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34章 王都での生活
忍れど
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丸い木枠に張られた、少し厚みのある布に書かれたトモエを考えてオユキが描き上げた図案。それを、エステールとヴィルヘルミナが手直ししたうえで、すっかりと元から変わってしまってはいるのだが、それでもオユキがこうした要素がオユキから見たトモエなのだと、そう考えている物は残してある図案。これまでと同じように、どうやってというのがきちんと分かり易いように。使う糸の色で、縫い方は線のひき方で。
名前の由来でもある獅子の精霊。トモエの、オユキから見たトモエそのものである太刀。後は、トモエがかつて好んでいた小さく白い花。確か、カスミソウと呼んでいただろうか。こちらに来て、まず最初にとトモエがオユキに用意してくれた紬の袖口にあしらわれた撫子。その近縁種だったかと、そんな事を考えながら。
最初は、これらをオユキの思うように組み合わせて描いたものだが、一体これだけの煩雑な図案をどこに縫取るのかと言われて、今ではボタンを覆うための物として仕立てようとそうした話に落ち着いている。
「ところで、オユキ」
「はい、なんでしょうか」
そうして、オユキの自室でセツナとヴィルヘルミナと揃って刺繍に精を出している。何やら、オユキの背後に立つエステールからはらはらとみている視線を感じながら。
「他の侍女は、今どうしているのかしら」
「此処までの事もあり、順に休暇をとしている部分もありますが、ユーフォリアさんとカレンさんはそれぞれに頼んでいることもありますから。後は、シェリアとラズリアは王城で近衛として、というよりも私たちに関しての報告を求められているでしょうからもうしばらくかかるのではないでしょうか」
「そちらは、武国の無体に対しても含めて、でしょう」
「その、私が怒りをあらわに、そうして見せたという部分も確かにありますが、半ばは本気でしたから」
「それで、その結果と言えばいいのかしら」
要は、ヴィルヘルミナとしても腹に据えかねているのだと、声音でただそう伝えてきて。
「結果については、未だに何とも。ただ、昨日からアイリスさんがこちらに来ていることを考えると」
「確か、ユニエス公爵家に入っていたのだったかしら」
「ええ。ご存じのように、あちらが現状武国との窓口ですから」
「と言う事は、難航しているのね」
「どう、でしょうか。アイリスさんの移動は、どちらかといえばアベルさんへ手札を一つ増やすのと、セラフィーナさんへ向けた物かと思いますし」
「あら」
「アイリスさんの苛立ちというのは、どちらかといえば」
「そういえば、そうね。」
「幼子よ、手が止まっておるぞ」
そうして、話しているうちに、少し考えこんでしまったからだろう。この場の監督役を引き受けているセツナから、これまた少々厳しい声で。
「それにしても、セツナ様はともかく、ヴィルヘルミナさんも随分と手慣れておられますね」
「私のところでは、洗礼もそうだけれど伝統衣装にも入れるもの。母から娘に、料理と一緒に」
「ああ、そういえば、そうした物ですか」
「貴女のいた国では、そのあたり」
「どう、なのでしょうか。私は、両親が出かけていることが多かったですし」
「幼子を一人置いて、家を空ける、か」
「そう、ですね。私の記憶に残っている限りでは、物心がついた時には」
そうして話してしまえば、オユキは少し、揺れる。針が、何処かぼやけて見える。
「そう。なら、仕方ないのかしら」
「そもそも、私の過去と今とでは性別も異なっておりましたから。いたとして、習っていたかどうか」
「貴女なら、習っていたと思うわよ」
「そうじゃの。幼子にしても、今とさして性格が変わっていたとも思えぬしの」
「と、言いますか、ヴィルヘルミナさんはともかく、セツナ様は」
「ふむ。そのあたりは、正直な所妾としてはどうでも良いとでもいえばいいのか。そもそも、妾たちの種族は氷の乙女。性別という意味でいえば女のみとなる種族じゃからの。中身は、それこそ千差万別」
「常々疑問に思っているのだけれど、こうして人型だというのに単一の性別だけというのは」
「それを妾に言われても、困るのじゃがな。妾たちにしてみれば、それが自然の事としか言えぬ。そも、妾たち以外にも、多かろうに」
それは、確かにそうだと頷くしか無いものではある。
オユキの知っている範囲だけでも、木精に翼人種がそうだ。どうにも、頭の中で極論とでもいえばいいのだろうか、それに類する物がよぎるのだが、それについてオユキは口に出すことはせずに。
「セツナ様は、私達にもなじみのある図案で縫い取りを行われることが多いのですが」
「そう、ね。私としてもスノープリンセスは何度か読んだことがあるのだけれど、確かに私たちの位している地方ではあまりなじみが無いものね」
「ほう、その方が暮らしていた地にも妾たちの根となる伝承が」
「どうなのかしら。こうしてみていると、だいぶ違う気がするのよね」
そして、刺繍をしながら、ヴィルヘルミナが彼女の覚えている話をゆったりと、歌うように。
それこそ、彼女自身が頭抜けた技量の歌姫であるには違いなく、その歌はただ心地よく耳に届く。詩としてつけられているのは、彼女の語る雪の女王の物語。オユキとしても、言われてみれば有名な童話作家の作として存在していたなとそう思うばかり。
そうして、ゆったりとした時間を過ごしていれば、刺繍も程ほどに進む。慣れた二人は、オユキよりも簡単な図案であるとはいえ、既に一つを仕上げて木枠から外している。だが、オユキのほうは未だに半分も進んでいない。オユキにも分かり易いように、細かく分けているために、仕方が無い事でもあるのだが。そもそも、合わせる題材が、エステールにしても、ヴィルヘルミナにしても。あまりにもかけ離れている物だから、図案としてまとめるのが難しすぎるというのもあるのだが。
「ふむ、面白い話じゃの。確かに、妾たちの在り方ともに通う所がある」
「女王、と言う訳でもないのでしょうが、実質は変わらないでしょうけれど」
「うむ。まぁ、側にうるさい他の女王を名乗る小娘もおるしの。そちらと格を合わせるというのであれば、そうした名乗りも必要になるのやもしれぬ。もっとも、妾たちは根底としては氷になるのじゃが」
「雪も、氷の一つの形ではないかと、いえ、一つの形でしかないと言う事ですか」
「そのあたりは、理屈を話しても伝わるか分からぬのじゃが、雪よりは妾たちの関する氷のほうが上位ではあるの」
そうして、あれこれと話しているからだろうか。ヴィルヘルミナが軽くのど元を触るそぶりを見せるものだから、オユキは背後に立つエステールに簡単に身振りで伝える。
「私のといいますか、私たちの部屋ですからヴィルヘルミナさんにとっては」
「少し、懐かしくも思うもの。こうした環境も、私は好きよ。ただ、相応の装いが間に合っていないのが困ったものね」
「ご用意いただいても、私やセツナ様の部屋にでも行かない限りは不要でしょうから」
「常春、というのも衣装の種類の楽しみが無いから、私としては面白くないのだけれど」
「であれば、そこな幼子が門を妾たちの里と繋いだ後にこちらの一角をとしてみても良いぞ」
「やめてくださいね、流石にそのあたりは相談のうえでとしなければ、私も流石に怒られそうですから」
ヴィルヘルミナが、あまりにも平然と季節の数が少なくて退屈だと話。セツナが、当然とばかりにそれに乗って。オユキとしては、流石に環境を大幅に変えるような真似は、色々と障りも大きいからと。
「炎熱の鳥どもには、随分と配慮をしておるようじゃが」
「こう、あちらは、私たちというよりも、公爵様との契約もありますから」
「そういえば、妾はあまり気にしておらなんだが」
「公爵家というのは、貴族の中では最高位です。こちらに大公といった物があれば、また変わりますが」
「それで、オユキは子爵になるのだったかしら。それでも、十分な物でしょう。ロードなんだから」
「そちらに合わせれば、私はヴァイスカウンテスになるのですが、こちらではそのあたりそういえば」
爵位として、男女の区別があるのかとエステールに視線を向けてみれば。
「異邦の話は多少伺ってはおりますが、こちらでは男女比と言えばいいのでしょうか、それが大きく傾いていますから」
「私たちの暮らしていた地で、こちらに合わせた物となると男性のほうが圧倒的に多い時期でもあったのですが」
「こちらには女性しかいない種族こそあれど、男性のみというのは私も寡聞にして存じ上げず。神国の中だけで言うのであれば、女性が七に対して男性が一ですから。爵位にしても、女性が継ぐくこともままありますので、そこに男女で分けて用いるという習慣は結局定着しなかったのだとか」
「然も在りなん、と言うものですね」
そうして話しているうちに、エステールからの指示で用意をしたお茶がはこばれて。エステールがそれらを順次、三人の前に配膳していく。茶菓子にしても、セツナとオユキにはきちんと氷菓が並べられるのに対して、ヴィルヘルミナの前にはきちんと焼き菓子が。
「その、女性がそこまで多いという割に」
「ファンタズマ子爵家の周囲では、現状男性の当主というのが多いですし、実際にそれを選択する家というのも非常に多いのですが」
「子供が生まれにくい、というよりも人口の上限が存在していたから、というのもあるのでしょうね。それを良しとしないのであれば自然な帰結でもありますし」
「そう、なるのかしら」
「後は、領主の業務といいますか、爵位を持つ人物に与えられる義務というのは、間違いなく過酷な物ですから。過去のように、誰かが変わってというのもままならない状況ですし」
「地方であれば、その限りでも無いのですが、オユキ様がおられるのは王都から離れているとはいえ、あくまで公爵領ですから」
エステールの言葉に、オユキは頷き一つ。以前にアベルから簡単に聞きとって、書き込んでもらった地図以外にも、この国の領土図とでもいえばいいのだろうか、それも先ごろ公爵から改めてオユキに渡されている。公爵領の外側には侯爵領が。さらに外に、伯爵領。その先に子爵や男爵の領地が存在しており、最善となる場所には辺境伯。そうした構えになっている。勿論、それぞれの領内に親戚に任せるためにと任命権を持った爵位を使ってとしている物も多い。
名前の由来でもある獅子の精霊。トモエの、オユキから見たトモエそのものである太刀。後は、トモエがかつて好んでいた小さく白い花。確か、カスミソウと呼んでいただろうか。こちらに来て、まず最初にとトモエがオユキに用意してくれた紬の袖口にあしらわれた撫子。その近縁種だったかと、そんな事を考えながら。
最初は、これらをオユキの思うように組み合わせて描いたものだが、一体これだけの煩雑な図案をどこに縫取るのかと言われて、今ではボタンを覆うための物として仕立てようとそうした話に落ち着いている。
「ところで、オユキ」
「はい、なんでしょうか」
そうして、オユキの自室でセツナとヴィルヘルミナと揃って刺繍に精を出している。何やら、オユキの背後に立つエステールからはらはらとみている視線を感じながら。
「他の侍女は、今どうしているのかしら」
「此処までの事もあり、順に休暇をとしている部分もありますが、ユーフォリアさんとカレンさんはそれぞれに頼んでいることもありますから。後は、シェリアとラズリアは王城で近衛として、というよりも私たちに関しての報告を求められているでしょうからもうしばらくかかるのではないでしょうか」
「そちらは、武国の無体に対しても含めて、でしょう」
「その、私が怒りをあらわに、そうして見せたという部分も確かにありますが、半ばは本気でしたから」
「それで、その結果と言えばいいのかしら」
要は、ヴィルヘルミナとしても腹に据えかねているのだと、声音でただそう伝えてきて。
「結果については、未だに何とも。ただ、昨日からアイリスさんがこちらに来ていることを考えると」
「確か、ユニエス公爵家に入っていたのだったかしら」
「ええ。ご存じのように、あちらが現状武国との窓口ですから」
「と言う事は、難航しているのね」
「どう、でしょうか。アイリスさんの移動は、どちらかといえばアベルさんへ手札を一つ増やすのと、セラフィーナさんへ向けた物かと思いますし」
「あら」
「アイリスさんの苛立ちというのは、どちらかといえば」
「そういえば、そうね。」
「幼子よ、手が止まっておるぞ」
そうして、話しているうちに、少し考えこんでしまったからだろう。この場の監督役を引き受けているセツナから、これまた少々厳しい声で。
「それにしても、セツナ様はともかく、ヴィルヘルミナさんも随分と手慣れておられますね」
「私のところでは、洗礼もそうだけれど伝統衣装にも入れるもの。母から娘に、料理と一緒に」
「ああ、そういえば、そうした物ですか」
「貴女のいた国では、そのあたり」
「どう、なのでしょうか。私は、両親が出かけていることが多かったですし」
「幼子を一人置いて、家を空ける、か」
「そう、ですね。私の記憶に残っている限りでは、物心がついた時には」
そうして話してしまえば、オユキは少し、揺れる。針が、何処かぼやけて見える。
「そう。なら、仕方ないのかしら」
「そもそも、私の過去と今とでは性別も異なっておりましたから。いたとして、習っていたかどうか」
「貴女なら、習っていたと思うわよ」
「そうじゃの。幼子にしても、今とさして性格が変わっていたとも思えぬしの」
「と、言いますか、ヴィルヘルミナさんはともかく、セツナ様は」
「ふむ。そのあたりは、正直な所妾としてはどうでも良いとでもいえばいいのか。そもそも、妾たちの種族は氷の乙女。性別という意味でいえば女のみとなる種族じゃからの。中身は、それこそ千差万別」
「常々疑問に思っているのだけれど、こうして人型だというのに単一の性別だけというのは」
「それを妾に言われても、困るのじゃがな。妾たちにしてみれば、それが自然の事としか言えぬ。そも、妾たち以外にも、多かろうに」
それは、確かにそうだと頷くしか無いものではある。
オユキの知っている範囲だけでも、木精に翼人種がそうだ。どうにも、頭の中で極論とでもいえばいいのだろうか、それに類する物がよぎるのだが、それについてオユキは口に出すことはせずに。
「セツナ様は、私達にもなじみのある図案で縫い取りを行われることが多いのですが」
「そう、ね。私としてもスノープリンセスは何度か読んだことがあるのだけれど、確かに私たちの位している地方ではあまりなじみが無いものね」
「ほう、その方が暮らしていた地にも妾たちの根となる伝承が」
「どうなのかしら。こうしてみていると、だいぶ違う気がするのよね」
そして、刺繍をしながら、ヴィルヘルミナが彼女の覚えている話をゆったりと、歌うように。
それこそ、彼女自身が頭抜けた技量の歌姫であるには違いなく、その歌はただ心地よく耳に届く。詩としてつけられているのは、彼女の語る雪の女王の物語。オユキとしても、言われてみれば有名な童話作家の作として存在していたなとそう思うばかり。
そうして、ゆったりとした時間を過ごしていれば、刺繍も程ほどに進む。慣れた二人は、オユキよりも簡単な図案であるとはいえ、既に一つを仕上げて木枠から外している。だが、オユキのほうは未だに半分も進んでいない。オユキにも分かり易いように、細かく分けているために、仕方が無い事でもあるのだが。そもそも、合わせる題材が、エステールにしても、ヴィルヘルミナにしても。あまりにもかけ離れている物だから、図案としてまとめるのが難しすぎるというのもあるのだが。
「ふむ、面白い話じゃの。確かに、妾たちの在り方ともに通う所がある」
「女王、と言う訳でもないのでしょうが、実質は変わらないでしょうけれど」
「うむ。まぁ、側にうるさい他の女王を名乗る小娘もおるしの。そちらと格を合わせるというのであれば、そうした名乗りも必要になるのやもしれぬ。もっとも、妾たちは根底としては氷になるのじゃが」
「雪も、氷の一つの形ではないかと、いえ、一つの形でしかないと言う事ですか」
「そのあたりは、理屈を話しても伝わるか分からぬのじゃが、雪よりは妾たちの関する氷のほうが上位ではあるの」
そうして、あれこれと話しているからだろうか。ヴィルヘルミナが軽くのど元を触るそぶりを見せるものだから、オユキは背後に立つエステールに簡単に身振りで伝える。
「私のといいますか、私たちの部屋ですからヴィルヘルミナさんにとっては」
「少し、懐かしくも思うもの。こうした環境も、私は好きよ。ただ、相応の装いが間に合っていないのが困ったものね」
「ご用意いただいても、私やセツナ様の部屋にでも行かない限りは不要でしょうから」
「常春、というのも衣装の種類の楽しみが無いから、私としては面白くないのだけれど」
「であれば、そこな幼子が門を妾たちの里と繋いだ後にこちらの一角をとしてみても良いぞ」
「やめてくださいね、流石にそのあたりは相談のうえでとしなければ、私も流石に怒られそうですから」
ヴィルヘルミナが、あまりにも平然と季節の数が少なくて退屈だと話。セツナが、当然とばかりにそれに乗って。オユキとしては、流石に環境を大幅に変えるような真似は、色々と障りも大きいからと。
「炎熱の鳥どもには、随分と配慮をしておるようじゃが」
「こう、あちらは、私たちというよりも、公爵様との契約もありますから」
「そういえば、妾はあまり気にしておらなんだが」
「公爵家というのは、貴族の中では最高位です。こちらに大公といった物があれば、また変わりますが」
「それで、オユキは子爵になるのだったかしら。それでも、十分な物でしょう。ロードなんだから」
「そちらに合わせれば、私はヴァイスカウンテスになるのですが、こちらではそのあたりそういえば」
爵位として、男女の区別があるのかとエステールに視線を向けてみれば。
「異邦の話は多少伺ってはおりますが、こちらでは男女比と言えばいいのでしょうか、それが大きく傾いていますから」
「私たちの暮らしていた地で、こちらに合わせた物となると男性のほうが圧倒的に多い時期でもあったのですが」
「こちらには女性しかいない種族こそあれど、男性のみというのは私も寡聞にして存じ上げず。神国の中だけで言うのであれば、女性が七に対して男性が一ですから。爵位にしても、女性が継ぐくこともままありますので、そこに男女で分けて用いるという習慣は結局定着しなかったのだとか」
「然も在りなん、と言うものですね」
そうして話しているうちに、エステールからの指示で用意をしたお茶がはこばれて。エステールがそれらを順次、三人の前に配膳していく。茶菓子にしても、セツナとオユキにはきちんと氷菓が並べられるのに対して、ヴィルヘルミナの前にはきちんと焼き菓子が。
「その、女性がそこまで多いという割に」
「ファンタズマ子爵家の周囲では、現状男性の当主というのが多いですし、実際にそれを選択する家というのも非常に多いのですが」
「子供が生まれにくい、というよりも人口の上限が存在していたから、というのもあるのでしょうね。それを良しとしないのであれば自然な帰結でもありますし」
「そう、なるのかしら」
「後は、領主の業務といいますか、爵位を持つ人物に与えられる義務というのは、間違いなく過酷な物ですから。過去のように、誰かが変わってというのもままならない状況ですし」
「地方であれば、その限りでも無いのですが、オユキ様がおられるのは王都から離れているとはいえ、あくまで公爵領ですから」
エステールの言葉に、オユキは頷き一つ。以前にアベルから簡単に聞きとって、書き込んでもらった地図以外にも、この国の領土図とでもいえばいいのだろうか、それも先ごろ公爵から改めてオユキに渡されている。公爵領の外側には侯爵領が。さらに外に、伯爵領。その先に子爵や男爵の領地が存在しており、最善となる場所には辺境伯。そうした構えになっている。勿論、それぞれの領内に親戚に任せるためにと任命権を持った爵位を使ってとしている物も多い。
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