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32章 闘技大会を控えて
どうやら
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「それよりも、一先ず門は作ったのだけれど色々と難しい事になりそうなのよ」
オユキが、これ以上推論を募らせぬ様に。どの段階で、最早時間軸というのが共通では無いという事実を隠しもせずに。かつてのゲームにしても、ログインの時間帯が多岐にわたっている以上はと圧縮も行われていたのだが、それを含めても時間の流れが、この世界の大元の設立というのが不可解という程でもない。オユキたちが遊んでいたものは、正式にリリースがされた物。それ以前の開発段階があった以上は、当然そちらに準じるというものだ。
だが、こうして明確に止めたと言う事は、どこかの時点で発生し、独自にとなって。要は、今度はそちらからかつての世界に影響を与えてと言う事なのだろう。成程、かつての世界でも存在していた、再現性のない技術。確かにすべてが公開されていたはずだというのに、なぜ再現できなかったのか、それすらも回答が得られたとみても良いのだ。
そして、その頃からしっかりとこちらの神々は選んでいたのだろう。かつての世界、そこにいるという創造神が開発者たちの作った仕組みを経由することで見せていたのだろう。だが、そうであるのならとオユキはどうしたところで思考が募るのを止めようとしながらも。
「難しい、ですか」
「考えるのをやめよとは言わぬが、その方、くれぐれもそれを吹聴はせぬ様にな」
「いえ、行ったところでかつての世界に、異邦に理解の無い方や異邦にいた者たちにしても受け入れにくい事ではあるでしょうから」
被造物であったはずの物が、かつての己たちを超えていた。オユキとしては、当然の如く受け入れられることではあるのだが、そうでは無い物がどれほど多いだろうか。今、身の回りにいる者たちであれば問題はなさそうなものだが、それ以外はやはりわからない。
「いえ、成程。それに得心のいかぬ者たちが一部と言いますか、大元に。それも、難しいですか、大元とまではいわずとも」
「凡そ、間違ってはいないからこそ、否定もできぬのだがな。今は、冬と眠りの働きを聞くが良い」
「その、難しさというのは、御身の力を使うからこそと想像は出来るのですが、セツナ様たちの地では問題にならないかと」
「そうでもないわよ。あの子は流石に私よりもかなり下位だもの。氷の乙女の里に、異空と流離の持つ炎熱を抑えるためにと表に私の力が強い物を置いてしまえば、少し相が変わるわ」
今一つ、そのあたりはよく分からないとオユキが首をかしげて見せれば。
「妾たちのほうでも、少々場を整えるために用意がいると言う事じゃ。先におぬしのゆうたように、門を置くだけとはならぬ故」
「それは、どうした物でしょう。私どものほうでは、それこそカナリアさんあたりに頼んで、整えて頂こうと思いましたが」
「カナリアというのは、炎熱の鳥であろう。常駐させるのか、いや、今も共に暮らしている以上はそれもと言う事か」
そこで、オユキとしてはふと気になることが。
「なんじゃ、その方、もしや己の生活の場から離れたところに置くつもりじゃったか。妾達でも通れるように加工された門とはいえ、門であることには変わりが無かろう。開けば、当然そこから漏れる物もあるのではないか」
「内部に関しては、異空と流離の神に依る物かと考えていたのですが」
「表面だけでいいなら、そもそも問題にならないわよ。貴女にしても以前そこの裔がのこした炎が通るたびに焼いたでしょう。既にある門は、内部にしても私の力がほとんどよ。それを、氷の乙女に通らせれば、弱るわよ、覿面に」
言われて、オユキも成程と。いや、それよりも、前提として気になると言えばいいのだろうか。
「今回は、そこな炎熱の鳥に攫われての」
「門という形に落とし込む、それができるというのに私の裔が単独でそれを行えないはずも無いでしょう」
「カナリアさんは」
「あれは、水と癒しに傾いてしまっているからまた別よ。それにしても、両立できないものではないのだけれど、そのあたりはいよいよ今後ね。」
困ったことだと、異空と流離が零してみれば。カナリアの肩が揺れ、そして教育役を任されているらしいパロティアの視線が鋭くなる。フスカのほうはと思えば、いよいよ我関せずとばかりに己の祖霊の御業を見ているのだろう。生憎と、オユキには作られた門がどこにどのような形であるかは分からないのだが、力の発露というのを追いかける様に動くフスカの視線、それをどうにか意識に納めて。最も、その先にあるものが何かと言われても、流石に食事の席で大きく視線をずらすのは招いたものとしても無作法だろうと考えて控えてはいるのだが。何よりも、見たところでその先には何もないだろう、少なくともオユキの理解が及ぶ形で存在するものではないのだろうとその程度の理解はある。
「ええと、門の大きさにもよりますが、私にとっては、正直都合の良い物では」
だが、門の内側にも冬と眠りの力が満ちて、明けるだけでそれが得られるというのならば、オユキにとっては非常にうれしい物になる。今は、カナリアに頼んで整えてもらっているとはいえ、それ以上の物が得られるというのならば願ってもいない。大切な物であるには違いない、寧ろ、門のサイズがこれまでに見た物よりも小型になっているというのならば、あくまで用途が限られるのだからと小型化しているというのならば、それこそ己に与えられた屋敷の敷地内に設置して、周辺の環境についてはそれこそ壁に何某かの工夫をして。オユキとしては、そう考えているのだが。
「そこまで、都合のいい物にはならないわよ。どういえばいいのかしら、異空と流離の力を封じるために、私が使う力というのは冬よりも眠りが強くなるもの」
「それは」
「ええ。あまりに力が漏れるようなことがあれば、当然周り一帯を眠りに落とすわ。それに、門を潜る者たちにしても、入ってしまえば私の力だもの、逆らう事は無理よ」
「季節一つ分とはいかないけれど、馴染んでいるかどうか、どの程度の力を持っているかで眠りから覚めるまでの期間は変わるでしょうね」
周囲に漏れ出る力だけでも、いつぞやにというよりも、常々オユキが使う魔術と同じ効果を持っているとはっきりと告げられる。
「妾たちの里に置けば、良人たちの種族が真っ先に周囲に集まって眠りそうよな」
「俺たちは別に冬眠が必要と言う訳でもないが、まぁ、寝るのが嫌いではない」
「後は、幼子たちよな。こうしてここにいる幼子に比べれば、少しばかり成長はしているとはいえ、ふいに近づいた時に眠ってしまえば、障りも多い。安息の眠りともまた違い、この眠りはより深い眠りとなる。植物の種子が、雪の内で得る様に、良人も言うたが、春を待ち冬は眠りの内で過ごすように。長い時を、待って過ごすためにこれから訪れれる芽吹きの時を、春を待つために己を削る眠りとなる故な」
セツナの言葉が、あまりにも無遠慮とでもいえばいいのだろうか。冬と眠りの与える眠りというのは、安息のための眠りでは無いのだと。冬という多くの生物にとっては厳しすぎる季節を過ごすために、どうにか乗り切るためにと、生命が冬に抗するために得た機能なのだと。つまりは、この寂しげにする神を遠ざけるために得た力、それなのだと。
成程、常々寂しげなこの柱。一体、何の因果か己を孤独にするための名すらも冠として与えられてしまっているこの柱。それを慮るのが雷と輝き等と言う、ごくごくわずかな現象である事、短時間に発生しあまりにも強大な力を持つ現象。少なくとも、オユキの記憶にあるかつての世界、その惑星の上ではそのような現象の相手が慮っている。冬、乾燥した空気の中で、その力をためるには違いないのだが。
「幼子よ、そなたの言い分も分かるのじゃが、力の理解はやはり正しくせねばならぬ。無論、神々とて我らの祖霊とて各々に性格と言うものがある。己の持つ権能を喜ばぬ柱とて、無論存在しておる。しかしの、そなたも分かっておるじゃろうが、どなたかがその力を持たねば、やはり世界は立ち行かぬ。故に、妾は力をただ力と評しよう。謝罪が必要だというのならば、供える事で、聖名を讃える事で返すとも」
「いえ、確かに、氷の乙女の祖、その上の柱ですから。私も、軽率でした」
そう、冬と眠りに連なる者たちから生まれたのが氷の乙女という種族でもある。その上位の力が、種族として暮らす最善の環境に突如加えられたとなれば、確かにその場を取りまとめる長として色々と不安に感じるというのも、オユキは理解ができる。ただ、不満げにしているのは、己とよく似た姿の相手が何やら寂しげにするものだから。
「いいわよ。もう、すっかり慣れてはいるもの。それに、貴女もいるからこうして降りてこられるようにもなったのよ」
「それは、重畳かと」
「貴女の不安は分かるけれど、十分よ。これまでに比べて、思う所が無いでもないし、貴女が今の望みのままに時を過ごせばと、不安にも思うけれど」
「そのあたりは、この者に言いつければよい。少なくとも、お前のに姿を広くみられるようにせよと。氷の乙女の里であれば、常夜の地であれば問題もそこまでないだろう」
雷と輝きが、実に気軽に言ってくれるものだが。
「こちらの持祭の少女が、私の姿を見てすぐに気が付いていたようですが」
「お前の姿は確かに瓜二つと呼んでも差支えが無いのだが、では、その姿を見て他の誰かが気が付いたか」
アナが、早々にオユキの姿を評してそのように言っていたはずではある。オユキの姿よりも、オユキの属性を見て、冬と眠りの女神だと、口にしていたこともある。教会に勤めている者たちであれば、知っているはずだとオユキは口にするのだが、確かにアナ以外がそれを口にした記憶も無い。同じく教会で、持祭の位を得ている他の少女たちにしても。アドリアーナは位を得たのは後の事だとしても、それ以前に力が弱いとはいえ木々と狩猟の位を持っていたセシリアまでもが言及しなかった理由というのがそこにあるらしい。
つまりは、教会で働く者たち、教会にて勤めを行う者たち。始まりの町で、少なくとも十人が必要だとされている理由。本当に、この世界の仕組みというのは、こちらに暮らしている者たちですら異なるのだとただただオユキとしては頭を抱えたくなるというものだ。だが、オユキからいえる事については。
「ただ、私は冬と眠りでは無く、戦と武技の神から位を頂いているのですよね」
「貴女が望めば、変えることもできるわよ。本当に、それを望むのならば」
オユキが、これ以上推論を募らせぬ様に。どの段階で、最早時間軸というのが共通では無いという事実を隠しもせずに。かつてのゲームにしても、ログインの時間帯が多岐にわたっている以上はと圧縮も行われていたのだが、それを含めても時間の流れが、この世界の大元の設立というのが不可解という程でもない。オユキたちが遊んでいたものは、正式にリリースがされた物。それ以前の開発段階があった以上は、当然そちらに準じるというものだ。
だが、こうして明確に止めたと言う事は、どこかの時点で発生し、独自にとなって。要は、今度はそちらからかつての世界に影響を与えてと言う事なのだろう。成程、かつての世界でも存在していた、再現性のない技術。確かにすべてが公開されていたはずだというのに、なぜ再現できなかったのか、それすらも回答が得られたとみても良いのだ。
そして、その頃からしっかりとこちらの神々は選んでいたのだろう。かつての世界、そこにいるという創造神が開発者たちの作った仕組みを経由することで見せていたのだろう。だが、そうであるのならとオユキはどうしたところで思考が募るのを止めようとしながらも。
「難しい、ですか」
「考えるのをやめよとは言わぬが、その方、くれぐれもそれを吹聴はせぬ様にな」
「いえ、行ったところでかつての世界に、異邦に理解の無い方や異邦にいた者たちにしても受け入れにくい事ではあるでしょうから」
被造物であったはずの物が、かつての己たちを超えていた。オユキとしては、当然の如く受け入れられることではあるのだが、そうでは無い物がどれほど多いだろうか。今、身の回りにいる者たちであれば問題はなさそうなものだが、それ以外はやはりわからない。
「いえ、成程。それに得心のいかぬ者たちが一部と言いますか、大元に。それも、難しいですか、大元とまではいわずとも」
「凡そ、間違ってはいないからこそ、否定もできぬのだがな。今は、冬と眠りの働きを聞くが良い」
「その、難しさというのは、御身の力を使うからこそと想像は出来るのですが、セツナ様たちの地では問題にならないかと」
「そうでもないわよ。あの子は流石に私よりもかなり下位だもの。氷の乙女の里に、異空と流離の持つ炎熱を抑えるためにと表に私の力が強い物を置いてしまえば、少し相が変わるわ」
今一つ、そのあたりはよく分からないとオユキが首をかしげて見せれば。
「妾たちのほうでも、少々場を整えるために用意がいると言う事じゃ。先におぬしのゆうたように、門を置くだけとはならぬ故」
「それは、どうした物でしょう。私どものほうでは、それこそカナリアさんあたりに頼んで、整えて頂こうと思いましたが」
「カナリアというのは、炎熱の鳥であろう。常駐させるのか、いや、今も共に暮らしている以上はそれもと言う事か」
そこで、オユキとしてはふと気になることが。
「なんじゃ、その方、もしや己の生活の場から離れたところに置くつもりじゃったか。妾達でも通れるように加工された門とはいえ、門であることには変わりが無かろう。開けば、当然そこから漏れる物もあるのではないか」
「内部に関しては、異空と流離の神に依る物かと考えていたのですが」
「表面だけでいいなら、そもそも問題にならないわよ。貴女にしても以前そこの裔がのこした炎が通るたびに焼いたでしょう。既にある門は、内部にしても私の力がほとんどよ。それを、氷の乙女に通らせれば、弱るわよ、覿面に」
言われて、オユキも成程と。いや、それよりも、前提として気になると言えばいいのだろうか。
「今回は、そこな炎熱の鳥に攫われての」
「門という形に落とし込む、それができるというのに私の裔が単独でそれを行えないはずも無いでしょう」
「カナリアさんは」
「あれは、水と癒しに傾いてしまっているからまた別よ。それにしても、両立できないものではないのだけれど、そのあたりはいよいよ今後ね。」
困ったことだと、異空と流離が零してみれば。カナリアの肩が揺れ、そして教育役を任されているらしいパロティアの視線が鋭くなる。フスカのほうはと思えば、いよいよ我関せずとばかりに己の祖霊の御業を見ているのだろう。生憎と、オユキには作られた門がどこにどのような形であるかは分からないのだが、力の発露というのを追いかける様に動くフスカの視線、それをどうにか意識に納めて。最も、その先にあるものが何かと言われても、流石に食事の席で大きく視線をずらすのは招いたものとしても無作法だろうと考えて控えてはいるのだが。何よりも、見たところでその先には何もないだろう、少なくともオユキの理解が及ぶ形で存在するものではないのだろうとその程度の理解はある。
「ええと、門の大きさにもよりますが、私にとっては、正直都合の良い物では」
だが、門の内側にも冬と眠りの力が満ちて、明けるだけでそれが得られるというのならば、オユキにとっては非常にうれしい物になる。今は、カナリアに頼んで整えてもらっているとはいえ、それ以上の物が得られるというのならば願ってもいない。大切な物であるには違いない、寧ろ、門のサイズがこれまでに見た物よりも小型になっているというのならば、あくまで用途が限られるのだからと小型化しているというのならば、それこそ己に与えられた屋敷の敷地内に設置して、周辺の環境についてはそれこそ壁に何某かの工夫をして。オユキとしては、そう考えているのだが。
「そこまで、都合のいい物にはならないわよ。どういえばいいのかしら、異空と流離の力を封じるために、私が使う力というのは冬よりも眠りが強くなるもの」
「それは」
「ええ。あまりに力が漏れるようなことがあれば、当然周り一帯を眠りに落とすわ。それに、門を潜る者たちにしても、入ってしまえば私の力だもの、逆らう事は無理よ」
「季節一つ分とはいかないけれど、馴染んでいるかどうか、どの程度の力を持っているかで眠りから覚めるまでの期間は変わるでしょうね」
周囲に漏れ出る力だけでも、いつぞやにというよりも、常々オユキが使う魔術と同じ効果を持っているとはっきりと告げられる。
「妾たちの里に置けば、良人たちの種族が真っ先に周囲に集まって眠りそうよな」
「俺たちは別に冬眠が必要と言う訳でもないが、まぁ、寝るのが嫌いではない」
「後は、幼子たちよな。こうしてここにいる幼子に比べれば、少しばかり成長はしているとはいえ、ふいに近づいた時に眠ってしまえば、障りも多い。安息の眠りともまた違い、この眠りはより深い眠りとなる。植物の種子が、雪の内で得る様に、良人も言うたが、春を待ち冬は眠りの内で過ごすように。長い時を、待って過ごすためにこれから訪れれる芽吹きの時を、春を待つために己を削る眠りとなる故な」
セツナの言葉が、あまりにも無遠慮とでもいえばいいのだろうか。冬と眠りの与える眠りというのは、安息のための眠りでは無いのだと。冬という多くの生物にとっては厳しすぎる季節を過ごすために、どうにか乗り切るためにと、生命が冬に抗するために得た機能なのだと。つまりは、この寂しげにする神を遠ざけるために得た力、それなのだと。
成程、常々寂しげなこの柱。一体、何の因果か己を孤独にするための名すらも冠として与えられてしまっているこの柱。それを慮るのが雷と輝き等と言う、ごくごくわずかな現象である事、短時間に発生しあまりにも強大な力を持つ現象。少なくとも、オユキの記憶にあるかつての世界、その惑星の上ではそのような現象の相手が慮っている。冬、乾燥した空気の中で、その力をためるには違いないのだが。
「幼子よ、そなたの言い分も分かるのじゃが、力の理解はやはり正しくせねばならぬ。無論、神々とて我らの祖霊とて各々に性格と言うものがある。己の持つ権能を喜ばぬ柱とて、無論存在しておる。しかしの、そなたも分かっておるじゃろうが、どなたかがその力を持たねば、やはり世界は立ち行かぬ。故に、妾は力をただ力と評しよう。謝罪が必要だというのならば、供える事で、聖名を讃える事で返すとも」
「いえ、確かに、氷の乙女の祖、その上の柱ですから。私も、軽率でした」
そう、冬と眠りに連なる者たちから生まれたのが氷の乙女という種族でもある。その上位の力が、種族として暮らす最善の環境に突如加えられたとなれば、確かにその場を取りまとめる長として色々と不安に感じるというのも、オユキは理解ができる。ただ、不満げにしているのは、己とよく似た姿の相手が何やら寂しげにするものだから。
「いいわよ。もう、すっかり慣れてはいるもの。それに、貴女もいるからこうして降りてこられるようにもなったのよ」
「それは、重畳かと」
「貴女の不安は分かるけれど、十分よ。これまでに比べて、思う所が無いでもないし、貴女が今の望みのままに時を過ごせばと、不安にも思うけれど」
「そのあたりは、この者に言いつければよい。少なくとも、お前のに姿を広くみられるようにせよと。氷の乙女の里であれば、常夜の地であれば問題もそこまでないだろう」
雷と輝きが、実に気軽に言ってくれるものだが。
「こちらの持祭の少女が、私の姿を見てすぐに気が付いていたようですが」
「お前の姿は確かに瓜二つと呼んでも差支えが無いのだが、では、その姿を見て他の誰かが気が付いたか」
アナが、早々にオユキの姿を評してそのように言っていたはずではある。オユキの姿よりも、オユキの属性を見て、冬と眠りの女神だと、口にしていたこともある。教会に勤めている者たちであれば、知っているはずだとオユキは口にするのだが、確かにアナ以外がそれを口にした記憶も無い。同じく教会で、持祭の位を得ている他の少女たちにしても。アドリアーナは位を得たのは後の事だとしても、それ以前に力が弱いとはいえ木々と狩猟の位を持っていたセシリアまでもが言及しなかった理由というのがそこにあるらしい。
つまりは、教会で働く者たち、教会にて勤めを行う者たち。始まりの町で、少なくとも十人が必要だとされている理由。本当に、この世界の仕組みというのは、こちらに暮らしている者たちですら異なるのだとただただオユキとしては頭を抱えたくなるというものだ。だが、オユキからいえる事については。
「ただ、私は冬と眠りでは無く、戦と武技の神から位を頂いているのですよね」
「貴女が望めば、変えることもできるわよ。本当に、それを望むのならば」
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