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33章 神国へ戻って
食事の席は
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「聞いていた通り、とでもいえばいいのか」
「あら、良いではありませんか。私たちにしても、随分とこうした席に招かれなくなって久しいのですから」
「それはそうだが、息子夫婦から言われていたこともあるだろう」
「仕方ありません。こればかりは、強制するわけにもいきませんから。我が子では無いのです、そして、分別がある相手である以上は」
「それも、そうではあろうが、既に」
「僅か一年半です。それも、過去に既に完成された、少なくとも私たちから見ても一貫性のある礼法を身に着けた相手です」
「確かに、そのあたりに関しては改めて言って聞かせるしかないものか」
昼食は、本来であれば先代公爵夫妻に招かれる形の予定ではあった。だが、オユキがアスパラガスが食べたいと、そんな話をして。さらには、前にそんな事を言っていたのはキノコ位だとそんな話をされたことも相まって、オユキの食事に対する欲がしっかりとそちらに傾いた。そして、シェリアとトモエが、珍しくオユキが己の食べたいものを口にしたのだからと全力で動いた結果とでもいえばいいのだろう。速やかに、食材が集められ、歩きキノコにしても、何処からともなく大量にわいてくることもあり、こちらも少年たちと共にしっかりと乱獲して。今となっては、先代公爵を招く形で騎士達の借り受けている町の広場の一角、そこを占拠したうえで屋外で調理をとなっている。
先代公爵としては、行儀作法に関して息子夫婦から言われていたこともあり、そちらをとも考えていたのだろうが、屋外での事となればそれもまた難しい。勿論、此処までの移動の間でエステールが見ることが出来る程度には道具も揃っているのだが、そちらはあくまで子爵家としての振る舞いの範囲。何よりも、戦と武技の巫女だという立場に甘えた上での事。
オユキとしては、そのあたり色々と気が付いていないのだが、戦と武技という柱から位を与えられているのだという前提があるからこそ、かなりの部分が見逃されている。個人としては、伯爵相当の位が与えられているため、本来であればファンタズマ子爵としてというよりも、オユキ個人としては伯爵相当の振る舞いを、作法を行わなければならないのだ。そして、それは子爵家の長から習えるようなことでは無い。それも踏まえた上で、先代公爵夫妻が用意されているわけなのだが。
「なんか、珍しいな、オユキが食事を楽しみにしてんの」
「そう、ですね。かつてもそうでしたが、今はよりひどくなっているといいますか」
そして、先代公爵夫妻に言われた言葉にしても、こうしてトモエとシグルドが話している言葉にしても、焼き台の前で少女たちと並んで随分と久しぶりに料理というにはどうかと考える作業に従事しているオユキには届きはしない。
「妾では、流石にああした振る舞いは難しいのじゃがのう」
「まぁ、お前はそうだろうな」
「ああした姿を見れば、妾も己の良人に等とも思うのじゃが」
「何、こちらでいよいよ火を使わぬ料理もあると聞いている」
「ふむ」
そして、連れられる形でついてきた、セツナとクレドから。何やら楽し気にしているのだと、そんな様子のをオユキを眺めて、こちらも楽し気に。
「と、言うよりも、妾の知らぬ食材が多いの」
「俺もだな。まぁ、匂いを見る限りでは、問題はなさそうだが」
「ふむ。幼子にしても、ああして実に嬉しそうじゃしの。妾たちの種族にしても、恐らく問題はあるまいよ」
「ああ」
そんな会話を、トモエはちらりと聞いて、過去の事を思い返してみる。犬にキノコを与えても大丈夫だと、そうした話は聞いたことはある。生食が問題だとそうした文言も記憶はあるのだが、そもそもキノコを生で食べようなどとオユキにしても考える事はあるまい。
「火を通せば、基本的には問題が無いはずなのですが」
「そういや、あんちゃん、そのあたり詳しいよな」
「詳しいといいますか、かつてでは一般的といいますか」
「サキは、その辺よく知らないらしいんだよな」
「サキさんは、そうですね。私たちと違って、見た目通りの年齢でこちらに来たわけですから」
「そうなのか。どうにも、異邦からって、聞くと」
「そのあたりは、それぞれ、でしょうね。なんにせよ、皆さんがあの子と仲良くしてくれているのは、嬉しい物です。暫くは私達でと考えていましたが、すっかりと、ですから」
「アリアのねーちゃんとかも、いるしな。あっちは、まぁ、まだ難しいみたいだけど、サキが気を使ってるし」
年に似合わぬため息一つ。
「他の方々は、後、どれくらいが教会に」
「つっても、今残ってるのは二人だけだな。他は、なんだかんだとこっちで、自分の足でってさ」
「それは、ええ、良い事、なのでしょうね」
「俺らも、サキが助けようっていうから、そっちにかなり使ったからな。いや、あんちゃんに言う事じゃないかもしれないけどさ」
「いいえ。それは、とても誇らしい事ですから。後で、オユキさんにも話してあげてくださいね」
自分たちが面倒を見た子供たちが、自分たちが技を伝えた相手が。それをつかって、他の者たちへと。それは、まさにオユキが望むことではあるのだ。トモエとしては、オユキが喜ぶからという以上の物ではないのだが。
「それにしても、シグルド君もパウ君も、色々と難しそうですね」
「難しいって、何が」
「いえ、今後の事です」
「あー、それか」
トモエとしては、どうにもシグルドから聞く名前のほとんどが女性であり、同性の相手というのはいよいよパウくらいしか身の回りにいない事を考えた。だが、そちらについてはこちらの世界のあまりにも歪な男女比とでもいえばいいのだろうか、それがある以上は仕方が無いものとしてそちらを口にするのではなく、他の事を。だが、トモエとしても思う所がある以上は、そちらも匂わせる形で。
「サキはアリアの世話をしたいつってるからな、後は、あいつもいるし」
「あいつというのは、いつぞやに伺った、花精の」
「ああ。それと、パウもなんか、あいつは、なんだっけか」
「アイリスさんを連れに来た、だったか。羊の特徴を持つ獣人の事か」
「名前は、なんだっけか。覚えてないけど、そっちから一緒に暮らしたいって言われてたろ」
「言われてはいるが、正直、俺にはそこまでの気持ちが無いといったのだがな。だが、今後を考えれば、俺も両親が見つかったこともある」
パウの両親については、門を潜って先に戻っているはずではある。ミリアムだけの保証では足りない、少なくともオユキが、戦と武技の巫女であり、神国において子爵位を持つオユキが間違いないと宣言すれば実のところ十分でもあった。だが、オユキとしてはそこにもう一つ、少なくともオユキが納得できる事実が欲しかったというだけ。この辺りに関しては、早々に神国に戻したいと考えているミリアムと、きちんと手続きを踏むべきだと考えるオユキと。その差が出た事柄だというしかない。そこに、後からトモエが両親との再会を演出するためにと、そうした他の出来事を付け加えてみたのが、パウと両親の出来事。
「そのあたりは、また難しい部分ではありますが。その、私たちが始まりの町にいる間は勿論のこととして」
「ああ。それは有難いのだが」
「パウ君には、やはり話していますか」
「気が付いていたのか」
「ええ。やはり、狩猟者として、隣国までの道行きをとされた方ですから」
そして、己の子供が狩猟者として、彼らから見ればはっきりと一門の者となった現実を見て。そこで、改めて奮起しているというのはここまでの中で気が付いている。言ってしまえば、己の子供に、ただただ追い抜かれることを良しとする親など、やはりいないのだ。矜持を持ち、常に背中を見せようと、お前は、我が子は、あくまで親としての姿だけを見ればいいのだと、それを示したいと考えるのだ。特に、いよいよどうにもならぬ老境に至るまでの間は。勿論、そうでは無い者たちもいると、トモエも理解はしている。過去に、散々にそうした話は聞いたし、見てもきた。だが、幸いにも、パウの両親は誇り高い者達であったとそれだけなのだ。
「ああ。そのあたりは、なんだ。俺も思う所はある」
「でも、お前の両親のケガは」
「それも分かった上でと言われている。始まりの町の周囲であれば、それでも十分だといわれてな。俺からも、魔物の配置が換わったとは言ったのだが」
「勘違いを正すのだとすれば、パウ君の両親は、まだパウ君よりも御強いですよ。私としても、加護を抜きでとなれば問題ありませんが、加護も含めた物となれば」
正直、殺すつもりで、それだけでもたりず。確実に殺すのだと、そうした技をもって向き合わなければならない相手だ。
「こちらに来たばかりの頃、その頃のイマノルさんと、今は同程度、でしょうか」
「まさか」
「いや、あんちゃんが言うんだから」
「そうですね。多分に感覚によるものですから、誤差は考えて頂きたくありますが、少なくとも技を選んで、それで今の私が届く相手ではありません」
「だが」
「確かに、片腕が無い、片足が無い。毒に侵されていた期間が長い。そうした現実は、お持ちの方々です。ですが、そうした状況にあっても神国から魔国へと、その者たちの中で明確に集団の長となった方ですよ」
パウにとって、両親がどのような存在だったかは分からない。だが、現実として、神国から魔国へと贈られた戦力の中から代表者をと話をした時に選ばれた者たちなのだ。つまりは、残っている者たちの中で、間違いなく何某かの能力に秀でている者たちなのだ。そして、そう思わせるだけの物を示した者たちなのだ。
「そうですね、始まりの町に戻った時に、模擬戦など行ってみますか。流石に、私では無くアベルさんかクレド様あたりに見極めを頼むこととなりますが」
「それは、俺だけか」
「いえ、皆さん全員でも、勝負になりませんよ」
「まじか」
「ええ。それが、今のあなた達の現実です。最も、私たちにしても決着に死を置かなければどうにもなりませんが」
トモエが、ただそう話してみれば、友人の両親、それもはっきりと治らぬ怪我を抱えた相手だとそうした気のゆるみがあったのだろう。トモエが、あまりにも明確にそれを告げているのだと、他にも多くの、治らぬ怪我を抱えた相手に頼み、その相手がどれだけであった方を思い出したのだろう。改めて、シグルドとパウが息を呑む。
「トモエさん」
だが、その僅かな緊張感も、オユキがトモエにまずはとただただ石突を落として塩を軽く振って焼いただけのキノコを持ってくれば、霧散する。
「あら、良いではありませんか。私たちにしても、随分とこうした席に招かれなくなって久しいのですから」
「それはそうだが、息子夫婦から言われていたこともあるだろう」
「仕方ありません。こればかりは、強制するわけにもいきませんから。我が子では無いのです、そして、分別がある相手である以上は」
「それも、そうではあろうが、既に」
「僅か一年半です。それも、過去に既に完成された、少なくとも私たちから見ても一貫性のある礼法を身に着けた相手です」
「確かに、そのあたりに関しては改めて言って聞かせるしかないものか」
昼食は、本来であれば先代公爵夫妻に招かれる形の予定ではあった。だが、オユキがアスパラガスが食べたいと、そんな話をして。さらには、前にそんな事を言っていたのはキノコ位だとそんな話をされたことも相まって、オユキの食事に対する欲がしっかりとそちらに傾いた。そして、シェリアとトモエが、珍しくオユキが己の食べたいものを口にしたのだからと全力で動いた結果とでもいえばいいのだろう。速やかに、食材が集められ、歩きキノコにしても、何処からともなく大量にわいてくることもあり、こちらも少年たちと共にしっかりと乱獲して。今となっては、先代公爵を招く形で騎士達の借り受けている町の広場の一角、そこを占拠したうえで屋外で調理をとなっている。
先代公爵としては、行儀作法に関して息子夫婦から言われていたこともあり、そちらをとも考えていたのだろうが、屋外での事となればそれもまた難しい。勿論、此処までの移動の間でエステールが見ることが出来る程度には道具も揃っているのだが、そちらはあくまで子爵家としての振る舞いの範囲。何よりも、戦と武技の巫女だという立場に甘えた上での事。
オユキとしては、そのあたり色々と気が付いていないのだが、戦と武技という柱から位を与えられているのだという前提があるからこそ、かなりの部分が見逃されている。個人としては、伯爵相当の位が与えられているため、本来であればファンタズマ子爵としてというよりも、オユキ個人としては伯爵相当の振る舞いを、作法を行わなければならないのだ。そして、それは子爵家の長から習えるようなことでは無い。それも踏まえた上で、先代公爵夫妻が用意されているわけなのだが。
「なんか、珍しいな、オユキが食事を楽しみにしてんの」
「そう、ですね。かつてもそうでしたが、今はよりひどくなっているといいますか」
そして、先代公爵夫妻に言われた言葉にしても、こうしてトモエとシグルドが話している言葉にしても、焼き台の前で少女たちと並んで随分と久しぶりに料理というにはどうかと考える作業に従事しているオユキには届きはしない。
「妾では、流石にああした振る舞いは難しいのじゃがのう」
「まぁ、お前はそうだろうな」
「ああした姿を見れば、妾も己の良人に等とも思うのじゃが」
「何、こちらでいよいよ火を使わぬ料理もあると聞いている」
「ふむ」
そして、連れられる形でついてきた、セツナとクレドから。何やら楽し気にしているのだと、そんな様子のをオユキを眺めて、こちらも楽し気に。
「と、言うよりも、妾の知らぬ食材が多いの」
「俺もだな。まぁ、匂いを見る限りでは、問題はなさそうだが」
「ふむ。幼子にしても、ああして実に嬉しそうじゃしの。妾たちの種族にしても、恐らく問題はあるまいよ」
「ああ」
そんな会話を、トモエはちらりと聞いて、過去の事を思い返してみる。犬にキノコを与えても大丈夫だと、そうした話は聞いたことはある。生食が問題だとそうした文言も記憶はあるのだが、そもそもキノコを生で食べようなどとオユキにしても考える事はあるまい。
「火を通せば、基本的には問題が無いはずなのですが」
「そういや、あんちゃん、そのあたり詳しいよな」
「詳しいといいますか、かつてでは一般的といいますか」
「サキは、その辺よく知らないらしいんだよな」
「サキさんは、そうですね。私たちと違って、見た目通りの年齢でこちらに来たわけですから」
「そうなのか。どうにも、異邦からって、聞くと」
「そのあたりは、それぞれ、でしょうね。なんにせよ、皆さんがあの子と仲良くしてくれているのは、嬉しい物です。暫くは私達でと考えていましたが、すっかりと、ですから」
「アリアのねーちゃんとかも、いるしな。あっちは、まぁ、まだ難しいみたいだけど、サキが気を使ってるし」
年に似合わぬため息一つ。
「他の方々は、後、どれくらいが教会に」
「つっても、今残ってるのは二人だけだな。他は、なんだかんだとこっちで、自分の足でってさ」
「それは、ええ、良い事、なのでしょうね」
「俺らも、サキが助けようっていうから、そっちにかなり使ったからな。いや、あんちゃんに言う事じゃないかもしれないけどさ」
「いいえ。それは、とても誇らしい事ですから。後で、オユキさんにも話してあげてくださいね」
自分たちが面倒を見た子供たちが、自分たちが技を伝えた相手が。それをつかって、他の者たちへと。それは、まさにオユキが望むことではあるのだ。トモエとしては、オユキが喜ぶからという以上の物ではないのだが。
「それにしても、シグルド君もパウ君も、色々と難しそうですね」
「難しいって、何が」
「いえ、今後の事です」
「あー、それか」
トモエとしては、どうにもシグルドから聞く名前のほとんどが女性であり、同性の相手というのはいよいよパウくらいしか身の回りにいない事を考えた。だが、そちらについてはこちらの世界のあまりにも歪な男女比とでもいえばいいのだろうか、それがある以上は仕方が無いものとしてそちらを口にするのではなく、他の事を。だが、トモエとしても思う所がある以上は、そちらも匂わせる形で。
「サキはアリアの世話をしたいつってるからな、後は、あいつもいるし」
「あいつというのは、いつぞやに伺った、花精の」
「ああ。それと、パウもなんか、あいつは、なんだっけか」
「アイリスさんを連れに来た、だったか。羊の特徴を持つ獣人の事か」
「名前は、なんだっけか。覚えてないけど、そっちから一緒に暮らしたいって言われてたろ」
「言われてはいるが、正直、俺にはそこまでの気持ちが無いといったのだがな。だが、今後を考えれば、俺も両親が見つかったこともある」
パウの両親については、門を潜って先に戻っているはずではある。ミリアムだけの保証では足りない、少なくともオユキが、戦と武技の巫女であり、神国において子爵位を持つオユキが間違いないと宣言すれば実のところ十分でもあった。だが、オユキとしてはそこにもう一つ、少なくともオユキが納得できる事実が欲しかったというだけ。この辺りに関しては、早々に神国に戻したいと考えているミリアムと、きちんと手続きを踏むべきだと考えるオユキと。その差が出た事柄だというしかない。そこに、後からトモエが両親との再会を演出するためにと、そうした他の出来事を付け加えてみたのが、パウと両親の出来事。
「そのあたりは、また難しい部分ではありますが。その、私たちが始まりの町にいる間は勿論のこととして」
「ああ。それは有難いのだが」
「パウ君には、やはり話していますか」
「気が付いていたのか」
「ええ。やはり、狩猟者として、隣国までの道行きをとされた方ですから」
そして、己の子供が狩猟者として、彼らから見ればはっきりと一門の者となった現実を見て。そこで、改めて奮起しているというのはここまでの中で気が付いている。言ってしまえば、己の子供に、ただただ追い抜かれることを良しとする親など、やはりいないのだ。矜持を持ち、常に背中を見せようと、お前は、我が子は、あくまで親としての姿だけを見ればいいのだと、それを示したいと考えるのだ。特に、いよいよどうにもならぬ老境に至るまでの間は。勿論、そうでは無い者たちもいると、トモエも理解はしている。過去に、散々にそうした話は聞いたし、見てもきた。だが、幸いにも、パウの両親は誇り高い者達であったとそれだけなのだ。
「ああ。そのあたりは、なんだ。俺も思う所はある」
「でも、お前の両親のケガは」
「それも分かった上でと言われている。始まりの町の周囲であれば、それでも十分だといわれてな。俺からも、魔物の配置が換わったとは言ったのだが」
「勘違いを正すのだとすれば、パウ君の両親は、まだパウ君よりも御強いですよ。私としても、加護を抜きでとなれば問題ありませんが、加護も含めた物となれば」
正直、殺すつもりで、それだけでもたりず。確実に殺すのだと、そうした技をもって向き合わなければならない相手だ。
「こちらに来たばかりの頃、その頃のイマノルさんと、今は同程度、でしょうか」
「まさか」
「いや、あんちゃんが言うんだから」
「そうですね。多分に感覚によるものですから、誤差は考えて頂きたくありますが、少なくとも技を選んで、それで今の私が届く相手ではありません」
「だが」
「確かに、片腕が無い、片足が無い。毒に侵されていた期間が長い。そうした現実は、お持ちの方々です。ですが、そうした状況にあっても神国から魔国へと、その者たちの中で明確に集団の長となった方ですよ」
パウにとって、両親がどのような存在だったかは分からない。だが、現実として、神国から魔国へと贈られた戦力の中から代表者をと話をした時に選ばれた者たちなのだ。つまりは、残っている者たちの中で、間違いなく何某かの能力に秀でている者たちなのだ。そして、そう思わせるだけの物を示した者たちなのだ。
「そうですね、始まりの町に戻った時に、模擬戦など行ってみますか。流石に、私では無くアベルさんかクレド様あたりに見極めを頼むこととなりますが」
「それは、俺だけか」
「いえ、皆さん全員でも、勝負になりませんよ」
「まじか」
「ええ。それが、今のあなた達の現実です。最も、私たちにしても決着に死を置かなければどうにもなりませんが」
トモエが、ただそう話してみれば、友人の両親、それもはっきりと治らぬ怪我を抱えた相手だとそうした気のゆるみがあったのだろう。トモエが、あまりにも明確にそれを告げているのだと、他にも多くの、治らぬ怪我を抱えた相手に頼み、その相手がどれだけであった方を思い出したのだろう。改めて、シグルドとパウが息を呑む。
「トモエさん」
だが、その僅かな緊張感も、オユキがトモエにまずはとただただ石突を落として塩を軽く振って焼いただけのキノコを持ってくれば、霧散する。
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