物、サティバやシリクアなどの動く小麦そのものに木といったトモエは遭遇するたびに思わず首をかしげる魔物を切り捨てて。それらの魔物が落とす木材や他の副産物については、これもまた狩猟者ギルドに収めつつ。さらには、種々の森の恵みに関しても、彼らに同行する少年たちが背負う籠や袋に放り込んでいき。
不足していると感じる物については、いよいよ金銭に糸目をつけることなくアルノーとエステールに買い求めてくるようにとトモエから指示を出して。オユキのほうは、それこそ完成品をそのまま狩ってくるなりすればいいだろうとそうした構えではあったのだが、ここまで大々的に人を招いて、ファンタズマ子爵家として明確に人を招いてというのは初めてなのだからとオユキ以外は本当にこの回に注力をして。
「それと、オユキ様。ヴィルヘルミナから、本日の歌について」
「一応、私から何曲かお願いした物はありますが」
「はい。それらも踏まえた上で、時間が長くなるようであれば合間に休憩をと」
「それは、ええ、必要でしょうし。私としては夕刻前にはと考えていますので」
そちらに関しては、既に伝えていたのではなかったかと。
「いえ、オユキ様の会が終わった後には公爵様の主催する形をとった内内での夜会もございますので」
「あの、私は聞いていませんが」
「トモエ様から報告が無かったのでしょうか」
「いえ、近々開くといいますか、私のデビュタントでしたか、その前に流石に行っておいた方がいいだろうとは」
トモエから、オユキはそのように聞かされていた。だが、日程だけで考えれば、まだ先の事かと考えていたのだ。トモエからは、只そうした催しを行う予定があると、近日中にとそうした話を聞いていただけ。確かにトモエにしろオユキにしろ、そうした主催の経験は無い。ミズキリであればまだしも、慣れぬ事であるには違いない。そして、それをトモエが公爵に頼んだろうといった予想くらいはオユキにもできる。だが、何も今日でなくともと。
「公爵様の決定なのでしょう。私達への参加に関しての話が無かったのは、流石にどうかと思わないこともありませんが、多くを頼んでいる、日程の一部を預けている以上はやむなしと言うものですか」
「そう、なるのでしょうね」
「それにしても、ヴィルヘルミナやカレンが知っていることを考えれば」
「そのあたりの連絡体制、確認体制はまた今後としましょう。この場でカレンから改めて、カレンに改めてヴィルヘルミナが訴え出たとなるとそちらにも昨夜か、今朝方か」
「ええ。公爵様のほうでも、かなり急な事、いえ、確かに急に開くことにして、それで参加人数を絞り私たちの不慣れ、それがどの程度であれとするつもりですか」
だが、それについて少し考えてみれば、オユキにしても思い当たることがある。
これまでの間、オユキは夜会と呼ばれる物への参加をしたことが無い。勿論、お披露目の前だからと言う事もあるのだが、聞く話によれば内内での練習の機会、同世代の相手と保護者同伴でというのは度々行われるものであるらしい。それにしてもと言う事もあり、少々不意打ちのような形で、今回執り行うのだとしたのだろう。不況を買う事になったのだとしても。
その事実については、改めて公爵にはお礼を言わねばなるまいとオユキは考えた上で。
「そちらは、良しとして。一先ず、私は今からの事に集中しましょうか」
そうして、改めて必要な用意。頭の中に、手元に用意した確認事項にひとつづつ完了済みの印を打っていく。
高々と、そう呼ぶには今回呼んでいる相手が相手でもあるため、仰々しくなってしまうものだが。
「カレン、話の流れといいますか、こちらからの相談事を切り出す時期については」
「まずは、挨拶と会の趣旨として用意した物を楽しんで。そこから少し話を膨らませた後に、というのが一般的ではありますが」
「今回であれば、セツナ様とパロティア様、それからアシア様を客人として招きますので、そちらが上位と言う事に間違いは」
「アイリス様が、ユニエス公爵家からとのことですので外からの相手についてはそのお三方だけとなります。ですが、それぞれの方の立ち位置として王族と言う訳ではありませんから」
「こちらでは、王族が国の内外を問わず、と言う事ですか」
オユキの発想としては、どうしたところで身内であれば等と考えてしまうのだが。どうやら、そうと言う訳でもないらしい。これまでは、あくまでそれぞれにとできる場ではあったのだが、今度ばかりはそうでは無い。
今回の主題は、王女でもある武国における戦と武技の巫女、その処遇というよりもオユキとして、アイリスとしてどう対応を行えば良いのかとそうした話を行う場になっている。余禄として、トモエとオユキの婚姻、そこに参加するクレリー公爵家にラスト子爵家。他にも、いくつかの家が同時にとは聞いているのだが、そちらとは特別面識があるわけでもないため、オユキは流石に誘っていない。
加えて、手紙だけでは流石に人となりが分からぬために、武国から来ている護衛、その中でも女性であり最も巫女に近しいとされている人物も併せて招いてとしているのが今回の事。セツナに関しては、いよいよ同じ屋敷で暮らしている相手でもあり何やら楽しそうなことをしているな等と言われた以上は、やはり誘わぬわけにはいかず。それを行うのなら、カナリアでは無くその保護者としての人物としてセツナとの間にどうしたところで確執のあるフスカでは無くパロティアに白羽の矢が立った。
「オユキ様には、今回に関しては後見でもある公爵夫人様から」
「ええ。見計らって指示を送るので、見逃さぬ様にとは聞いていますが」
「私達の間でも、勿論話し合っております。今も、シェリアが王妃様の使用人たちと最後の確認を。エステールが、公爵家の侍女たちとお茶会の準備を行いながら」
「まったく、なかなかに大事になったものですが、これが終わっても」
そう、今回の事が終わっても、まだしばらくは似たようなことが続くのだ。既に、オユキがこうして大きな会を催すことは、当然方々の耳に入っている。さらには、また開催の予定があるのならば、次こそはとそうした話が当然のように公爵夫人の手元に届いている。公爵の寄子達からも、当然、それ以外からも。
「ユーフォリアとカレンには、苦労を掛けますが」
「私は、確かに不慣れですし、少々頼まれごとで外すこともありますが」
「ええ。私はここまで貴族子女として行ってきたことであり、商業ギルドでアマリーア様に散々に仕込まれた事でもありますから」
荷物の整理、目録の管理。勿論、これらにしても商業ギルドで積み上げてきたことには違いないのだが、カレンとしての得意はこちらなのだと自信ありげに笑いながら。成程、カレンについては、問題が無い事獅子芯がある事については、このように振る舞うのだなとトモエとしてはそんな事を確認して。得意を、自信を持ってくれる仕事を振るのは雇用主の務めだとは言え、これまでは彼女の得意がオユキの苦手であった以上は、どうにもならず。
反面、ユーフォリアの視線が、はっきりとオユキに対して不安を訴えている。此処までの日々で、オユキがトモエに甘えるようなそぶりを見せ始めていたこともある。シェリアが、少々遠い他の使用人たちが気が付いていない事、それがユーフォリアとしては気にかかる。
トモエが、それを伝えていない以上は、伝えない以上は己から伝えるのも違うのだろうと考えて、理解はしても口に出していない事。オユキの目の奥に、はっきりと疲労が浮かび始めているという、その事実。
トモエは、午前中を魔物の狩猟に費やして。オユキは、その時間をトモエの晴れ着に刺繍をはじめ手を加える事を基本として。
トモエが戻ってからは、トモエの鍛錬に合わせてオユキも鍛錬を行いつつ。そうしてみれば一日も徐々に終わりに近づき、そこからはまた自室に戻ってトモエと並んで。オユキは方々への書状であったり招待状の用意を。トモエは、オユキ用の刺繍を用意して。時間が迫ればオユキの食事を用意しに、アルノーの城へと。
そんな風に過ごせたのは、いよいよもって数日の間。
オユキからの方々への報告、それが伝わってみればやはり反応は非常に早く。城から戻ったユーフォリアが、武国への者達、不心得者達への対処が迎賓館への軟禁に決まり、それが間違いなく行われるのだと報告を受けるとともにオユキの相談事に対する返事を持ち帰ってきた。
そうしてみれば、オユキのほうは早々に優先順位を付けた上でその対応に奔走され。
トモエはトモエで、少年たちの持ち帰った狩猟者ギルドとしての考え、今後に関しての腹案なども把握したうえでクレドと共に、必要な対応に追われることに。
「ユーフォリア、用意は」
「万端、整えております」
「ありがとうございます。カレン、客人の迎えは頼みました」
「畏まりました。それと、アルノーから茶菓の確認をお願いしたいと」
「アルノーが問題ないと考えるのであれば、と思いますが。ユーフォリア」
「承りました。そちらについても、間違いなく」
ここ数日の、オユキの仕事の結果とでもいえばいいのだろうか。方々に送った相談事も兼ねた手紙の結果として、今日はオユキが主催する形でお茶会を開く手はずとなっている。会場は、公爵家の本邸の庭園を借りようかなどという話も出ていたのだが、別邸にも本邸に比べて広さでいえばそれ以上の場があるためそちらを使う事と相成った。
公爵夫人も、招待客に名を連ねている以上はそれが当然の帰結と言うものでもあるのだが、オユキが気にしなかったためにこちらに関してはユーフォリアとトモエが誘導をすることになったが。
そして、オユキがそうした催しを行うとなれば、そこには招待客として顔を連ねる面々も個性豊かになるというもの。そして、トモエのほうでも、己の伴侶に恥をかかせるわけにはとばかりに魔物の狩猟にまた熱が入ることに。今日の食材、茶菓として用いる食材を落とす魔物は流石に王都の周囲にほとんどいる訳では無く。森に少し入って、ハニービーを狙いつつ、何故か挽かれた小麦や刈り取られた後の小麦を落とす平原の魔物であるブルウに加え森の魔物、サティバやシリクアなどの動く小麦そのものに木といったトモエは遭遇するたびに思わず首をかしげる魔物を切り捨てて。それらの魔物が落とす木材や他の副産物については、これもまた狩猟者ギルドに収めつつ。さらには、種々の森の恵みに関しても、彼らに同行する少年たちが背負う籠や袋に放り込んでいき。
不足していると感じる物については、いよいよ金銭に糸目をつけることなくアルノーとエステールに買い求めてくるようにとトモエから指示を出して。オユキのほうは、それこそ完成品をそのまま狩ってくるなりすればいいだろうとそうした構えではあったのだが、ここまで大々的に人を招いて、ファンタズマ子爵家として明確に人を招いてというのは初めてなのだからとオユキ以外は本当にこの回に注力をして。
「それと、オユキ様。ヴィルヘルミナから、本日の歌について」
「一応、私から何曲かお願いした物はありますが」
「はい。それらも踏まえた上で、時間が長くなるようであれば合間に休憩をと」
「それは、ええ、必要でしょうし。私としては夕刻前にはと考えていますので」
そちらに関しては、既に伝えていたのではなかったかと。
「いえ、オユキ様の会が終わった後には公爵様の主催する形をとった内内での夜会もございますので」
「あの、私は聞いていませんが」
「トモエ様から報告が無かったのでしょうか」
「いえ、近々開くといいますか、私のデビュタントでしたか、その前に流石に行っておいた方がいいだろうとは」
トモエから、オユキはそのように聞かされていた。だが、日程だけで考えれば、まだ先の事かと考えていたのだ。トモエからは、只そうした催しを行う予定があると、近日中にとそうした話を聞いていただけ。確かにトモエにしろオユキにしろ、そうした主催の経験は無い。ミズキリであればまだしも、慣れぬ事であるには違いない。そして、それをトモエが公爵に頼んだろうといった予想くらいはオユキにもできる。だが、何も今日でなくともと。
「公爵様の決定なのでしょう。私達への参加に関しての話が無かったのは、流石にどうかと思わないこともありませんが、多くを頼んでいる、日程の一部を預けている以上はやむなしと言うものですか」
「そう、なるのでしょうね」
「それにしても、ヴィルヘルミナやカレンが知っていることを考えれば」
「そのあたりの連絡体制、確認体制はまた今後としましょう。この場でカレンから改めて、カレンに改めてヴィルヘルミナが訴え出たとなるとそちらにも昨夜か、今朝方か」
「ええ。公爵様のほうでも、かなり急な事、いえ、確かに急に開くことにして、それで参加人数を絞り私たちの不慣れ、それがどの程度であれとするつもりですか」
だが、それについて少し考えてみれば、オユキにしても思い当たることがある。
これまでの間、オユキは夜会と呼ばれる物への参加をしたことが無い。勿論、お披露目の前だからと言う事もあるのだが、聞く話によれば内内での練習の機会、同世代の相手と保護者同伴でというのは度々行われるものであるらしい。それにしてもと言う事もあり、少々不意打ちのような形で、今回執り行うのだとしたのだろう。不況を買う事になったのだとしても。
その事実については、改めて公爵にはお礼を言わねばなるまいとオユキは考えた上で。
「そちらは、良しとして。一先ず、私は今からの事に集中しましょうか」
そうして、改めて必要な用意。頭の中に、手元に用意した確認事項にひとつづつ完了済みの印を打っていく。
高々と、そう呼ぶには今回呼んでいる相手が相手でもあるため、仰々しくなってしまうものだが。
「カレン、話の流れといいますか、こちらからの相談事を切り出す時期については」
「まずは、挨拶と会の趣旨として用意した物を楽しんで。そこから少し話を膨らませた後に、というのが一般的ではありますが」
「今回であれば、セツナ様とパロティア様、それからアシア様を客人として招きますので、そちらが上位と言う事に間違いは」
「アイリス様が、ユニエス公爵家からとのことですので外からの相手についてはそのお三方だけとなります。ですが、それぞれの方の立ち位置として王族と言う訳ではありませんから」
「こちらでは、王族が国の内外を問わず、と言う事ですか」
オユキの発想としては、どうしたところで身内であれば等と考えてしまうのだが。どうやら、そうと言う訳でもないらしい。これまでは、あくまでそれぞれにとできる場ではあったのだが、今度ばかりはそうでは無い。
今回の主題は、王女でもある武国における戦と武技の巫女、その処遇というよりもオユキとして、アイリスとしてどう対応を行えば良いのかとそうした話を行う場になっている。余禄として、トモエとオユキの婚姻、そこに参加するクレリー公爵家にラスト子爵家。他にも、いくつかの家が同時にとは聞いているのだが、そちらとは特別面識があるわけでもないため、オユキは流石に誘っていない。
加えて、手紙だけでは流石に人となりが分からぬために、武国から来ている護衛、その中でも女性であり最も巫女に近しいとされている人物も併せて招いてとしているのが今回の事。セツナに関しては、いよいよ同じ屋敷で暮らしている相手でもあり何やら楽しそうなことをしているな等と言われた以上は、やはり誘わぬわけにはいかず。それを行うのなら、カナリアでは無くその保護者としての人物としてセツナとの間にどうしたところで確執のあるフスカでは無くパロティアに白羽の矢が立った。
「オユキ様には、今回に関しては後見でもある公爵夫人様から」
「ええ。見計らって指示を送るので、見逃さぬ様にとは聞いていますが」
「私達の間でも、勿論話し合っております。今も、シェリアが王妃様の使用人たちと最後の確認を。エステールが、公爵家の侍女たちとお茶会の準備を行いながら」
「まったく、なかなかに大事になったものですが、これが終わっても」
そう、今回の事が終わっても、まだしばらくは似たようなことが続くのだ。既に、オユキがこうして大きな会を催すことは、当然方々の耳に入っている。さらには、また開催の予定があるのならば、次こそはとそうした話が当然のように公爵夫人の手元に届いている。公爵の寄子達からも、当然、それ以外からも。
「ユーフォリアとカレンには、苦労を掛けますが」
「私は、確かに不慣れですし、少々頼まれごとで外すこともありますが」
「ええ。私はここまで貴族子女として行ってきたことであり、商業ギルドでアマリーア様に散々に仕込まれた事でもありますから」
荷物の整理、目録の管理。勿論、これらにしても商業ギルドで積み上げてきたことには違いないのだが、カレンとしての得意はこちらなのだと自信ありげに笑いながら。成程、カレンについては、問題が無い事獅子芯がある事については、このように振る舞うのだなとトモエとしてはそんな事を確認して。得意を、自信を持ってくれる仕事を振るのは雇用主の務めだとは言え、これまでは彼女の得意がオユキの苦手であった以上は、どうにもならず。
反面、ユーフォリアの視線が、はっきりとオユキに対して不安を訴えている。此処までの日々で、オユキがトモエに甘えるようなそぶりを見せ始めていたこともある。シェリアが、少々遠い他の使用人たちが気が付いていない事、それがユーフォリアとしては気にかかる。
トモエが、それを伝えていない以上は、伝えない以上は己から伝えるのも違うのだろうと考えて、理解はしても口に出していない事。オユキの目の奥に、はっきりと疲労が浮かび始めているという、その事実。
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