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30章 豊穣祭
招待状
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「厄介な」
お茶会という程正式な物では無かったのだが、誘ったのはオユキでもある。そこで、中座をするのかとそう考えたのは確か。だが、ユーフォリアが実に苦々しげな顔をしながらも持ってきた書簡でもあるため、その場で一応何処からかというのだけは確認することとした。してしまった。
「オユキ様でしたら、勿論そうおっしゃるでしょう。やはり、私がどうにか」
「それでユーフォリアの瑕疵になるのであれば、私がそれを望まぬと考えての事でしょう」
一つの事実として、返事を持つ相手も待たせていると言う事。それがある。万が一、ユーフォリアが気を利かせてお茶会を終えてからとした場合には、オユキの評価と言うものに随分と直接問題を起こす。そして、それを避けようと思えば気をまわしたユーフォリアの責任問題となる。
最早、オユキも、何よりトモエがユーフォリアを手放す気が無いとそれが分かっているからだろう。再教育として、また王城に連れていかれることがあれば、それがまた交渉の手札になる。そうした、背景まですべてを理解したうえで、やむを得ないと判断したユーフォリアに問題はない。少なくとも、オユキははっきりとそう考えている。だからこそ、今を選んだ訳では無いのだろうが、こうした席を催している時を選んだ訳では無いのだろうがと。
「つくづく、間が悪いと言いますか」
「その、私のほうで情報の封鎖がやはり」
「私たちがというよりも、私が動けばどうしても目立ちますし、そもそもお借りしている人員ですから」
そして、主従揃ってため息一つ。
この場には、シェリアとユーフォリアを連れて、オユキが戻ってきたこともある。そして、シェリアがどうにも剣呑な視線を向けているため、オユキとしてはこういった背景があるのだと、改めて簡単に説明をしたうえで本題を口にする。
「王妃様から、改めてご招待を受けました」
その一言で、シェリアにしてもはっきりと瞳に理解の色が走る。こちらを先に話してもいいかと、オユキとしてはそんな考えもあるにはあったのだが、オユキはユーフォリアを庇うのだとそうした姿勢を見せておきたかったこともある。何故結論を先に、これまでであればそうしていただろうにしなかったのか、そのあたりについてもシェリアは理解が及んでいるようで、何よりではある。シェリアにしてみれば、ぽっと出の相手。オユキからしてみれば、本当に長い間の積み重ねがある相手。そのあたりの理解はあるのだとして、納得と言うのが難しいのはオユキも理解できているのだから。
「お茶会に、昨日でしょうね、外に出たことでそれくらいの余裕があるのならと」
「確かに、王妃様でしたら、王太子様とマリーア公爵の件もありますし」
「そうであればと考えていたのですが、どうにも」
そう、どういえばいいのだろうか。オユキでも分かり易い、そうした仕事の話であればよかったのだ。だが、こうして送られた案内状に並んだ名前を見る限り、やはりそのようには思えない。
「クレリー公爵家のカルラ様、それと王太子妃様に公爵夫人」
オユキが、とりあえず面識がある相手から名前を挙げていけば、それぞれからなるほどとそういった頷きが返ってくる。
「レジス侯爵夫人、ラスト子爵夫人までとなると、流石に」
一応、家名だけは記憶にあるというよりも、本当によく知っている相手。実際には、顔を全く合わせていないのだが、この機会に漸くと言う話なのか、もしくは。他にも、それこそ名前だけは憶えている家の名前がちらほらと書かれている。そんな、下位に対する招待状。流石に王妃が行うものともなれば、連ねている名前も随分と多い。そのような席で、仕事の話なども難しかろうというのがやはりオユキの考え。周知すると言った意味で数を揃える事はあるだろうが、会議とするには人が多すぎる。それこそ、事前準備も無ければ、議題が書かれているわけでもない。そこで、ここまでの十を超えるような人数を集めて会議を行ったところで、そこに陸な帰結は無いのだと過去の色々で理解している。
「そういえば、オユキ様はまだでしたね」
「シェリアは、何か」
さて、オユキは全く思いつかず、ユーフォリアも同様。だというのに、シェリアのほうでは、何か心当たりがあると言う事らしい。
「ファンタズマ子爵家当主として、オユキ・ファンタズマ子爵としてのお披露目が」
「はて、それに関しては新年の折に陛下から」
「オユキ様。そちらはあくまで儀礼としての物です。実際には、挨拶をしたりと顔つなぎの意味合いが強い物になります。王都であれば、学舎もありますので卒業に合わせてというのが一般的なのですが」
さて、シェリアから改めて色々と補足をされて、今回の王妃にしては随分と珍しい事務的とでもいえばいいのだろうか、その手紙の内容にも納得はいくものだ。要は、オユキに対して、これも貴族としての仕事なのだから大人しく招待に応じよとそうしたことであるらしい。特に昨日から王都の外で魔物を相手取るほどに回復できたのだろうからと。
「とすると、今回の場合は、私にはマリーア公爵夫人、いえナディア様が後見として」
「そうですね。後見として頼むのですから、家名よりもご本人の名前のほうが良いでしょう」
一応、そのあたりはエステールから聞いてはいる。オユキとしては、今後当分の間使うつもりが無かった知識ではあるのだが。
「それにしても、お披露目となるとどうしましょうか」
「何か問題がありますか」
「招待は私だけなのですが、トモエさんも」
「オユキ様、王妃様からオユキ様にあてた物ですので、今回は女性だけの参加となります」
そうした場であるのなら、トモエも一緒にと考えるオユキに対してシェリアからかなりの鋭さを持った声で指摘がなされる。オユキがそのあたりを、どう考えているかわからないどころかそうした場にも平然とトモエを連れていくだろうと、これまでの間での理解に及ぶものだが。
「シェリア。トモエ様はオユキ様には諦めて頂くとして、このお披露目と言うのは巫女としての立場も含めてと考えますか」
「それは、いえ、オユキ様、そのあたりは」
「戦と武技の巫女としての私では無いと、そのような様子ではありますが。そもそも、巫女のお披露目と言った事は教会や神殿では」
ユーフォリアの疑問に、シェリアがそういえばとばかりに同意をするものだが、オユキとしてはそれに関してはやはり未だによく分かっていない。こちらの貴族社会、特に女性社会に対してはエステールから色々と聞いてはいるのだが、神職としての振る舞いに関してはいよいよ習うべき相手がいたわけでもない。それこそ、分からぬことがあれば都度教会で暮らしていた少女たちに話を聞いていたものだし、何か事があれば教会に聞きに行ってもらったりとしていたのだ。今となっては、それを気軽に頼める相手がいないと言えばいいのか、少々仰々しい問い合わせをしなければいけないと言えばいいのか。
「確かに、巫女様方のお披露目となると、そうもなりますか」
「シェリア、オユキ様にとってはその立場も重要な物でしょう。不可分では」
「王妃様か、マリーア公爵夫人の手配があればと思いますが」
「そういえば、こちらに戻ってからまだ挨拶もしていませんし、戦と武技の教会にあいさつに伺って相談しましょうか」
思い返してみれば、こうして王都に戻ってからと言うもの、神事を行う事は確かにあったのだが其方は水と癒しにまつわる物。戦と武技に対しては、簡単な手紙のやり取りを行って、今後のというよりも明確に闘技大会の日程の予想であったりを確認した程度。それも、マルタ司祭にあてた手紙でだけであり、前回王都に滞在していた時にあれこれと習ったエリーザ助祭にあてた私的な手紙では簡単な世間話などもしてはいるのだが。
「エリーザ助祭とも、久しぶりにとは思いますし」
「その、オユキ様」
「オユキ様、恐らくですが日程についても記載があるとは思いますが」
「そうですね」
ユーフォリアとシェリアから、オユキがどうにも話をそらそうとしている気配を悟られたのだろう。何やら、両者から一段階視線に込められた熱が下がっているのを、オユキも感じる。特に、今度ばかりはこの国でも最上位層の相手からオユキ個人にあてた招待状でもあるため、中身を確認できないとそうした意識が働いての事だろう。オユキが話して聞かせるのは、オユキの判断に依る物だが侍女がそれを己の判断でとしてしまえば、そこには明確な責任問題が発生する。オユキとしても、それをさせるつもりはないため、流石に招待状と言う形式をとっているのは、分かりやすい物として用意されているのは別途入っている便箋になるのだが、今読んでいる物の全文を読む気にはならない。どれほど、オユキに対してお披露目のような事へ顔を出すことを求められていようとも、内容自体はなんだかんだと他の事にも触れられているのだから。
「明日の午後、ですね」
そう、オユキがいま心底気乗りしていない理由がその日程。せっかくトモエからの許可も下りて、ここ数日楽しい時間を過ごしていたのだ。だというのに、あまりにも平然と水を差すような真似をしてくれるものだと、現時点で既にかなりの不満を覚えている。ユーフォリアとシェリアの反応を見るにそちらを急がねばならないというのも理解ができるからこそ、なおさらに。
「そもそも、私はこちらに来た時点で既に成人しているというのに」
「あの、オユキ様」
今更お披露目等と言われても、そのような物は言ってしまえば成人年齢に達したのだと、そうした背景があっての事だろうにと。オユキがそんな事を考えているからこそ、ついつい不満を零して見せれば、しかし周囲からは何やらそこが勘違いの下かとそういった視線。
「ええと、こちらでは十六が確かそうでしたよね」
「あの、それに間違いはないのですが、オユキ様、狩猟者としても登録されていますよね」
一体それがどうしたのだと、オユキは首をかしげる。その時にも、年齢の記載欄はあったから、今となっては十七、新年を境にこちらでは一斉にとなっているらしいそれを増やしてみれば、既に十七。もはや身長が伸びることも無いと、そうした判断をするには十分な年齢ではある。
「オユキ様、その、改めて今お持ちの狩猟者証を確認していただいても構いませんか」
「はて」
シェリアが、実に恐る恐ると言えばいのだろうか、何やら不安だと言わんばかりにそうオユキに話す。
お茶会という程正式な物では無かったのだが、誘ったのはオユキでもある。そこで、中座をするのかとそう考えたのは確か。だが、ユーフォリアが実に苦々しげな顔をしながらも持ってきた書簡でもあるため、その場で一応何処からかというのだけは確認することとした。してしまった。
「オユキ様でしたら、勿論そうおっしゃるでしょう。やはり、私がどうにか」
「それでユーフォリアの瑕疵になるのであれば、私がそれを望まぬと考えての事でしょう」
一つの事実として、返事を持つ相手も待たせていると言う事。それがある。万が一、ユーフォリアが気を利かせてお茶会を終えてからとした場合には、オユキの評価と言うものに随分と直接問題を起こす。そして、それを避けようと思えば気をまわしたユーフォリアの責任問題となる。
最早、オユキも、何よりトモエがユーフォリアを手放す気が無いとそれが分かっているからだろう。再教育として、また王城に連れていかれることがあれば、それがまた交渉の手札になる。そうした、背景まですべてを理解したうえで、やむを得ないと判断したユーフォリアに問題はない。少なくとも、オユキははっきりとそう考えている。だからこそ、今を選んだ訳では無いのだろうが、こうした席を催している時を選んだ訳では無いのだろうがと。
「つくづく、間が悪いと言いますか」
「その、私のほうで情報の封鎖がやはり」
「私たちがというよりも、私が動けばどうしても目立ちますし、そもそもお借りしている人員ですから」
そして、主従揃ってため息一つ。
この場には、シェリアとユーフォリアを連れて、オユキが戻ってきたこともある。そして、シェリアがどうにも剣呑な視線を向けているため、オユキとしてはこういった背景があるのだと、改めて簡単に説明をしたうえで本題を口にする。
「王妃様から、改めてご招待を受けました」
その一言で、シェリアにしてもはっきりと瞳に理解の色が走る。こちらを先に話してもいいかと、オユキとしてはそんな考えもあるにはあったのだが、オユキはユーフォリアを庇うのだとそうした姿勢を見せておきたかったこともある。何故結論を先に、これまでであればそうしていただろうにしなかったのか、そのあたりについてもシェリアは理解が及んでいるようで、何よりではある。シェリアにしてみれば、ぽっと出の相手。オユキからしてみれば、本当に長い間の積み重ねがある相手。そのあたりの理解はあるのだとして、納得と言うのが難しいのはオユキも理解できているのだから。
「お茶会に、昨日でしょうね、外に出たことでそれくらいの余裕があるのならと」
「確かに、王妃様でしたら、王太子様とマリーア公爵の件もありますし」
「そうであればと考えていたのですが、どうにも」
そう、どういえばいいのだろうか。オユキでも分かり易い、そうした仕事の話であればよかったのだ。だが、こうして送られた案内状に並んだ名前を見る限り、やはりそのようには思えない。
「クレリー公爵家のカルラ様、それと王太子妃様に公爵夫人」
オユキが、とりあえず面識がある相手から名前を挙げていけば、それぞれからなるほどとそういった頷きが返ってくる。
「レジス侯爵夫人、ラスト子爵夫人までとなると、流石に」
一応、家名だけは記憶にあるというよりも、本当によく知っている相手。実際には、顔を全く合わせていないのだが、この機会に漸くと言う話なのか、もしくは。他にも、それこそ名前だけは憶えている家の名前がちらほらと書かれている。そんな、下位に対する招待状。流石に王妃が行うものともなれば、連ねている名前も随分と多い。そのような席で、仕事の話なども難しかろうというのがやはりオユキの考え。周知すると言った意味で数を揃える事はあるだろうが、会議とするには人が多すぎる。それこそ、事前準備も無ければ、議題が書かれているわけでもない。そこで、ここまでの十を超えるような人数を集めて会議を行ったところで、そこに陸な帰結は無いのだと過去の色々で理解している。
「そういえば、オユキ様はまだでしたね」
「シェリアは、何か」
さて、オユキは全く思いつかず、ユーフォリアも同様。だというのに、シェリアのほうでは、何か心当たりがあると言う事らしい。
「ファンタズマ子爵家当主として、オユキ・ファンタズマ子爵としてのお披露目が」
「はて、それに関しては新年の折に陛下から」
「オユキ様。そちらはあくまで儀礼としての物です。実際には、挨拶をしたりと顔つなぎの意味合いが強い物になります。王都であれば、学舎もありますので卒業に合わせてというのが一般的なのですが」
さて、シェリアから改めて色々と補足をされて、今回の王妃にしては随分と珍しい事務的とでもいえばいいのだろうか、その手紙の内容にも納得はいくものだ。要は、オユキに対して、これも貴族としての仕事なのだから大人しく招待に応じよとそうしたことであるらしい。特に昨日から王都の外で魔物を相手取るほどに回復できたのだろうからと。
「とすると、今回の場合は、私にはマリーア公爵夫人、いえナディア様が後見として」
「そうですね。後見として頼むのですから、家名よりもご本人の名前のほうが良いでしょう」
一応、そのあたりはエステールから聞いてはいる。オユキとしては、今後当分の間使うつもりが無かった知識ではあるのだが。
「それにしても、お披露目となるとどうしましょうか」
「何か問題がありますか」
「招待は私だけなのですが、トモエさんも」
「オユキ様、王妃様からオユキ様にあてた物ですので、今回は女性だけの参加となります」
そうした場であるのなら、トモエも一緒にと考えるオユキに対してシェリアからかなりの鋭さを持った声で指摘がなされる。オユキがそのあたりを、どう考えているかわからないどころかそうした場にも平然とトモエを連れていくだろうと、これまでの間での理解に及ぶものだが。
「シェリア。トモエ様はオユキ様には諦めて頂くとして、このお披露目と言うのは巫女としての立場も含めてと考えますか」
「それは、いえ、オユキ様、そのあたりは」
「戦と武技の巫女としての私では無いと、そのような様子ではありますが。そもそも、巫女のお披露目と言った事は教会や神殿では」
ユーフォリアの疑問に、シェリアがそういえばとばかりに同意をするものだが、オユキとしてはそれに関してはやはり未だによく分かっていない。こちらの貴族社会、特に女性社会に対してはエステールから色々と聞いてはいるのだが、神職としての振る舞いに関してはいよいよ習うべき相手がいたわけでもない。それこそ、分からぬことがあれば都度教会で暮らしていた少女たちに話を聞いていたものだし、何か事があれば教会に聞きに行ってもらったりとしていたのだ。今となっては、それを気軽に頼める相手がいないと言えばいいのか、少々仰々しい問い合わせをしなければいけないと言えばいいのか。
「確かに、巫女様方のお披露目となると、そうもなりますか」
「シェリア、オユキ様にとってはその立場も重要な物でしょう。不可分では」
「王妃様か、マリーア公爵夫人の手配があればと思いますが」
「そういえば、こちらに戻ってからまだ挨拶もしていませんし、戦と武技の教会にあいさつに伺って相談しましょうか」
思い返してみれば、こうして王都に戻ってからと言うもの、神事を行う事は確かにあったのだが其方は水と癒しにまつわる物。戦と武技に対しては、簡単な手紙のやり取りを行って、今後のというよりも明確に闘技大会の日程の予想であったりを確認した程度。それも、マルタ司祭にあてた手紙でだけであり、前回王都に滞在していた時にあれこれと習ったエリーザ助祭にあてた私的な手紙では簡単な世間話などもしてはいるのだが。
「エリーザ助祭とも、久しぶりにとは思いますし」
「その、オユキ様」
「オユキ様、恐らくですが日程についても記載があるとは思いますが」
「そうですね」
ユーフォリアとシェリアから、オユキがどうにも話をそらそうとしている気配を悟られたのだろう。何やら、両者から一段階視線に込められた熱が下がっているのを、オユキも感じる。特に、今度ばかりはこの国でも最上位層の相手からオユキ個人にあてた招待状でもあるため、中身を確認できないとそうした意識が働いての事だろう。オユキが話して聞かせるのは、オユキの判断に依る物だが侍女がそれを己の判断でとしてしまえば、そこには明確な責任問題が発生する。オユキとしても、それをさせるつもりはないため、流石に招待状と言う形式をとっているのは、分かりやすい物として用意されているのは別途入っている便箋になるのだが、今読んでいる物の全文を読む気にはならない。どれほど、オユキに対してお披露目のような事へ顔を出すことを求められていようとも、内容自体はなんだかんだと他の事にも触れられているのだから。
「明日の午後、ですね」
そう、オユキがいま心底気乗りしていない理由がその日程。せっかくトモエからの許可も下りて、ここ数日楽しい時間を過ごしていたのだ。だというのに、あまりにも平然と水を差すような真似をしてくれるものだと、現時点で既にかなりの不満を覚えている。ユーフォリアとシェリアの反応を見るにそちらを急がねばならないというのも理解ができるからこそ、なおさらに。
「そもそも、私はこちらに来た時点で既に成人しているというのに」
「あの、オユキ様」
今更お披露目等と言われても、そのような物は言ってしまえば成人年齢に達したのだと、そうした背景があっての事だろうにと。オユキがそんな事を考えているからこそ、ついつい不満を零して見せれば、しかし周囲からは何やらそこが勘違いの下かとそういった視線。
「ええと、こちらでは十六が確かそうでしたよね」
「あの、それに間違いはないのですが、オユキ様、狩猟者としても登録されていますよね」
一体それがどうしたのだと、オユキは首をかしげる。その時にも、年齢の記載欄はあったから、今となっては十七、新年を境にこちらでは一斉にとなっているらしいそれを増やしてみれば、既に十七。もはや身長が伸びることも無いと、そうした判断をするには十分な年齢ではある。
「オユキ様、その、改めて今お持ちの狩猟者証を確認していただいても構いませんか」
「はて」
シェリアが、実に恐る恐ると言えばいのだろうか、何やら不安だと言わんばかりにそうオユキに話す。
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